米債券バブルと脆弱な日本経済

投稿者 曽我純, 3月9日 午前8:42, 2020年

米株式は乱高下したものの、週間ではプラスで引けたが、日本や欧州の株式は続落した。FRBが0.5%の緊急利下げしたため、米長短金利は急低下し、10年債利回りは1%を下回り過去最低を更新した。10年債利回りは3ヵ月物を下回り、短期が長期を上回る逆イールドは強まった。日本や欧州の金利よりも米国の金利低下幅が大きくなり、日米、米独の金利差は縮小した。そのためドルは売られ、円やユーロは買われ、円ドル相場は105円台に上昇し、2019年8月第3週以来の円高となった。

円ドル相場は米政策金利の動向に概ね沿っており、さらなる利下げが合意されてきている状況では、円は一段上昇するだろう。1ドル=100円を突破するのではないだろうか。

トランプ大統領に背中を押されているとはいえFRBは拙速だ。独立性を自ら放棄しているようなものである。金利で新型コロナウイルスを終息させることはできず、利下げで人が自由に行動できるわけでもない。また、企業は借入を増やす行動にもでるまい。先行き最終需要が細るかもしれないときに、設備投資に踏み切るような決断はしないはずだ。いま、金利を下げたところで、実体経済にはなにのプラス効果もないのである。トランプ大統領が実質的に金融政策を取り仕切っておりFRBは傀儡にすぎないことがより鮮明になっただけである。

むしろ、利下げは米国経済を歪にする。長期債利回りがかつて経験のない領域に入り、実体経済と比較しても説明できる水準ではない。明らかに行き過ぎであり、債券バブルだと言える。FRB自作自演のバブルなのである。株式のバブルに債券のバブルという2重のバブルが米国では発生し、実体経済と金融経済はますます乖離するだろう。これらのバブルを抱えることによって、FRBの超低金利の金融政策は容易に変更できなくなった。

2月の米雇用統計で非農業部門雇用者数が前月比27.3万人増加したように米国経済は拡大している。2月のISM製造業は50.1と拡大か縮小の分かれ目に位置しているが、非製造業ISMは57.3と3ヵ月連続で上昇し、昨年2月以来の高い水準となり、非製造業は堅調さをみせている。雇用の順調な拡大によって、個人消費支出も1月、前年比4.5%伸びており、大幅な利下げをしなければならない経済状態ではない。

6日、「OPECプラス」の会合でロシアなどが産油量削減に難色を示し、協議は決裂、WTIは1バレル=41ドル台に急落した。2016年4月第2週以来、約4年ぶりの安値だ。米株の異常な値上がりにより、値が保たれていたところへ、米株式の急落が投機的取引に引導を渡した。実需の面からも、世界的に経済活動が沈滞すれば、原油消費量も減少するのは当然だし、需要期を過ぎつつあることも影響しているように思う。

新型コロナウイルスによって、中国の非製造業PMIが2月、1月の51.8から26.5へと極端に悪化したことから、2月のグローバル総合PMIも46.1へと2009年5月以来約11年ぶりの悪化となった。原油の世界最大消費国である中国経済がおかしくなれば、原油相場がそのことに反応するのは自然な成り行きである。

人の行き来が自由にできなくなれば、ものは売れなくなり、生産も縮小を余儀なくされる。2月の中国での日本車販売台数はトヨタ自動車前年比70.2%減、ホンダ85.1%減と激減した。2月の国内新車販売も前年比10.7%減と2ヵ月連続の2桁減である。需要の減退に急激な円高が製造業に追い打ちをかけることになる。

消費税引き上げ後、家計は財布のひもを緩めていない。1月の「家計調査(二人以上の世帯)」によれば、名目消費支出は前年比3.1%減と4ヵ月連続の前年割れである。勤労者世帯は可処分所得が3.1%増加したが、消費支出は4.1%減であり、平均消費性向は78.9%と前年よりも5.9ポイント低下し、これで平均消費性向は4ヵ月連続して前年を下回った。学校の一斉休校や中韓からの入国制限強化と消費者心理は否が応でも冷やされ、1-3月期の最終消費支出は前期を下回ることは間違いない。

「法人企業統計」によれば、昨年10-12月期の全産業の売上高は前年比6.4%減と2四半期連続のマイナスだ。営業利益は9.7%減と3四半期連続のマイナスだが、特に、製造業は25.8%減と5四半期連続の2桁減と不振である。非製造業は1.7%減と小幅な減益にとどまっており、製造業のようには悪化していない。業績の悪化によって設備投資は3.5%減と2016年7-9月期以来約3年ぶりのマイナスとなった。

大企業(資本金10億円以上)の売上高も昨年10-12月期は前年比6.0%減と3四半期連続のマイナスであり、営業利益も7.5%減少した。製造業の営業利益は-25.3%と6四半期連続のマイナスだが、昨年末の日経平均株価は2万3,656円に上昇していた。製造業の減益などどこ吹く風といったところか。NYダウに連れ高していただけであり、株式価値を決める最大の要因である利益には目もくれなかった。

今年1-3月期の業績は昨年10-12月期よりもさらに悪化するだろう。製造業だけでなく、観光、宿泊、飲食など訪日外国人需要減の打撃が大きいだけでなく、内需も外出を控えるなど非製造業も大きな減収減益に見舞われるだろう。

日経平均株価とNYダウの週末値を直近高値と比較すると日経平均株価の-13.8%に対してNYダウは-12.5%と日経平均株価の値下がり率のほうが大きい。昨年10-12月期の実質経済成長率を比較しても日本の前期比-1.6%に対して米国の0.5%と実力差が歴然としている。今年1-3月期もマイナスが確実になっている日本経済の状況下では、これからも日本株の下落率は米国を上回るだろう。米株のバブル崩壊による外人の日本株売りが持続することも日本株を悲観させる材料となる。

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