大型予算も当てにできない下振れを大きくする経済構造

投稿者 曽我純, 7月20日 午前8:24, 2020年

世界の新型コロナ新規感染者は過去最多を更新、米国でも16日、7.7万人増と増加に歯止めは掛からない。7月のNY連銀の景気現状指数は17.2と前月の-0.2から回復したが、先行きは6月の56.5から7月38.4へと低下した。また、ミシガン消費者センチメント指数も7月は73.2と6月の78.1から悪化している。連日、新規感染者が過去最多を更新する報道を受け、米消費者や企業は行動を慎み、気持ちを引き締めている様子が窺える。

新型コロナは短期で収束することはなく、数年は辛抱を余儀なくされるだろう。今は梅雨で湿度が非常に高いが、関東などは秋から冬にかけて空気はカラカラになる。その時期には新型コロナが猛威を振るうかもしれない。そのような前提で個人生活や経済の運営を考えていかなければならない。最悪の時のことを想定して備えておかなければ、大混乱に陥ることになる。

いまだにオリンピック開催にこだわっているが、現状を直視すれば夢想に等しい。いつものことだが、決断力のなさが労力と金と時間を無駄にしてしまう。日本経済は急速な景気後退下にあり、オリンピックなどに費やす労力や金はない。すでに国は借金まみれになっており、無駄な支出などできないのだが。税金なので借金など意に反さず、政治家の見栄だけで開催に血眼になっている。完全に個人の欲望を満たすことだけに執着し、国のことなど頭の片隅にもないのだ。

今年度、名目GDPが40~50兆円の減少になりそうだが、政治家は新型コロナ一点張りで、戦後最大の経済不況にはまったく無頓着だ。これまでにない国債発行と一般会計予算によってどうにかなると楽観的に現状を捉えているのだろうか。安部首相の無駄なマスク配布や持続化給付金など巨額の委託費にみられるように、本当に必要なところへ金が届くまでに相当な金が消えてしまう。予算は増やしたけれども、配分する過程で雲散霧消、実際には必要とするところに金が行き渡らないというケースが多いのではないだろうか。予算を急に増やしても使い方が分からないまま、金を適当に配る、という消化することだけが目的となってはいまいか。

米発の金融危機に襲われた2008年度の一般会計予算は84.6兆円、前年度比2.8兆円の増加である。税収が6.8兆円も減少したため、国債発行額を7.8兆円増額しても、大幅な予算拡大とはならなかった。不況の深刻化に伴い、2009年度の国債発行額は前年度比18.8兆円増の51.9兆円、一般会計予算は100.9兆円と初の100兆円超えとなった。

2009年度の一般会計予算は2007年度から19.1兆円、国債発行額は26.6兆円も増加したが、2009年度の名目GDPは491.9兆円と2007年度を39.0兆円も下回っている。民間最終消費と民間設備投資が2年間で9.9兆円、16.3兆円それぞれ減少したが、公的支出は1.5兆円しか増加していないからだ。19.1兆円の予算はどこへ消えてしまったのだろうか。

実需の伴わない金額だけ膨らむような予算を編成し、真水はわずかに過ぎなかったと捉えるほかない。そうでなければ2009年度の名目GDPはこれほど減少していないはずだ。短期間で性急な予算付けとなれば、ただ、膨らますことしかできないのだろう。やるとすれば、今回のように再々委託のようなまるでブラックボックスと言える、だれも中身がわからない方法を駆使するほかないのだろうか。そこでは汗水たらし稼いだお金だという尊さなど微塵もない。ただただ、言われるままに巨額の予算を采配することだけに専念しているように思える。

2020年度の一般会計予算は160.1兆円、前年度比55.5兆円も増加する。国債発行額も90.1兆円の57.5兆円増と今までにない増加額であり規模だ。規模だけは過去最高だが、真水はどれくらいだろうか。数字のマジックが相当施されており、今年度の予算を真正直に捉えることは危険である。

さらに今年度の税収見積もり額は63.5兆円と前年度58.4兆円よりも多い。今年度の税収は恐らく50兆円前後に落ち込むはずで、予算を13兆円ほど下回るだろう。新たに国債を発行しなければ、今年度の一般会計予算は160兆円ではなく147兆円になると予想する。

2007年度から2009年度の2年間で一般会計は19.1兆円増加したが、公的支出は1.5兆円増にとどまっていることから想像すれば、2020年度にこれだけ大規模の一般会計予算を組んでも5兆円程度の増加にとどまるかもしれない。予算を作った財務省でさえ真水の部分は把握しきれていないはずだ。予算の規模だけで国民の目を欺き、期待を持たせようとしている。

2019年度と2009年度の名目GDPを比較すると、総額60.6兆円増加しているが、もっとも拡大したのは民間企業設備(住宅含む)の29.4兆円で増加額の約半分を占める。次が、公的支出の18.2兆円、3番目に民間最終消費支出の17.5兆円が来る。民間企業設備の拡大によって、そのGDP構成比は2019年度、18.9%と10年前に比べ2.4ポイント上昇する半面、民間最終消費支出は55.1%へと3.2ポイントも低下した。

民間最終消費支出の比率が2000年度以来19年ぶりの水準に低下する一方、民間企業設備の比率は高水準に張り付いている。このことは経済が不況に入ったとき、10年前に比べて、経済収縮の度合いがより激しくなることを教えてくれる。

不況期でも比較的安定している民間最終消費支出の割合が高ければ、景気の振幅は小さくなるが、その比率が低く、民間企業設備の比率が高ければ、景気の波はより大きくなる。民間最終消費支出の比率が低く、民間企業設備の比率が高い今、不況下にあることは、景気の谷がより深くなることを示唆している。

巨額の財政赤字による景気刺激策も10兆円をはるかに超える民間企業設備の急落を補えるものではない。長期化する新型コロナへの備えや雇用不安などから消費者購買意欲は低下してきており、超過貯蓄が減少しながらGDPの縮小が始まっている。公的支出による投資水準の引き上げが、超過貯蓄をどの程度吸収できるかに経済の行方は掛かっていると言える。

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