10月10日、公明党の斉藤鉄夫代表は自民党の高市総裁(1961年生まれ)に連立離脱を告げた。今まで、自民党とよくも一緒にやってこれたものだ。政治とカネの関係は自民党にとっては切っても切れない、この関係がなければ存続できないほど大事なことなのだ。政治=カネなのであるから、カネが十分に満たされなければ自民党は成り立たないことになる。カネが不足すれば選挙に勝てないだけでなく、自民党はカネで繋がっているので、カネの供給が少なくなれば、それだけで自民党組織はバラバラになる。カネがたくさんあるところに議員は集まり、カネで党員が結びついているのだ。そこを突かれたのでは、高市総裁もどうすることもできない。連立か党存亡のどちらを取るかと言われれば、党存続を取るしかないのである。
高市総裁は総裁選に勝つためにあまりにも大きな代償を払う羽目になった。票の欲しさに麻生太郎(1940年生まれ)のシナリオに乗ったが、結局、麻生に党運営のほとんどを握られてしまった。麻生は副総裁のポストを手に入れ、幹事長には義弟の元財務大臣鈴木俊一を担ぎ、総務会長に有村治子と麻生派で固め、自民党はまさに麻生党といった所帯になった。
しかも、5日、高市総裁は国民民主党の玉木代表にひそかに会い、6日には麻生太郎は国民民主の榛葉賀津也幹事長と会うなど、国民民主党との連携を模索、さらに萩生田光一幹事長代行などの人事によって、公明党も堪忍袋の緒が切れた。
玉木代表の選挙区(香川2区)は大平正芳元首相の地盤であり、大平元首相は宏池会の三代会長であった。麻生副総裁は元宏池会に所属しており、玉木代表との共通項があり、連立を打診しているようだ。
国民民主党の支持基盤は連合だが、連合の「税制改革構想」(2025年6月)によると「消費税」は段階的に引き上げる一方、「法人実効税率」は段階的に引き下げると言う。これをみると経団連の構想ではないかと見紛う。労働組合であれば「消費税」は段階的に引き下げ、「法人実効税率」は段階的に引き上げるように提言すべきだ。これでは連合の政策は自民党よりも企業よりではないか。こうした連合の政策が推し進められれば、所得・資産格差はますます拡大することになるだろう。立憲民主党や国民民主党は連合を支持基盤としているが、これでは立憲民主党は手足を縛られていることになる。労働貴族の連合は野党勢力を潰そうとしているのだ。
連合と自民党が同じであることを見抜いて、麻生副総裁は国民民主党を連立に引きずり込もうとしているのかもしれない。連立を組むことになれば、閣僚のポストを与えるという餌で釣っているのかも。野党の大半はもはや自民党と大きな違いはなく、イデオロギーでさえも似たり寄ったりだ。
宏池会を立ち上げた池田勇人は宮沢喜一、岸田文雄の父岸田文武や竹下登、金丸信、さらに田中角栄の遠姻にあたる。麻生副総裁は吉田茂の孫だが、家系を遡れば、大久保利通に辿り着き、こうした深く広い姻戚関係を駆使して政治活動をしているように思う。鈴木俊一は義弟だがその妻敦子は宮沢喜一、宮沢弘(妻は岸田文武の妹)のいとこに当たる。麻生副総裁はカトリックだが、末妹が宮家に嫁いでいる。今も麻生副総理は閨閥にものを言わせて、自民党だけでなく日本の政治を支配しようとしている。
2024年10月の衆議院選挙で自民党は191議席、公明党は24議席となり、56、8議席のそれぞれ大幅減となったが、今年7月の参議院選でも自民101議席、公明21議席、選挙前から18、6議席減らし、自公の減少傾向は続いている。公明党の今年7月の参議院選比例得票数は521万票(参政党742.5万票)と前回よりも97.1万票減、2004年のピーク862万票に比べれば4割減なのだ。自民党は1,280万票、前回比545万票減少、減少率では自民の-29.8%に対して公明-15.7%と自民の落ち込みは急激である(維新は-44.2%と自民よりもさらに酷い)。
自民と公明を合わせた得票数は総数の33.44%にすぎず、これで政権を運営できるのは選挙制度として大いに問題があると言うことだ。一票の格差などやる気になればすぐにできることだが、自己保身のためにやろうとしない。民主主義が機能しないように自民党が一票の格差是正を阻んでいる。
自公の連立船に乗っていれば、自民に引きずられて、公明もさらに危うくなるという危機感が募ってくるのは至極当然のことだ。高齢化による創価学会員の減少や池田大作の死(2023年11月)等々、連立だけが禍の元になっているわけではないが、自民党の政策に多少の影響を与えたけれども、憲法第9条を踏み躙る集団的自衛権、軍事費拡大等の容認など平和とは掛け離れた政策に同調してきたことも、持続的な衰退を招いたと考えられる。
安易に連立を組み、それに乗っかってきた付が一気に噴き出したのだ。社会のなにが問題なのかという基本的政治姿勢が連立によって保たれなくなった。政党であるからには、短期、中長期の問題はなにか、それにいかに答えを出していけるかを明らかにしなければならない。常日頃、社会に問題とその解決の道筋を訴えていくのが政党なのである。
自公連立政権は問題にしなければならない問題を問題にせず、問題にしてもその答えの出し方は間違っている。問題の内部まで深く探り、答えを出す方法に辿り着けないでいる。企業を支持基盤としていれば、企業に悪影響を与えるような政策は最初から取り除かれる。特定の集団に依存すればするほど政策の自由度がなくなる。大多数の庶民に基づいた政党でなければ自由な発想は生まれてこない。創価学会だけに依存しているようでは、公明党の先は暗くなるばかりだ。長期衰退基調にありながら、何の手も打たず、連立でのほほんと活動してきた結果なのだ。
宗教政党やカルト的な政党は消滅してもらいたい。歴史を広く深く探求して、健全な叡智に培われた政党が生まれ育っていくようにならなければ、日本の政治はいつまでも衆愚政治から抜け出すことはできまい。