正気の沙汰ではない東電の審査申請

投稿者 曽我純, 9月29日 午後9:53, 2013年

東電は27日、柏崎刈羽原発の6、7号機の審査を原子力規制委員会に申請した。新潟県の泉田知事との茶番により、審査申請は既定路線だったが、大本は安倍政権の原発推進政策である。安倍政権が原発推進を唱え、実質国有化されているので、東電は自信を持って審査を申請したのだ。審査を申請しなければ、安倍政権の原子力政策が問われるからだ。 

だが、考えてもみよ。百害あって一利なしの原発をいまだに動かすための審査をするなど、愚の骨頂ではないか。原発を断つという決断を下さず、原発を曖昧なまま稼動させていけば、時間と金が失われていくだけである。原発廃止を決定すれば、審査は不要になるなど、まともな分野へ資金や労力を振り向けることができる。日本原子力研究開発機構など政府関係機関の縮小・廃止にも繋がる。将来に膨大な付けを残す原発に貴重な税金を湯水のように使うことは一刻も早く止めなければならない。社会保障関連の歳出が膨れているというが、いまだに「もんじゅ」に決断を下せず、原発を稼動させる、なんとも矛盾した話ではないか。

実質国有化とはいえ、東電は不思議なことだがいまだに上場している企業である。福島原発の廃炉の道筋も立たず、汚染水でさえ管理できない東電が、柏崎刈羽を稼動させたいなど正気の沙汰とは思えない。銀行借入の返済が迫るなど自分かってな判断で審査申請に踏み出し、原発稼動を目論む。東電存続のためには恥も外聞もなく、原発稼動に拘る。こうした捨て身の姿勢、まさしく戦争中の特攻隊を髣髴させる。が、こうしたやり方では泥沼に入り込むだけで、事態は悪化するばかりである。福島原発の処理だけでも数十兆円の巨額の費用を要するが、この先、原発事故が起これば、どうなるのか。東電との道連れは御免だ。理性を失った東電を制御できなければ、一国が危なくなる。

経産省は廃炉のために特別の会計を拵えるそうだ。会計原則を捻じ曲げ、東電の廃炉を後押しするのである。一気に廃炉にしてしまうと東電がもたないという。東電はとっくに潰れているのだが、経産省はそうではないとみているのだ。徐々に廃炉にするなどできないけれども、会計上はそうするという。まさに粉飾決算なのだ。

潰れそうになれば、会計で粉飾すればいいのだ。こうなれば会計原則も糞もないのである。事実を歪め出たら目なことをすれば、その付けは国民に回る。付けが回るだけでなく経済自体に傷が付き、しかも傷は大きく、日本経済を蝕んでいくだろう。一企業にとっては出たら目をすることで、成り立つけれども、日本全体にとってはダムの決壊のように濁流に呑み込まれてしまう。結局、当該企業も濁流に流されてしまうことになるのだが。

 原発政策をはじめ、安倍政権の目指す政策はどれをとっても、日本を誤った路線に導くものだ。財政の膨張で政府は行き詰まり、安倍傀儡の日銀の金融政策も無残な結末を迎えることになろう。財政・金融政策の効果は一時的なものであり、長期的に使うものではない。政策の長期化は、そうした政策では効果がないことを裏付けているのである。効かない政策をいつまでも、効くかのように使い続けることは、どこかに負担が生じ、経済が歪んでいくことである。

現実の日本経済から外れた財政・金融政策や「特定秘密保護法案」が内から日本を蝕み、外からは憲法改正を視野に据え、まず集団的自衛権の確立を目指すことで摩擦が生じる。オリンピック招致を政治的に強引を推し進め、政治のスポーツ利用があからさまに出た。線香花火のようなものでも、東京湾岸の地価が早くも上昇する。オリンピック後のことは考えないのだろうか。地盤の弱い湾岸の土地など地震に襲われればひとたまりもないのだが、その点については、いまは不問に付すのか。その場の雰囲気に流されてしまう日本人の習性なのだろうか。過去のことを忘れてしまい、その場限りの対応に終始すれば、いくら経験したとはいえ、経験は活きてこない。戦後の日本の歴史を振返りもせず、これから先の日本を切り開いていくことなどできはしない。

過去のことを曖昧に遣り過ごし、だれも反省せず、責任も問われずいるから、東電は平気で審査申請するのである。福島県ではいまだ9万人超ものひとが避難生活を強いられているが、東電は、これまで通り、金がなくなれば国にすがり、汚染水が漏れようが、対応は後手になるなど杜撰な仕事ぶりが窺える。

 27日発表の『民間給与実態統計調査』(国税庁)によると、2012年度の1人当たり平均給与(給与・手当・賞与)は前年比0.2%減の408.0万円(平均年齢44.9歳)であった。過去10年でプラスになったのは2007、2010年度の2回だけである。2002年度と比較すると8.9%も減少している。

東電の有価証券報告書によれば、2012年度平均給与(平均年齢41.9歳)は619.6万円だ。なんと民間の平均給与よりも200万円以上高いのである。10年前は733.8万円であり、それに比べれば減っているが、実質国家管理になっている企業の給与にしては優遇されているといえる。

昨年度の給与所得者数は4,555.6万人、その内、非正規は987.6万人、総数の21.7%である。男の非正規数は10.8%だが、女は37.9%と高い。給与所得者数では21.7%を占めるが、給与総額の割合はたったの8.9%だ。正規には140.8兆円も支払い、非正規には16.5兆円しか払っていない。1人当たり平均給与も正規の467.6万円に対して非正規は168.0万円。非正規の低い給与が企業利益のもとになっていることは間違いない。総額10兆円上乗せしてもまだ正規の水準に届かないのだが、それ以上上げる必要がある。

まともに働いても非正規では男225.5万円なのだが、片や実質倒産企業の東電は619.6万円もの給与をもらっている。努力する人が報われる社会にしようという言葉をよく耳にするが、この数字をみると、努力もへったくれもないことになる。これほどの給与をもらっていれば、避難者の気持ちなど分からないだろう。東電を一刻も早くまともな企業にしなければ、電気料金と税金が国民の片にますます伸し掛かってくることになる。

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