ゼロ金利で所得・資産格差の拡大続く米国

投稿者 曽我純, 1月20日 午前10:34, 2014年

米雇用統計への過剰反応があらわれ円ドル相場は102円台に急伸した。だが、行き過ぎへの反動から翌日には104円台に戻しており、当面、為替相場は材料待ちといったところだろうか。昨年12月の米小売売上高は前月比0.2%の低い伸びであったが、米国経済の回復を裏付けるものとして評価された。その他の経済指標には為替は目立った動きを示さなかったが、米国経済が緩やかな回復過程にあるという内容から、15日、S&P500は過去最高値を更新した。

米国経済は名目3%台、実質2%の成長を続けているが、この程度の成長であれば、FRBはしばらく政策金利をゼロにしておくだろう。金利をゼロにして、金融部門で経済を潤すことを狙っている。

金利と株価には相関関係があり、金利が低下すれば株価は上昇する。政策金利はすでに5年以上の長い期間ゼロであり、これ以下に下げることはできないが、実質では下がることも考えられる。いつまでもゼロ金利を続けることはできないが、できる限りゼロの期間を長く保ちたいはずだ。これで米国経済はやりくりできているのだから。

 長期の株価と金利をみると、両者の関係が極めてよく分かる。月末値のダウが始めて1,000ドルを超えたのは1972年11月である。第一次オイルショックによって、1974年にかけて株価は急落、その後持ち直したものの、株価の回復力は弱く低迷状態が続く。第二次オイルショック後もそのような状態であったが、1982年の終わり頃からダウは1,000ドルの壁を越え、持続的な上昇過程に入っていった。

 政策金利は第一次オイルショックのインフレを抑えるために10%超に引き上げられたが、第二次オイルショックで20%近くまで上昇した。これでは株式は債券に太刀打ちできるはずがなく、資金は株式から債券にシフトした。こうした高金利が株式の魅力を削ぎ、株価は長期低迷に陥った。だが、金利が1981年をピークに低下しだすと、徐々に、資金は債券から株式にシフトしていった。

 金利が1981年にピークを付け、それが2008年末にはゼロに下がり、ゼロ金利がまだ続いているのである。金利のピークに近い1980年末のダウと33年後の2013年末の上昇率と33年遡った1947年末と1980年末の上昇率には著しい違いがある。昨年末までは17.2倍に拡大した一方、1980年末までの33年間では5.3倍と実に3倍以上の開きがある。金利の長期低下、さらにはゼロ金利がダウを引き上げたことは間違いない。

米国の株式価額は昨年9月末、31.2兆ドル、1ドル=100円で3,120兆円だ。日本の格式価額は470兆円であるからまさに桁違いである。昨年の株価上昇で12月末のS&P500は昨年9月末比9.9%上昇した。これに基づけば、昨年末の米株式価額は34.3兆ドルと3ヵ月で3.1兆ドルも増加したことになる。日本の名目GDPが500兆円に満たないことから、3ヵ月で3.1兆ドルもの株式価額増加は、含み益とはいえとてつもない金額だ。

株式のすべてを家計が保有しているわけではないが、家計が最大の保有者である。昨年9月末の家計の株式保有額は12.1兆ドルである。投資信託も6.19兆ドル保有し、その他間接保有として年金や保険などもある。直接保有と投資信託だけでも昨年12月までの3ヵ月の増加額は1.8兆ドルに上る。

これだけの株式価額が増加すれば、車でも買うかということになる。金利も低いし、いまのうちに買わなくてはという心理が働く。株価上昇が耐久消費財の購買意欲を刺激し、景気を改善、それによって株価はさらに上昇するという好循環の実現が米国経済の目指すところである。

だが、株価が上昇し、過去最高値を更新しているわりには、消費支出の伸びは低い。株高の恩恵を受けている階層はすでに、十分な資産を保有しており、株高だからといって消費を増やすことなどないのだろう。しかも、所得・資産格差拡大は大恐慌以来となり、株式売却益を得るのは一部の人に限られている。国民の大半は失業率が高いことなどから賃金の伸びが低く、消費支出を増やすことができないのである。

 株高は資産格差をますます拡大させ、米国経済の歪みを大きくすることになる。所得・資産格差は大恐慌期をピークにオイルショックまで縮小していたが、1980年代以降、再び拡大しており、今は大恐慌期並みに格差が拡大している。所得・資産格差の曲線はオイルショック期を底としたU字型に近い形になる。こうした所得・資産格差曲線の形は金利と逆になっており、金利の高低が株式を動かし、所得・資産格差を生み出しているのである。さらにいえば、金利を操作できるのはFRBであるため、FRBが所得・資産格差を引き起こしている張本人と言える。ゼロ金利を続ければ続けるほど、所得・資産格差拡大も続くことになり、米国経済は歪み拡大でのっぴきならなくなるだろう。

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