消費税引き上げと円安で苦しむ日本

投稿者 曽我純, 7月27日 午後6:15, 2014年

ドル高ユーロ安が続いている。今年3月半ばをピークにユーロは弱くなり、昨年11月以来のドル高ユーロ安である。マークイットのユーロPMIは7月、54.0と前月比1.2ポイント上昇したが、7月のIfo景気指数は108.0と前月比1.7ポイント低下し、今年2月をピークに軟調に推移している。今年第1四半期のユーロ圏住宅価格は前期比0.3%減と2四半期連続のマイナスになった。米国の住宅価格が上昇している一方、ユーロ圏では住宅市場が不安定なのである。ユーロ圏経済の覚束ない足取りを反映して、ドイツ国債の利回りは1.15%と過去最低を更新し、米国国債の利回りがドイツよりも1.32%高くなり、格差は拡大した。こうした国債利回り格差拡大によって、ドル高ユーロ安が形成されている。

ドル高ユーロ安が進行しているが、円ドル相場は狭い範囲の値動きに終始し、そのトレンドはみえてこない。日米の国債利回り格差は1.94%だが、3ヵ月前に比べれば0.11%縮小しており、米独とは逆に利回りはやや縮小している。日米の利回り格差縮小は円高ドル安材料のはずだが、米国の利上げが近づいているため、今は今年1月をピークに低下している米国債利回りの上昇が予想され、積極的に円を買うこともできないという事情がある。

さらに日本経済に対する不安がある。米国経済も決して良くはないが、消費税引き上げ後の日本経済がどのようになるかということのほうに関心が向いている。6月の百貨店、スーパー、コンビニの売上高はいずれも前年割れだ。4月に急低下した需要は6月の段階でも引き続き弱く、税率引き上げと物価上昇による消費の冷え込みは持続し、消費はおいそれとは戻ってこない。

今年度は昭和24年生まれの団塊最後で最大のグループが65歳になり職場から退出してしまう。2月現在、総人口は前年比0.18%減だが、団塊世代退出により、生産年齢人口は1.47%も減少している。一方、65歳以上は3.55%も急増しており、総人口の25.4%を占めるまでに拡大した。4月以降の生産年齢人口減はさらに大きくなり、人口問題の消費に及ぼす影響は計り知れない。

 消費が低迷したままでは、経済は成長することはできない。経済を動的にさせる設備投資を拡大することができないからだ。国内消費需要が低下し続ける状態を想像すれば、企業は国内設備投資に踏み切る決断を下すことはできない。法人税減税などで企業を優遇しても企業の内部留保を厚くするだけで、設備投資の拡大に振り向けることなどしない。法人税減税は需要をそれだけ減少させるだけである。

日本の製造業生産高指数(マークイット)は7月、50.0と前月比2.4ポイント低下し、夏場になっても、依然、製造業の動きが鈍く、生産がいつごろ回復するのかわからない。在庫が増加していることから、向こう数ヵ月以内に製造業が回復することはないだろう。

5月の全産業活動指数は前月比0.6%増と4月の急落の反動からプラスに転じた。今年に入ってからの駆け込みで3月の指数は100.3とリーマン・ショック以前の2008年8月以来の高い水準に上昇した。1-3月期は99.5と前期比1.6%も上昇し、実質GDPも前期比1.6%伸びた。4-6月期の全産業活動指数は前期比3.5%低下する見通しであり、実質GDPも前期比3%前後落ち込むだろう。

前回の消費税引き上げ後の1997年4-6月期の名目GDPは前期比0.2%増加し、7-9月期、10-12月期もわずかだが伸びた。マイナスを免れたのは在庫増と純輸出によるところが大きい。今回は前回とは相当異なり、GDPは直ちに大幅なマイナスに陥ることになる。消費はもとより住宅、設備投資も悪化し、貿易赤字は拡大し、GDPの主要部門はことごとく減少するだろう。

6月の貿易統計が公表されたが、輸出は前年比2.0%減と2ヵ月連続のマイナス、輸入は8.4%増加し、赤字額は前年の1,823億円から8,222億円へと急拡大した。円安ドル高の進行とともに輸出も伸びたが、前年比伸び率のピークは昨年10月(18.5%)であり、その後は鈍化し、5月は2.8%減と昨年2月以来15ヵ月ぶりのマイナスになった。

円ドル相場は月末値で昨年10月、100円台に乗ったが、それ以降も大きな変化はなく、為替の輸出効果は出尽くしてしまった。輸出を数量でみると、伸び率は一層低くなり、最高でも昨年11月の6.2%である。今年1月以降は2月と4月を除けば前年割れとなり、円安ドル高政策は完全に行き詰まったといえる。

安倍政権発足以前から期待により円安ドル高が進行したけれども、数量でみると、2012年度の輸出は前年比6.6%減、2013年度でさえも0.6%とわずかなプラスにとどまった。金額では2012年度は2.1%減、2013年度は10.8%増加した。輸入も2013年度は数量の2.4%増に対して金額では17.3%も膨らんだ。政府と日銀が躍起になって取り組んだ円安ドル高は輸出を伸ばすことができず、輸入を大幅に増やし、日本経済に悪影響を与えたのである。

 原発が止まったことにより、液化天然ガスの輸入が拡大し、貿易赤字が悪化したといわれている。確かに、2011年度の液化天然ガス輸入量は前年比17.9%、金額では52.3%も急増した。だが、数量で2012年度は4.4%に鈍化し、2013年度は1.0%にさらに低下している。金額では両年とも2桁増だが、これは円安ドル高になったからだ。

日本は2011年度以降貿易赤字国に転落したが、2011年度の液化天然ガスの前年比増加額は1.86兆円、赤字額(4.4兆円)の半分にも満たないのである。しかも高値での輸入であり、数量での伸びであれば6千億円ほどの増加ですんだ。2013年度の赤字額は13.7兆円、液化天然ガスの増加額は1.13兆円、数量では1.0%増であり、赤字額の大半は為替で生み出されたものである。赤字額拡大の要因を液化天然ガスに求めるのは間違いである。

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