米国の利下げが確実視されていることから、欧州通貨は対ドルで、昨年末比上昇している一方、円だけは安い。日銀がマイナス金利を解除しそうにないからだ。そうした日銀の姿勢を反映して、日経平均株価は昨年末比27.1%高とナスダック総合(43.2%)に次ぐ上昇となっている。だが、NYダウは過去最高値を更新し、S&P500も過去最高値に限りなく近づいている。
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13日公表のFOMC経済予測により、週末、米債券利回りは3.91%に急落、前週比31bpも低下し、7月第4週末以来約5カ月ぶりの4%割れとなった。一方、NYダウは昨年1月以来約2年ぶりに過去最高値を更新した。来年、FFレートは4.4~4.9%に引き下げられるとFOMCで予測されたからだ。先週の米債券相場はFFレートのこうした引き下げ期待を完全に織り込んだ。
植田日銀総裁の発言で円高ドル安に拍車がかかった。ゼロ金利の解除が視野に入ってきたと思わせたからだ。未だに、このような思惑で相場が激しく動くのである。1990年代半ば頃からほぼゼロ金利を続けてきたが、日本経済の足取りにそれほどの変化はない。30年近く、同じことをやってきて、事態が好転しないことは、金融政策では日本経済を良くすることはできないのだ、と言うことだ。
米10年債利回りは先週末、4.19%へと急低下し、今年8月末以来約3カ月ぶりの低い水準だ。週間で27bp低下し、これにつられてドイツやイギリスの利回りも同様に急落したが、日本だけは7bpの低下にとどまった。米債券利回りの急低下によって、円ドル相場は週間、1.8%の円高となり、今年9月11日以来約3カ月ぶりの円高ドル安だ。
米10年債利回りは実体経済に概ね合致しているため、これからは大幅な変動はなく、円ドル相場も1ドル=150円前後で推移し、その後、円高ドル安に向かうだろう。昨年末比、日経平均株価は28.9%もの予想外の上昇となっている。ナスダック総合は36.2%も急騰しているが、NYダウは6.8%にとどまり、FT100は0.5%とほぼ横ばいだ。
米10年債利回りは急低下している。10月末比では50bp低下、これに欧州の債券も追随し、軒並み債券は買われた。先月末から日本の債券利回りも20bp低下したが、水準が1%未満であるため、円ドル相場は大きく反応していない。それでも米国の物価は着実に沈静化に向かっており、ドル高はピークアウトした。
円安ドル高の進行が株価を押し上げている。先週末の日経平均株価は昨年末を24.8%上回っており、主要株価指数のなかではナスダック総合(31.8%)に次ぐ高い伸びを示している。NYダウは3.4%にとどまり、S&P500は15.0%の上昇である。米国の政策金利や10年債利回りは現状がほぼピークであり、金利面でも株式を強気にしている。
米債券利回りの急低下によって、円ドル相場は149円台に戻した。米10年債利回りの5%超えは行き過ぎだ。2023年第3四半期までの過去20年間の米名目GDPは年率4.44%であるから、10年債利回りはこの水準の近くで推移していくはずだ。今後の長期期待経済成長率が4.44%から上下にぶれると予想されれば、中心から離れることになろう。強い期待の下では5%、弱い期待下では4%に向かうことになる。
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11月6日号からの掲載となります。
9月の米消費者物価指数(CPI)は前年比3.7%と前月と変わらなかった。ただ、ウエイトの大きい住居の寄与度が2.5%pあり、これを除けば1.2%である。住居のうち持家の帰属家賃だけで1.8%p引き上げており、これを除外すれば1.9%となり、米国の物価は実質的には落ち着いているのである。こうした物価情勢であるにもかかわらず、依然、物価上昇懸念が燻ぶり続け、何かにつけ、相場の材料にされている。