舞い上がった株式と過少消費・過剰貯蓄

投稿者 曽我純, 2月16日 午前9:08, 2026年

先週末の日経平均株価は昨年末比13.1%も値上がりしている。自民党が圧勝したことから先週だけで5.0%高くなり、日本株はまさにユーフォリア状態にある。ナスダック総合の昨年末比3.0%減とは対照的だ。日本株の上昇を上回っているのは金(16.2%)くらいしかない。外人のほか事業法人が大幅に買い越しており、相場を持ち上げている。高市首相の人気や「強い経済」という言葉に乗って買い進んでいるが、どこまでもつのだろうか。

高市人気が持続する限り上昇は途切れないのだろうか。が、高い人気を持続することは難しい。今回の投票行動はアイドルへの入れ込みと同じようなものであり、人気が人気を呼び、株式もその人気に追随しているのだ。有権者は政治を託す人にも人気歌手に熱を上げることと同じように振舞っており、公約や政策などとは無関係に投票したようだ。

強い経済、豊かな日本など言葉では、いかようにも言える。今までも同じようなフレーズを幾度となく発してきたが、現実はほとんど変わらず、言葉が躍っただけである。過去のことは忘れてしまい、今、少し心を掴むような言葉を素直に受け入れてしまう。もちろん、これからどうなるかが一番大事なことなのだが、過去数十年の経済を振り返ってみれば、どのようにながめてみても、日本経済を良い方向に舵を切ってきたとはいえない。歴代の船長は日本経済を見る目がなく、間違った針路を正常な針路に戻すことができずに、ただ徒に過去の政策をくりかえしているだけだ。

日本経済が間違った針路を辿っているにもかかわらず、株式は熱狂相場と言える最中にあるのだ。このバブル化した日本株にはマスコミもエコノミストもだんまりを決め込み、少しも触れない。上がれば上がるほど彼らの懐も潤うのだろう。

1980年代末のバブル期よりも売買回転率は高く、出来高は異常なほど膨らんでいる。この異例の株高現象にだれも言及しない、言及したいのだが、黙認し、つまらぬ事を取り上げる。言論の自由というけれども、会社や社会を忖度し、口をつぐむ。これでは自ら言論を封印していることになる。言論の封殺さらに取り締まりの強化へと進んでいくのだろう。その間、日本はどんどんさびれ、衰退していくことになる。

なぜ、1980年代後半の40年前の浮かれた株式と不動産を思い起こさないのだろうか。また同じような破綻が起こる可能性は高くなってきている。今は当時よりも経済状態が相当劣化しているため、暴落が起きれば、日本経済は1990年代よりも一層深刻になるだろう。元の状態に戻すことはできず、超高齢化の経済は立ち行かなくなる。

経済が奈落の底に落ちた時、だれが手を差し伸べてくれるのだろうか。だれも助けてはくれない。どの国も自国のことで手いっぱいである。世界で戦争が終わらず、混沌としているときに、株式や不動産の崩落による大不況の始末をせねばならないのだ。仮想敵国を作り、危険だというけれども、爆弾は国内にいくつもある。そのひとつが株式と不動産なのだ。株式と不動産の瓦解により、日本経済が今よりもさらに衰弱することを防ぐことが喫緊の課題ではないか。

安全保障関連3文書改定やスパイ防止法の制定、さらに憲法改正など戦前に舞い戻る制度を目指しているが、軍国主義に復位することはポツダム宣言で禁じられている。ポツダム宣言が依然効力を有していることが、日本国憲法からも読み取ることができる。高市首相はポツダム宣言に目を通しているのだろうか。さらに、日米合同委員会によって、米国(米軍)支配下にあることが、憲法改正に安易に踏み込む余地を奪っているとも考えられる。いずれにしても戦前の暗黒時代に戻るようなことに注力することこそ、日本をうらぶれた国にすることを思い起こさねばならぬ。そのような時代錯誤の考えに取りつかれるのではなく、現実の危機的な株式と不動産を軟着陸させることに着手しなければならない。

日本経済の成長力が弱いのは過少消費・過剰貯蓄という家計行動に原因がある。賃金が伸びない、先行きもそうだという見通しが根付いているから財布の紐は緩まない。こうした賃金への期待が家計の消費行動を決めている。高齢化を目の当たりにすれば、将来への蓄えが焦眉の急なのだ。だからよほど賃金の伸びが高くなり、先行きの賃金も楽観できる状況にならない限り、おいそれとはこれまでの消費態度を変えることはない。

GDP統計によれば、2024年の民間最終消費支出(名目)のGDPに占める割合は53.1%である。新型コロナで景気が落ち込んだ2020年、2021年を除けば2000年(52.7%)以来の低い比率である。1994年以降で民間最終消費支出の割合がもっとも高かったのは2013年の57.4%であり、2022年には54.5%に上昇したものの、その後2年連続で低下した。賃上げを喧しく叫んでも、民間最終消費支出はさっぱりだめなのだ。消費性向が低下するのは、民間最終消費支出がGDPの伸びを下回っているからだ。

民間最終消費支出の伸びが低いことは、より多く貯蓄していることでもある。貯蓄と投資の関係から貯蓄>投資になれば、GDPは縮小することになる。投資以外で過剰貯蓄を使うには政府支出か純輸出しかない。かつて純輸出は10兆円を超えていたが、2019年以降赤字に転落し、成長にマイナスに働いている。そうなれば経済を支えるのは公的支出しかない。国債を発行して超過貯蓄を吸収し、国がお金を使う方法しかないのだ。GDPに占める公的支出は2024年、25.1%であり、2020年の26.0%からは低下しているけれども、25.1%は新型コロナ期を除けば、1994年以降では見られない。公的部門が支出しなければ日本経済はさらに酷い大不況に陥っていたことだろう。

民間最終消費支出がこれからも低空飛行を続けていくならば、政府支出に頼らざるを得ない。公的支出依存から抜け出すには賃金の増加と増加期待のいずれもが欠かせない。『毎月勤労統計』によれば、2025年の現金給与総額は名目前年比2.3%と0.5%p前年よりも低下し、実質では1.3%減とマイナス幅は拡大した。賃金動向からは「弱い経済」しかみえてこない。

日本のGDP構成比に似ている国は、同じ直系家族のドイツだ。GDP(2025年)に占める家計最終消費支出の割合は53.1%と日本と同じ。設備投資も21.9%、0.9%p低いだけで、政府支出は22.5%、2.6%p低く、純輸出は2.5%と日本よりも4.0%pも高く、一番の違いは純輸出だと言える。

ドイツ経済の強みは純輸出であり、2015年にはGDPの7.4%を占めていた。輸出がドイツ経済を牽引していたのだ。だが、2015年の7.4%をピーク低下しており、それでも2021年までは5.0%を超えていたが、今は2.5%である。ドイツは家計の消費不足を政府と純輸出で補いながら成長している国なのである。

2000から2025年の25年間でドイツの名目GDPは2.1倍になったが、純輸出は31.2倍に拡大した。2002年1月、欧州単一通貨ユーロが12カ国で流通してから、ドイツの輸出は急増し、純輸出も拡大の一途をたどった。ユーロとドイツマルクの換算率がドイツマルク安に決められ、加えて東欧諸国がドイツ経済に組み込まれたことが、ドイツの輸出を加速させた。

イギリスは個人消費が名目GDPの74.5%(2024年)を占めており、イギリス経済の成長は個人消費でほぼ決まる。設備投資比率は19.1%と日独よりも低く、政府支出にいたっては7.2%にすぎない。純輸出は-0.9%とやや成長の足を引っ張っている。

米国も個人消費支出がGDPの67.9%(2024年)を占め、消費が経済を決める経済構造になっている。政府支出は18.0%であり、日本やドイツを下回り、設備投資も17.2%にとどまる。核家族構造で個人主義の色彩が濃いアングロサクソンは消費意欲が旺盛である。将来よりも今を豊かにし楽しみたいという気持ちが強いからである。高い消費性向は設備投資比率を引き下げ、そうでない国に比べて資本蓄積は進まず、製造業は弱体化する。

GDPに占める消費比率によってその国の経済構造は大きく変わる。経済の成長力を高めたいならば、日本の消費比率は引き上げる必要がある。2024年までの30年間の名目GDPの伸びがトップは米国の4.02倍、2番目はイギリス3.54倍、3番目はドイツ2.35倍で、びりは日本1.21倍である。それにしても日本の経済成長はあまりにも低いではないか。高市政権で日本の経済を強くすることができるだろうか。

Author(s)