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青木講演録/自治体が破産するってホント?

::青木秀和・ウラシマユージ

青木講演録/自治体が破産するってホント?(2)

債務ブーメラン

こういう構造で、国が直轄や補助でやっていたものを地方単独事業にさせたいものだから、あとで交付税で面倒みるからやりなさいよとけしかける。しかし、それをやるには先に自治体が借金しなければならない。で、自治体の借金が増えます。それをあとで交付税でみてあげるといったら、当然国は交付税を多くしなければならない。交付税特別会計(実入りは決まっているから)の借金をさらにふくらます。地方の方もあとで交付税をもらえると思ってもそれは借金の返済にしか使えない。一般財源には使えない。当然、福祉には使えないわけです。借金を返すための財源、つまり、交付税が補助金化・特定財源化する。交付税特別会計の借金はすでに46兆円を超えている。これは国債とは別。その内35兆円近くが地方全体で返す分。さっき、交付税措置で国があとで面倒みてくれるといったが、実は面倒も何もみてもらっている訳ではない。最後は自分らで返せよ、といってるのと実質的には同じ。ただ、今のところは返せよといってるだけで誰も返してないから、交付税特別会計の借金として積み上がっている。これはどういうことでこうなるのか、基本的な原理を説明します。

プライマリーバランス黒字でも止まらない債務膨張

プライマリーバランス(=PB)借金が増えるのは基本的には収入より支出が多いから。実入りより支払いが多いということ。(図)この状況なら当然借金が増えていくのはわかる。これが現金で支出が多いから借金が増えていく。これに対して収支とんとんなら借金は増えていかないとふつうは考える。これは財務省の図なんですが、ところが、そうはならない。(図)プライマリーバランスが黒字の時は、ちょうどこのバブルの6年間。この間は黒字だった。でもこの時期でも国債が増えるスピードは鈍ったがやはり増えている。財政は黒字だったにもかかわらず、借金の残高はじわじわ増えている。これはなぜか?こういうことなんです。PBが黒字というのは利払いよりも公債金の方が少ない、つまり現金で借金を払っているという状態。しかし、ここが肝心。PB黒字であっても、それが利払い費を賄うまでの黒字がでなければ、この利払い費の不足部分は新らしい借金で埋めるしかない。だから、その新しい借金部分に次の年に利息が付くのでどうしても次の年の公債費は増えるし、次の年の年度末には借金の残高は増えていく。健全な財政では現金収入で生活費も元利払いも賄えている。普通の家庭はここに預金部分がはいってくる。少しは余裕がある。これ一番のノーマルな形。毎年借金していきますよ、といっても現金収入で元金と利払いまで賄っている状態では、ここの部分(元金返済部分)は返して借りている状態なので債務全体の大きさは変わらない。累積債務は一定。ところがさっき言ったこの状態だと債務は自動的に増えていってしまう。財政が黒字だったといっても現金収入が利払い費までカバーしていなかったので、債務残高がじわじわ増えていってしまった。ということだ。

プライマリーバランス均衡でも破滅的均衡

それで今はどういう状況か?普通の経常歳出にも現金が足りないものだからこの部分まで借金で賄っている。異常事態であることは間違いない。ところが今年の予算をみるとこれ(経常歳出)自体が減ってきている。これが減って経常歳出を削っても借金する状況がもう借金をぎりぎりに押さえ込むといって、小泉内閣は国債30兆円の枠をつけたが、もう実態は30兆しか借りられない状態だ。現金収入が少なくなったもんだから、歳出を削らざるを得なくなった、というのが今年の予算。しかし、これをこのまま続けていくともっと国債費が増えるから、一般歳出を押し込めて現金歳入位までで賄うよといっても、相当財政が縮減せざるを得ない。これでもPBは均衡しているのだが、最悪均衡。こういう状態にどんどん向かっている。いまは国の財政で説明したが、地方財政も同じこと。

深刻な企業間の信用収縮

企業間の信用収縮では、今後何が起きるか?民間では企業間で急激に借金させてもらえなくなった。銀行貸し出しもずーっとマイナス。企業間取り引きの売掛け金が極端に減少している。銀行も借金させてくれない、そういう状況。経済自体がどんどん小さくなってきている。次にこれはもっとすごい。手形発行高がバブル期の4割くらいに激減している。どういうことかというと、例えば、商店なんかは手形で仕入れてきて売ったお金でそれを返すのに、要するに仕入先が手形を受け取ってくれない。現金商売しか成立しなくなった。手持ちのお金だけで商売すると小さな取り引きしかできない。さらに、地域の中小企業に金を貸してくれる信用組合や信用金庫が軒なみ潰れてこんなに減ってしまった。ほんとに私たちの身近な地場経済がいまや崩壊寸前、風前のともしびどころか台風の中のろうそくという感じになってきている。

公共投資の減少>住民所得の減少>税収の減少>赤字再建団体転落

さらにいうと、地方の公共事業が全体に減らしてきている。95年くらいからみると単独事業は半減で、補助事業を合わせても3分の2くらいになった。いい悪いは別にして、公共事業をズーっとやり続けているので、公共事業に依存し過ぎて、それがどの地方でも基幹産業化している。そこへ公共事業がへらされているので、地域経済が回っていかなくなっている。よく公共事業には景気の呼び水効果だとか波及効果があるといわれる。一つの公共事業をやれば、それによって資材やサービスが動いていろんな人のところにお金が回っていく、そのことで、経済全体に公共事業で使ったお金が]波及していくよという訳だ。逆にいえば、お金をしぼってしまえば、今までお金が回っていた人たちのところにお金がいかなくなる。だから、公共投資をしぼられると地方経済はどんどん縮小していく。これだけ青息吐息の状態のところに、これからなんと表現していいかわからない状況が押し寄せてくる、ということになる。地域では法人や個人の所得が減ると当然、自治体の税収も減る。今でも赤字財政なのに赤字がもっと拡大していく。それを埋めきれなければ赤字再建団体になる。

W杯明けから秋口にかけて厳しさが増す

今、少し景気が盛りなおしているようだが、これにはかなり特殊要因がある。まず、株価についていえば、2月に「先物取り引きをやめろー」という話しになった。また、高株価維持政策でその間、財等資金を利用して株価を支えている。だから、今作られている株価はウソ。それともう一つ。今、割と金回りがよくなっていると思えるのは、全国の自治体では3〜5月は年度末から出納閉鎖期間で、この時期に一斉に支払いをするから一番現金が出回る時期。役所だけでなく、公共機関や国もこの時期大量に支払いをする。また役人は仕事を残しておくのが好きなので、2〜3月に工事が集中していて、その間資材も回っているし人も雇われている。6月いっぱいは、ワールドカップのお祭り気分も手伝って当面お金が回っているように見えるが、6月20日すぎから3月決算が明らかになってくる。これが予想以上に悪いと思う。今の株価とのギャップをどう見るかと言う話しも出てくる。さらに、今円が円高に触れているが、これは円が強くなったのではなく、アメリカ景気のかげりでドル安のせい。アメリカは失業率が上がって4月の統計では5.6%で、アメリカ自体もそんなに景気が回復している訳ではない。今後ちゃんとした対策をとらないとアメリカも相当悪くなる。世界中がアメリカ頼みで、そこがあやうくなってくる。こういう傾向が7〜8月頃に出てきて、公共事業がでてくるのが9月、10月頃だが、昨年去年ほども出てこない。去年の8割くらいにしかならないだろう。そうすると、当てにしていたものが当てにならなくなる。この頃、一挙にダーっとコースターをかけおりるように悪くなるかもしれない。いまのもまだとその可能性が高い。

財政破綻を告白した2002年度山梨県予算

そういうことを前提条件に山梨県の予算を見て見ましよう。税収がとてつもなくひどくなったという感じ。税収は879億円。去年に比べて税収が15%も減っている。すごい。それから交付税も減らされている。交付税1517億円(前年比3.4%減)。が、予算規模は変わらない。税収も交付税も減って、予算規模が変わらなければ借金するほかないと言う話しだ。それで一生懸命投資的経費を減らして抑えようとしている。これはさっきもいったとおり、地域経済にとっては両刃の剣だ。それでしか回ってないところがいっぱいあるから。公共事業で成り立っている業者もあるから仕事が無ければつぎの年の税収がまたさらに減ってしまう。そういう方向にしか働かないからしようがない。悪循環だ。義務的経費のうち人件費や扶助費はほとんど変わらない。よく目の敵にされる公務員の人件費はほとんどよこばい。人員削減や賃金カットしても全体の比率から見ると効果は少ない。もちろん民間に比べて高い安いはあるが。やっぱりここ(公債費760億円)が、最大の義無的経費を増やしている原因。これは90年と比べると160%位増えている。さらに問題はここ(交付税)。さっき見せた予算規模と交付税交付額を2つ並べるとはっきりする。予算が同規模なら交付税措置をもらっているのだから、交付税が増えることはあっても減るはずはない。普通はこの程度の予算だったら、おなじだけの交付税がもらえなければおかしい。むしろ増えなければおかしい。だって、国はそれまで地方で借金したものを交付税で補ってくれるといっているのだから。やっぱり、嘘だということがわかる。国は交付税で補っていない。結局、自治体が借金したものはあくまでも自治体の借金なんです。

つのる借金たまる借金

赤字地方債(臨時財政特例債219億円)はあとから、交付税措置をもらえるから山梨県の持ち出しはないといっていたが、おかしいのはもう分かるでしょう。いままでも山梨県が借金したあとで交付税で面倒見てもらえる話しが、これを見る限り全然やってもらっていない。今どう言うことをやっているかというと、過去の借金を臨財債で返してる。単に借金の先送りをしているのにすぎない。しかもそれには利息が付くので先送りすればするほどたくさん返さなければならない。それがこういう結果に現われている。公債残高(残高7613億円)が倍増ですよね、倍増以上です。しかしもう限界、もうこういうことはできない。何処もかしこもこういう状態です。では、とりあえず、財政破綻を止めるにはどうすればいいか?とにかく今の状態では利息を払うことをやめないといけない。利息は払えない、とはっきりいうしかない]。利息を払うことは自殺行為。払うなら別の方法で払うしかない。財政学者も経済学者も利払いの問題をまじめに考えてこなかった。実際のはなしが借金したことのある人ならよく理解できる。借金したら利息も含めてそれ(借りた金=元金)以上にして返さねばならない。個人や企業はもう返せないとしたら破産できる。しかし、自治体や政府はそういう制度が用意されていない。財政破綻を止めるためにはどうしたらいいか?歴史に聞いてみるしかない。

青木講演録/自治体が破産するってホント?(3)

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