日経平均株価は4週連続安となり、週末値では6月第1週以来約4ヵ月ぶりの安値だ。株価下落の最大の要因は期待収益率の低下である。輸出の減少で製造業の生産が低下し、粗利益率が低下しているからだ。製造部門の悪化は先行きの給与や賞与の削減を予想させ、消費マインドを悪化させるだろう。消費の不振はすでに下方修正している設備投資計画の一層の下振れを予想させる。そうなるとますます企業の収益力は低下し、株価も下値模索ということになる。
日経平均株価は8,500円台に低下し、相当下がったけれども、まだ底はある。主要国の株価指数をみると、3ヵ月比で下落しているのは日本だけである。あれだけ騒がれている欧州でさえ株価は底固い。欧州以上に日本経済は良くなく、日本企業の収益力は劣るということなのだろう。
福島原発がこれだけ酷い事故を起こし、収拾のめどもつかない状態にありながら、原発は必要だと嘯く政治・経済界のボスなどをみると、日本の政治・経済は内部崩壊しているのではないかと思う。内部崩壊のプロセスを歩んでいるのであれば、株価の底がみえないのは当然である。
日本株は買えば買うほどやられる。日本株には手を出さないのが最も賢明なのである。証券会社に唆されて株式に手を染めるようなことをしてはいけない。いうまでもなく、投資信託も金を溝に捨てるような代物である。デフレで資産は目減りしていることは、企業価値も減価しているのだ。株式を買うとは、そのような減価している代物を買っていることなのである。
10年物国債利回りは6月よりも低く、実物資産からの逃避が続いている。それでいて株式出来高は依然多く、株数ベースの売買回転率は100%を超えており、株式のマネーゲーム化は止まるところを知らない。株式売買回転率は1980年代後半の株式バブル期よりも現在のほうが高い。まさに瞬間の鞘取りゲームに興じているのだ。パソコン、スマホからゲーム感覚で売買を繰り返している姿が想像できる。売買する瞬間には実体経済などまったく関係してこない。単に、株価の値動きに一喜一憂しているだけなのだ。だが、すこし長い期間をとれば、経済や企業収益が株価形成に影響力を持ってくる。いつまでもファンダメンタルズを無視していても最終的には逆らえなくなるからである。気付いたときには、ときすでに遅しということを、しばしば経験してきた。みながそう思ったときには、流れは一方通行となり、株価は激変することになる。1日で株価は断崖のような落差を生じ、また、一方通行なので、気配だけが下がり、実際の売買は不可能になる。だから、過度なマネーゲームは禁物なのだ。株式取引税を導入し、マネーゲームを抑えることで、経済への影響を小さくしなければならない。
機械受注統計によると、8月の民需(船舶・電力を除く)は前年比-6.1%と2ヵ月ぶりにマイナスとなった。民需の傾向は明らかに悪化しており、四半期でみると2010年7-9月期の13.9%をピークに低下しており、今年4-6月期は-1.7%と09年10-12月期以来の前年割れである。民需のなかでは特に製造業が前年比-18.4%と冷え込んでいる。一方、非製造業(船舶・電力を除く)は3.9%と3ヵ月ぶりにプラスに転じたが、製造業の悪化に引きずられて、今後マイナスになるだろう。7-9月期は4.3%前年を下回ると予想されている。
民需以外では外需と官公需を挙げることができるが、重要なのは外需で民需に匹敵する規模を擁している。その外需は8月、前年を31.1%も下回ってしまった。四半期でも昨年の7-9月期以降ほぼ不振であり、世界経済悪化の影響があらわれているといえる。外需の大幅減により、総受注額も8月、前年比18.6%も減少した。
米国の非軍事資本財受注(航空機を除く)は8月、前年比5.2%減、ドイツの資本財受注も3.3%前年を下回っており、世界的に設備投資は冷え込んできている。日本の機械受注も外需を中心に弱い状態が続き、底を打つ兆しはなかなかみえないのではないだろうか。
原発の廃止もうやむやにするなど、日本の不良資産処理は見通すことが出来ず、マイナス成長から抜け出すことはできないだろう。米国はオバマ政権の力が弱くなってきており、財政面から景気を支えることが難しくなってきている。金融機関の不良債権をFRBが肩代わりするなど不良債権処理は道半ばであり、不良債権が米国経済の正常化を阻害している。米国以上に不良債権の取り組みが遅れている欧州は、景気後退期に入っており、しかもそのようなときに緊縮財政を進めるというばかげた政策によって、さらに酷い経済状態が人為的に作り出されつつある。
そもそも経済の土台が揺れている日本は、欧州の景気後退や米国経済の重い足取りによって、さらに大きな揺れに見舞われることになる。直面している問題を片付ける意志もなく放置しているあいだに、新たな問題が発生する。そしてどんどん宿題が溜まっていく。日本の政治、経済の置かれている状況はそのようなものであろう。20年以上もの腑甲斐無い経済をみると、日本のバランスシートは悪くなる一方のように思える。