日米の経済情勢

投稿者 曽我純, 3月3日 午前10:30, 2014年

駆け込み需要により、通常水準以上に日本の今の経済活動は引き上げられているが、4月以降は特需が剥げ、生産活動は低下するだろう。そもそも需要の源泉である所得が増えていないことから、財布の紐はきつく絞られるはずだ。1月の『家計調査』をみても、消費者物価の上昇により、実質消費支出は前年比1.1%の増加にとどまっている。だが、勤労者世帯に限ると、0.2%減と昨年10月以降4ヵ月連続のマイナスである。

実質消費支出がプラスを維持できているのは、非勤労者世帯の駆け込み消費に依存している。勤労者世帯が値上げ前も慎重な消費態度をとっているのは、可処分所得が実質減少しているからである。名目でも可処分所得はプラスとマイナスを繰り返しているが、実質では昨年8月以降6ヵ月連続の前年割れとなっており、値段が上がるからといって、買いだめする気にならないのだろう。あるいは値上げ後、需要減により3%の値上げなど打ち消すくらい値段が下がると読んでいるのでは。いずれにしろ、4月以降、需要は大幅に落ち込み、消費税増税の一方、所得税や法人税の減少で税収は増加することはないだろう。

鉱工業生産も1月、前月比4.0%も拡大したが、前回予想の6.1%には及ばなかった。それでも08年10月以来5年4ヵ月ぶりの高い水準である。ただ、07年10月や08年2月の過去最高に比べれば11.3%も下回っており、米国が金融危機以前の生産水準を昨年11月に突破し過去最高を更新し、ドイツも過去最高近くまで回復しているのとは対照的だ。

2月の鉱工業生産は1.3%増、3月は3.2%減とそれぞれ予測されており、駆け込み需要に対応する生産も最終段階に入っている。はやくも生産縮小のシグナルが出ており、日本の生産活動は以前のような高い生産水準を望むことができなくなった。

 前年比の鉱工業生産伸び率は1月、10.6%と08年以降の激しい変動を除けば、過去のピークを超えている。2月の生産も伸びることになれば、さらに前年比伸び率は高くなるが、そのあたりがピークになり、伸び率は低下していくだろう。生産の伸び率拡大とともに在庫率指数は低下し、前年比では1月、12.8%減となり、この在庫率の推移からも生産の頭打ちは間近いといえる。

 鉱工業生産が前年を10%以上上回ってきているが、国債利回りは週末、0.58%に低下し、ほぼ過去最低水準だ。昨年10-12月期の名目GDPは前年比2.4%増加しており、国債利回りよりも高い。今の実体経済の成長速度は高いが一時的な現象であり、長続きしないと市場参加者はみているのだ。これほどの成長が仮定できるのであれば、資金需要は旺盛になり、金利は上がることになる。

国債利回りは米国でも実体経済の成長率を下回っている。2013年の米名目GDPは前年比3.4%伸びたが、国債利回りは2.6%台である。同様に、ドイツでも昨年の名目GDPは前年比2.7%増だが、国債利回りは1.6%台と低い。過去に経験したことがない低い利回りでも実体経済の動きは極めて緩慢であり、実体経済の金利への反応をさほど感じない。金融政策の限界まで金利を引き下げても、期待収益率がそれ以下に低下してしまえば、資金需要はでてこない。低成長、低インフレを低金利・買いオペで克服することができないことを現代経済は突きつけている。

週末、昨年10-12月期の米GDP改定値が発表されたが、実質前期比0.6%と0.2ポイント下方修正された。前期よりも0.4ポイント低く、米国経済の足取りが重いことが改めて認識させられた。個人消費支出や民間設備投資は拡大したけれども、政府部門が前期比1.4%減となり0.25%成長率を押し下げた。政府部門が悪化したのは特に軍事支出の削減である。この政府部門のマイナスは輸出でほぼカバーすることができた。が、純輸出がプラスということは、米国の消費需要が弱いことの裏返しでもある。消費が旺盛であれば、輸入の伸びが高くなり、貿易収支は赤字になる。消費支出が伸びたとはいえ、前期比0.65%であり、2013年では2.0%と2年連続で低下している。消費支出が伸びないことには、米国経済は拡大できない。2013年、個人消費支出のうち財は3.6%伸びたが、サービスは1.1%にすぎない。最大の需要項目であるサービスが伸びなければ、米国経済はこれまでのような成長力を回復することはできないのである。

消費支出の低迷は報酬の伸びが低く、可処分所得の伸びはさらに低くなっているからである。2013年の名目GDPは3.4%増だが、報酬は2.9%、可処分所得は1.9%とGDPの伸びをはるかに下回っている。これは個人税(所得、キャピタルゲイン、不動産等)が前年比10.5%と2012年よりも3.8ポイントも高くなったからだ。政府支出は財政赤字削減のために2011年以降、前年割れとなる半面、税収を確保するために個人税を増やしている。だが、こうした方法では消費支出の拡大は期待できず、米国経済は低成長から抜け出すことができない。

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