週末発表の7月の経済指標は改善傾向を示したが、株式は冴えず、週末値では6月第3週以来の低水準で引けた。月末値では小幅だが、4ヵ月連続安と完全に頭打ちとなっている。米金融政策の変更や消費税率引上げなどの決定が間近に迫り、それにシリアや中東情勢も加わり、市場参加者を神経質にさせている。が、基本的には4ヵ月連続安でも8月末の日経平均株価は前年を50%超も上回っており、とても買えるような水準ではないことが、膠着状態を招いている最大の原因だ。なにしろ日経平均株価は8,000円台から15,000円台にまで急騰し、下落したとはいえ13,000円台はまだ高い。大幅な調整が入り買い意欲を実行に移すことができるような株価に戻らなければ、買い手はあらわれないだろう。
株高の原動力になった為替相場も週末値では変化に乏しく、株価を動かすような力はなくなってきている。1997年4月の消費税率引上げでは、引上げから1年以上もの期間円安ドル高が進行したが、株価は引上げの1年以上前にピークを付け、下降しつつあった。物価上昇に伴う円安だが、消費税率引上げ後1年3ヵ月後に物価が前年割れになると、為替相場は円高ドル安に転換した。
株式が消費税率の引上げ前から軟調になったのは、先行き経済が悪化し、企業業績も落ち込むと予想されたからである。消費税率が上昇すれば、駆け込み需要の反動があらわれ間違いなく個人消費は減退し、企業の売上はマイナスに陥るだろう。企業は、売上が減少しなくても減少すると予想すれば、設備投資に踏み切ることはない。売上が先行き落ちると予想するときに、設備投資をする企業家はほとんどいないはずだ。そうだとすれば、消費も設備投資も冷え込み、企業業績はずいぶん悪くなることになり、株式は売りとなる。株式相場はすでに来年度の企業業績に目を向けているのである。
7月の鉱工業生産指数は前月比3.2%増加し、前年比でも1.6%と1年ぶりに前年を上回った。だが、出荷指数は前月比1.3%増にとどまり、在庫は1.5%増加した。設備投資の判断材料になる資本財出荷指数(輸送機械除く)は前月比3.7%増加したが、在庫も2.5%と4ヵ月連続で増加し、企業が予想しているように出荷は伸びず、在庫が溜まりつつある。
四半期でみると4-6月期の資本財出荷指数は前期比0.2%減である。前回の消費税率引上げ時には引上げまでは資本財出荷は伸びていたが、今回、指数はすでに低下傾向にある。消費税率の引上げには関係なく、企業は需要は長期的に伸びないとの前提で設備投資を考えているように思う。
『法人企業統計』によると、企業の売上高は消費税率が引き上げられた翌四半期の1997年7-9月期から前年割れとなり、営業利益は同年10-12月期、設備投資は1998年1-3月期からマイナスとなった。売上高は9四半期連続の前年割れとなり、消費税率引上げの影響の大きさが読み取れる。
今週、4-6月期の『法人企業統計』が公表されるが、1-3月期までの売上高は4四半期連続のマイナスであり、営業利益は3四半期ぶりにプラスになったが、設備投資は2四半期連続の前年割れであり、引上げ以前から企業業績は良くなく、設備投資も低迷している。たとえ、消費税率引上げ直前まで業績が拡大したとしても、その後の業績は暗澹たるものになるだろう。
総務庁によると、3月末の日本の総人口は1億2,639万人と前年よりも26.6万人減とこれで4年連続の減少だ。2006年に戦後初の人口減を経験したが、2008年、2009年はやや持ち直した。が、2010年の微減後、2011年からはそれまでの前年比0.01%減から0.11%減、さらに2012年からは2年連続で0.21%減へとマイナス幅は一気に拡大した。
生産年齢人口(15歳~64歳)の減少は著しく、今年3月末では7,895万人と前年よりも124万人も減少した。生産年齢人口はすでに1996年以降減少し続けているが、減少幅は急速に拡大しており、経済への影響度は年を追うごとに大きくなっている。団塊世代最後の昭和24年生まれの人が来年度65歳になり、完全に生産年齢人口から抜けることになる。
そうした人口問題の経済へのインパクトが大きくなっているときに消費税率を引き上げるというのである。1997年の生産年齢人口の減少は約8万人、それが今年は124万人に膨れており、来年はさらに増加するだろう。総人口の減少幅もより大きくなり、消費需要を一層引き下げることになる。
日本経済は構造的にとっくに縮小経路に入っているのである。無理やり拡大させるとすれば、公的部門の拡大に頼るしかない。しかし、公的部門をいつまでも打ち出の小槌のように使うことはできない。60歳台にはいれば、それまでの貯蓄を取り崩すことになり、家計の金融資産は減少し、貯蓄が財政赤字をファイナンスすることが難しくなるからだ。
いままで膨れに膨れていた身の回りの生活用品や食材・エネルギー等を見直し、外部経済の部分をできるだけ家庭に取り入れ、日本経済をスリムにする必要がある。パソコン、スマートフォンやタブレットで現を抜かし、GDPに貢献することも慎まなければならない。そうしなければ、日本経済は縮小過程にうまく入り込んでいくことができない。まさに団塊世代は、これまでの多消費外部経済の生活を改め、縮小経済に適した生活の構築に向かっていかなければならないのである。