異常を異常とみない政府・日銀

投稿者 曽我純, 3月15日 午後9:17, 2015年

先週末、東証1部の時価総額は566.5兆円と名目GDPの1.16倍に膨れた。これほど株式時価総額が名目GDPを上回ったことは稀な現象であり、1989年のバブル期以来だ。実体経済との比較では日本の株式はあきらかにバブルといえる。売買代金は連日2兆円を超え、1980年代後半よりはるかに多い。日銀のゼロ金利に国債・株式購入が売買代金を膨らませ、株式の異常事態を引き起こしたのだ。2012年末に安倍政権が誕生したことが、バブルに拍車を掛けた。

株価が値上りしているときは、株式はもてはやされるが、いつまでも右肩上がりを続けることは不可能である。早晩、強気から弱気へとバブルの反動がやってくる。いくらリスク管理体制を敷いていたとしても、取引が成立しないで株価がどんどん下落していく状況では、投機家はバブル崩壊を無傷で乗り切ることはできない。いつものことだが、バブル崩壊後の清算過程は難渋を強いられる。

日銀の総資産は320.8兆円(3月10日時点)、1年前に比べれば80兆円も膨れている。資産増の大半は国債であり同期間に71兆円も拡大。日銀は国債購入資金をどのように調達したかといえば、金融機関の日銀預金である。つまるところ、国民の金融機関への預金が日銀に行き、それをもとに日銀は国債を購入しているのだ。民間設備投資は伸びず、流入してくる預金を金融機関は持て余しており、付利の日銀当座預金に資金は集まってくるという仕掛けなのである。

2月の預金は前年比3.9%増だが、貸出は2.6%と預金の伸びを下回っており、金融機関には貸出に回せない預金が溜まることになる。だから安全で利息も付く日銀へ預けるのである。金融機関への預金の増加率が貸出並みに低下すれば、日銀に資金は流れなくなり、日銀が国債を購入することもできなくなる。

預金する主体は家計だが、日銀に勝手な行動をさせないためには、箪笥預金に少し積み上げ、金融機関への預金を減らせばよい。日銀当座預金以外に日銀ができる資金手当は日銀券の増発だが、当座預金のように増やすことはできない。日銀のでたらめな行動を止めることができるのは家計が金融機関への預金を控えることしかない。

日銀資産の大半は国債であり、3月10日時点で271兆円保有している。国債相場が急落すれば、日銀のバランスシートは酷い状態になるだろう。バブル状態にある株式がなにかをきっかけに崩落することになれば、含み益のある国債を保有していれば、国債売却に走ることになる。日銀の不良債権は巨額になり、信用は失墜することになる。日本に対する信用不安が台頭、円安ドル高が急速に進行するかもしれない。

日本の信用不安が起こりうるような日銀の無謀な政策に歯止めを掛けることができるのは、政治と同様、国民の行動しかないのである。NHKの会長に引導を渡すことができるのも受信料を払わないという視聴者の行動によってのみ可能だと思うが、日銀に対しても金融機関への預金を少なくするだけで黒田体制を辞任へ追い込むことができるのである。

 2月の国内企業物価指数は前年比0.5%と6月の4.5%をピークに急低下しつつある。このまま推移すれば、4月はマイナス2%以上に下落するだろう。素原材料価格は24.2%も前年を下回っているため、今後、中間財、最終財へと波及し、さらには消費者物価へと及ぶことになる。日銀は2%の物価上昇を見込んでいるが、事態はまったく逆に動いている。4月の消費者物価はマイナスに転じる可能性が大きく、プラス2%など起こるはずがない。家計の消費は低迷しているし、企業の設備投資も勢いはまったくない。1月の『機械受注』によれば、民需(船舶・電力を除く)は前年比1.9%である。昨年10-12月期は前年比-2.6%、今年1-3月期は-0.9%と予想されているが、昨年の反動減もあらわれマイナス幅は大きくなるはずだ。『法人企業景気予測調査』でも設備投資の伸びは大幅に鈍化しており、今年1-3月期は前年比1.0%と予想されている。

消費者物価の伸び率鈍化は消費支出や設備投資が振るわず、実体経済の体温が低下しているからである。政府と日銀は、消費税率引き上げによる消費支出と設備投資の不振を見くびっていたのではないか。円安ドル高が株高につながり、それで実体経済を良くする目論見は崩れ去った。相場でもって実体経済をよくすることはできないのだ。そうした意図的株価引き上げは、投機化、バブル化、バブル崩壊という避けがたいプロセスを辿ることになり、国民経済を著しく疲弊させる。バブルが膨れれば膨れるほど、崩壊過程も凄まじいものとなり、立ち直るには長い年月を要することになる。

政府は福島の大惨事を経験してもまだ原発を稼動させるというのだから株式バブルの崩壊など取るに足りないことなのだろう。原発も株式も異常を異常と思わない麻痺してしまっている政府なのだから自衛隊を軍隊にすることになにの違和感もないのだろう。危険なことでも国民を犠牲にすることでもなんでも突き進むのが安倍政権のやり方なのだ。

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