まやかしの景気判断
米非農業部門雇用者が前月比24.8千人増と予想を上回ったため、ドル独歩高は一段進んだ。特に、ユーロの下落は激しく、これに追随して円なども売られた。ユーロの大幅安により、商品市況も値崩れしていった。WTIはバレル90ドル割れとなり、昨年の4月以来の低い水準だし、金は1,200ドル割れで、昨年末を下回った。10月1日に大幅安となったNYダウは反発したが、米債券相場には影響しなかった。
ドル高と米株高は持続するか
週末値では7週連続の円安ドル高だ。ドル高ユーロ安の進行にともない対ドルで円も売られ、08年8月第4週以来の円安水準に下落した。ドル高ユーロ安が進んだのは、米国経済が拡大を続けている一方、欧州経済は冴えないからである。Markitが発表した9月のユーロ圏PMIは前月を下回り、Ifoの景況指数も9月まで5ヵ月連続で低下し、ドイツ経済が下降を示唆しているからだ。
日米のMB格差による円安
先週、円は5営業日連続で売られ、2008年9月以来6年ぶりの円安ドル高に戻った。ユーロ経済の悪化によって、ドル高ユーロ安に連れ安していたが、いつのまにか円が売りの標的となった。過去1ヵ月の値下がり率は、対ドルで円の5.0%に対して、ユーロとポンドは3.0%、3.3%である。
実体経済との乖離が過去最大になった米株式
週末、S&P500は過去最高値を更新した。8月の非農業部門雇用者数が前月比14.2万人と予想にとどかず、昨年12月以来の低い伸びにとどまったが、ゼロ金利政策の長期化が期待できるとの株式関係者の楽観的見方が優勢になった。株式関係者にとっては、米雇用統計などどちらに転んでも株式に都合良く解釈できるのだ。8月末のS&P500は前年比22.7%、ナスダックは27.6%も上昇している。
増税の反動減強まり経済は後退している
国債利回りは週末値、0.49%と0.5%を下回った。週末値で0.5%未満の経験は過去に一度あるだけだ。2003年6月第2週の0.445%だ。この過去最低をつけてから利回りは急騰、3ヵ月後には1.5%を超えた。だが、今回はそのような利回りの急騰はないだろう。消費税引き上げにより、日本経済は消費と生産が収縮しているからだ。
対照的な日米の景気
7月の米景気先行指数や住宅関連指標が予想よりも強く、米国経済の拡大を示す一方、ユーロ圏の経済指標は景気の低迷をあらわし、ドル高ユーロ安が進んだ。週末値のドルユーロ相場は1.3244ドルと昨年9月第1週以来のドル高ユーロ安となった。FOMC議事録によると利上げはこれからの経済動向次第だと述べ、強めの経済指標が出てくることになれば、利上げ開始時期は早まる。
劇薬投与を止められない日本経済
4-6月期の実質GDPは前期比-1.7%と2012年10-12月期以来、6四半期ぶりのマイナスになった。下落率は2011年1-3月期以来だが、寄与度をみると、最終消費支出が今回の-3.1%に対して2011年1-3月期は-1.1%であり、消費税引き上げ後の1997年4-6月期(-1.9%)よりも大きく落ち込んでいることがわかる。
食い物にされる年金
週末、日経平均株価は約3%も急落し、6月17日以来の1万5,000円割れとなった。先月30日の高値からは5.5%の値下がりだ。8日、アジアや欧州の主要株価も下落したが、値下がり率は日経平均株価ほどではなかった。ウクライナの緊張や米オバマ大統領のイラク空爆承認により下落したというが、消費税引き上げによる日本経済の不振が露になってきていることが、急落を引き起こした主因だと思う。