高齢化率は長期的に上昇していき、2035年32.1%、2045年36.4%、2055年38.3%と予測されている(国立社会保障・人口問題研究所、出生低位死亡高位)。一方、生産年齢人口の割合は2025年の59.7%から2035年59.0%、2045年54.8%、2055年53.5%へと低下していき、2055年の生産年齢人口は5,064.8万人、2025年よりも2,289万人減少する見通しだ。65歳以上の人口を生産年齢人口で割った値は2025年0.492、生産年齢人口一人が約二人の高齢者に対応していたが、30年後の2055年には0.714に上昇する予測であり、生産年齢人口の負担はさらに大きくなる。
2055年までの30年間で総人口は2,864万人減少し、生産年齢人口はその8割に当たる2,289万人減だが、高齢者人口はほぼ横ばいである。人口減少過程における高齢者人口の増加は、日本経済の道筋を決定する最大の要因である。30年、50年先を見据えた経済の制度設計をしていくことが、一番大事な施策なのだが、今の目先のことに捕らわれた政策では、日本の経済的劣化は止まることはないだろう。
総務省の『労働力調査』により2013年から2024年までの年齢階級(10歳階級)別雇用にどのような変化があったかをみてみよう。この11年間に雇用(役員を除く)は10.7%増加した。25~34歳と35~44歳の年齢階級は3.5%、10.7%それぞれ減少した半面、65歳~74歳、75歳以上は77.4%、284.6%も急増している。25歳~44歳の総雇用に占める比率を落とす半面、65歳以上は約倍増し、比率は9.7%に上昇した。75歳以上は26万人から100万人へと急増。雇用に占める15歳から54歳までの階級は2013年の77.8%から2024年には72.1%へと低下した。
65歳以上の雇用形態は非正規が2024年、76.9%を占めているが、15~24歳も52.0%と雇用の半分を超えている。25歳~34歳21.5%、35歳~44歳26.4%と20%台だが、45歳~54歳30.0%、55歳~64歳43.1%へと跳ね上がる。年齢が高くなるにつれて非正規雇用の割合が上昇しているが、あまりにも酷い雇用の仕方ではないか。雇用はするけれども、非正規で雇用し、賃金を大幅に削減する。それで利益を出す仕組みなのだ。賃金がダウンすれば、当然、労働意欲は低下するだろう。こうした雇用形態と賃金カットが日本経済を凍り付かせているのだ。
生産年齢人口減と高齢者増が持続していけば、雇用の高齢化はより進行していくことになる。年を重ねれば、身体的能力は確実に低下していく。若者が簡単にできることが高齢者には時間が掛かり、できなくなることも起こる。動きや判断が思うようにできず、仕事がはかどらなくなる。高齢者雇用の割合が高くなればなるほど雇用増と同じようには生産の付加価値は増加しない。
2013年から2024年までの13年間で雇用は558万人増加したが、男の144万人増に対して女は414万人増と増加分の74.2%は女だった。同期間、男は5%増加したが、正規は3.2%にとどまり、非正規は11.6%増加し、正規を上回った。一方、同期間、女の雇用は正規26.1%、非正規11.2%と正規のほうが伸びたが、それでも非正規比率は52.6%と半分以上が依然非正規雇用なのである。
『国民所得統計』の経済活動別雇用者数によれば、1994年から2023年までの29年間の雇用増加数は749万人、年率0.45%で増加した。製造業(264万人減)、建設業(177万人減)に加え、意外だが金融・保険(43万人減)も減少している。749万人増のうちなんとその76%に当たる570万人は「保健衛生・社会事業」による。「専門・科学技術、業務支援サービス」も約2倍の337万人増加しているが、「保健衛生・社会事業」は伸び率でも2.8倍と抜きんでている。
国立社会保障・人口問題研究所の人口推計に基づけば(これは相当高い確度で起こり得る)、高齢化率は高まり続ける。そうであれば、雇用が求められる最大の分野は「保健衛生・社会事業」部門なのである。2023年までの29年間で当該部門雇用は年率2%で増加してきた。年率2%増で12年後の2035年の当部門雇用を試算すると1,127万人となる。2023年(889万人)よりも238万人の追加雇用が必要になるのだ。2011年から2023年までの増加数223万人に近い数字であり、少なくとも200万人超の雇用が当部門には欠かせない。2025年から2035年の間に、生産年齢人口は641万人減少するなかで200万人超の人を「保健衛生・社会事業」部門に投入しなければならないのである。
人口減に伴い、日本の総需要は減少し、生産やサービス部門での雇用はほとんど伸びないはずだ。2023年までの29年間の雇用は14%増加したが、雇用から「保健衛生・社会事業」部門の雇用を除いた雇用は29年間でたったの3.6%増なのである。これからの10年間で約1千万人の人口減に見舞われることを考えれば、雇用の需給は緩むのではないだろうか。経済規模は縮小し、超高齢化などから生産性も低下していくだろう。
円ドル相場はしきりに金利の動向を気にしているが、0.25%の上げ下げでなにが変わるのだろうか。金融経済に影響が出るくらいで、実体経済にはなにの関係もない。円ドル相場を決定するのは国の経済力と政治力だ。どちらも、今の日本にはない。これまで述べたことを前提にすれば、日本円はじわじわと売られていくだろう。
GDP(名目、ドル建て)の日米比較(米国・日本比)をみると、1960年には米国は日本のGDPを11倍も上回っていたが、高度成長により1987年には2倍を下回り、1995年には1.37倍まで縮小した。だが、バブル崩壊が深刻さを増すにつれて、また米国が優勢になり、2006年には3倍に拡大、リーマンショックで縮小したものの、その後、格差拡大が顕著になり、2024年には7.24倍に広がった。2012年以降の円安ドル高は、こうした日米の著しく開いた経済格差を反映した結果だと言える。
日中のGDPは日本が2009年までは中国を上回っていたが、2010年に逆転されてからは離される一方で、2024年には4.65倍に格差は拡大している。このまま日本経済が停滞し続ければ、10年後の中国経済は日本の7倍以上の規模になるのではないか。
米中のGDPは接近しつつある。1987年の米GDPは中国を17.7倍も引き離していたが、開放改革や市場経済の導入、さらに2001年のWTO加盟によって経済成長が加速し、2012年には1.87倍まで米中のGDP格差は縮小、2021年には1.3倍へと米GDPに近づいた。
政府と日銀は円安ドル高を誘導したが、通貨が弱くなることの重大性を理解していないからだ。短期的な視点だけで経済金融政策を運営していけば、日本は窮地に陥ることになる。円安ドル高は、日本人にとってはモノの値段が上がり、買いにくくなるけれども、外国人にとっては安くなり、買いやすくなる。円安ドル高がさらに進行すれば、外国人の購買力はますます強くなり、日本経済は外国人の需要に依存しなければ成り立たなくなる経済になる。
米国や中国に、日本はGDPでこれだけ引き離されていることに無頓着とは、依然、日本人は「井の中の蛙」なのだ。