尊王思想一色の自民党と戦争国家アメリカ

投稿者 曽我純, 3月23日 午前9:03, 2026年

「世界中に平和と繁栄をもたらせるのはトランプだけだ」(3月19日)、このような事実に反したことをよくも平気で言えるものだ。高市首相は幻想に浸っているのだろうか。現実は、高市発言とは正反対の「世界中に戦争と破壊をもたらせるのはトランプだけだ」なのだが。ホルムズ海峡封鎖ではイランを非難する。3月22日、G7外相声明はイランに「全ての攻撃の即時かつ無条件中止を要求」した。すべての原因はアメリカとイスラエルにあるのだが、そのことは棚に上げて、アメリカとイスラエルを擁護する。世界の政治は腐りきっている。これではG7などの先進国といわれる国々はBRICS、SCOからそっぽを向かれ、軽蔑されるだけである。

アメリカとイスラエルの暴挙を正当化することになれば、世界中の犯罪は犯罪ではなくなることになる。無法、無秩序状態が世界中に広まることになるだろう。高市首相はそのようなトランプの世界を是認し、日本の改憲、軍事増強に突き進んでいく。

恐ろしい人を首相に選んだものだ。自民党には戦前に回帰したい人が多数を占めている。例えば、『日本会議国会議員懇談会の会員』(高市早苗は副会長)と『神道政治連盟国会議員懇談会』に大半の自民党国会議員は所属している。詰まるところ、彼らは、戦前の天皇中心の社会に戻りたいのだ。そういう意味では、高市早苗は最適の人物だった。

『日本会議』と『神道政治連盟』は現行憲法を否定、首相の靖国神社公式参拝、天皇男系維持、東京裁判の否定、教育勅語の普及などを主張する極右勢力なのだ。自民党国会議員の多数が、このふたつの懇談会に所属していることから判断しても、教育勅語を指針とする高市早苗を総理に選ぶことは当然の帰結であった。

教育勅語は今やほとんどの日本人はその名称さえも知らないはずだ。高市首相が教育勅語に洗脳されていても、何の疑問も抱かない。戦前は小学校で教育勅語を叩き込まれ、天皇崇拝、天皇中心国家観が当たり前のことになり、日本人は日本を神国と信じ込まされていた。子供の柔らかい頭に天皇国家を植え付けられ、上からの言われたことをそのまま受け入れる思考方法を自然に身に付けてしまった。

第2次世界大戦で日本は国土を焦土にされても、なお国体を擁護する懲りない面々が政治の中枢に居座っているのである。『神道政治連盟』はロビー活動に注力しており、特定の政治家を国会に送り込んでいる。神社は全国津々浦々にあり、極めて重要で確実な支持者であり、お布施の一部は政治献金に化けているのだろう。解散させられた統一教会は政治と極めて深く結びついていたが、神社本庁は『神道政治連盟』を使って政治に影響力を行使している。

日本は今も、戦前の天皇主権体制をそのまま引き継いでいると言っても間違いない。大半の自民党国会議員が、これら極右の組織に所属していることをみれば、戦前の政治体制への復帰を目論んでいることがわかる。ドイツやイタリアの第2次大戦の戦争首謀者は排除されたが、日本の天皇はそのまま存続している。無条件降伏で天皇は処罰され、昭和という時代を断ち切らねばならなかったが、それができなかったことが、現在の極右政治家が跋扈している最大の要因だ。自民党を束ねている尊王思想に、大衆は無頓着であることも自民党にとっては好都合なのである。

靖国神社に参拝することはドイツに例えれば、ナチスを敬うことであり、到底容認されることではない。靖国神社への参拝は、中国やアジアに侵略した日本軍国主義を正当な行為として認めることになる。両懇話会に所属している国会議員はポツダム宣言を蔑ろにしているのだ。

なぜ尊王思想に、それほど執着するのだろうか。「天皇」という言葉が使われたのは7世紀末の天武朝のときである。ところが、それ以降、「天皇」が使われることはあまりなく、再び登場してくるのは明治維新前後である(島薗進編、『国家神道と天皇制』、東洋経済新報社、2025年11月)。将軍に養われ、寄生していた天皇は雄藩倒幕派に担がれて君主に、そして君主たらしめるために、水戸学や国学・神道から国体讃美論を広めていった。

1868年(明治元年)、明治政府はまず神仏分離令を発令し、神祇官(祭政一致の理念から太政官より上位に)を再興し、神道国教化を推進。1880年「君が代」、1882年軍人勅諭、1889年大日本帝国憲法発布、1890年教育勅語などなど、明治政府は次々に天皇の威光を前面に押し出す政策を打ち出し、天皇を中心とした国作りに邁進していった。

天皇国家を作り上げることによって、政治家と軍人は政治を思うままに動かすことができたのだ。今もって、極右勢力は天皇主権を復活させることによって、独裁権力を掌握し、トランプのような好き勝手な政治と戦争を実現したいのではないか。不思議なことに、軍人勅諭と教育勅語が失効したのは1948年6月19日であり、戦後もしばらく存続していた。

アメリカが戦争国家になったのは、新大陸に上陸し、フロンティアを開拓、原住民を追い払い国土を開拓する過程で、戦闘・戦争が国に染みついたからではないか。新大陸の開拓が一段落すれば、次は海外への侵攻ということになる。南米からアジアへと戦闘地域は世界へ拡大していった。

だが、今回のイランへの攻撃は、米軍がホルムズ海峡さえ支配できない、という米軍の非力さを露呈したといえる。おそらく、今回の攻撃は米軍の実力を推し量る絶好の機会をロシアや中国に提供したのではないか。

すでに、ウクライナでも実証されていることだが、戦争がドローンに移行し、国力の違いだけでは戦闘能力を推し量れなくなってきた。アメリカのように製造業が衰退した国では、1.15兆ドルの巨額軍事費をもってしても、相手を打ち負かすことはできない。高価な遊撃ミサイルを配備したところで、撃ち落とせないことがあきらかになった。

日本のミサイル配備はアメリカの軍需産業を潤すだけである。中国のドローン生産は世界の7割を占めており、もし日本が中国と戦争状態に陥れば、無数のドローンが中国から飛来し、日本の都市は破壊されるだろう。Ph.D.取得者数や科学論文数を比較しても、日本は中国から引き離されるばかりであり、10年後、20年後の日本は見る影もないのではないか。アメリカに媚びを売る一方、台湾有事発言で中国との関係をぶち壊す。将来を見据えればいずれの国が大事なことくらい、だれでもわかることなのだが、高市首相はわからず、中国を敵視する態度は変えない。高市首相になってから国益は損なわれるばかりである。

G7の殺人発生件数(人口10万人当たり、2023年)をみると、アメリカが5.76件であり、次がカナダの1.98件とアメリカが異常に高く、10年前より悪化している。G7のなかで日本は0.23件と最も低く、イタリアも0.57件と殺人発生件数は低い。中国は0.50件とドイツ0.91件よりも低く、安全な国と言える。一方、ロシアは6.77件、アメリカ以上に殺人が多く、暴力が蔓延っている国なのだ。ただ、10年前に比べれば大幅に改善。ウクライナもロシアやアメリカを下回るものの3.78件とかなり殺人の多い国である。

殺人発生件数からみても、ロシアやアメリカは暴力が蔓延しており、加えて政治権力がトランプとプーチンに集中しているため、戦争に踏み出す可能性が高く、事実、両国とも侵攻中である。両国は膨大な核兵器を保有しており、この核を背景に戦争を仕掛けていく。最後は核で脅し決着をつける算段なのだ。

イランは核兵器を保有しておらず、核兵器を製造もしていない。一方、イスラエルは核拡散防止条約に未加盟であり、核兵器を保有している。イランの核施設よりもむしろイスラエルの核兵器を問題にしなければならないのだが、アメリカとイスラエルはイランの核施設を攻撃するという暴挙に出た。イラクのときも大量破壊兵器を保有しているという大義を掲げ米軍が攻撃したが、そのような危険兵器はどこにもなかった。

適当な大義を持ち出し、憶測で攻撃するアメリカの行動を容認することは、これからも同じことが繰り返されることになる。国連が機能せず、リーダー不在の世界では「万人の万人に対する戦争が絶えない」(トマス・ホッブズ、リヴァイアサン)ことになる。「戦争の本質は、実際の戦闘行為にあるのではない。平和に向かう保証のないまま長期間にわたって戦闘が繰り返し起こる傾向が知られているならば、そこに戦争の本質があるのだ。それ以外のすべての時期を平和という」(同上)。

Author(s)