任期が2カ月もないバイデン大統領は、極めて危険な事態を招くと予想されるにもかかわらず、ウクライナが米供与の長距離兵器の使用を許可した。ウクライナとイスラエルに武器を与え戦争させる酷い大統領だが、さらに一歩踏み出した。当然のことだが、ロシアは対抗措置として超音速ミサイルを発射した。バイデン大統領は戦争の拡大を狙っているのだ。最後の悪あがきの様相を呈してきた。戦争がどうなろうが、知ったことかとでも言いそうだ。民主党の戦争推進が民主党敗北の主因といえるが、バイデン大統領はそうした間違った政治に反省の欠片も見せない。
戦争拡大への動きが明らかになったことから、対ドルでユーロは週間で1.2%下落、ポンドやフランも円以上に売られた。欧州通貨が弱くなりドル独歩高になったけれども、過去1週間で最も値上がりしたのはドル建ての原油で6.3%、次が金の5.5%である。ロシアとウクライナの戦争からロシアと欧州全体へと拡大しそうだという不安が台頭してきており、そうした懸念が払拭されなければ、ユーロは戻らないだろう。
火に油を注ぐ行為をしていれば、いつ戦争が急速にかつ激しさを増すことにもなり兼ねない。米国は戦場から遠く離れているが、欧州は地続きであり、いつ何時ミサイルが飛んでくるかもしれないという不安がある。バイデン大統領は危機を一層深刻にさせた最悪の大統領である。こうしたバイデン大統領の行動によって、米国は世界からますます信用をなくし、相手にされなくなる。すでに米国の地位は落ちてきているが、これからは加速度的にその方向に進むだろう。トランプは自国第一主義だから、世界には目配りせず、関税などで貿易戦争を引き起こすかもしれない。米国に従っている国は英国や日本のような一部の国に限られる。
米国の政治・外交に追随する日本は、世界からみれば主権国家なのだろうかと疑われている。日米地位協定は国会よりも上位にあり、そこで主要で重要な案件は処理されているのだ。主従関係にあるような国など相手にされるわけがない。米国の手下であるかぎり、中国もロシアも北朝鮮も日本とは本気で交渉する気はないのだ。日本は落ちぶれつつある米国と心中するのだろうか。
11月22日、政府は経済対策を閣議決定した。このような対策は今まで何度出されたことか。これまでの経済対策が実際に効果を発揮したのだろうか。発揮したのであれば、低い賃金、低迷を続ける消費等の現状をどう説明するのだろうか。ほとんど効き目がなかったから、現在も過去と同じように低賃金、低消費なのだ。これほど実体経済にプラス効果をもたらさなかった経済対策を、よくも飽きずに繰り返し打ち出すものだ。効かなかったかを、なぜ検証しないのだろうか。常にやりっぱなしであり、顧みないのは、だれも責任を問われないからである。企業であれば、業績不振に陥れば、それなりにその原因究明に乗り出すだろう。業績悪化が持続すれば破綻するからだ。政府は失敗しても破綻はしない。それだから責任も取らず、失政を振り返り、正すこともしない。だから、同じ経済対策を毎度作文して、平気で提出するのだ。
今回の総合経済対策では「全ての世代の現在・将来の賃金・所得を増やす」と謳っており、そのためには経済成長が必要だと言う。だが、今よりも高い成長をいかに実現するかについての具体策はなにもない。これまでのゼロ成長の主因は労働分配分の低下であり、所得格差の拡大という分配の仕方が間違っていたからだ。1994年度から2023年度までの29年間の名目GDPは年率0.52%の超低成長だった。これをどの程度にまで高めようとしているのだろうか。数%底上げするには、よほど意外性のある思い切った対策でなければならないはずだ。だが、今回の総合経済対策もありふれた文言の羅列であり、意外性のある政策はどこにも見当たらない。消費に一番重要な分配のことは一言も触れていないし、所得税、法人税、消費税、金融課税のことはどこにも書かれていない。賃上げは結局神頼みなのだ。これでは現状の経済を維持できる程度であり、「賃金・所得を増やす」ことは絵に描いた餅となる。
過去29年間、数限りない経済対策を打ち出しても年率0.52%しか成長しなかった。向こう10年間、経済成長率が飛躍的に高まることはなく、むしろ成長率は低下するだろう。足元、名目GDPが高くなっているのは、物価が上昇しているからであり、物価が落ち着けば名目GDPの伸びは低下していく。
今年の春闘の賃上げが5.1%と33年ぶりの高い伸びだと言われているが、『家計調査』によれば、勤労者世帯(二人以上の世帯)の世帯主収入(男)は9月、前年比0.8%に鈍化しており、2年前の9月とは横ばいだ。7月は11.0%も伸びていたが、急速に低下し、実質では2.0%減である。
9月の平均消費性向は76.6%、前年比1.6%p低下し、同月比では3年前の2021年9月以来の低い水準となった。2000年以降の平均消費性向(季節調整値)をみると、2017年半ばまでは概ね70%~75%の間に収まっていたが、新型コロナ以前にすでに低下傾向を示しており、新型コロナ直後の2020年5月には53.5%に急低下、その後、持ち直しているが、それでも最高は66.8%であり、今年6月には57.9%まで落ち込んだ。9月は62.2%へと回復しているけれども、10年前の2014年9月の74.9%に比べると異常に低いことがわかる。消費には極めて慎重になっていることが窺える。このような冷え切った消費者の行動をありふれた経済対策で変えることはできない。
可処分所得の62.2%しか消費しないのは、先行きが良く見えず不安なからである。賃金がこれから上がり続けるとは思っていないから消費を抑制するのだ。低所得者世帯に3万円を配るというが、このような一時的なお金がどれほど消費に影響するのだろうか。2020年の一人10万円給付でも効き目がなかったことを例に挙げれば、今回の3万円はほとんど意味がないことになる。一時的な措置では今の低消費行動を変えることはできない。先行き賃金が上がり続けそうだ、との強い確信が得られなければ消費行動を強くすることはない。そのような経済対策は今回も盛られていなかった。
エンゲル係数は同月での比較では2年連続で上昇しており、9月は27.9%である。9月としては2000年以降で最高である。食料品価格の上昇率が高いことからエンゲル係数は高くなり、非食品の購入減を余儀なくされている。可処分所得が9月、前年比1.0%に鈍化したことも消費支出を抑制したが、食料支出増に圧迫されて非食料消費はさらに低迷するという事態に陥っている。
賃金が先行きも期待できないことが消費低迷の主因だが、さらに消費支出を圧迫している要因として住宅・土地のための負債がある。勤労者世帯(二人以上)のうち負債保有世帯の割合は2023年、55.7%であり、2014年と比較すると2.8%pの上昇である。負債保有世帯の負債残高は2014年の1,428万円から2023年には1,811万円へと26.8%も増加している。一方、年間収入(勤労者世帯全体)は同期間702万円から769万円、9.5%の伸びにとどまり、負債残高の伸びを下回っており、負債の返済が家計を圧迫しているのだ。
負債保有世帯(二人以上世帯)の年齢階級別貯蓄・負債残高をみると2023年の40歳未満の負債残高は2,754万円、次が40~49歳の2,048万円。貯蓄―負債は40歳未満が-1,933万円、40~49歳-952万円となっており、40歳未満の超過負債額が最大である。50歳未満の世帯は本来消費意欲旺盛なのだが、巨額の負債を抱え、しかも負債が貯蓄を大きく超過していれば、所得を消費にどんどん使うという気持ちにはなれない。不確実な将来に目を向ければ、できる限り蓄えておきたいのである。平均消費性向を上昇させるには、家計に意外と思わせるほどのインパクトのある政策を打ち出す必要がある。