6月の経済統計が出揃い、今年度第1四半期の実体経済が明らかになった。やはり、消費税の引き上げによる反動減があらわれ、消費や生産は大きく落ち込み、日本経済は厳しい状況下にあることがわかった。1997年4月の引き上げのときよりも経済の悪化は深刻であり、不況は長期化するだろう。日本株は高止まりしているが、日本経済の先行きを考えれば、とうてい維持できる水準ではなく、大幅な下落は避けられないと思う。
6月の鉱工業生産指数は前月比3.3%減、ピークの今年1月を6.9%も下回ってしまった。出荷はさらに深刻であり、6月まで5ヵ月連続の低下となり、ピークの1月比8.8%減である。6月の在庫指数は前月比1.9%と2ヵ月連続のプラスである。減産しているけれども、企業の想定以上に出荷が不振となり、在庫は積み上がりつつあり、2012年11月以来、1年7ヵ月ぶりの高い水準に上昇した。消費税率引上げによって、耐久消費財の出荷が減少し、同在庫指数は119.4と前月比12.5%増加し、2ヵ月連続の2桁増だ。昨年度の同指数81.6と比較すると46.3%増である。耐久消費財の在庫だけで鉱工業生産在庫を前月比1.7%引き上げた。在庫増が著しいのは輸送機械であり、5月、6月の2ヵ月で急増し、前年比でも32.2%も増加した。産業全般で使用される非鉄金属の在庫も6月まで5ヵ月連続で前月を上回っており、生産が思いのほか不調であることが窺える。
「製造工業生産予測調査」によると、7月、8月は前月比2.5%、1.1%それぞれ上昇すると予想されているが、眉唾物である。在庫が積み上がっている段階で生産を拡大することは考えられない。そのようなときに生産を増やせば、在庫は倉庫にさらに積み上がることになるからだ。適正水準以上に在庫を抱えるような経営を続けることはできない。
生産が急激に縮小しているときでも、経済産業省は「総じてみれば、生産は弱含みで推移している」との判断。生産が5ヵ月で6.9%も急低下している稀な状況を「弱含み」という表現を使うのであれば、「急低下」や「大幅に落ち込む」という表現はいついかなる事態で使うのだろうか。原発のメルトダウンを隠す経済産業省だから、生産の急落など些細なことなのかもしれない。だが、経済実態をこのようにいつも甘く捉えることが、抱えている問題を曖昧にしてしまい、突き詰めて考えることを阻止してしまう。問題を問題としないでそのまま放置することで、傷口を大きくし、取り返しのつかない酷い状態にしてしまうのだ。バブル崩壊後の不良資産を誤魔化した結果、日本経済は衰退の一途を辿ってきた。事態の本質から目を背ける日本の体質が、いまの日本の弱体化を招いた原因のひとつなのである。
6月の『家計調査』(二人以上の世帯)によると、消費支出は名目前年比1.3%と3ヵ月ぶりにプラスに転じた。勤労者世帯に限れば-0.3%と3ヵ月連続のマイナスだ。勤労者世帯の実収入と可処分所得は2.5%、3.9%それぞれ前年を下回ったことが響いた。消費者物価が大幅に上昇しているため、実質消費支出は前年比3.0%減と3ヵ月連続のマイナスである。反動減が顕著な耐久財はマイナス16.4%と2ヵ月連続の2桁減となった。勤労者世帯の実質可処分所得は8.0%も減少し、これで11ヵ月連続の前年割れだ。これだけマイナス幅が大きくなれば、消費意欲は悪化することになる。
『毎月勤労統計』でも現金給与総額は6月、前年比0.4%増だが、実質賃金では3.8%減と12ヵ月連続のマイナスである。実労働時間は0.5%と3ヵ月ぶりにプラスとなったが、所定外労働時間は2.9&増と伸び率は3ヵ月連続で低下した。製造業の所定外労働時間は前月比3.3%減と3ヵ月連続のマイナスとなり、労働時間からも生産の縮小が裏づけられている。
給与の伸びが物価の上昇に追いつかず、実質では大幅なマイナスになっていることが、消費不振を深刻にしている。企業の出し惜しみは解消することはなく、給与が改善することは期待できない。すでに消費が悪化しており、企業業績も下り坂に入っていることから、企業は給与を絞る行動にでるのではないだろうか。給与減と物価高に対抗するために家計は消費を切り詰めるほかない。
4-6月期の米GDPは実質前期比1.0%伸びたが、そのうち0.4%は在庫増の寄与によるものであり、実際の成長率は低く、米国経済は低成長を続けている。個人消費支出の寄与度は在庫とほぼ同じであり、消費の足取りは重い。消費が弱いのはサービスが前期比0.2%(財は1.5%)しか伸びず、消費が0.7%増にとどまったからだ。消費のウエイトの大きいサービスが伸びなければ、米国経済は高い成長を実現することはできないのである。
名目GDPは前年比4.1%伸びているが、米債の利回りはこれを大幅に下回っており、金融経済と実体経済が異常に乖離している。米株式も実体経済から掛け離れていることが、なにかをきっかけに急落することにつながる。これほど国債と株式が上がりに上がってきたのは、偏に、FRBがゼロ金利と債券購入政策を実施してきたからだ。だが、先週、国債購入を月250億ドルまで減額することを決め、10月には債券購入は終了する。その後はゼロ金利の引き上げに踏み出すことになる。これまで、実体経済を無視して買い上げてきた国債や株式は実体経済に見合った水準まで値下がりするだろう。FRBは市場関係者の機嫌を窺いながら、金利をいついかに上げるか検討している。米株が暴落すれば、その衝撃は世界の市場に伝播し、世界経済が混乱するのは必至だからだ。
それにしても、米国経済はそれなりの成長をしていながら、FRBはなぜかくも長期にわたりゼロ金利と債券購入を遂行してきたのだろうか。金融機関を回復させるだけでなく、金融主導で米国経済を回復軌道に乗せようと企てたのだろうか。2008年の金融危機でぼろぼろになった金融機関を救済し、なにの責任も取らなかった金融機関が再びゼロ金利の長期化で甘い汁を吸ってきた。株式と国債相場は異常に値上りし、再び、2008年のようなバブルをFRBは醸成してきた。まさにFRBバブルといえるが、FRBはこのバブル処理をいかにつけるのだろうか。