大企業は売上高が伸びなくても巨額の当期純利益を手に入れているが、そのわけは売上原価の削減、営業外収益の拡大であったことを前回のレポートで指摘した。給与や他社からの購入費の削減は、取りも直さず、有効需要の不足をもたらし、結局、大企業の売上高にも悪影響を及ぼすのである。生産コストを厳しく押さえつけることは、当該企業にとってはプラスなのだが、社会全体にとってはマイナスになる。
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日経平均株価は4月の第2週以降、8週連続高となり、昨年末から20.8%上昇した。今回の株高はウォーレン・バフェットの来日と軌を一にする。彼の日本の商社株の買い増しにまつわる話を材料に、外人買いによって吊り上げられた。3月24日までの約1カ月で、外人は日本株を2兆4,603億円売り越したが、その翌週から5月26日まで9週連続で買い越し、買い越し総額は4兆1,231億円に達している。
円ドル相場は昨年末よりも9円強値下がりした。ドルユーロはほぼ同じ、ポンドとスイスフランは強含みで、円独歩安だ。日銀が金融緩和を続ける一方、米国の利上げ打ち止めが遠のく観測が強まってきているからだ。今年第1四半期まで米実質GDPは3期連続の前期比プラスであり、足元の経済指標もサービス部門は底堅く、米国経済が直ぐに腰折れすることはなさそうである。
2022年度、日本の名目GDPは前年比1.9%と前年よりも0.5%p低下した。新型コロナ前の2019年度を0.8%上回り、過去最高を更新した。だが、実質では2018年度をまだ1.2%下回っている。2022年度までの10年間の名目GDPは年率1.17%、実質では0.56%であり、米国(2012年から2022年までの10年間、年率名目4.59%、実質2.1%)に比べればその差は極めて大きい。
3月の貿易赤字は4,544億円と昨年8月のピーク(24,609億円)から大幅に縮小してきた。第1次所得収支(利子、配当等)は3兆3,610億円と前年を下回ったものの、貿易赤字額をはるかに上回り、経常収支は2兆2,781億円の黒字を確保することができた。2022年度の経常収支は9兆2,256億円と前年度の半分以下となり、2014年度以来8年ぶりの低水準となったが、今年度は増勢に向かうだろう。
米国経済は底堅い。今年第1四半期の実質GDPは前年比1.6%伸び、前期を0.7%ポイント(p)上回った。個人消費支出と設備投資が2.3%、2.7%それぞれ伸び、この両者でGDPを2.0%引き上げた。在庫が大幅に減少したため、これを除けば2.6%成長となる。GDPの70.9%を占める個人消費支出が前期よりも高い伸びをみせていることが、底堅さの最大の要因である。
4月28日、植田日銀総裁初の定例記者会見が開かれた。黒田前総裁の方針を踏襲し、まさに屋上屋を架す姿勢に徹した。岸田首相を始めとする政府の答弁や企業の会議と同様に、内容が乏しく、無駄な時間がだらだらと過ぎて行くだけであった。記者の質問に対してありきたりな言葉で答えて終わり、再質問は封じられている。このような会見をいくら開いたところで、日銀の考えをより深く探ることなどできはしない。
3月の日本のCPI総合は前年比3.2%、前月よりも0.1%ポイント(p)低下した。生鮮食品を除くは3.1%の横ばい、さらにエネルギーを除くコアは3.8%と前月よりも0.3%p高くなった。3月の米CPIとユーロ圏HICPは前年比5.0%、6.9%それぞれ上昇しているが、日本はそれらを大幅に下回っている。国の電気・ガス支援が1%p引き下げており、これを除けば4.2%になる。
3月の米CPIは前年比5.0%、前月よりも1%ポイント(p)低下した。2021年5月以来1年10カ月ぶりの低い伸びだ。4月はじめに「OPECプラス」が減産を決めたことから原油価格が上昇しており、なかなか一本調子で物価が下落していく状況ではない。それでも、WTIが、ここからさらに大幅に値上がりするとは考えにくく、年末に向けて、物価は緩やかに低下していくだろう。
黒田日銀総裁が8日付で退任した。7日の記者会見で、大規模な金融緩和をやってきたことは正しく、大規模緩和がなければ、経済は現状のような姿にはならなかっただろう、という発言が目立った。2%の物価目標にどのような根拠があり、この目標を達成することで日本経済はどのようになるのか、といった根本的問題は最後まで聞くことはできなかった。