4-6月期の実質GDPは前期比-1.7%と2012年10-12月期以来、6四半期ぶりのマイナスになった。下落率は2011年1-3月期以来だが、寄与度をみると、最終消費支出が今回の-3.1%に対して2011年1-3月期は-1.1%であり、消費税引き上げ後の1997年4-6月期(-1.9%)よりも大きく落ち込んでいることがわかる。3%の消費税引き上げによる消費マインドの低下は著しく、かなりの期間、この影響は尾を引くことになるだろう。民間住宅や民間設備投資の寄与度もマイナスとなり、これら3部門の合計寄与度は-3.8%になる。 一方、政府最終消費支出は0.1%の寄与にとどまり、公的固定資本形成は寄与しなかった。前期比-3.8%ものマイナスが-1.7%に縮小したのは在庫と純輸出が1.0%、1.1%それぞれ寄与したからだ。消費税引き上げ後の販売不振により、在庫が前期比4.49兆円増加したほか、輸入が前期比-5.6%と輸出を大幅に上回るマイナスになり、純輸出は4.27兆円も改善した。
名目GDPは前期比-0.1%の小幅減にとどまったが、最終消費支出の-3.2%を始め民間住宅、民間設備投資も減少し、名目GDPの小幅な減少とは実際の経済は違う。実質同様、在庫増と輸入の大幅減によりマイナス幅は縮小した。
7-9月期には増加した在庫の減少と輸入が正常な姿に戻ることなどから、逆に在庫と純輸出はGDPにマイナスに作用するだろう。最終消費支出は簡単に良くなることはなく、在庫が積みあがっている資本財が回復するには時間を要し、民間設備投資の不調は続くことになる。今は消費税引き上げによる反動減があらわれているが、基調は緩やかな回復が持続しているという政府や日銀のシナリオは崩れるだろう。
GDP統計の翌日に公表された『機械受注』によると、船舶・電力を除く民需は前月比8.8%増加した。だが、4月、5月の2ヵ月連続大幅減にして戻りは弱く、4-6月期は前期比-10.4%と2009年1-3月期以来の大幅減となった。7-9月期は前期比プラスが見込まれているが、2.9%と小幅であり、前年比では2四半期連続のマイナスが予想されている。このように今年度上期の冴えない機械受注を前提とするならば、今年度下期の民間設備投資は頼りないものになりそうだ。
デフレーターは前期比1.7%と3四半期連続増、前年比では2.0%と2009年4-9月期以来のプラスだ。1995年以降、これだけ物価が上昇したことはなく、購買意欲を削ぐことは間違いない。1997年4-6月期には前年比0.9%の上昇であり、プラスは4四半期続いたが、1998年4-6月期は0.3%下落した。今回も同じように、来年4-6月期には再びマイナスとなり、デフレ基調は持続するだろう。そもそも人口が減少し、超高齢化社会に突入しているときに、消費が増加することなど起こらない。
購買意欲を決める雇用者報酬は名目前年比1.3%伸びたが、昨年10-12月期の1.6%にはとどかず、物価の上昇率を下回り、実質では2.2%減少した。雇用者報酬が名目GDPの伸び率1.9%を下回ったことは労働分配率の低下を示している。企業は引き続き給与を売上の伸び率以下に抑え、利益確保を最優先する姿勢を貫いている。これでは個人消費が伸びるはずがなく、結局、企業は自分で自分の首を絞めることになる。
名目では民需は前期比2.1%減少したが、公的需要は1.1%増加した。公的需要は2008年第3四半期(113.6兆円)を底に、2014年4-6月期には125.1兆円に増加している。2008年の金融危機による不況対策が公的部門の拡大をもたらし、2007年1-3月期には22.3%まで低下していたGDPに占める公的部門比率は、2014年4-6月期には25.7%に上昇した。ちなみに米国の公的部門・GDP比率は18.3%と日本を7.4ポイントも下回っている。
貯蓄・投資バランスに従えば、純輸出がマイナスになれば、民間設備投資と公的部門の拡大がなければ貯蓄と投資は釣り合わない。今後、純輸出のマイナスが続き、民間設備投資が縮小していくことになれば、公的部門の拡大を図らなければ、日本経済を維持することは難しい。日本経済の公的部門の比率はさらに高くなり、国の債務残高は積み上がるだろう。
民間設備投資は2010年1-3月期の59.9兆円を底に拡大し、2014年4-6月期には69.9兆円、対GDP比では14.4%と2010年1-3月期の12.5%から1.9ポイントも上昇した。米国の民間設備投資・GDP比(12.5%)よりも日本が高く、日本経済は民間設備投資依存度の高い国だといえる。マイナス成長下でこのような民間設備投資のウエイトが高いことは、そうでない国に比べて経済変動が激しくなりやすい。
日本のGDPが公表された翌日、ユーロ圏GDPが発表され、これで4-6月期の日・米・ユーロ圏のすべてのGDP統計が出揃った。ユーロ圏の実質GDPは前期比ゼロと2四半期連続で低下し、2013年1-3月期のマイナス成長以来の不振となった。2013年4-6月期以降、4四半期連続増だったが、伸び率は弱くたどたどしい足取りであり、水面下に落ち込むリスクが増してきた。ユーロ圏で最大の経済力を誇るドイツが前期比0.2%減少したほか、イタリアも0.2%減となり、これで2四半期連続減だ。暦年ではユーロ圏の実質GDPは2013年まで2年連続のマイナスであり、ユーロ圏経済は後退から抜け出ていなかった。4-6月期のGDPの伸びが止まったことから、2014年もマイナスに陥る可能性が高くなってきた。
ドイツのGDPが前期比マイナスになったことから、すでに低下傾向を示していたドイツ国債利回りは週末、0.97%と1%を下回り、過去最低を更新した。名目GDPは前年比2.6%伸びていることから、現状の利回りは異常に低下しているといえる。2013年の1-3月期の名目GDPは前年比0.3%に落ち込んだが、ドイツの名目成長率は再びゼロ前後まで落ち込むことになるのだろうか。
米GDPは1.0%増と2四半期ぶりにプラスに転じたけれども、在庫の寄与度が大きく、実際の需要は弱いものであった。7月の米小売売上高は前月比横ばいとなり、鉱工業生産は前月比0.4%増加したが、自動車関連に依存しており、健全な伸びではない。日本経済は大幅に落ち込み、ユーロ圏は横ばいとなり、世界経済を牽引できるような力強い地域は見当たらない。
日本経済は消費を中心に低迷するが、世界経済が行き詰まっていることから輸出増による経済の引き上げは期待できず、公的部門に頼らざるを得ない状況が強まっている。だが、すでに公共事業は高い伸びを続けており、それを支えるために日銀は大量の国債を購入している。このような投与をいつまでも続けるわけにはいかないのだが、すでに薬漬けになっている日本経済は、おいそれと薬を止めることはできない。そのような決断を下せば、株式は暴落、企業収益は激減し、日本経済は奈落の底に落ちることになるだろう。政府と日銀は一体どうするつもりなのだろうか。天文学的に積み上がった国の借金の責任はだれもとらず、すべての付けは国民に回ってくる。原発とまったく同じなのだ。