日本企業を代表するトヨタが8日、2013年度の決算を発表した。売上高は前年比16.4%の25.6兆円、営業利益は2.29兆円、73.5%も伸び、営業利益は2007年度以来6期ぶりに過去最高を更新した(売上高は2007年度を下回る)。2012年9月を底に円安ドル高が進行するとともに、トヨタの株価も上昇に転じ、日銀の大規模な債券購入政策導入後の2013年5月には6,760円まで急騰した。だが、2013年末まで5月の高値を抜けずほぼ横ばい推移していたが、今年に入り弱含みとなっている(先週末終値5,561円)。
日経平均株価は昨年末まで上昇していたが、トヨタはその約7ヵ月前にピークアウトしたのである。トヨタは日銀の債券購入拡大策による急速な円安ドル高で一気に舞い上がってしまったのだ。だから昨年末の円安ドル高局面での反応は弱く、買いは持続しなかった。その後、円安ドル高が頭打ちになってくると、徐々に売りが優勢になり、値が保てなくなった。
為替による利益押し上げ効果が一巡することになり、これからは棚から牡丹餅のような利益は期待できない。消費税率引き上げによる駆け込み需要の反動減が、トヨタの予想(売上高、営業利益ともに前期並み)よりも悪化させるだろう。そもそも前期の営業利益増加額9,713億円のうち9,000億円は為替によるものであり、円安ドル高、円安ユーロ高が進行しなければ、2013年度の営業利益は2012年度並みとなっていた。
トヨタの業績を四半期別にみると、今年1-3月期の営業利益(4,361億円)は前年比13.2%減少している。減益は5四半期ぶりである。2013年4-6月期の営業利益は6,633億円と1-3月期に比べても5割以上多いことから、すでに減少している国内販売を考慮すれば4-6月期の営業利益がこれを上回ることは不可能である。
トヨタの営業利益伸び率が昨年10-12月期にピークを付け、鈍化していることが、昨年12月末をピークとする日経平均株価の値下がりを象徴していると思う。金額では昨年4-6月期の営業利益が最大であり、減少傾向にある。
景気先行指数は今年1月をピークに2ヵ月連続で低下、ディフュージョンインデックスの先行は3月、ゼロ%となり、景気は急速に冷えていくことを示唆している。景気先行指数は月では今年1月がピークだが、四半期では昨年10-12月期がピークになりそうだ。日経平均株価と景気先行指数の動きはほぼ一致していることが、経験則からあきらかであり、今回の株価下落を裏付けている。
前回消費税率を引き上げた1997年4月以降の新車販売台数(乗用車)は1997年度で13.6%減少している。1998年度も1.1%減と2年連続の前年割れとなっており、今回も相当新車需要は低迷するだろう。トヨタの国内販売台数は今年度、前年比6.6%減の221万台と予想し、1997年度の減少率の半分程度とみているが、楽観的ではないか。
自動車の関連分野は鉄から電子部品まで広範囲におよび、経済全体に与える影響は大きい。それにしてもトヨタの日本経済におよぼす影響は大きい。2012年度の大企業製造業(資本金10億円以上)の売上高は224兆円だが、トヨタはその約1割、営業利益では約2割を占めているからだ。
2013年度のトヨタの好業績は自力で作り出したものではなく、円安ドル高と駆け込み需要という他力の結果である。こうした要因が出尽くしてしまえば、企業の本当の力が問われる。
日本と米国がゼロ金利、ユーロ圏もほぼゼロといった歴史的金利体系で車などの耐久財の需要は伸びているが、米国では来春頃には政策金利が引き上げられ、名目経済成長率に近い2%~3%程度までは速やかに引き上げられるのではないだろうか。政策金利の上昇は貸し出し金利を引上げ、借り手の資金コストの上昇から需要を抑制することになる。当然、オートローンや住宅ローンの金利も上がり、米国でもいまのように車は売れなくなる。
トヨタも昨年度は185.4万台輸出し、これで巨額の利益を計上できたけれども、米国が政策金利の引上げに動けば、相当のダメージを受けることになるだろう。国内販売は低迷が続くことから、海外生産・販売の収益力の向上によってのみ業績拡大は図られるのだと思う。