日本を貶める安倍首相

投稿者 曽我純, 12月10日 午後4:49, 2017年

火に油を注ぐようなトランプ大統領のエルサレムをイスラエルの首都と認める宣言。この突飛な米指導者の発言に主要国は反発したが、安倍首相はだんまりを決め込む。ここまで対米追随を貫けば、世界から日本は相手にされなくなるだろう。日本を貶めているのはまさに安部首相の主体性のなさなのだ。大事なことはすべて米国の言いなりになり、自主独立国家とはとてもいえない。この傾向は安倍首相が再登場してから一層強まったのではないか。
類は友を呼ぶというが、安倍首相とトランプ大統領は独裁的志向という点では似通っている。米国や日本では完全な独裁政権は不可能だが、弱い独裁であれば可能だということが日米の今の政治状況をみればわかる。米国はそもそも大統領の権限が非常に強いが、日本でも与党が巨大勢力を獲得すれば、独裁に近い政治が可能になる。
安保法や共謀罪など強権的な政治の仕組みが作られたことから、日本でも独裁的志向が一段強化されたといえる。内閣の力が突出しており、3権とりわけ国会が弱体化してしまったことは国民の意見がますます無視されることになる。さらに忖度が加わり、国民のためではなくトップのためになることが最優先されることになり、自然に独裁体制が強まっていくのである。
東芝をはじめ多くの企業が崩れていったのは、独裁体制によるものであったことは間違いない。トップを忖度し、トップが良いと思う意見やデータを提供していたのだろう。トップは会社の現実とは程遠い架空の姿を見ていたのだ。社長の暴走を止める手立てが必要だが、現状ではそのような装置は設置されていない。酷い36協定を結ぶような御用組合では、経営者の対抗勢力にはならない。
独裁の程度にかかわらず、独裁的であれば、その国は実態と掛け離れた道筋を辿ることになり、難破船のように波に飲み込まれ、海の藻屑となってしまう。独裁国家の典型が北朝鮮だが、日本海で難破している漁船のように、国家も難破しつつある。
中国やロシアなど巨大な国家は、基本的には北朝鮮のような政治体制であり、中近東でも独裁体制を敷いている国家がある。中国やロシアの経済統計は信憑性に欠け、独裁指導者は国全体を政治・経済的に把握することは不可能であり、実際どのように国が機能しているのかはわからない。さらに実態を不透明にするのがありのままの情報が挙がっていかないことだ。国の実態がわからないから力で押さえつけることしかできなくなる。そして国はますます荒廃していくだろう。
だが、他人ごとではないのだ。民主主義国家でありながら、隠蔽、改竄、粉飾、捏造が行なわれれば、実態は見えなくなってしまう。1990年代のバブル崩壊でも、不良債権が隠蔽、改竄されたため、不良債権がいつまでも処理されず、処理されないからますます不良債権は膨らんでいき、日本経済の体力は著しく落ちた。
福島原発の大惨事でも、東電の隠蔽、改竄、捏造が放射能被害を拡大させた。1990年代のバブル崩壊の影響を引きずり、さらにまた福島原発のはてしない廃炉作業が加わり、後始末のコストが日本の停滞要因になっているように思う。
独裁的政治は直接目に触れないだけに、分かりにくく、認められるようになれば、独裁度はかなり進行しているのである。安倍政権はすでに数々の民主主義を破壊するような法案を成立させた。強大な政治力は金融にまで影響力を及ぼし、日銀を完全な支配下に置いた。日銀が既発債を年80兆円も購入するので、政府は新発債をいくらでも発行できる。政府は思うままに予算編成を行なえる。政治と金融が合体し、国家資本主義といえる体制が出来上がった。
政治が独裁的になればなるほど、悪い政策が実行される可能性が高くなる。ろくに議論を交わすことなく、必要性のない政策が打ち出される。8日に閣議決定された政策パッケージも無償化、つまり金のばらまきなのだが、これが今やるべき政策だという。喫緊の課題はもっとほかにあるはずだ。保育や大学に金をばらまくことではなく、保育では量の拡大を図り、大学は質を高くすることがより大事ではないか。
借金の返済ではなく、金をばら撒くことが先決なのである。国の借金などいくら増えても問題ないと思っているのだ。本当に困れば、税金を引き上げれば、簡単に解決することができると為政者は考えている。これだけ衆議院で議席を獲得したのだから、なにの遠慮があろうかというのが本音なのだろう。
北朝鮮を始め中国、ロシア、米国、日本と程度の差はあれ、独裁の言葉が当てはまる。独裁は世界的な傾向になってきており、混沌とした政治情勢のなかから突然予想外の発言や行動が起こり得る。経済的な要因よりも政治的な要因により、為替や株式は揺すぶられるリスクは高くなってきた。独裁的な政治は過去の歴史が証明しているように、国民の生活を良くするのではなく、圧迫し自由を束縛するのである。
安倍首相が米国への追随を一層深めていくならば、日本はトランプ大統領の配下に置かれ、日本国憲法はますます霞んでしまう。これでは中国やロシアは日本をまともに扱ってくれない。常に背後には米国が控えているため、それでは日本と政治交渉しても子供を相手にしているようなものだと言われるだろう。終戦後のけじめがつかず、うやむやのままに72年過ぎたことの付けはあまりにも大きい。

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