日本株の下落続く

投稿者 曽我純, 5月4日 午後8:06, 2014年

4月末の日経平均株価は前月を下回り、昨年12月末をピークに4ヵ月連続安だ。約2,000円の下落である。日本株の動向の鍵を握っている外人は3月まで3ヵ月連続で売り越した。4月は4ヵ月ぶりに買い越したが、1月に次ぐ値下がり幅となった。個人と金融機関の売りが大きかったからだ。円ドル相場も前月比1円ほど円高にぶれた。4月末の日経平均株価の前年比上昇率は3.2%に低下し、昨年11月の65.8%を最高に急低下している。1万4,000円台を維持できるのか、それとも続落していくのか。筆者は株価は現状水準を維持できず、続落していくとみている。

理由は企業収益の悪化だ。4月からの消費税率引上げの家計への影響は大きく、消費の低迷は避けられないからである。売上が落ちれば、企業収益は当然悪化する。企業収益の悪化は設備投資マインドを冷やし、企業収益の悪化に拍車を掛けることになる。今年度の大企業営業利益は前年割れとなり、2015年度はさらに悪くなるだろう。このような予測が大勢を占めるようになれば、美人投票のルールにしたがって、株式は大きく値崩れすることになる。

3月の『家計調査』(2人以上の世帯)によると、消費支出は前年比9.3%も伸びた。特に、耐久財は59.6%と急増し、駆け込み需要の強さがはっきりあらわれている。耐久財はすでに昨年10月以降、拡大しており、家電、家具、車は当分売れ行きが相当落ちるだろう。

勤労者世帯の実収入は前年比1.4%減と昨年2月以来のマイナスとなり、可処分所得も1.3%前年を下回った。消費支出が9.6%増加したため、消費支出が可処分所得を上回り、平均消費性向は107.2%となった。

昨年6月以降、消費者物価が前年比プラスとなり、しかも3月は2.0%に上昇したため、勤労者世帯の昨年10月から続いている実収入の減少率は実質3.3%、可処分所得も実質3.2%減に拡大した。実収入や可処分所得は名目でも実質でも減少するなかで、物価が上昇していくことになれば、家計は支出を絞る以外に生活を防衛する手段はない。

4月の東京都区部消費者物価指数は総合で前月比2.0%、前年比2.9%上昇した。2.9%の上昇は1991年12月以来22年4ヵ月ぶりの高い伸びである。生鮮食品を除く、さらにエネルギーを除いた指数も前年比2.7%、2.0%それぞれ上昇した。2013年4月は-0.3%、-0.7%前年を下回っていたので消費税率はほぼ上乗せされたといえる。

 消費税率引上げによる故意の値上げは、じわじわとボディーブローのように家計に圧し掛かり、日本経済を疲弊させることになるだろう。政府や日銀は消費者物価を2%に引き上げると大言壮語を吐いているけれども、需要の減少により、ものやサービスの価格は下がらざるを得なくなり、結局、日本経済は元の木阿弥となるだろう。

消費の伸び率は3月がピークになるが生産はすでに下り始めている。3月の鉱工業生産は前月比0.3%増にとどまり、4月、5月は-1.4%、0.1%と予測されている。前年比では1月の10.6%が最高になるはずだ。

経済産業省は「生産は持ち直しの動きで推移」と判断しているが、この判断は間違っている。福島の原発事故の究明もされないまま原発再稼動を推進する役所であるから、鉱工業生産の判断などなんとも思わないのだろう。政府を忖度して当たり障りの無い判断を下す。国民に目線を合わすのではなく、あくまで政府に沿った考えを述べる。このような役所の作法は今に始まったことではないが、内閣主権ともいえる作法が日本を衰弱させている大きな要因なのだ。役所至上主義で主権在民を蔑ろにするのだから、おかしくなるのは当たり前である。

生産指数も弱くなっているが、出荷は3月、前月比-1.2%と2ヵ月連続減となり、生産よりも弱い。1月の前月比5.1%増まで拡大した出荷により販売店や小売店にはものが行き渡り、その反動があらわれている。出荷の前年比伸び率も1月の9.3%をピークに3月は5.6%に低下している。3月の生産が前月比0.3%の低い伸びであったにもかかわらず、出荷の減少により、在庫は前月比1.8%と昨年7月以来のプラスとなり、在庫率は2ヵ月連続で前月を上回った。

特に、耐久消費財の出荷は2月、3月で前月比-5.3%、-3.5%と大幅に減少する半面、在庫は12.9%も増加した。かなり予想を上回る意図しない在庫が積み上がったのではないだろうか。意図しない在庫増も生産を抑えることになる。

資本財出荷(輸送機械を除く)を四半期別にみると、昨年4-6月期の前期比-0.1%から7-9月期1.1%、10-12月期4.8%、2014年1-3月期10.4%という具合に伸びが拡大。資本設備・機械などが前倒しで導入されたことは明らかであり、今後、反動減に見舞われることは間違いない。

 商工中金の『月次景況観測』によれば、4月の景況判断指数は45.4と前月比8.1ポイント急落し、景気の好転、悪化の分かれ目である50を7ヵ月ぶりに下回った。これほどの景況判断指数の低下は、1997年4月の前回の消費税率引上げ直後では経験していない。中小企業は、仕入れ価格は上がるけれども、販売価格にそれをなかなか転嫁できず、4月の採算状況は大幅に悪化した。

 大企業は中小企業からの仕入れ価格を無理やり押さえ込み、大企業は収益力を維持できたとしても、中小企業の業績が悪くなれば、中小企業の従業員の給与は削減され、購買力は低下、大企業の製品も売れなくなる。一時的には大企業の利益は良くなるが、すぐに製品は売れなくなり、価格を押さえ込んだ仕入れの利益など消えてしまう。中小企業の業績悪化が経済全体に波及することによって、大企業の業績も落ち込むのである。

円ドル相場は消費税率引上げによる消費者物価の上昇をすでに織り込んでいるのかもしれない。向こう1年程度の一時的な物価上昇と予想されるので、円安もさほど進まないだろう。むしろ、来年の物価下落を見越した相場が徐々に形成されると思う。1989年4月の消費税導入1年後以降の長期円高ドル安や1997年4月の引上げ後の円高ドル安を想起すれば、早晩、円高ドル安に反転することはだれしも頭に入れている。需要減に円高ドル安が加わることになれば、輸出企業を中心に収益は一気に悪化することになる。

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