財務省によれば、10月7日発行の10年利付国債の表面利率(クーポン)は年3.1%、また、同9日発行の30年利付国債のクーポンは年4.2%になった。約30年ぶりの高いクーポンであり、長期国債の魅力は非常に高くなった。30年間にわたって年4.2%の利息を受け取り、30年後には元本が返ってくるからだ。だが、既発30年債を個人に販売している証券会社は、ほぼインターネット証券に限られる。大手証券会社などは、既発債は扱わず、個人向け国債の販売も、もうけがないので消極的である。
今年第2四半期の日本経済の名目GDP成長率は前年比3.5%と国債のクーポンを上回っているが、実質では0.9%しか伸びていない。10年物国債のクーポンは3.1%だが、9月の東京都区部CPI(前年比2.7%)で実質化すると0.4%になり、クーポン3.1%は実体経済に見合っている。CPIは原油価格の動向如何だが、もし原油高が持続することになれば、CPIはじり高となり、それに連れて国債利回りも上昇し、10年債のクーポンは3.2%、3.3%へと引き上げられるだろう。
今年第2四半期までの過去10年間の名目GDPは年率2.2%だが、近いうちに名目GDP3.5%は2.2%近くに低下するはずだ。原油高はいつまでも続くことはなく、戦争が終われば、急低下する。GDPの伸び率鈍化に加え、CPIも大幅に下がり、日銀の利上げ観測は消え去り、国債利回りは低下に転じるだろう。
今はまだ先行き物価が上がるかもしれないという見方が強く、国債利回りは上昇しているけれども、よほどのことが起きなければ、利回りはピークに近いところまできているのではないか。
内閣府のGDP統計によれば、今年第2四半期までの過去30年間の名目GDPは年率0.77%、家計最終消費支出(持家の帰属家賃を除く)は0.66%しか伸びていないのだ。今年第2四半期の3.5%は長期成長率から大きく乖離している。過去10年間は新型コロナ、ウクライナ戦争、ガザ虐殺、イラン戦争が起こり、物価高となった特異な時代であったからだ。
日本の長期経済成長率は名目でも1%未満しか伸びない景気低迷国なのだ。そうした停滞経済でありながら、10年国債の利回りが3%を超えていることは、明らかに行き過ぎている。長期に目を向けるならば、10年国債の利回りは、名目GDPの伸びに近い1%前後の水準が妥当と言える。
問題を起こすのはいつも核保有の大国である。米ソが唯我独尊を貫けば戦争はなくならない。特に、酷いのは無法者トランプの米国だ。常に、戦争していなければ国が成り立たないほど軍事に偏った国なのである。その軍事部門が今、米国経済を支えているのだ。
今年第2四半期の米名目GDPは前年比6.3%と日本を2.8%pも上回っている。個人消費も6.2%と高いが、民間設備投資は9.6%も拡大し、これに軍事支出を加えればGDP寄与度は25%を超える。軍需産業はフル稼働状態にあり、例えば、今年第2四半期のロッキード・マーティンのミサイル・火器部門の売上高は前年比19.5%も伸びた。それでも当部門の受注残は第1四半期の1.89倍に急増した。人材と設備の制約があり、受注を消化できないでいる。
日本経済は1990年代以降の長期停滞から抜け出してはいない。過去30年間の民間企業設備は年率1.0%、一方、家計最終消費支出は0.66%というように、家計消費に比べ企業の設備投資は伸びている。家計消費がまったく振るわないことが日本経済の最大の問題なのである(今年8月まで9カ月連続で勤労者世帯の平均消費性向は前年割れ)。足元、名目GDPは3.5%成長しているが、GDPの伸びを下回る家計消費の不振によって、これから成長力は低下していくだろう。そして名目と実質の差は縮小し、ゼロに向かっていくのではないか。
世界中が原油高で困っており、その原因はトランプのイラン攻撃であることは、だれもがわかっていながら、手をこまねいている。米国とトランプを総すかんにすればよいのだが、日本のようにトランプの手下に成り下がっているのでは、原油価格はなかなか下がらない。
G7の政治家は原油高でもかまわないのだ。原油高が長期化し、しかも供給不足が続くことになれば、日本のように全量を輸入に頼っていれば、日本経済は破綻する。そのような事態も予想され、国益が失われてしまうかもしれないのだが、それでも、トランプになにも言えないのは、本当は、高市首相は国のことは、なんとも思っていないということだ。口先ではいかようにもいえる。だが、行動をみれば、国のことなどよりも、「皇国史観」に基づいた強権政治を進めることしか考えていないことがわかる。
ITだAIだと世間は騒がしいが、これだけ老若男女がスマホを手に持ち、電車内では大半の人がスマホと睨めっこしている。一日の何時間スマホと向かい合っているのだろうか。スマホを見る時間が長いことは、今までの日常生活の時間の使い方が変わり、スマホ使用が生活なかに入り込み、置き換わっているということだ。食事、読書、テレビ、睡眠の時間がスマホに奪われているのだろう。一日は24時間しかなく、そのなかでやり繰りするしかないのだから。これほどスマホ中心の生活をしていれば、家庭生活に限らず、家庭外の活動にも少なからぬ影響を及ぼしているはずだ。プラス面もあるがマイナス面のほうが大きくなっているように思えるのだが、どうだろうか。
1990年代後半からパソコンが普及し、ITが経済活動に寄与し、生産性にも寄与していると考えられるが、実際、『法人企業統計』(財務省)によれば、労働生産性は1990年度がピークとなり、未だに1990年度を抜いていない。2020年以降生産性は上昇しているが、物価高によるものであり、ITやAIの影響を認めることはできない。
なんでも、すぐに調べることができる。簡単にできることは、なかなか身につかない。試行錯誤しながら、右往左往しながら、やっていくうちに自分のものになるのだが、いまではそのような方法は通用しないのかもしれない。文献やデータの入手はなんと簡単にできるようになったことか。これだけデータを自由に使えることができ、パソコンで計算、分析できるようになっても、マルクスやケインズのような経済制度を変える理論を編み出すすぐれた経済学者は現れない。なぜか。経済全体を総合的に掴み、問題を抉りだし、推論し、理論化するには、実際に経済の現場に身を置く時間が必要なのではないか。それになにが問題の核心であるかを正確に捉え、とことん追求するエネルギーも求められる。
情報がネット上にいくら溢れていても、たいていは情報の海に吞み込まれ、溺れてしまう。ほとんどのネット上の情報は取るに足らぬ屑情報であり、情報に値するものではなく、確かな目標がなければ、ネット上で時間が過ぎ去るばかりとなる。
最近、サイバー攻撃が頻繁に起こっているが、これはITとAIの世界では永遠に続き、サイバー攻撃を防ぐコストがIT導入による収益を食いつぶすほどに上昇するかもしれない。サイバー攻撃によって手軽に脅迫で身代金を奪うことができるのであれば、世の中、善人と悪人の玉石混交なのだから、サイバー攻撃を生業にする人が続々現われてくることは避けられないことだ。しかも、このサイバー攻撃は世界のどこからでも弾を打ち込むことができる。サイバー犯人は世界を股にかけており、その捜索は国内捜査のようにはいかない。世界を結び付けたネット社会の宿命なのだ。
システムが完璧に構築できれば、つけこむ隙はないが、どこかに亀裂や微細なひび隙間があり、そこから敵は侵入してくる。家のドアひとつをとっても、内部を完全に外部から遮断することは難しい。システムをより完璧なものにするにはコストが掛かる。そして、常に手入れをしておかねばならぬが、これにもコストが掛かる。システムを作り上げるためには巨額の費用を要するが、日常、なにか不振な動きはないかと24時間常に見張る、気の休まらない日常となる。ネット社会が機能不全に陥らないように維持していくには想像を絶する関連コストが掛かることになる。ネット社会の長所であるコスト削減や効率性などが、ネット遮断や重要情報流失の事態になれば、突然ネットの優位性は失われ、巨額のコストの発生と不安に襲われることになる。
ネット社会は極めて脆弱であることが、目の前に突き付けられている。サイバー攻撃を防ぐためには人材も必要だが、少子化の日本ではITやAIなどの特定部門に雇用が偏れば、その他の部門で人材が不足する事態に陥ることになる。
ネット社会の限界をわきまえ、ネットでしてもよいこととしてはいけないことを分けなければならない。仕事をネットに置き換えるだけでは、立ち行かなくなる社会になってきた。