『2020年国勢調査』によれば、日本の総人口は1億2614万6千人(2020年10月1日現在)、2015年比94万9千人減少し、20年前の2000年よりも少なくなった。日本人に限れば1億2339万人8千人、1990年以来の低い水準なのである。2020年の外国人人口は274万7千人、2015年比43.6%増加し、外国人の構成比は急速に上昇している。
人口は減少したが、65歳以上は2015年比6.6%増、75歳以上は14.3%、85歳以上は24.6%と年齢が上昇するにつれて、増え方も加速している。因みに、15歳未満の人口は5.8%減である。
75歳以上の人口を30年前の1990年と比較すると3.11倍、85歳以上では5.46倍へと著増。75歳以上の人口構成比は14.7%、2015年から15歳未満の人口構成比よりも高く、75歳以上が15歳未満人口よりも多いのである。15歳未満人口のピークは1955年の3012万人だが、今ではこの半分に激減してしまった。他方、65歳以上は3602万人と1955年の7.52倍なのだ。65歳以上人口の割合が30%以上の都道府県は2015年の13県から2020年には30道県に増加している。2024年には団塊世代がすべて75歳以上になり、75歳以上の人口構成比はますます上がることになる。街を歩いても、わたし同様の高齢者のなんと多いことか。
人口減と超高齢化は、今になって始まったことではなく、戦後、間断なく進行していた。人口減と超高齢化がこれほど劇的に進んでも、政府の施策は中途半端であり、この傾向に歯止めが掛かる兆しは、まったくみえない。この傾向がさらに進むことは間違いなく、人口問題は日本社会の構造や在り方を大きく変えていくだろう。政府は目先の問題を追い、トピックスを取り上げるだけでなく、構造的な問題に長期的に取り組む必要がある。
日本の15歳未満人口と生産年齢人口(15歳~64歳)の割合(59.5%)は世界で最低であり、65歳以上の割合は世界最高だ。韓国やイタリアの15歳未満人口比は日本に近いけれども、65歳以上の割合は日本(28.6%)がダントツであり、2番目のイタリア(23.3%)よりも5.3ポイント高い。生産年齢人口にしても日本は59.5%だが、60%未満は日本だけだ。韓国の15歳未満人口比は12.5%と低いが、65歳以上人口比も15.8%と日本よりも12.8ポイントも低いため、生産年齢人口比は71.1%と高い。
配偶関係を5歳刻みで、それぞれの男の未婚割合みると、30歳~34歳51.8% 35歳~39歳38.5% 40歳~44歳32.2% 45歳~49歳29.9%と年齢とともに低下しているものの、45歳~49歳でも約3割が未婚だという。これほど日本社会には、結婚を妨げている要因が多いのだろうか。
多くの若者は地方から都会へ移住するが、一人で生活するケースが大半である。大学に行くにしろ就職するにせよ、相手に首尾よく巡り合えればよいが、そうでなければずるずると独り身を通し、そのままの生活を続けるのだろう。都会生活あるいは地方でも県庁所在地に出ることによって、いつの間にか、1人の生活の道を辿ることになるのだろう。人との出会いも多いはずだが、独り身の気楽さや大都市では娯楽の場が溢れているため、そのうち結婚すればと思いながら、いつの間にか50代に入ってしまっていた、という人も少なくないのではないか。
第1次産業から第2次産業さらに第3次産業へと産業構造が変遷するにつれて、地方は廃れ、都会は栄える。そして、人口は地方から都市への流れをますます強くしていく。こうした産業構造の変化に伴う人の流れは止めようがない。ビジネスが拡大し、お金が儲かるところには、人だけでなく金やものさらに文化などすべてが集まるのだ。そこでは経済の拡大再生産が行われ、人と金の都市への集中集積は加速する。賑やかで華やかな都会に憧れ、住み着きたいと思うのは当然である。
結婚と子供を結び付けることはできないが、これほど未婚者が多いことは、人口減をさらに強めるだけでなく、家族の持つ中身をすっかり変えてしまう。未婚者が多いということが単独世帯数にも現れている。一般世帯のうち世帯人員が1人の世帯を単独世帯というが、2020年の一般世帯数5570万世帯の38.1%、2115万世帯が単独世帯なのだ。20年前の2000年の単独世帯数(1291万世帯)と比べると63.8%も増加している。「夫婦のみの世帯」の一般世帯に占める割合はほぼ変わっていないが、「夫婦と子供から成る世帯」の割合は低下する一方、「ひとり親と子供から成る世帯」は上昇している。1人世帯数と2人世帯数を合わせると一般世帯数の66.1%となり、1世帯当たりの人員は2.21人と低下し続けている。
15歳未満人口と生産年齢人口の減少、65歳以上人口の増加という人口動態の経済社会への影響は計り知れない。さらに単独世帯増による1世帯当たりの人員減によって、従来の家族と現在の家族では共同生活と単独生活という大きな違いが出てきている。
単独世帯では自分ですべてをこなさなければならない。身体機能に問題が生じることになれば、どこかに頼らざるを得ない。こうした単独生活による生活継続不能な事例は今後、ますます増えるだろう。すでに介護認定者は今年9月、688万人、10年前比では35.4%も増加している。医療、年金、介護等の社会保障給付金は2021年、126兆円と予想されているが、超高齢者の急増などでこれからも拡大を続けることは間違いない。
2020年度の公的支出・GDP(名目)比は27.1%と3年連続の上昇で、2017年度から2.7ポイント上昇した。新型コロナ禍で2020年度の家計最終消費支出(持家の帰属家賃を除く)は2010年度よりも少ない。ただ、新型コロナだけでなく、人口問題、それに付随する社会保障費負担の拡大なども家計最終消費支出を抑制していると考えられる。
GDPは伸びない、だが、社会保障費の負担は際限なく重くなり、公的部門の拡大は続くことになるだろう。家計の貯蓄を政府の国債発行で吸収しながら公的部門の役割は果たされるはずだ。株式が日銀と公的年金で支えられているのと同じように、実体経済も公的部門によってなんとか現状レベルを維持できているのだ。
人口減と少子高齢化という厳しい人口動態下で生き延びていくには、新機軸を打ち出し、日々の見直しによる生産効率の上昇などが不可欠。ものをみるには、さまざまな角度から見る必要があり、また人によって入ってくる景色は異なる。一面だけを捉えて、そこだけに焦点を当てて判断すると往々にして間違ってしまう。独断と偏見では新機軸も効率化も達成できない。
新型コロナや地球温暖化も一面だけに光が当てられ、より総合的な議論がなされていない。なぜこれほど一方的な議論だけが報じられるのか不思議でならない。天動説の時代に舞い戻ってしまったようだ。安易な一般論には与しない議論が現れることを願う。