米国とイスラエルが突然、イランを攻撃し、最高指導者を暗殺する主権の蹂躙、無法な行動がホルムズ海峡の封鎖、原油高騰、肥料やアルミの供給不安等のすべての原因なのだ。トランプ独裁金権政治によって、世界経済が混乱に陥っており、これが長引くことになれば、原油高騰の影響は世界経済にますます深く広く波及していくことになる。
ホルムズ海峡と原油等の深刻な問題を解決するのは、とても簡単なことだ。米国がイラン攻撃を止め、中東から米軍が撤収撤退すれば、すべては解決し、イラン攻撃前の正常な姿に戻る。世界的な規模で反トランプ示威を発しなければならず、その意味では中国にも責任がある。わざわざトランプ氏を招いておきながら、世界で今一番肝心なイラン攻撃と原油高騰の問題を真剣に話すべきだったが、適当にお茶を濁しただけである。習近平氏もトランプ氏も共に強権政治家であり、似た者同士なので、覇権主義を完全否定してしまうことはできないからだ。高市氏も強権政治を目指しているので日米中、強弱はあるが考え方は極めて近い。トランプ氏は言うに及ばず高市氏も攻撃的で軍国主義者だ。だから、中国とぶつかるのである。
習近平氏が落ち着いていられるのは原油、石油製品や肥料を入手できるルートを確保できているからだろうか。イランからはこれまで通りに原油を輸入できているのだろうか。
中国は世界最大の原油輸入国であり、年間5.77億トン(2025年)を輸入している。だが、日本のように大半がホルムズ海峡を通過するものではなく、最大の輸入先はロシアで総輸入量の約20%、これにイランとマレーシアを加えると約44%だが、サウジアラビア14%など湾岸諸国は約33%であり、日本とは違い、輸入国を分散させている。
中国の原油備蓄量は約14億バレル(約1.9億トン)であり、湾岸諸国からの原油輸入額(1.9億トン)と一致する。ロシア、イラン、マレーシアからの輸入が順調であれば、備蓄は1年持つことになり、10月には備蓄が尽きる日本とは大いに異なる。
米国がしつこくイランを攻撃し続け、年末でもWTIが100ドル前後で推移するならば、各国の消費者物価(CPI)は今より大幅に上昇するだろう。全般的な物価上昇は消費を冷やし、世界的に景気後退は深刻になる。
総務省『家計調査』(二人以上の世帯)によれば、3月の名目消費支出は前年比1.3%減と2カ月連続のマイナス。勤労者世帯の実収入(世帯主や配偶者等の総収入)と可処分所得はいずれも前年比6.4%増加しているにもかかわらず、勤労者世帯の消費支出は2.1%減少した。可処分所得が増加しても消費が減少することは消費性向が低下していることである。3月の平均消費性向は前年よりも7.2%pの大幅低下となり、これで4カ月連続して前年よりも低下したことになる。平均消費性向の低下は貯蓄性向の上昇であり、勤労者世帯は先行きを慎重にみているようだ。勤労者世帯の消費不振は昨年の暮れ以降だが、無職世帯(二人以上世帯の34.8%を占める)の消費抑制は昨年央以降長期化している。物価が上がって行けば、年金生活者の収入は目減りすると予想され、節約志向を強めているのではないか。
内閣府の『景気ウォッチャー調査』によれば、4月の「景気の現状判断DI」は40.8と2022年2月以来の水準に低下し、消費者心理は慎重になってきている。原油の不安や先行きの物価高見通しが消費者心理にはっきりあらわれてきている。景気の現状判断DIの合計は40.8だが、家計動向関連DIも40.5とほぼ同じだった。が、その中の4項目のうち住宅関連DIは31.5と最も低い。昨年9月の48.1から7カ月で16.6pも急激に低下した。10年債利回りの上昇速度が増してきたことが、建築住宅需要に深刻な影響を及ぼしつつある。2025年度の新設住宅着工戸数は前年比12.9%減の71.1万戸と2000年度以降では最低であり、2006年度の128.5万戸の55。3%の水準まで落ち込んだ。住宅ローン金利が4%、5%に上がれば、住宅の購入を望んでも叶えることはできない。建築物計(床面積)でも前年比11.3%減と4年連続のマイナスとなり、その間の減少率は24.3%に達している。最近の長期金利の上昇は、資金コストの上昇とマンションなどの現在価値を引き下げ、建築部門をさらに不況へと追い込むことになるだろう。
日本の3月のCPIは前年比1.5%と落ち着いている。ガソリンの補助金などの政策効果による引き下げがなくても2.0%ほどである。だが、3月末のWTIは前年比41.8%、4月末80.6%と2月までの前年割れから様変わりしている。3月末、4月末の円ベースのWTIは前年比50.1%、97.6%それぞれ急騰し、円安ドル高によってドルベースよりも一段の上昇をみせている。今のところ政府の補助金でガソリンなどの価格は抑えられているが、WTIの急騰はあらゆる製商品の価格を引き上げ、CPIを補助金で抑えることはできない。WTI上昇後半年ほど経過すればCPIにその影響が及ぶことは経験上明らかなのである。
4月の企業物価指数(日銀)は前年比4.9%と前月よりも2%pも一気に上がった。金属・同製品、石油・石炭・天然ガスなどの輸入製品が大幅に値上がりしており、円ベースの輸入物価指数は前年比17.5%と1月の0.6%から急上昇している。企業物価の上昇は少し時間を置いて、CPIに波及することになるだろう。
4月の米CPIは前年比3.8%と2月までの2%台から4%に近づき、2023年5月以来約3年ぶりの高い伸びとなった。原因は2月には前年比0.5%であったエネルギーが4月、17.9%に上がり、これだけでCPIを1.27%p引き上げた。なかでもガソリンは28.4%も値上がりし、寄与度は1%pとエネルギーの8割近くを占めている。生産者物価指数(PPI)は4月、前年比6.0%とCPIの伸びを上回っており、CPIのさらなる上昇を示唆している。
ユーロ圏の物価も上げ足を速めており、4月のHICPは前年比3.0%と3カ月連続で上昇率は高くなっている。原因は言うまでもなくエネルギーで、2月の-3.1%から4月には10.9%へと跳ね上がり、これだけでHICPを1%p引き上げた。
ホルムズ海峡は世界経済の生殺与奪の権を握っている。原油の供給不足と高騰が続けば、物価高は今よりも高くなることは確実である。過去のオイルショックの時は価格の高騰であり、今回のような供給不足が目前に迫るようなことは起こらなかった。それだけ、もしホルムズ海峡の封鎖が長引けば、日本などは壊滅的となる。
今のところ、CPIの上昇率は日本が欧米よりも低いけれども、消費の伸びはもっとも低い。日本の消費は、実質では3月まで4カ月連続で前年を下回っている。米国の実質個人消費支出は3月、前年比2.1%と2%台を維持しており、消費の基調に大きな変化はない。原油高により物価高が見込まれることから日本の消費者は予めそれに対応できるように準備しているのだろうか。
米国のイラン攻撃が継続するならば、WTIは下がらず、CPIが上昇することは間違いない。今夏以降、日本のCPIは3%を超えることになるだろう。物価の値上がりは年金生活者の生活を苦しめる。年金額が物価上昇に追い付かず、実質目減りするからだ。すでに指摘しておいたが、無職世帯数は二人以上の世帯の34.8%を占めており、その多くは年金生活世帯である。消費のかなりの割合が年金世帯に依存しており、年金世帯の消費不振は日本経済を左右するほどになるだろう。
トランプの一存で、世界経済が振り回される事態をただ傍観するだけの情けない世界に、世界はなり果てた。SNSなどによって、考えや思いは即座に世界へ伝えられるのだが、それを駆使しているのは叩かれなければならないトランプなのだ。
日米欧に限らず、高学歴化が進んでいるが、思想的には無色で、政治・経済への関心は高くない。ただ、SNSでなにかと繋がっていたいのか、スマホを握りしめている時間がながい。だから、トランプの投稿へのアクセスも多いのである。なぜ、トランプへの反論のメッセージを大々的に拡散させ、「米国史上最も腐敗した大統領」(AFP、5月16日)を潰せないのだろうか。