トランプ大統領、日米安保条約は変える必要がある

投稿者 曽我純, 7月1日 午前8:32, 2019年

米株式・債券は次回FOMCでの利下げを織り込んでしまっているため、凪の状態にある。0.5%引き下げられれば相場は反応するだろうが、そこまでの思い切りはFRBにはない。先週、トランプ大統領はFRBを「何をしているのか分かっていない」、パウエルFRB議長を「良い仕事をしていない」と激しく攻撃した。7月の利下げが小幅であれば、トランプ大統領のフラストレーションは高まるだろう。彼には来年の大統領選しか眼中にないからだ。そのためには経済成長を持続させ、株式の最高値更新を続けさせたいのだ。

G20閉幕後の記者会見でも、トランプ大統領は米株式の最高値更新を絶賛しており、彼の最大の関心事であることはあきらかだ。そのためには経済成長、しかも高い成長が必要なのだ。FRBが予測している2.0%~2.2%(2019年)では大いに不満なのである。経済成長率は高ければ高いほど良いというのがトランプ大統領の考えなのだ。株価についても同様であり、常に右肩上がりを望んでいる。経済や株式がそのような状態であることが、即、大統領選への勝利につながると信じているのである。景気が過熱し、株式がバブルになってもそのようなことにはお構いなし、勝つことが最優先されている。

今回のG20は「G20」というよりも「米中会談」の開催といったほうが相応しいのではないか。大事なことはなにも決まらず、わざわざ20ヵ国もの首脳が集まり本当に議論しなければならないことを議論せず、当たり障りのない宣言をだしてお仕舞では、単にお祭りをしたようなものだ。

本来G20はG7の後に開催されるのだが、安倍首相が議長として前面に登場するG20をG7の前に日程を変え、日本が参議院選の選挙対策として、利用した会議ともいわれている。きっとそうだろう。昨年のG20から7ヵ月しか経過していないのだから。

 米中首脳会談は話し合いを継続し、トランプ大統領は第4弾の引き金は引かなかった。経済界から猛反発を受けており、トランプ大統領にとっても第4弾のリスクは大きすぎるのである。ただ、政府の経済への介入や知的財産権など肝心なことはなにも決まらなかった。そうした構造問題を追及することになれば、国家体制にまで踏み込むことになり、とうてい中国は受け入れることはできまい。いつまでも議論は平行線のままだろう。

来年の米大統領選までは、米中通商問題は大きく変化しないのではないか。米国は中国に第4弾を突きつけながらも、発動はしないだろう。適当な妥協策で辻褄を合わせながらの交渉が続くように思う。

が、トランプ大統領が再選され、米中通商問題が継続していれば、かなり強引な姿勢に転じるかもしれない。第4弾を発動し、中国からの輸入を抑制するだろう。中国経済はより深刻になり、日本の対中輸出は大幅な減少を余儀なくされる。対中輸出だけでなく、アジア全体への輸出も苦しくなる。

今年10月の消費税率引き上げにより、その後の日本経済は不況になると予想するが、米中通商問題の行方によっては、長期的にも外需依存の強い日本経済は、厳しい状態に置かれることになるだろう。

世界経済を攪乱させているのはトランプ大統領だが、経済だけでなく政治にも不安な状態を作り出している。日本に対しても、日米安全保障条約は「不公平な条約だ」、「我々は変える必要があると安倍首相に伝えた」と。これほど不満をぶちまけられても、安倍首相からの発言はない。口から出まかせだから取り合わずということなのだろうか。それでは日本から米軍は出て行ってくれと言ってやりたい。そうすれば、沖縄の基地もすべてなくなり、沖縄に本当の戦後と平和がやってくる。

憲法9条で「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」と表しているが、自衛隊に加え米軍が日本に駐留している事実に鑑みれば、憲法9条は形骸化している。米軍は日本からどこにでも展開できる。朝鮮戦争やベトナム戦争も沖縄などから兵士、物資を大量に送り込んでいた。日本は直接手を下さないけれども、米軍にはさまざまな支援をしており、間接的には日本は戦争に深く関与し、経済的特需も手に入れていたのである。「戦争放棄」を憲法に掲げながら、自分の手は汚さず、他人の手を使い戦争に加担していた。止めろとも言わなかった。これでは「戦争放棄」はまったく看板倒れだ。日本国憲法が公布されてから73年にもなるが、この間、「戦争放棄」は文言としてのみ存在していたと言える。

この際、沖縄からは即座に米軍は撤収し、返還すべきとトランプ大統領に直言すべきだ。日米安全保障条約(第6条、日米地位協定)により、米軍がやりたい放題の状態が70年以上も続いていることが異常なのだ。日米安全保障条約は日本国憲法の上にあり、憲法そのものが形骸化させられている。まさに米国の属州といわれる所以である。少なくても、日米安全保障条約を日本国憲法で縛ることができる内容に変えるべきである。もとより、日米安全保障条約は破棄せねばならず、そうすることではじめて日本は自主独立の道を歩むことができるのだ。

自衛隊に5兆円超もの金を投入する必要などない。人口減、少子高齢化の加速、介護者の増加、原発廃炉、スマホ・ゲーム中毒、自然災害等々との戦いのほうが日本にとっては深刻だ。自衛のために5兆円も使うなど見当違いも甚だしい。介護者を受け入れ、面倒をみることだけでも、人材・資金の獲得は容易ではない。国や企業が悪くなるのは、たいてい内部に問題を抱え、問題を解決しようとせず放置していたことが原因であり、外部要因で崩れることは少ない。

2050年の日本の総人口は約1億人に減少する。生産年齢人口(15歳から64歳)は2019年の7,531万人から2050年には2,256万人減の5,275万人、65歳以上は3,562万人から3,840万人となる。2019年4月末の介護認定者数は659万人、過去5年の年率の伸び率は2.38%であった。今後、65歳以上の人口増は緩慢となるので、介護認定者数の伸びも鈍化する。ただ、2022年以降、団塊世代が75歳に達するので2024年には75歳以上が大幅に増加する。そうなれば、要介護認定者は増加するだろう。生産年齢人口が減少するなかで介護認定者が増加する事態は、いまでも介護関係の深刻な労働不足がますます逼迫することは目に見えている。イージス・アショアなどに巨費を投じている場合ではない。もっと切実な問題が目の前にあるのだ。政治家は本当に目の前の実態を見ようとしない。いまも日本政府は大本営の体質を引き継いでいる。

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