NYダウは3日続伸し、約3年ぶりの高水準に達した。インテル等のハイテク企業の業績好調を好感しているようだが、S&P500の株価収益率は約16倍まで上昇しており、株価は企業収益を織り込んでしまったといえる。ハイテク銘柄の多いナスダックはすでに07年10月のITバブル崩壊後の高値を更新し、バブルの様相を呈している。
FRBによると、1-3月期の米製造業生産指数は前期比年率9.1%と前期の3.5%を大幅に上回り、1997年10-12月期以来約13年ぶりの高い伸びとなった。特に、ハイテク産業の生産指数は38.7%と2四半期連続で伸び率は拡大し、07年10-12月期以来の高い上昇となった。一方、3月の住宅着工件数は前月比7.2%増加したものの、引き続き低水準の底這い状態である。住宅着工の先行きを占う許可件数のうちその大半を占める一戸建ては前年を25.3%も下回った。住宅不況は住宅価格にもあらわれており、2月のFHFA住宅価格指数は前月比1.6%減と4ヵ月連続のマイナスである。
18日、S&Pが米国債の格付け見通しの「ネガティブ」への変更など、株式にとってはどこ吹く風の勢いだ。当日、株価は下落したが、米債の利回りは低下し、ドルの対ユーロ相場は上昇した。格付け見通しの変更は米債売却へと繋がりそうだが、現実はそうはいかない。売却してもほかに買えるものがないからだ。安全性や規模の面で米債に変わる資産は見当たらない。米財政赤字削減が俎上に載せられているが、日本ほどの債務残高(GDP比)ではなく、貿易黒字国にとっては、米国が国債を発行しなければ、ドルで稼いだ黒字を運用できなくなってしまうという問題もある。ドルで輸出代金を受けとれば、余剰ドルはドル資産で運用せざるを得ないのである。ドルを円に換えても、だれかがドルを保有することになり、ドル負債の増加は同時にドル資産を増加させる。
原油価格は100ドルを突破しており、金は1,500ドルを超え過去最高を更新し続けるなど、商品市場の投機的動きは強まっている。日米のゼロ金利の長期化や買いオペによる資金供給、さらにユーロ高などが、実体経済より投機市場へのマネー流入を招来している。
米商業銀行の商工業貸付は3月、0.7%と09年3月以来2年ぶりのプラスになったが、前年同月が20%近く落ち込んでいることを考慮すると、決して回復しているといえるような状態ではない。不動産貸付は4.6%減とマイナス幅は引き続き大きく、不動産市場は凍りついたままである。不動産貸付は09年10月に前年割れしてから3月まで18ヵ月連続のマイナスだ。1948年以降でマイナスになるのは今回が初めてであり、しかも長期化していることは、いかに住宅市場や銀行が異常な状態に置かれたままであるかを裏付けている。
不動産貸付額は減少しているものの、その速度は極めて緩慢であり、ピークから8.6%しか減少していない。総資産に占める不動産貸付は3月、29.4%に低下し、03年半ば頃に戻ったけれども長期のトレンドからみればまだ高い。不動産貸付・総貸付比率は52.8%と依然貸付の半分以上が不動産に向けられており、歪な貸出構造は改善されていない。
米商業銀行の総資産に占める貸付の割合は3月、55.7%と1973年以降では最低を更新した。不動産貸付の減少に加え、商工業向けが伸び悩んでいるからだ。これほど貸付比率が低いのは異常なことであり、不動産貸付の焦げ付きがまだ十分に処理されておらず、貸付余力が乏しいことをあらわしている。
リーマンが破綻するまえの2008年8月の商業銀行の資産を2011年3月と比較すると、総資産は0.7兆ドル増加している。増加している資産のトップは現金で3月の残高は1.45兆ドルと過去最高を更新し、08年8月から1.04兆ドルも増加している。3月の総資産は12兆ドルであるから、現金はその12.1%を占めていることになる。債券等は0.36兆ドルの増加となる一方、貸付は0.38兆ドルの減少である。3月の預金は7.96兆ドルと1.06兆ドル増加したため、貸付・預金比率は84.1%と1993年6月以来約18年ぶりの低い水準に低下した。
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商業銀行の現金はほぼFRBに預けられている。4月20日時点のFRBのバランスシートによれば、負債のうち準備預金は1.54兆ドルとFRBの総資産(2.69兆ドル)の57.5%を占める。FRBの負債は銀行からの準備預金と連邦準備券などからなるが、主に増えたのは準備預金であり、これを元に国債やモーゲージ債を大量に購入したのである。銀行は準備預金を積み増すことによって、焦げ付いているモーゲージ債などをFRBに買い取ってもらい、身軽になったのだ。
FRBのバランスシートは、昨年11月の6,000億ドルの国債買い取り以降拡大を続け、直近では2.69兆ドルに膨れている。6月末までバランスシートはさらに膨れることになるが、その後は保有国債を徐々に少なくすることなどで縮小するだろう。不振が続く住宅市場を支えるためにゼロ金利政策は継続されるはずだ。
09会計年度(08年10月~09年9月)の連邦政府の支出は前年度比17.9%増の3.51兆ドル、赤字額は約1兆ドル増の1.41兆ドルへと拡大した。連邦政府の支出額は名目GDPの25.0%に上昇し(08会計年度は20.7%)、政府支出の拡大が経済の悪化を食い止めた。これほど政府支出・GDP比率が高くなったのは1945年以来64年ぶりのことである。2010会計年度の政府支出も3.45兆ドルを確保したため、財政赤字額は1.29兆ドルに達した。減税延長などで、2011年3月までの半年で財政赤字は8,290億ドルに上り、2011会計年度の財政赤字は1.64兆ドルに拡大、政府支出・GDP比率は09会計年度を上回り、米国経済の政府支出頼みは続いている。
不動産バブル崩壊により落ち込んだ米国経済は、国の財政支出とFRBによる超金融緩和、不良資産の買い取りによって支えられてきた。その結果は、国の財政赤字とFRBの膨れ上がったバランスシートに見て取れる。民間の傷んだ部分が公的部門へ移管したことで症状は治まっているが、今後、政府支出や金融政策を正常な状態に戻すときには、米国経済は
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それなりの痛みをともなうことになる。