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青木講演録/自治体が破産するってホント?

::青木秀和・ウラシマユージ

青木講演録/自治体が破産するってホント?(1)
パワーポイントファイルもあります。別ウィンドウで開きます。適当に小さくして、読みながらごらんください。
4MB近くありますのでしばらくお待ちいただきます。


第2回緑のイーハトーブ公開市民講座
「自治体が破産するってホント!?」
日時/2002年5月25日(土)午後1:30〜
講師/青木秀和(財政アナリスト)
主催/緑のイーハトーブ
会場/山梨県立総合女性センター3F視聴覚室
要約/ウラシマユージ


はっきりいって財政の話は滅茶苦茶難しいです。私の話を一度聞いて理解するのはたぶん、無理でしょう。後で資料を読むなどして、じっくり勉強していくとだんだん恐くなってきます。しかし、自治体が破産してもそれで終わりではない。財政が破綻しても人間は生きていかねばならないですから。政府のせいで私達は死ぬわけにはいかない。

では、そこから、どうしたらいいんだ?という話をこれからしたい。

日本の財政は10年区切りで悪くなる

1955年は私の生まれた年ですが、敗戦後10年を経て、地方財政が一度破綻する。戦争が終わって1945年にいったん全部破綻しているが、その後新円切換え(デノミ)をやったりしてやっと立てなおした。また、傾斜生産方式などで少しは景気は良くなったが、地方では戦地からの引揚げ者があふれ、校庭を掘り返してイモをつくるくらいで、税金おさめる人などいないわけです。地方財政がどんどん悪くなって、政府はどうしたかというと…。

昭和28〜9年にかけて、9800くらいあった市町村を3800位、三分の一に合併させた。しかし、悪いところどうし合併しても良くならない。そこで地方財政再建特別措置法を制定して地方の累積赤字を解消する政策をとる。地方自治体の588団体が財政再建団体に指定され、やっと1970年に再建が終わる。(この間、高度成長期であるにも関わらず)15年もかかった。この点は要注意です。

財政再建の仕組み自体はIMF(世界通貨基金)の構造調整プログラムとおなじ。国が赤字地方債を引受けて赤字を埋める。そのかわりに国が指導する緊縮財政のもとで財政黒字を作ることで借金を返済させた。しかし、今やこのやり方はできない。55年当時はできたが、45年たった今では地方財政再建特別措置法を使った財政再建はできません。このことを覚えておいて下さい。

1965年

それから10年後。64年に東京オリンピックが行われ、集中しておこなわれた公共投資が底をつき、一時的な景気後退が来ます。65年度の予算はまだ景気拡大が前提の予算だったので、2000億円の歳入欠損が、年度途中で出てくる。国は慌てて「どうしようか」増税か、増税は難しい。どうしたか?この時は佐藤内閣、大蔵大臣の福田赳夫氏が、1922億円の赤字国債発行を決めた。しかし、次年度も歳入不足は明らかなので、この時はじめて計画的に国債を発行することに決めた。でも本来は国債や地方債はやたらと発行できない。財政法および地方財政法には、公共事業の費用にあてる時しか発行できないと決めている。この時の65年に発行した借金の穴埋めにするための赤字国債は例外だった。そして、予算が足りない時には普通に発行できるようにしようよ、というのが建設国債。ただし、必ず民間に引受けてもらうという条件でないと発行できない。なぜかというと、日銀に直接引き受けさせると、国は際限なく借金できることになるから、軍事費の膨張から軍事大国化を招いてしまった。とこういう戦前の反省があるからです。ここから、建設国債を始めから予算に組み込む、借金をあてにした財政運営がはじまった。一度借金の味を覚えるとサラ金をはしごするのと同じで、借金に鈍感になる。

1975年71年にオイルショックで日本は低成長時代に入っていく。ついには国債の利払いと償還もできなくなってしまう。建設国債を発行しても予算が足りなくなった。そこでまた、特例の赤字国債にたよることに。ただし建設国債は60年で返すことになっているが、この時の特例の赤字国債は10年で返すことにした。これから国債まる抱えの、いや、国債に抱えられる財政、国債が無ければ何もできないという財政に転落していく。

1985年

ついに(10年で返す条件だった)赤字国債にも60年ルールを適用するようになる。建設国債は常に(具体的公共事業の)対象が必要だが、赤字国債は単に赤字をうめるためのもの。ここで、本来の性格は違うのだが基本的に建設国債も赤字国債もいっしょになり、借金の歯止めが完全に無くなった。この時の首相は中曽根さん。80年初から、国の財政を立て直すためにギョーカク(行政改革)をいいだした。この中曽根行革はじつは政府が作った赤字をできるだけ地方に回し、または、財政投融資(以下、=財投)などを利用して、それまで政府がやっていた仕事を道路公団や住都公団などの特殊法人に肩代わりさせるものだった。しかし、財投も元は借金。借金させてやるからそれでちゃんとやってくれ、ということ。地方についても同じ。地方も余裕のあるところは単独事業を自腹でやってる。この自腹の部分をもっと多くして、その分国の公共事業費を削る。さらに、補助率をカットして地方の持ち出しを増やす。しかし、地方には現金が無いので借金の枠を広げてあげる、という手法で財投や地方に借金を付け回した。

1995年

新しく借金できても前に借りたものは返していかないといけない。しかし、返済のための国債整理基金に積み上げてあったお金がほとんど無くなってしまった。2000億円を切る状態。そこで政府はどうしたか?社会資本整備特別措置法、竹下さんが作ったひどい法律です。中曽根行革が路線を引いた三公社の民営化。そのうちのNTT株式売り上げは国債の償還財源にすると法律で決めていたが、バブルの時期もあて一時棚上げし、これを地方自治体や地方道路公社などに貸し付けた。もっとひどいのはリゾート法関連で、三セク(第3セクター)のシーガイア等に貸し付けた。これらの貸付金はもともとは国債整理基金に積み立てるはずのお金なので一括返済をせまる。しかし、借りた方が返せないと困るので新しい借金をさせる。地方自治体には(補助事業の前倒しで貸しているので)建設国債を発行し、道路公社や第3セクターには財投から貸し付けて返させた。借金の借り所が変わっただけで、結局かわりに建設国債が積みあがった。こんなことをしたおかげで、NTTの売却益が、「益」ではなくてみんな借金に化けてしまった。ここで完全に借金を借金で穴埋めする自転車操業になった。国の財政は完全に破産しているといっていい状態。なお私がいう「国の財政が破産」といっても一般の破産と違って、政府や自治体が、「今まで通りにやりくりできなくなること」を私は破産といっている。

2005年

さて次の10年目は2005年、この頃には国債償還の資金繰りが極度に悪化。借り換えだけで100兆円になる。地方でも収支ギャップ縮まらない。財投も自分の持ってる財産よりも借金の方が多い債務超過団体(石油公団など)が続出する。3つの公的セクターが行き詰まる。国・地方自治体・財投のトリプル破綻が起きる。

なぜ2005年か?国債は10年ごとに償還がくる。10年債という長期国債が一番良く売られている。今年の末で長期債務残高は693兆円、約700兆になる。財投で580兆の資産(借金)があるが国債引き受けで重複している分を引くと財投だけで230億円の借金。国全体で950〜1000兆あるといっていい。この中には土地開発公社などの地方公営企業の借金は入っていない。大日本借金帝国だ。ただ、これは国の中の借金で政府が国民から借りている借金。外国からは借りていない。まあここまで国民は貸してくれたなあといえる。逆に言うと、これだけみんな貯金していると言うことだ。ただし、これらはみんな借金としてどこかに張り付いている。ちゃんと返してもらえるのかなあ?、と言う話になる。

借金を返すには実入りが無ければ返せない。実入りと言うのを国民経済ベースで考えると、それは1年間に働いた付加価値の総額のことです。つまり借金を返すのは余裕のあるところからで、生活費からは返せない。これを比較すると、国と地方の借金だけで、98年頃から逆転している。G7加盟国で最悪のレベル。バブルの90年は先進国中最高のパフォーマンスだったが、急激に借金体質に転落していく。

では、地方はどうか?70年に財政再建計画が完了したら、そのすぐ後オイルショックなど、地方財政はずっと苦しかった。91年バブルの真っ盛り良かったが、この公債負担比率の棒グラフ(図「地方財政は破綻寸前)」を見るとかなり右側の方にシフトしてきて、地方財政は苦しくなっている。99年、公債負担費率15%以上が全自治体の3分の2にもなっている。20%超の自治体が878団体にのぼっている。この878に山梨県も入っているのだが、この県だけ国が助けてくれるということは当然ありません。なぜこういうことになったかたいうと、地方交付税制度を利用して、国が本来自分がやっていた公共事業を地方に付け換えた、というのがそもそもの原因だ。

脱ダム宣言

これは年去年田中康夫長野県知事が発表した「脱ダム宣言」(図)による公共事業のからくり。ダムの事業は半額を国が補助してくれる。残りの半分の95%については県の借金。そのうちの66%については地方交付税措置であとで国が面倒を見てくれる。そうすると約8割が国のお金でダムができる。誰でもやりたくなっちゃう。いろんな事業、たとえば地総債(地方総合整備事業債)等も同じ仕組みでやれやれとけしかけられてやってきちゃった。ところが、国の公共事業費は、公共事業をやるからこれだけ借金しますよ、ということで国の政策にともなって生ずる公共事業量がまずあってどれだけ借金するかということが決まってくる。ところが、ずう〜っとみていると国の公共事業費は全部借金。公共事業の補助金は全部借金だといってまちがいない。

いっぽう、交付税措置は国のほうから税金で払ってくれるからこれは借金ではないかもしれない、と思ったら大間違い。どういうことかというと。本来、国の交付税収入は所得税、酒税、法人税とか消費税との特定の割合いが決まっていて、この割合しか使える元手がない。その元手よりも交付しなければならないお金の方が猛烈に増えてしまった。しかたなしに交付税特別会計というところで借金して賄うようになった。国債ではないですが、別枠の借金ですよ。つまり交付税を出すとしても元手が税金収入の部分と借金の部分と混在している。ということで、地方で交付税をもらったとしても結果借金でしかない。本来、公共事業の評価は借金も含めて事業評価しなければならないのに国も地方もそれを絶対にしない。100億必要だから100億の事業の話しかしないが、金利を含めるといくらになるのか?

元金の1.8倍とか、2倍とか、場合によると2.5倍にもなる。だけど、卑怯だと思うのは、この金利の部分は事業効果に含めない。100億の投資で100億の収入があればトントンかもしれないが、でも金利は出てきませんよね。180億なければならないのに、100億しかなかったら、あとの80億は誰が負担したんだ?という話しになる訳です。ここにトリックがある。

青木講演録/自治体が破産するってホント?(2)

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