生産年齢人口急減の衝撃

投稿者 曽我純, 5月13日 午後6:36, 2012年

4月17日、総務省は昨年10月1日現在の日本の総人口は127,799千人、前年比259千人減少したと発表した。05年に戦後初めて減少したが、その後、微増減を繰り返し、2011年に戦後最大の減少を記録した。2007年以降、出生児数が死亡者数を下回る状態が常態化しているが、その開きは毎年拡大しており、昨年は18万人に増加した。

年少人口(0~14歳)は減少し続けており、総人口に占める比率は13.1%と65歳以上の老年人口よりも10ポイント以上低い。2000年に両者の比率が逆転してから、その差は急速に拡大している。生産年齢人口(15歳~64歳)は1995年をピークに減少しており、ピークと昨年を比較すると591.8万人もの減少だ。生産年齢人口は、2000までの5年間では1%の減少率であったが、2005では2%、2010年までの5年間では4%と減少率の拡大が顕著である。もっとも活動が活発な年齢層がかくも減少し、不活発の老年層が著増しているのでは、経済が衰えるのは致し方ない。

2000年以降の5年毎の生産年齢人口減少率が拡大するにつれて、名目GDPも減少率が大きくなってきており、生産年齢人口の名目GDPに及ぼす影響をはっきりと認めることができる。2000年までの5年間の名目GDPはなんとかプラスを維持したが、生産年齢人口の減少率が大きくなった2005年までの5年間では初のマイナスとなり、2010年ではマイナス幅はさらに拡大した。

 2015年までの5年間の生産年齢人口の減少率拡大と老年人口の増加率拡大が、名目GDPの低落を一層推し進めることになるだろう。生産年齢人口の減少と老年人口の減少は、2015年までに団塊世代が完全に65歳以上になるからである。国立社会保障・人口問題研究所の『日本の将来推計人口』(出生中位・死亡中位推計)によると、2015年までの5年間に生産年齢人口は6%減少し、2010年に比べれば減少率は2ポイントの拡大だ。2020年は4%減、2025年には3%減と減少は持続するけれども、マイナス幅は幾分和らぐと推計されている。このように2015年までの日本の人口構造の変化は今までになく、将来も起こらないような激しい変化となる。2012年4月からは昭和22年生まれの団塊第一陣が65歳入りを果たし、2015年3月までに団塊世代663万人すべてが65歳以上となる。

今年度から始まる前例のない生産年齢人口減と老年人口増が、名目GDPを今まで以上に下振れさせるだろう。これまでの生産年齢人口と名目GDPの関係から推計すれば5年間で名目GDPは30兆円程度減少するはずだ。人口減と老年人口比の上昇により、個人消費支出は少なくなるし、それに伴い生産設備は過剰になり、設備投資は減少するだろう。

人口減と人口構造の変化だけでこれだけ経済にインパクトを与えることになるが、政府は2014年と2015年に消費税率を引き上げようとしている。おそらく戦後最大の経済収縮過程に、大幅な増税を実施すれば、消費は萎縮してしまい、経済は未曾有の不況に突入することになるだろう。消費増税のタイミングは最悪期に設定されているといえる。

消費増税を実現できたとしても、所得税や法人税は大幅に減少し、税収は減少することになる。不況で社会はすさび、混乱し、なにのために増税したのかということになる。税収が落ち込めば、財政赤字の拡大を余儀なくされ、社会保障はますます立ち行かなくなるだろう。低所得者層はさらに拡大し、生活そのものが苦しくなり、社会全体が陰鬱とした状態になるのではないか。

結局は、余裕のある階層が限界的階層を援助する方法しかのこされていない。ユーロ圏のように貧しい国と豊かな国が同居していれば、豊かな国が貧しい国の面倒を看る以外にユーロ圏は成立しないのである。たとえ、豊かな国ばかりが集まったとしても、そこでも経済格差が生まれ、同様の問題が発生してくる。特に同質的な日本では、問題の難易度はユーロ圏に比べれば低いと言ってよい。所得税の累進性を強め、法人税を引き上げ、欠損法人からも徴収することが重要である。有価証券取引税を復活させ、株式市場を正常な姿に戻す必要がある。グローバル化とは反対のことを実施することが、日本経済を強くする方法だと思う。 

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