2022年末の日経平均株価は前年比9.5%下落した。前年を下回るのは2018年以来4年ぶりである。2022年と2018年はNYダウも低下しており、米株の日本株への影響力は極めて大きい。2000年以降の日米の株価を比べてみると米株が下落しているときは、日本株もほぼ押していることが分かる。日本株は米株が強いか弱いかで決まると言っても過言ではない。
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日銀が大規模緩和策の副作用の点検を行うとの報道をうけ、円ドル相場は一気に127円台に突入した。昨年5月第4週以来の円高ドル安である。長期金利は一時上限の0.5%を超え、さらなる利上げを織り込む動きを見せている。債券先物は激しく売られ、昨年12月20日以降に売り建てていた玉にも巨額に利益が発生している。
今年度上半期の実質GDP(年率547.3兆円)は前期比0.8%、前年比1.5%伸びた。新型コロナからの回復後、日本経済は定常状態と言えるような緩やかな歩みである。良くもなければ悪くもない漠然とした足取りである。インフレが喧しく言われていたが、最近の報道では以前ほど耳にしなくなった。
12月16日に安全保障関連3文書が閣議決定されたが、22日には「GX実現に向けた基本方針(案)」(議長 岸田首相)が示され、次期通常国会に関連法案として提出するそうだ。そこには、原発の再稼働、廃炉の建て替え、新炉の開発・建設、60年超の原発運転可能などで、2030年度の電力に占める原子力の比率を20%~22%に引き上げる、と記されている。要するに、再び、原発を主力電源にしたいのだ。
臨時国会の閉会から1週間で安全保障関連3文書が閣議決定され、日本の安全保障政策は戦争のできるような体制に転換された。これほどの大転換を超短期間で決めてしまう国を民主主義国などと言えるだろうか。中国やロシアなどの強権国家を非民主主義国と罵るけれども、日本もなんら変わらない強権国家なのだ。
今年5月23日の日米首脳会議で岸田首相は「防衛費の相当な増額を確保する決意を表明」した。2027年度には防衛費をGDPの2%に引き上げ、10兆円程度の規模に拡大する方針。ロシアのウクライナ侵攻や中国、北朝鮮の脅威によって、敵基地攻撃能力を持たねばならないと危機を煽る。台湾にしても中国が直ちに侵攻することは考えられない。
円ドル相場は先月10日、米10月CPIの伸びが低下したことから円安ドル高が修正されつつあったが、先週、パウエルFRB議長の「利上げペースを緩やかにすることは理にかなっている」との発言で、修正は加速し、週末134円30銭と今年8月中旬以来3カ月半ぶりの相場に戻った。
円ドル相場は130円台が定着しそうだ。これまで対ドルで他通貨よりも売り込まれていたためか、過去1カ月間の対ドルでの上昇率は円が最大である。10月20日には150円を突破するまで円安は進んだが、トレンドは変わったようだ。米CPIの上昇率は緩やかに低下しており、さらにインフレが激しさを増すことはなさそうであるからだ。インフレの原因である原油高も先週末には76ドルと昨年末に接近してきた。
インフレを引き下げるための追加利上げが必要との地区連銀総裁の相次ぐ発言にもかかわらず、先週末の米10年債利回りは3.82%と前週末とほとんど変わらなかった。おそらく、今後、10年債利回りは3%台で推移するだろう。そうであれば、円ドル相場は円高ドル安の方向に進んでいくことになる。
端的に言って、マネーの潜在的なプログラマブル性の明と暗を決めるのは政治。デジタル化の進展が政治への依存性を高める。それをコントロールする力が諸国民にあるのだろうか。いったん権威主義国家体制が確立してしまえば、すべてが手遅れになってしまうのではと危惧される。とりわけチャイナを見ているとね。
そんな危惧を中央銀行デジタルカレンシーにもたれる方もいらっしやるでしょう。