なぜ物価が最優先課題なのか

投稿者 曽我純, 1月26日 午前8:59, 2026年

自民党などは物価対策を最優先課題に掲げているが、昨年12月のCPI(消費者物価指数)は前年比2.1%と前月よりも0.8%pも低下し、2024年1月以来約2年ぶりの低い伸びとなった。しかも、上昇した要因をみると食料だけで1.49%p引き上げており、これを除けば0.61%になる。食料のうち生鮮食品は-2.7%とマイナスになったけれども、生鮮食品を除くは低下しつつも6.7%と依然高く、これだけでCPIを1.62%p引き上げた。物価が問題なのは生鮮食品を除く食料だけだと言える。なかでも米など穀類の高騰が収まらず、これだけで0.38%p、さらに菓子類、調理食品、外食を加えるとこれら4品目だけで1.02%p寄与している。米の用途は広く、米の値段が下がれば菓子類、調理食品、外食なども下がり、CPIは大幅に低下し、落ち着くだろう。加工されればされるほどモノの値段は上がるので、できる限り元の素材やそれに近い食物を購入することが、食料高のときには大事な消費行動となる。

昨年12月の米類の価格は前年比34.4%と昨年5月の101.7%をピークに7カ月連続で鈍化している。米類の指数は221.9(2020年=100)と前月比では低下、前月を下回るのは2023年4月以来2年8カ月ぶりであり、米の価格はほぼピークに達したのではないか。年央頃には米価格の上昇率は数%程度に低下し、CPIは1%前後に鈍化する見通しだ。そうなれば、今度は物価高ではなく物価安が問題となるだろう。

食料高の伸びを止めるには、食料の消費税廃止は有効だが、食料の消費税が廃止される前にすでに物価は問題ではなくなっているはずだ。とはいえ、消費税はすべて廃止すべきだ。そうすれば消費は息を吹き返すだろう。消費税廃止による税収不足は所得税、法人税を1980年代前半の税率に戻し、金融課税を所得税と合算して課税すれば消費税がゼロでも税収は確保できる。軍事費は対GDP1%に戻すべきだ。

暴力国家の米国の言いなりになり、軍備を増強すれば、攻撃される可能性は高まり、日本にプラス面はまったくない。日本が攻撃されても米国が助けてくれるわけがない。核の傘など妄言であり、「トランプの再登場によって「核の傘」は名実ともに崩壊した」(豊下楢彦、『核抑止論の虚構』)のである。

今、最優先すべき課題は物価ではなく人口減である。昨年8月1日現在、日本人人口は1億1958万人、前年比93.5万人減少しているが、すぐに100万人減となる。10年間で1千万人も減るのだ。日本人人口減を補うために368万人の外人が加わっており、2020年比94万人増(日本人人口は同期間381万人減)。これだけ外人を入れなければ、われわれの生活は成り立たない国になっている。日本人人口減を外国人が補っているが、それでも大幅な人口減に直面している。他国から攻撃されなくても、日本は人口減という内部攻撃を受けているのだ。

物価を最優先課題にするのであれば、不動産や株価はどうなのか。日本不動産研究所によれば、昨年10月の東京都の既存マンションは前年比16.8%、1994年7月以来約31年ぶりの高値であり、また、不動産経済研究所によると、昨年11月の東京23区の新築マンションは12,420万円、前年比14.1%も上昇している。株価は過去最高を更新するという天井知らずの勢いだが、これらの資産はいくら上昇しても問題ないのだろうか。CPIはたかが2.1%で大騒ぎするのだが、不動産や株式の2桁高については触れられず、不問に付している。

なぜ、これほど不動産と株式が上がったのか、といえば日銀のゼロ、マイナス金利、株式買い等のめちゃくちゃな金融政策によって不動産と株式に資金が流れ込んだからである。カネの流れをある程度制御する金利をなくして金が流れやすくするようにした。だが、どれほど金利の障害を取り払ってもカネは実体経済には流れず、もっぱら向かったのは不動産と株式であった。

こうしたカネの流れから明らかになったことは、金利はCPIには効かず、不動産と株式にはすこぶる良く効くということだ。他の事情が変わらず、金利がゼロになっても、需要側にとっては需要したい気持ちにさせることはない。金利の変動で需要を拡大したり縮小したりする喚起機能はないのである。一方、金利がゼロになれば、購入(借入)コストが大幅に低下するため、不動産や株式を購入しやすくなる。

しかも政府は不動産や株式にプロだけでなく大衆をも誘い込むために、さまざまな税制面での優遇措置を整え、金融制度改革を行った。今までは株式など無関心であった人たちも相当株式に流れ込んできたようだ。いつものことだが、大衆が株式に押し寄せてきた辺りが、相場のピークに当たるのだが、今回もまた歴史の繰り返しになるのだろう。そもそも実体経済が千鳥足の状態のままでありながら、不動産と株式だけがどんどん値上がりすることは、理屈以前の問題であり、常識から判断してもおかしいではないか。

株式は経済の一部門だが、経済あるいは国家が株式の動きに関心を寄せ、腫れ物に触るほど気に掛けるようになっている。国家=株式あるいは国家<株式という関係さえ成立し、株式が国家を支配しているようだ。というのも、昨年9月末、日本の株式価額は1,896兆円(非上場を含む、日銀)、名目GDP(665兆円、内閣府)の2.85倍の規模だからだ。国家経済の規模をはるかに上回り、株式の変動によっては、国は思いもよらぬ影響を被ることになりかねない。株式はまさにリヴァイアサンと化し、株式専制国家とでも呼べるような国になってしまった。

米国の場合はさらに株式専制国家に突き進んでいる。昨年9月末の株式価額108.4兆ドル(FRB)に対して名目GDPは31.0兆ドル(昨年第3四半期、BEA)であり、株式はGDPの3.48倍の規模だからだ。米国ではトップ1%が富の34.8%(2024年)を保有しているが、例えば、株式も同様の割合を所有しているとすれば、その額は37.7兆ドルとなる。さらにトップ0.1%でも14.4%、15.6兆ドル保有しているのだ。トップ1%の世帯数は約14万世帯、一世帯当たり172億円もの巨額株式を所有していることになる。おそらく不動産よりも株式の割合が高いので15.6兆ドルを上回っているだろう。イーロン・マスクの資産だけで7490億ドル、米長者番付のトップ5位までに1.68兆ドルの資産(大半が株式)が集中している超資産格差の国なのである。

0.1%の米大富豪は政治権力の中枢を掌握しており、米国政治を動かしている。米国は民主主義ではなく大富豪による専制国家なのだ。だから、株式を支配している大富豪、しかも政治権力をも握っているため、株式至上主義を貫くのは当然のことなのである。政府は株式の動向を常に注視しており、大富豪の資産を目減りさせないように細心の注意を払っている。

日本経済がCPIで壊されることはないが、舞い上がっている不動産や株式が暴落すればただでは済まないことになる。すでに正常な水準に低下しているCPIをさも大問題であるかのように論じることは馬鹿げている。次から次へ、いついちゃもんや難癖を吹っ掛けてくるかわからないトランプにどう向き合うか、このことが喫緊の課題ではないか。

「デンマークは、長い間、アメリカ諜報機関の付属機関のように振る舞ってきた。この国はアンゲラ・メルケルの電話の盗聴にも関与していたのである。NSAと協力して、コペンハーゲンの東にある小さな島にデータの収集保管センターが建設されたが、これはロシアよりもむしろ西洋の同盟国をスパイするためだ」(エマニュエル・トッド、『西洋の敗北』)。「ファイブ・アイズ」と同じように親密なデンマークにごり押しするトランプだから、日本へ何を押し付けるかわかったものではない。

イランに対してはイラン・リヤル通貨を暴落させ、イラン経済を破壊し、国内を混乱に陥れた。確証はないけれども、米財務長官スコット・ベッセントのキャリアをみれば、リヤル介入の確度はかなり高いのでは。彼はイェール大学(政治学)卒業後、ブラウン・ブラザーズ・ハリマン(米国最古の投資銀行、ロスチャイルド、ジョージ・ブッシュ、ジェイムズ・ベーカーなどと結び付いている)等に勤めたが、ソロス・ファンド・マネジメント(1991年~2000年、ロンドン事務所パートナー)に入り、その後、自身のヘッジファンドを立ち上げる。だが、再びソロスに戻る。

1992年9月、ジョージ・ソロスはポンド売りを仕掛け、ポンド危機に陥れた中心人物として有名だが、その時、ベッセントはロンドンに駐在しており、ポンド売りの実行役だったのだろう。ポンドを暴落させたのだから、イラン・リヤルを破壊し、紙切れにすることなど朝飯前かも。対ドルでイラン・リヤルを95%も減価させ通貨の崩落がおこれば、軍事行動を上回る破壊力となる。他の国への見せしめかもしれない。米国内での反トランプ運動が全米に広がることを願う。

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