目先の金を追い続ける東電と政府

投稿者 曽我純, 7月14日 午後5:59, 2013年

北海道、関西、四国、九州の電力4社は7月8日、原子力規制委員会に10基の原発再稼動を求めて安全審査を申請した。その3日前の5日、広瀬東電社長は安全審査申請のために新潟県知事と会談した。福島原発をどのように処理するかもまったくわからない状況にありながら、柏崎刈羽原発を稼動させたい。自ら犯した大事故を自ら解決できず、国に面倒をみてもらう、それでもどうすることもできない現実をどう考えているのだろうか。巨額の金だけが、はてしない事故の穴埋めに使われていく。東電の幹部はいったいどのような神経の持ち主なのだろうか。安倍首相に繋がる原発推進派は一刻も早く再稼動をしたい。そうした政権の意向を忠実に実行しているのだと思うが、国も東電も自己責任を取れない原発は即刻破棄すべきだ。

原発は動かせば動かすだけ、発生する核廃物を次世代に押し付けることになる。廃炉にするにもビルの解体とは桁違いの費用を要する。まさに負の遺産である。資産価値がゼロ以下になってしまうのだ。それも計り知れないほどのマイナスになる。原発の運転継続でマイナス額はどんどん膨らむ。その金はどこからでてくるかといえば、電力会社のバランスシートからではなく電気料金と税金だ。原発を運転すればするだけ、電気料金は上がり、税金もより多くとられるだろう。事故が起これば、天文学的コストが掛かるばかりか、放射能で命まで奪われ、暮らしていた土地にも住めなくなってしまう。生活が破綻してしまうのである。それでも原発をやりたいのだろうか。

 新潟県知事との会談で東電社長は「3期連続の赤字は避けたい」と本音を吐露している。だが、考えても見よ、すでに2.6兆円もの金を国に出してもらい、本来何度も倒産している企業に「3期連増赤字」などたわごとでしかない。実質倒産企業が東証や銀行などになぜこだわるのか。赤字になったのは原発事故が起こったからだというが、事故が起こらなくても原発の廃炉、核廃物を考えれば経営が行き詰まることは間違いない。総括原価方式を廃止し、すべての原発関連コストを適正に計上すれば、電力会社の業績は似て非なるものになるだろう。原油や液化天然ガスを多く使うから赤字になるというのは事実ではない。

 しかも一旦大事故が起こればお手上げになり、税金まで投入させられることになる。「赤字」といったこととは次元が違う。それでも東電は命よりも目先の金が大事なのである。命よりも目先の金を追い求めていけば、金そのものが失われていくことが福島で明らかになったのだが、東電と国はその痛みをまったく感じていない。電気料金と税金でいくらでも国民から金を巻き上げることができると思っているのだろう。まさに安倍政権の歴史観と同じであり、過去のことから考え直すようなことはしないのだ。東電や安倍政権では、悲惨な歴史は何度でも繰り返すことになる。

どのように考えても原爆と同じ原発は人類の最大の敵で、原爆も原発も完全になくさなければならない。人類を滅ぼす原爆・原発に膨大は金を注ぎ込んでいることを、子供に納得させることはできない。生活が成り立たない人たちがたくさんいながら、人殺しの道具や核廃物を作り続けていることを、恥ずかしいと思わないのだろうか。このようなことを平気でしていながら子供に暴力はいけない、道徳教育が必要だなどとどうしていえよう。自己責任が取れない政府や東電などが一番に道徳を身に着ける必要があるのだが、そもそも道徳など教えられるものではないのだ。日々の営みのなかで、特に、大人の行動などをみながら身についていくものだからである。原爆や原発といった子供にしめしが付かないことを、大人はいつ止めることができるのだろうか。

示しがつかないばかりか、子供たちに核のごみを与えているのである。だれもそのようなごみなどほしくない。無理やり子供たちに押し付ける理不尽さを大人は感じないのだろうか。日本はプルトニウムを44.2トン保有している。半減期2万4,000年の猛毒のプルトニウム239は100キロワット軽水炉で年250Kgでてくる。このような猛毒のごみをいったいどうするのだろうか。

原発で働く労働者の約9割は電力会社の社員ではない外部の人たちだ。電力会社は自分たちで汚い危険な仕事をせず、下請けにまかせてきたし、いまもそうだ。そのことだけを取り上げても、原発は人間のすることでないことがわかる。電力会社でできないことを立場や地位を利用して下請けに遣らせる。汚く危険な仕事でありながら電力会社の社員に比べればはるかに低い賃金しかあたえられず、そうした低賃金によって電力会社は利益を確保し、成り立っているのである。

 そもそも安全審査なるものが、あの巨大な原発でできるのだろうか。できないから福島原発の事故が起きたのである。巨大技術は作り上げることはできるが、完全なものにはならず、不完全なところを残す。また、使用していけば、すべては劣化していくが、すべての装置・機器を点検することなどできない。原発の安全を確保することはそもそも無理なのである。できないことをできるというのが安全審査であり、まったくの誤魔化しである。

 できない安全審査をでっち上げ、国民を騙しているのが、原子力規制委員会なのである。原子力規制委員会をはじめ経済産業省などに多くの原発関係に携わる役人がいるが、彼らの人件費も原発コストに入る。安全審査に通るために電力会社はそのために巨額の資金を注ぎ込む。原油や液化天然ガスを燃やす発電に比べてとほうもない金を食うのが原発なのだ。

世界最大級の地震地帯に50基を超える原発がある。原発は自分で設置した地雷でもある。自滅する最大のリスク要因だ。このような日本を滅ぼす地雷があれば、戦力など保有してもなにの意味もない。原発を攻撃されれば、日本はそれで御仕舞になるからだ。自衛隊や原発といった日本を滅ぼす要因はすべて取り除かねばならない。

日銀はそうした政府や東電を支える役目を一層強めてきた。11日の金融政策決定会合で日銀は「景気は緩やかに回復しつつある」と判断し、黒田総裁も会見で「前向きの循環メカニズムが働き始めている」と述べた。

来年4月、消費税率を引き上げると決定はしていないが、消費者や企業はこれに沿った行動を採っている。政府は公共事業を拡大、公共工事請負金額は6月、前年比24.8%も伸びた。消費税率引き上げ前では特需が発生し、景気指標は好転を示す。縮小経済下で一時的にも需要が拡大したあとは、激しい景気後退に陥ることは目に見えている。安倍首相の政策は「日本を取り戻す」のではなく「日本を永久に立ち直れない国」にするのである。

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