日本の人口、30年で約2,600万人減少

投稿者 曽我純, 10月23日 午後8:26, 2016年

総務省の『人口推計』によれば、日本の総人口は1億2,693万人(10月1日時点、概算値)と前年比18万人減少した。14歳以下は1,595万人、15歳から64歳までの生産年齢人口は7,634万人、65歳以上は3,463万人であり、65歳以上は14歳以下の2.17倍だ。75歳以上(1,700万人)と比較しても14歳以下は少ない。85歳以上も528万人を数える。すでに65歳以上の総人口に占める割合は27.3%まで上昇しているが、これから長期的に65歳以上の比率は上昇を続け、10年後の2026年には30.5%になると推計されている(社会保障・人口問題研究所、出生中位・死亡中位)。

2022年には65歳以上の人口が生産年齢人口の半分を超えることになり、生産年齢人口の社会保障等の負担はますます重くなる。10年後の2026年には65歳以上が219万人増加する半面、生産年齢人口は618万人減少する。2016年までの10年間の生産年齢人口の減少率は8.6%だったが、2026年までの10年間は8.1%減と減少率は低下するが、2036年までの10年間では11.4%、さらに2046年では15.3%へと減少率は大幅に拡大する見通しだ。今、7,652万人の生産年齢人口は30年後に5,285万人へと激減し、総人口も1億人程度に減少することになる。

このような深刻な人口問題を抱えながら、自民党は総裁の任期延長を図り、憲法改正を目論み、日銀は2%の物価目標にこだわるなど自分たちの都合の良いことばかりに力を注ぎ、長期的な問題は眼中にない。今、憲法のどこが問題なのだろうか。戦後、戦争がなく平和な生活を送ることができたのは、今の憲法があったからであり、自民党の憲法草案のような憲法が制定されていれば、国民は政権からさまざまな圧力が掛けられ、自由が奪われ、日本経済は今以上に疲弊していたであろう。

日銀はなにを根拠に2%に物価を上げたいのか。理由などありはしない。これから30年間に人口が2,600万人ほど減少するというのに、需要が増加し、物価が上がるというのだろうか。どうでもよいことをあたかも大事なことのように、時間と金をかけ何回も会議・議論する。日銀はそうした悪い習慣を踏襲している象徴的な組織といえる。日本の企業が低迷しているのは、日銀のように時間と金の浪費癖から抜け出せないでいるからだ。官から民まで、上から下まで日本の組織は些末な問題にこだわって時間を浪費しているように思う。

安部政権が発足した2012年12月から今年8月までに失業率は1.2ポイント改善し、3.1%に低下した。同期間、雇用者は232万人増の5,722万人に拡大した。最も増加したのは医療と社会保険・介護等であり、いずれも44万人増である。雇用者増加数の37.9%は医療と社会保険・介護等なのだ。増加したと思われる情報・通信の増加数は10万人にすぎない。製造業は34万人増だが、1,000万人割れが続く。

年ベースで2005年と2015年を比較すると、雇用者は231万人増加しているが、製造業は75万人も減少している。医療・保険は236万人、情報通信は31万人それぞれ増加しており、雇用の拡大を牽引していることがわかる。つまり、雇用が伸びているのは超高齢化に伴う医療や介護の需要拡大とスマホ等の急速な普及によるソフトの拡大の分野なのである。医療・介護と情報・通信に巨額の資金が消費されているが、1,000兆円を超える借金漬けの国が、医療・介護を持続させることができるだろうか。スマホにしても「おもちゃ」であるからこれだけ短期間に普及率が7割程度まで上昇したのだろう。1日の数時間もスマホとにらめっこする人が相当数いるとされているが、ゲーム等に興じているならば、やはり問題である。資本主義の原動力である金になるのであれば、マイナス面を顧みず、商品化に邁進することになるのだが、金だけでは資本主義経済の墓穴を掘るということを忘れてはならない。

『民間給与実態調査』によれば、平均給与はほとんど伸びていない。給与がほぼ一定であり、医療・介護費や通信費が増大するならば、他の支出を削るか、貯蓄を取り崩すかのいずれかを採るしかない。医療・介護費の自己負担は少ないが、自己負担以外は公費と介護保険料(40歳以上)から支払われている。だが、公費とはいえその元は税金であり、国民が負担しており、介護保険の負担が増えれば、所得一定では、消費支出のどこかにしわ寄せが生じる。

スマホ等の通信費についても同じで、スマホ代が月数万円も必要になれば、ほかの支出を削るほかない。食料費や被服等の支出が不振なのは、可処分所得の低迷と通信費の増加が大きく影響している。

今年6月末の要介護・支援認定者数は625万人、5年前の2011年6月末比22.1%増だ。さらに2011年を5年前と比較すると16.9%増と直近5年間の増加率が大きくなっている。65歳以上の人口に占める比率も10年前の2006年6月末よりも2016年末は1.1ポイント高の18.0%である。

団塊世代がすべて75歳に達する2024年の75歳以上の人口は2,121万人と10年で32.6%も急増する。今年6月の75歳以上の介護認定者数は548万人と総認定者数の87.7%を占め、75歳以上の人口比では32.2%と非常に高い。この比率を8年後の2024年の75歳以上の人口に適用すると介護認定者数は683万人となる。65歳から74歳までの認定者数を加えると総介護認定者数750万人程度と今よりも125万人増となる。

これだけ介護認定者が増加することはそれに掛かるコストも増大するということだ。所得一定を仮定すれば、介護費用の増加は、他の支出の削減を迫られる。需要は先細りとなるだろう。人生の最終局面を穏やかに過ごせるように支援するとともに育児や保育の支援をいかに果たしていくか、向こう10年間の日本経済に課せられた試練は並大抵の覚悟では乗り越えることはできない。総裁の任期延長や解散総選挙風を吹かせるのではなく、正念場を迎えている日本経済をいかに乗り切っていくかに総力を注ぐべきだ。

 

◆来週、窯焚きの手伝いに備前にでかけます。しばらく「マーケットレター」は休みます。

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