超過貯蓄と財政赤字

投稿者 曽我純, 5月20日 午前9:12, 2019年

3月の景気先行指数は前年比-3.8%と昨年6月から10ヵ月連続のマイナスだ。一致指数も-3.6%と昨年11月以降5ヵ月連続減だが、昨年8月、9月も前年割れしていたことから判断すれば、昨夏以降、景気は悪化しつつあると言ってかまわないだろう。やはり、トランプ大統領が仕掛けた1弾、2弾の米国の対中関税引き上げが日本経済に悪影響を及ぼしているのだ。中国の製造業の減速によって対中輸出の不振が製造業にあらわれている。すでに第3弾が発動されたが、さらに第4弾もということになれば、間違いなく、日本経済は景気後退に陥るだろう。

今年3月の鉱工業生産指数は前年比-4.6%と2ヵ月連続のマイナスとなり、第1四半期も1.8%減少した。出荷指数は3月まで4ヵ月連続の前年割れとなり、需要の低迷を窺うことができる。景気に敏感な資本財指数(輸送機械除く)は生産、出荷ともに前年を9.0%も下回り、4ヵ月連続のマイナスである。一方、在庫率指数は前年比9.3%増と意図しない在庫が積み上がりつつあるといったところか。

工作機械受注は外需に遅れて内需も減少率が大きくなっており、日本の製造業も設備投資を控える動きを強めている。4月の内需は前年比27.9%と2月以降3割弱の大幅な減少だ。米中の通商関係が混沌としてきたことから、企業の設備投資マインドはさらに慎重さを増すだろう。

第3次産業活動指数も3月、前年比0.7%と伸びは鈍化しており、サービス関連の足取りも重くなってきている。日本経済はさまざまな問題を抱えており、体調はもともと健康と言える状態ではなかったので、風当たりがすこし強くなるだけで、体調を崩すことになる。

米中という人口だけでも17億人をこえる大国が貿易で争う。日本などこれに巻き込まれると呑み込まれてしまうかもしれない。外需依存型経済であるがゆえに、海外要因にはめっぽう弱く、すぐによちよちしてしまう。65歳以上が総人口の28%を占める高齢者国家だからバランス感覚も衰えており、足元がすぐにふらつくのかもしれない。

高齢者になれば、景気がいい悪いなど眼中にないのではないか。日々生きることそれ自体がやっと成り立っているのだから、景気のぶれなどには関心ないのだと思う。また、景気が悪くなったからと言ってもどうすることもできず、ただ傍観するしかないのだ。

根本のところが改善されなければ、日本経済の前途は少子高齢化によって、ますます活力が失われていくばかりではないか。なにか政策をでっち上げるという中途半端なことばかりに注力する安倍政権。保育園に入れないのに無償化に走る。あまりに酷い政策ではないか。2週間ほどのオリンピックに巨額の資金を投入してなになる。果てしなく続く福島原発事故につぎ込む税金と電気料金。安倍政権からは、まだまだ財政には余裕がある姿勢が窺える。

安倍政権が推進してきた政策を続ければ、日本経済の衰退は速まるだけだ。むしろなにもしない方が良いのかもしれない。今の政策と逆の政策を採れば、すこしはましになるだろう。所得格差是正のために所得税の累進性強化、博打場を正常にするために有価証券取引税を再導入し、配当にも高課税を導入すべきだ。労働時間を厳しくし、有休完全取得、育児休暇等を法律で義務付ける。

株式市場という博打場の活況が続いても、経済にはなにの関係もないのだ。博打場が繁栄するような社会は決して健全とはいえないし、そこではカネが移動するだけであり、実質的になにかが付け加えられ、ものが残るわけではないからだ。博打に現を抜かしていれば、最終的には無残な結果を迎える。すでにゼロ金利という好環境下で20年もの長い間、株式は営まれてきた。それでも日本企業は躍進することはなく、経済の新たな展開を見出すこともできないでいる。ただカネを溜め込むという保守的姿勢を強めているだけではないか。一番肝心の出生率は低下し、老衰化に歯止めはかからずにいる。企業を根本的に変えていかなければ、少子高齢化の問題はなくならない。

安倍政権はオリンピックや福島第1に気前よくカネを投入しているが、そのようなカネはどこから出てくるのだろうか。もちろん大半は税金だが、一般会計の歳出は税金だけでは賄えず、国債を発行して不足分を補っている。こうした歳入不足の財政運営は40年以上も続いているのだ。1979年度には公債依存度が34.7%に上昇、その後公債依存度は低下し、1990年度には9.2%と一桁になったが、バブル崩壊により、急速に上昇し、最低でも31.0%(2007年度)、最高は51.5%(2009年度)と半分以上を国債に依存する年もあった。

歳入の範囲に歳出を抑えれば赤字にならないのだが、もしそのようにすれば、貯蓄が投資を上回り、GDPは落ち込む。歳出の減少分だけ、設備投資や純輸出が増加すればGDPは減少することはないけれども、バブル崩壊、金融危機等により経済が急速に下降しているときには、設備投資や純輸出は大幅に悪化している。国が国債を発行し、そのカネで歳出を拡大しなければ、超過貯蓄の状態に陥り、経済は激しく収縮することになる。

財政赤字の長期化によって、国と地方の長期債務残高は2018年度、1,100兆円と1998年度(552兆円)の2倍となった。これだけ長期債務が増加して大丈夫なのかと不安の声が聞かれるが、10年以上うまくいけば20年は大丈夫ではないだろうか。

根拠はなにか。家計の金融資産が昨年末、1,509兆円あるからだ。日本の家計は少ない所得のなかからもこつこつ貯蓄しており、巨額の金融資産を保有している。この家計の貯蓄に見合う投資がないところが問題なのである。

さらに民間非金融法人企業も資金余剰の状態にあり、2018年は13.3兆円と家計よりも1.8兆円多い。2015年以降、4年連続で民間非金融法人企業の資金余剰が家計を上回っている。2018年も家計と企業で29.1兆円の資金余剰が発生しており、この余剰を政府が吸収しているのだ。こうした資金余剰を民間設備投資や純輸出で使い尽くすことができなければ、政府が余剰を使うしか他に方法はないのである。

PDFファイル
190520).pdf (412.96 KB)
Author(s)