7月16日、戦争関連の11法案が衆議院を通過した。法案は日本国憲法9条や第十章の97条、98条、99条から逸脱した憲法違反である。憲法をまったくなんとも思わない人間が総理大臣の地位にいるのだ。日本は法冶国家ではなくなってしまった。
中国や北朝鮮の政治体制を批判するが、2,564万票(2012年12月16日の衆議院選挙、小選挙区、有権者数約1億人)の得票で首相が日本の進路を大きく変えることができることになれば、日本の政治は中国や北朝鮮の独裁政治に近づいていると言えるのではないか。
国民の半数以上が法案に反対しているにもかかわらず、国会での審議を打ち切り、強引に衆議院を通過させる。自民党と公明党の力で国会の地位・役割は骨抜きにされた。もともと弱い3権分立はますます名前だけになり、安倍首相の独裁色は強まることになる。
義務教育ばかりでなく大学まで安倍色を強要し、言論にも圧力を掛けるなど、戦前への回帰を願っているようだ。ひ弱な大学やマスコミなど牛耳ることは容易いことだ。自由が封殺されれば、どのようになるか。とてつもない犠牲を払ったけれども、「危機が迫ってきている」、それに対処するためには自由や人権などいっている場合ではないのだと、のたまう。「外の脅威」を叫び、国民を自由に束縛することは、為政者の常套手段である。本当は内部に大きな問題を抱えているのだが、それから目をそらせるために「外の脅威」を持ち出してくる。もし「外の脅威」が増してきたとしても、力で対応することになれば、摩擦や衝突は激しくなるばかりだ。「外の脅威」を煽るような為政者ほど信用がおけないのである。再び戦前の自由が束縛されるような世界が作り上げられようとしている。
第2次安倍内閣が発足してから約1年後、国家安全保障会議と特定秘密保護法が成立、2014年4月には武器輸出3原則の撤廃、続いて同7月の集団的自衛権の行使容認を閣議決定、そして仕上げの戦争法案成立へと強引に進む。
戦後70年間に築き上げてきた平和国家が崩れ掛かっている。「外の脅威」ではなく平和憲法を踏みにじることによって「内部からの瓦解」が始まりつつある。政府がなにをしているのかを隠し、一部の関係者だけで大事なことを隠密裏に進める。軍需産業を支援し、兵器輸出の拡大を図る。自衛隊は米軍に付いてどこにでも出掛ける。米軍との関係は数段深まり対米従属は強まる。安倍首相は間違いなく日本を危険な国に改造しているのである。
戦争関連法案は対外的な緊張関係を強め、ますます国の軍事化が叫ばれることになるだろう。国民の自由は狭められ、国の大学や報道への政治介入も増し、日本の活力は萎えていくだろう。自由が狭められることは日本全体が衰退し、自壊していくことなのだ。
戦争法案が衆議院を通過した7月16日、経産省は2030年度の電源原発比率を20%~22%とする「長期エネルギー需給見通し」を発表した。福島原発の事故解明や廃炉の目処も立たないが、原発を続けるというのである。今、原発が一基も動かなくても十分な電力余裕があるが、危険極まりない原発を稼動させたいのである。手に負えない核廃物に身動きできない状況下でも、まだ動かすというのだ。
「見通し」をきめた「長期エネルギー需給見通し小委員会」の委員をみると、大半は原発推進派(委員長は小松製作所相談役の坂根正弘)である。「長期エネルギー需給見通し」は経産省が原発推進派のメンバーをそろえでっち上げたものだ。委員会は追認機関でしかないが。パブリックコメントなど求めただけで、そのようなものには見向きもしない。
エネルギー需給見通しはとんでもない高成長を前提にしている。2030年度の人口は117百万人と2013年度比1千万人減だが、実質GDP成長率は2030年度まで1.7%で成長し、711兆円1.34倍に拡大するという。名目では3%ほど成長し続けるというお伽噺のような話だ。このような前提でのエネルギー需給の議論は砂上の楼閣である。
すでに電力需要は減少しており、2030年度には今の水準を大幅に下回るだろう。火力だけですべてまかなえるのだ。このようなでたらめな見通しをでっち上げ、国の政策に据えるなど、経産省、延いては内閣の暴挙以外のなにものでもない。経産省は福島原発の事故後も事故を微塵も反省していないことがよくわかる。
新国立競技場の建設費が当初の倍以上の2,520億円になったことが問題となり、白紙にもどしたが、6月29日、東電は原子力損害賠償・廃炉等支援機構に資金援助額9,501億円の増加を申請した。これで2011年11月から東電が申請した資金援助総額は6兆8,864億円にのぼる。新国立競技場の建設費など霞んでしまうような原発事故費用ではないか。桁違いの東電の申請に対してはなにの咎めもなく、新国立競技場については費用を抑える。新国立競技場建設自体反対だが、片や7兆円近い金を注ぎ込んでいる原発には不問に付す。東電への資金供給はこれで終わりではなく向こう数十年続き、少なくても数十兆円を要するのだ。これをまかなうのは税金と電気料金であり、国民の負担なのである。原発の処理に天文学的な金が必要であり、さらに核のごみを人類が生きながらえているかどうかわからないほどの長期間保管しなければならないのである。これでも、まだ原発を推進するのだからあきれたものだ。原発推進派は戦争法案賛成派でもあり、中心は中高年の男性なのである。