円売り・株安のレールを敷いた政府と日銀

投稿者 曽我純, 2月23日 午後4:17, 2014年

安部政権は自ら墓穴を掘りつつある。海外から安倍首相の国家主義的政治姿勢は異様だととられており、四面楚歌に陥るのではないだろうか。思想信条を共有する仲間内政治の脆さが露呈している。仲間の中だけで通用し、それこそグローバルにはまったく通用しない考えを振り回す幼稚な仲間たちである。安倍首相の側近やブレーンといわれる人たちが、こうも幼稚であれば、中国や韓国との関係だけでなく、欧米などにも相手にされないことになり、日本は孤立化することになるだろう。

戦後69年、戦争がなく平和に暮らせてきた土台の憲法を変えるという。集団的自衛権をできるだけ速く行使できるようにしたいという。まさに子供のようだ。選挙で大躍進したのでなにをしてもよいと考えているのだろうか。憲法解釈も首相がするという。あまりに傲慢になりすぎて、まずは海外にそっぽを向かれることになる。政治もやはり外から攻められ崩れていくのだろう。2012年12月の衆議院選挙では自民党への投票数は小選挙区で有権者数の25%、比例代表で16%にすぎないことを心に留めておく必要がある。

安倍首相は政治主導で財政と金融政策を総動員したが、実体経済の足取りは代わり映えしない。マイナス成長を続けていた経済を無理やり成長させることはできないのだ。無理をすればどこかに皺寄せし、経済は歪んでしまう。元に戻すのに大変な労力を要する。1990年代以降の金融機関の不良債権処理で痛い思いをしたことを忘れてしまったのだろうか。要は、マイナス成長のなかでいかに暮らしを充実させるかなのだ。あたかも成長できるかのように吹聴し、国民を欺く罪は重い。このことにエコノミストは口を噤み、素知らぬ態度を取っている。集団主義がエコノミストたちにも蔓延し、成長信奉者ばかりになってきている。

マイナス成長下では負担は極力減らす必要があるが、安倍政権は廃炉もままならないなかでの原発の再稼動や、依然原発を重要電源に位置づける。福島原発の不良資産処理にいくら金が掛かるか見当もつかないが、原発の危険を省みず、原発の復活を目指している。福島原発処理には電気料金と税金がどんどん注ぎ込まれることになるだろう。日々の食料や衣料などに生活に回すことができる大事な金が、廃炉というどぶに捨てるよりももっと酷いところに投げ込まれる。廃炉に携わる人は、普通の仕事であれば浴びなくてもよい放射能を浴びることになるからだ。

1980年代、金融機関の暴走を許し、不良債権の山をこしらえたが、今度は電力会社と国の暴走によって作り出された原発の不良資産によって、国民の負担はさらに重くなってくる。金融機関の不良債権処理の遅れが、不良債権を雪だるま式に大きくしたが、原発は動かせば動かすほど核廃物がたまり、金融機関の不良債権どころの騒ぎではすまない。一刻も早く原発を全廃し、核廃物を今以上に増やしてはならない。原発を稼動させることは、日本を自滅させることになる。

国家主義的政治姿勢を強めることで、現実の経済問題から目を逸らしたいのだろうか。昨年10-12月期の名目GDPは前期比0.4%の481.5兆円と前期よりも0.2ポイント高くなったが、駆け込み需要は思いのほか弱く、伸びは低くなった。2012年7-9月期を底に5四半期連続増だが、その間、特に、伸びているのは住宅と公共工事で17.4%、24.3%それぞれ拡大した。民間設備投資は1.9%と低調であり、日銀の金融政策は民間設備投資にはまったく効いていない。

 それでも日銀は18日、資金供給を2倍に拡大することを決めた。企業は設備投資をしないから、金が余っている。金を供給するといっても、需要がない。日銀は需要がないところに金を与える仕組みを強化している。まったく検討違いもはなはだしい。国債購入にしても、国への財政資金供給以外にはなにの意味もない。日銀の国債購入は国債発行を安易にすることになり、放漫財政を作りだす。国債購入をいくら拡大し長期間続けようが、金は家計や企業に向かわず、財政赤字を大きくするだけだ。

 名目GDPの伸びが低いのは、純輸出が大幅に悪化しているからである。2012年7-9月期の純輸出は10兆円のマイナスだったが、昨年10-12月期は-17.9兆円に拡大し、その間7.9兆円のGDPが失われた。この調子で純輸出が悪化していくと、国内需要が増加しても外需のマイナス幅拡大でGDPは減少することになるだろう。

1月の貿易赤字は2.78兆円と赤字額は前年よりも1兆円超拡大し、単月では過去最大となった。安倍首相の方針に従った日銀の大規模国債購入が円安ドル高を引き起こしたが、この円安ドル高が輸出以上に輸入を増大させ、GDPにマイナスに作用するようになった。円安ドル高を目論んだときは、すでにその効果はプラスよりもマイナス面が大きかったのである。そのような経済の仕組みを精査することもなく、政府と日銀は円安ドル高にまっしぐらに進んだ。なんとも浅はかな人たちだ。官僚や日銀のエコノミストは原発村と大同小異である。

 1月の貿易赤字(季節調整値)は1.8兆円と昨年9月以降5ヵ月連続で1兆円を超える赤字だ。赤字は2011年4月以降連続しているが、赤字額は月を追うごとに拡大し、一気に赤字大国になった。1月の赤字が今年1年続けば赤字額は21.6兆円、名目GDPの4.5%の規模になる。昨年は名目GDPの2.8%であったが、それをはるかに上回る。昨年の米国の赤字は名目GDPの2.9%であり、すでに昨年、日本は米国に並んだが、今年、米国を上回ることは間違いないだろう。

巨額の財政赤字に貿易赤字が加わることになる。経常収支も昨年12月まで3ヵ月連続の赤字となり、所得収支の黒字額では貿易赤字を補いきれなくなってきた。昨年の経常黒字は3.3兆円と2010年の17.8兆円から3年で激減した。2014年の経常収支は赤字に転落するだろう。

 民間設備投資が振るわず、貿易赤字が拡大するならば、貯蓄超過となり、経済規模は縮小していく。政府支出を拡大することで縮小のテンポは抑えることができる。が、ますます悪化する財政と経常赤字によって、日本経済の信用はいま以上に深刻な問題になってくる。そうなれは本格的な円売りを浴びることになり、株式は暴落することになるだろう。政府と日銀はそのようなレールを敷いたのである。

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