強権政治だけが前面にでたこの1年

投稿者 曽我純, 12月8日 午後4:36, 2013年

いままでの経済・金融政策を続けているだけだが、それを「アベノミクス」などとカタカナで、さも新しい政策のようにみせつけ、日本経済を再生させるように装った。マスコミはこれに飛びつき、連日、「アベノミクス」を連発、政府に取り込まれてしまった。政権にとっては、本質の見えない日本のエコノミスト、ジャーナリストなど赤子の手を捻るくらい簡単なことなのだろう。

安倍政権は独裁体制を築くために、「アベノミクス」を前座に、「国家安全保障会議設置法」、「秘密保護法」を成立させ「武器輸出の新原則」の決定を目指す。最終的には憲法9条や11条などの「憲法改正」を成し遂げ、政権が独断で政治を遂行することができるようにしたいのだ。

「アベノミクス」の鎧のしたには恐ろしい顔が覗いていたが、国民は安倍自民党を選んでしまった。若者は選挙に行かず、中高齢者の男の支援で成立した政権である。経団連をはじめとする経済団体はいずれも安倍内閣の応援団であり、「秘密保護法」にも賛成の立場だった。今の日本の経済界には良識、良心の欠片もないのだ。原発事故以降の経済界の立場も原発推進姿勢を貫き、国民の原発廃止とは正反対である。目先の利益だけを優先し、まじめに日本を考えているとはとうてい言えない。これでは経済だけでなく、日本のすべての分野に暗い雲が立ち込め、生活は息苦しくなるだろう。

公共事業と消費税の駆け込み需要で支えられている経済は来年4月以降、消費需要の減少で悪化するが、そのようなことなどどこ吹く風のように株式は舞い上がっている。政府と一体運営の日銀の国債購入や米株の最高値更新などにより、実体経済との紐帯は切れてしまった。実体経済との関係がなくなれば、いまの株価妥当性の根拠もなくなる。金融・財政政策によって日本経済の実力がわからなくなってしまい、株式は宙ぶらりんになってしまった。

 12月2日に発表された『法人企業統計』によると、売上高は前年比0.8%とわずかだが、6四半期ぶりにプラスに転じた。製造業は0.3%と小幅であり、プラスの業種は限られている。一方、非製造業も1.1%とゆるやかであり、不動産、建設、電気業などの政策絡みが強い。企業規模別では大企業(資本金10億円以上)だけがプラスであり、中堅・中小企業はいずれも前年割れである。

 営業利益は中堅・中小企業もプラスになったが、38.8%も伸びた大企業に比べれば低い伸びである。利益は拡大したが、設備投資には慎重であり、全体では1.5%しか伸びていない。もっとも利益が伸びた大企業の設備投資はマイナスから抜け出せず、4四半期連続減となった。業種別では製造業の営業利益が45.0%と非製造業の17.4%を大きく上回った。特に輸送用機械は91.5%も急増し、製造業に対する営業利益の寄与度は4割に達した。電気機械や情報通信機械なども円安ドル高の恩恵を受け大幅に利益を伸ばした。非製造業の営業利益も一部の業種に偏っており、全体に拡がってはいない。建設業、電気業、不動産業の3業種で非製造業営業利益増加額の62.8%を占めている。

営業利益が拡大したのは、円安や政策絡みというより、人件費を削減したことの要因が大きい。売上高が前年比0.8%しか伸びず、営業利益が25.2%も増加したのは、売上原価を0.7%増に抑え、販管費を2.4%も削ったからである。人件費は前年比5.0%減と2009年第1四半期以来、4年半ぶりの大幅な削減率だ。人件費の内訳をみると、役員の給与は2.9%削減したが、賞与は14.9%増加している。一方、従業員の給与は5.9%切り下げ、賞与も2.6%減と削減は止まらない。福利厚生費も4.7%の大幅減である。こうした人件費が前年同期と同じであったと仮定すれば、営業利益はほぼ横ばいとなる。

人員も3.8%前年よりも少なくなり、リストラは終息していない。だが、役員数は3.1%と2四半期連続増だが、従業員数は4.2%減と厳しい雇用環境は変わらず、従業員1人当たりの報酬(給与+賞与)は前年比1.2%減少した。結局、企業の利益捻出は従業員の報酬削減であり、もっとも安易な方法に頼り続けているのである。これでは最終消費が伸びるはずがない。個別企業にとっては、手っ取り早い利益拡大になるが、経済全体では有効需要の不足となり、経済縮小に繋がる。企業もそのことはわかっているので、多少のことでは設備投資に踏み切らない。需要不足はますます深刻になり、公的部門は大きくならざるを得ないことになる。

今年9月末の企業の総資産は1,350兆円となり、2四半期連続で増加した。負債は減らし、純資産は前年比4.2%増の527.1兆円。自己資本比率は39.0%、前年を1.1ポイント上回った。企業は資本剰余金や利益剰余金にどんどん資金を溜め込んでいる。溜め込めば溜め込むほど、経済は動かなくなる。個別企業からすれば自己資本比率が高くなり、安全性は増すけれども、経済全体は活力が削がれ沈滞していくことになる。家計の安全志向が企業にも波及し、家計も企業も過小消費、過小投資へと進んでいる。

安倍政権に移行してから約1年経過するが、企業は給与を出し惜しみ、最終消費は低迷を続けるなど、日銀との一体政策はなにも変えてはいない。この1年ではっきりしたことは、強権政治が前面にでてきたということである。嘆かわしいことである。安倍政権を支持する中高年の男たち、若い世代が可哀想ではないか。

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