日本の内需は弱く、外需も不振であり、景気は後退している。1月の輸出は前年比12.9%も減少し、輸出で支えられていた、企業業績の雲行きは怪しくなってきた。1月の電力需要によれば、総販売電力は前年比8.7%も減少し、電力は大幅な超過供給の状況下にある。大口電力需要も3.2%減少しており、製造業の生産減は顕著である。10-12月期の実質GDPは前期比0.4%減と2四半期ぶりのマイナスになったが、今年1-3月期も前期比減となりそうだ。このような経済状態をみれば、急落したからといって、日本株に買いを入れる主体は登場しないだろう。為替についても経常黒字の拡大に加えて、米国が日本よりも消費者物価上昇率が大きく、日米物価格差が拡大しており、円高ドル安を正当化している。年度末に向けて円ドル相場が一段の円高ドル安に進行することになれば、日本株は激しい売りを浴びることになるだろう。
ユーロ円の短期金利はマイナスになり、10年物国債利回りもほぼゼロとなった。資金の借り手が一層有利な状況になったが、資金需要は出てこないのである。すでに金融機関は巨額の現金を保有し、金利も長期間、歴史的低水準で推移していたため、僅かな低下で借手の意欲を刺激することは難しい。借手が多少の利息を得られたとしても、デフレが深刻になり、貨幣価値が上昇することになれば、借手の負債は増価することになる。
黒田総裁はマイナス金利の幅を拡大できるというが、そうすれば日銀が円を強く否定することになり、円が貨幣としての役割を担えなくなる。貨幣経済は立ちいかなくなり、日本経済は未曾有の混乱、パニックに陥ることになるだろう。信用で成り立っている円の依って立つ基盤がなくなるからだ。貨幣が貨幣として存立しているのは、貨幣の流動性打歩がプラスであるからだ。マイナス金利を導入すれば、プラスの流動性打歩を否定することになる。貨幣保有者は流動性を手放すことに対する報酬がゼロになったため、現金選好が一層強まるだろう。
電力需要は前年を8.7%も下回り、電力は余りに余っているが、原発や太陽光発電など、コスト高の電源開発が進められている。化石燃料で十分に対応可能であるにもかかわらず、余分な設備をこしらえたり、原発を再稼働させるという理屈に合わない行動をとる。日本ではこうした理不尽なことがさまざまなところで行われており、無益で無駄な仕事に膨大な時間が費やされ、本来取り組まなければならないことがなおざりにされている。
だから、日本経済はいつまでも不況状況から抜け出すことができず、1人当たりGDPでは世界順位を下げている。東京電力の原発事故の処理コストは日本経済に重く圧し掛かっている。原発処理という核廃物処理にいくら掛かるかわからないほどの金が必要なのだ。
だが、東京電力は国の資金供給で生きながらえているが、社員の平均給与は2014年度で年709万円(平均年齢42.6歳)と2年連続で上昇、2012年度比14.5%も増加している。2014年度の平均給与を関西電力(平均年齢42歳)と比較すると東電が121万円も多く、中部電力よりも高い。原発事故を起こし、本来倒産していた東電の給与が同業他社を上回り、産業別でもトップクラスの給与なのである。太陽光発電を推進した結果、電気料金の上乗せ額は増加し、税金まで投入して電力会社を支えるという不可解な仕組みが出来上がっている。
国税庁の「民間給与実態調査」によると、2014年の平均給与は415万円(平均年齢45.5歳)だ。男514万円に対して女272万円である。男の比較でも東電の給与は200万円近く高い。非正規の給与は169万円と正規(477万円)との格差はあまりにも大きすぎる。100万円以下所得者は全体(4,756万人)の8.8%、300万円以下では40.9%を占めており、しかも低所得者の割合は幾分高くなっている。 東電の2011年度給与は761万円だが、2014年度は709万円まで回復している。事故などなかったかのような東電の給与拡大である。非正規の人からみれば東電の給与は夢のような高給なのである。日本社会はどうなっているのかという一面を東電給与は明らかにしている。
昨年10-12月期の実質GDPは前期比0.4%減少した。7-9月期は0.3%のプラスだったが、2四半期ぶりのマイナスとなり、景気は後退しているといえる。主力の民間最終消費支出が0.8%も落ち込んではどうすることもできない。民間設備投資は増加したが、公的部門は減少し、内需はマイナスになった。純輸出はプラスだが、伸び悩み、内需のマイナスを埋めることはできなかった。大幅減となった民間最終消費支出は2011年7-9月期以来約4年ぶりの低い水準に戻った。
黒田総裁が大規模な国債購入策を導入した2013年4-6月期と比較しても実質GDPは0.3%しか増加していない。民間最終消費支出が2.9%も減少していることが、不振の最大の要因だ。純輸出の拡大によりGDPは微増にはなっているが、内需をみれば微減だ。黒田総裁の推進している金融政策は内需には全く効いていないことが証明された。
名目GDPでみても前期比0.3%減と2四半期ぶりのマイナスだった。やはり民間最終消費支出が0.8%減少したことが、致命的となった。消費税率が引き上げられた2014年4-6月期以降の民間最終消費支出は低空飛行状態だったが、昨年10-12月期に一気に下がり、2013年1-3月期以来の消費不況となった。昨年央まで上昇していた株高は消費にはまったく影響していない。失業率が改善し、雇用環境はよくなっているけれども、消費支出は悪化している。若年層の給与が非正規拡大でむしろ減少していることが、消費不振の原因だと考えられる。人口減と高齢化による消費減少は避けがたく、消費の基調は右肩下がりだ。
東電に国は7兆円の資金援助をしているが、この先もまだまだ援助は続くだろう。1キロワットも発電していない「もんじゅ」に維持費だけで毎年200億円も投下している。「六ケ所再処理工場」のコストも膨らむばかりだが、続行するようだ。いったい廃炉や核廃物の処理等原発関連にいったいいくらの資金が必要になるのだろうか。非人間的で理不尽極まりない原発関連のコストが日本経済を押しつぶそうとしている。