1万3,000ドル達成後、NYダウは上値が重く、よほどの経済指標等が出ない限り、さらに上値を目指すことは難しい。米株式が頭打ちになり、それに連動する日本株も勢いを失した。政治、原発、年金等日本を土台から揺さぶるような問題が放置されたままでも、日経平均株価が1万円を超えたのは、ひとえに米株高のお陰だ。自力で株式が好転するような材料はなにもなく、実体経済から乖離した株価上昇であった。裏付けのない株高だけに、米株式が反落すればたちどころに、値を消すことになるだろう。委託売買代金の約65%を占める外人は12週連続買い越し、いつ売りに転じてもおかしくない。今、株式は売り時だ。
商品市況のなかでは金価格はすでに昨年9月にピークを付けている。銅とWTIは昨年秋以降持ち直しているが、それでもピークは昨年2月、4月にそれぞれつけており、これを超えることはあるまい。経済的影響も定かではないFRBの買いオペによる金融機関への無秩序な資金供給が商品市況を活気づけたが、期待効果も出尽くしてしまい、銅とWTIの価格は膠着状態に陥っている。
資源の大量消費国である中国の景気減速が、商品市況をナーバスにしている。3月の中国PMIは48.1と前月比1.5ポイント低下し、景気は09年1-3月期以来の弱い水準にある。景気が「良い」か「悪い」かの分岐点である50を5ヵ月連続で下回っていることから、中国経済は相当な速度で悪化していることは間違いない。
中国当局は20日からガソリンや軽油の小売価格を6~7%引き上げた。こうした値上げは原油価格だけではなく、鋼材、銅製品、プラスチック等の幅広い分野需要を抑制し、商品市況の悪化要因になるだろう。
日本の貿易統計によると、2月の輸出総額は前年比2.7%減だが、対中輸出は13.9%も減少しており、地域別では最大の落ち込みとなった。マイナス幅は1月よりも6.3ポイント改善したが、これで5ヵ月連続の前年割れであり、昨年11月以降のPMIの50%割れとほぼ一致する。
対中輸出を品目別にみると、生産設備に関連する一般機械が-28.0%と大幅なマイナスになったほか、電気機器も9.3%減と振るわない。一般機械のなかでは建設・鉱山機械の65.0%減、荷役機械やポンプ・遠心分離機なども前年を大きく下回っており、中国の設備投資も曲がり角に差し掛かってきたようだ。中国の高成長は設備投資で保たれていたが、これが頭打ちになり、高い伸びが見込めなくなると、高い経済成長率が維持できなくなる。資源をがぶ飲みしていた中国の行動が変われば、世界的な資源需要は様変わりすることになるはずだ。これは資源の需要減だけにとどまらず、輸送、開発資材等の需要にも大きく影響し、諸資源価格は急落することになるだろう。
対中輸出の2桁減に加え対EU輸出も2月、前年比-10.7%と5ヵ月連続のマイナスである。対中は設備投資関連が不振だったが、対EU輸出は耐久消費財の乗用車が31.2%も前年を下回り、しかも4ヵ月連続でマイナス幅は拡大、EUの消費者は耐久消費財への支出を見送っているようだ。3月のユーロ圏PMIは前月比0.6ポイント低下の48.7となり、景気の冷え込みが圏内に広がっているからだ。
ユーロ圏経済の中心をなすドイツ経済が失速しつつあることが、ユーロ圏の先行きを暗くしている。1月の独資本財受注は前月比5.4%減少し、2010年10月以来15ヵ月ぶりの低水準に落ち込んだ。2011年6月のピーク時には、前回のピーク(07年11月)にほぼ肩を並べるとこまで回復し、それが独経済延いてはユーロ経済に力強さを与えていた。独設備投資の回復はあまりにも順調であり、いずれ失速することは目に見えていた。独資本財受注は昨年6月から12.9%も低下してしまった。
一方、対米輸出は2月、前年比11.9%増と2010年12月以来の2桁増だ。EU、アジアなどがいずれもよくないなかで対米輸出だけが気を吐いている。昨年8月以降ほぼ前年比プラスで推移しているが、伸びは数%程度と低くかった。が、2月は2桁増に拡大した。2月の輸出寄与度をみると乗用車だけで7.2%と図抜けている。あとは一般機械をひとまとめにしても2.9%にすぎなく、対米輸出がいかに乗用車に依存しているかがわかる。その米向け乗用車輸出は昨年8月以降7ヵ月連続で25%超の伸びが続いており、米政府の梃入れで持ち直した乗用車主導による今回の米景気回復が、日本の輸出からも読み取ることができる。