4月12日発表の人口推計(総務省、2018年10月1日現在)によれば、日本の総人口は1億2,644万人、前年比-0.21%、日本人人口は1億2,421万人、同-0.35%である。いずれも8年連続減であり、しかも減少率は拡大している。出生減と死亡増により、日本人人口は前年よりも42.4万人も減少しており、5年前よりも20万人ほど減少幅は拡大しているが、外人の流入増で総人口は26.3万人減に留まっている。65歳以上は総人口の28.1%に上昇する半面、15歳未満は12.2%へと低下し続けている。2015年以降、75歳以上が15歳未満を上回っており、人口構成はますます歪になっている。
15歳未満の人口が減少し続けていることは、出生数が減少していることでもある。2018年の出生数は94.4万人と3年連続減、10年前の2008年比では16.4万人減である。これだけ人口減と少子高齢化がやかましく言われているにもかかわらず、出生減に歯止めはかからない。第2次安倍政権が発足してから6年以上経過するが、その間、出生数は10.3万人減少した。その前の6年間の4.4万人減の2倍以上の減少だ。
過去6年間、保育園の待機児童をゼロにすることもできなかった。特定機密保護法や安保法案などはごり押して法案を成立させ、思いを果たす。だが、日本の抱えている最重要問題である人口減、出生数の減少については本格的に取り組んでいるとはとうていいえない。
都道府県別人口増減率をみると東京ほか6県が人口増だが、増加率トップの東京も自然減であり、増加したのは外人の流入超による社会増が大きかったからだ。自然増は沖縄県だけで、後はすべて自然減なのである。
2017年の合計特殊出生率は1.43と2年連続で低下しているが、都道府県別では東京が1.21と最低だ。それだけ東京で子育てをすることが大変であることを裏付けている。子育てを支援するためにはさまざまな取り組みが必要だが、まずは保育園に入れることは必須である。預けることができなければ働くことができず、退社を余儀なくされる。
2018年の待機児童数は19,895人、前年より6,186人減少した。2012年比では4,930人減であり、6年前比の減少数が少ない。雇用拡大による女性就業率の上昇が過去6年で保育利用率を10ポイント引き上げた。保育所利用の増加が保育所拡大を上回り、待機児童を大幅に減らすことができなかった。
厚生労働省の官僚の予測が甘かったのである。年金問題から最近の統計まで数々の不正をしでかした役所であれば、予測が外れるのはやむを得ない。信頼するには当たらない役所なのである。
特に、東京の待機児童は5,414人と全国の27.2%を占めている。これでは全国最低の合計特殊出生率を引き上げることはできまい。仕事と子育ての両立は保育所を確保してはじめて成り立つが、これだけでも子育ては成り立たない。多くは核家族、ないしは1人親での子育てだから、企業の支援が欠かせない。勤務時間、休暇等子育てができる労働環境を整える必要がある。特に男の育児休暇を法律で義務づけるべきだ。「働き方改革」法案が成立したが、残業時間を繁忙期月100時間未満、有給休暇の5日取得などこれでは働き方改革とはとてもいえたものではない。子育て休暇制度、残業時間は最大月20~30時間、有給休暇の完全消化といったことが最低限の労働条件だ。男女同一賃金を義務付け、子育て中の残業は免除されることも法律できめなければならない。
子育ては1人では無理だ。ノイローゼになってしまう。1人目はまだしも、2人、3人となれば気が遠くなってしまうのではないか。初産年齢が30歳を超えていることも、多産を難しくしている。体力的にピークを越えているため、子育てがより厳しくなる。
子育てと老人介護は途轍もなく人手が必要である。それらの場所の確保も大変だが、人手を集めるのもまた困難を極める。そこで、高校や大学を卒業して就職する前に2年間、必ず保育園と介護施設で1年ずつ就労しなければならないという制度を作ってはどうだろうか。実際に、現場に入れば、保育や介護がいかに大変な仕事かがわかる。そこでの日々の目の回るような体験は長い人生できっと役立つだろう。役所に入るひとも、企業に就職するひともすべてを対象にし、現場を十分に体験してもらう。若者もいずれ子育てし、老人になっていくのだから、このふたつの仕事は他に代えがたい経験になるだろう。