なりふり構わぬECBの融資

投稿者 曽我純, 3月4日 午後5:53, 2012年

イギリスの住宅価格も米国と同じような経緯を辿っている。09年には幾分反発したものの、その後、バブル崩壊後の最低は更新していないが、弱含みで推移している。昨年10-12月期の英実質GDPは前期比0.2%減少し、景気の悪化が住宅価格に影響すると考えられるが、こうした経済の悪化による住宅市場の悪化は、EUなかでも住宅バブルが大きかったスペインなど南欧経済に再び襲い掛かりそうだ。昨年10-12月期のイタリア、スペインの実質GDPは前期比0.7%、0.3%それぞれ減少したが、今後、緊縮財政の強化により、マイナス幅はさらに大きくなり、住宅市場に悪影響を及ぼすだろう。住宅価格の下落は家計のバランスシートの悪化を通して消費マインドを冷やし、経済やマネーの動きを一層鈍化させることになる。

 2月末、ECBは期間3年、年利率1.0%という好条件で800の金融機関に5,295億ユーロを融資した。昨年12月にも523の金融機関に4,891億ユーロを融資したが、これを加えれば3ヵ月にも満たない短期間に1兆ユーロ超の金を貸したことになる。2月24日時点のECBの長期貸出は8,196億ユーロであるので、現時点ではこれを大幅に上回っている。FRBは国債購入で資金供給しているが、ECBは融資で資金供給している。年1%の費用であるから金融機関は国債購入で自動的に厚い利鞘を入手できる。まさに金融機関へのあからさまな優遇措置であり、とにかく資金だけは金融機関に供給しなければと闇雲に突っ走った。緊縮財政、放漫融資という過去にない欧州委員会とECBのなりふり構わぬ行動が不安を呼び起こす。 

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