自由経済研究、第37号、2012年6月刊

自由経済研究、第37号、2012年6月、が刊行されています。

特集 ワットシステム
大規模な破滅的事象後の復興のためのP2P経済 斎藤賢爾ほか
ぼくらのおカネをつくろうよ(下) 森野榮一ほか
社会主義の経済学と哲学 ノーマン・バリー

編集 ゲゼル研究会
発行 ぱる出版
〒160ー0003 新宿区若葉1ー9ー16
電話 03ー3353ー2835
FAX 03ー3353ー2826

入手ご希望の方は上記へお申し込みください。

ゲゼル研究会開催のご案内

ゲゼル研究会開催のご案内

★期日 9月10日(土)
★時間 13時30分~17時30分(開場は13時)
★会場 中京大学名古屋キャンパス・
センタービル0605教室(6階)
★地図 http://www.chukyo-u.ac.jp/information/facility/g1.html
★テーマ 「大震災後を生きる」
◎河宮信郎「金融経済と原子力発電-安全神話の完全崩壊(仮題)


◎青木秀和「みちのくの構想力―森野氏の提起をうけて―」
★連絡・問い合わせ先 info@grsj.org

自由経済研究、第36号

ゲゼル研究会雑誌、「自由経済研究」第36号が刊行されています。

二宮尊徳の空間経済 森野榮一
ぼくらのおカネをつくろうよ 森野榮一・斉藤賢爾
幸福指標をめぐって 奥沢邦成
入手連絡先
ぱる出版 160-0003 東京都新宿区若葉1ー9ー16
電話 03ー3353ー2835
ファックス 03ー3353ー2826

みんなで考える道徳、6年生

日本標準さんに、小学校6年生、道徳の教科書(なのかな?)で地域通貨を取り上げていただきました。
献本をいただきました。
ありがとうございます。
もし小学校6年生のお子さんをお持ちで、幸運にも、日本標準さんの教科書が使われている場合は、よろしければご参照ください。

生き残りし者

一ヶ月経っても、大震災とその後の展開に気が落ち着かない。 
幾度も訪ねたことがある町の壊滅した光景をテレビで見せられ、思い出す挿絵が一つあった。 
第二次大戦の終わり、1945年にスイスのベルンで、シルビオ・ゲゼルの思想を紹介する書物が刊行された。 
「生き残りし者たちに、シルビオ・ゲゼルの思想」というゲゼルの言葉などを集めた平易な解説書である。 
その、「失意、信念、そして希望」という章に、この挿絵がある。
überlebenden.png
 
いま震災と原発事故による黙示録に直面して、同じ状況にあるなと思う。生き残っているという気持ちを持つことから復興へ向かいたい。 (森野榮一)

企業業績と生産・在庫から足元の日本経済を抉る

曽我 純;
週末値でも原油価格は1バレル100ドルを突破し、08年9月以来の高水準に上昇した。そのほかの商品価格も上昇し、CRB指数は3ヵ月で14.7%高くなり、その上昇率はNYダウの2倍以上になった。商品価格の急騰のわりには債券価格は安定しており、物価上昇による需要減、景気悪化というプロセスを早くも意識しているようだ。
トルシェECB総裁の早期利上げ発言によって、ユーロの短期金利は上昇し、ユーロは買われた。2月の米非農業部門雇用者数は前月比19.2万人増と昨年5月以来の高い伸びとなったが、ユーロ高に変化はなかった。これで非農業部門雇用者数は5ヵ月連続増だが、昨年2月の底からの増加数はまだ126.9万人にすぎず、08年1月をピークとする875万人減の14.5%を取り戻しただけであり、雇用が本格回復したとはとても言えない。2月のISM製造業景況指数は61.4と7ヵ月連続で前月を上回り、04年7月以来の高い水準だが、1月の個人消費支出は前月比0.2%にとどまり、消費が復調したとはいえない。原油高が持続すれば、消費マインドを冷やすことになるし、住宅価格の下落はさらに消費意欲を減退させるだろう。住宅価格の下落はしばしの遅れをともない、消費支出に影響し、延いては足元改善している雇用にも再度過剰感が広がるかもしれない。住宅価格が再調整に向っている一方、農地価格が急騰しつつある。小麦、大豆、トウモロコシの価格騰貴などにより農地は激しく値上りしている。2010年のアイオワの農地価格(インフレ調整後)は1979年のピークに近づきつつある。農地はバブル化の様相を呈しており、バブルが破裂することになれば、金融機関の不良債権が急増し、米景気は腰折れするかもしれない。
好調な企業業績が株高に結びついていると言われているが、実際の数値をみると、業績はピークアウトしており、株価は他の要因で高くなっていることがわかる。財務省の『法人企業統計』によると、昨年10-12月期の全産業の売上高は前年比4.1%と伸び率は2四半期連続で低下し、営業利益は28.9%と3四半期連続の鈍化となった。大企業(資本金10億円以上)を取り上げてもほぼ同じ傾向を示しており、業績拡大の勢いは衰えてきており、今年1-3月期は減収減益になることもあり得る。こうした業績の伸び率低下は設備投資に顕著にあらわれている。全産業の10-12月期の設備投資は前年比3.8%と前期よりも1.2ポイント低下し、低空飛行が続き、失速しそうだ。企業は先行きに自信が持てず、期待収益率が低下していることも、企業の設備投資マインドの改善を遅らせている。売上高営業利益率は3.7%と前年よりも0.7ポイント高く、自己資本比率も36.7%、同0.7ポイント上回り、利益率や財務内容は改善しているけれども、企業の姿勢は慎重なままである。なぜか。
企業が設備投資に踏み出すことができないのは、利益の多くは、人件費を抑制した結果であり、売上高の伸びに匹敵する給与等を支払っていたならば、これほどの利益を出すことができなかったことを十分に承知しているからだ。出すものも出さず利益を嵩上げする行動を大半の企業が実践したのだ。売上高は4.1%伸びたが、人件費は1.4%、人件費の65%を占める従業員給与は1.2%にとどまっている。
1人当たりの売上高は3.4%伸びているが、1人当たりの給与(賞与を含む)は1.3%と低く、これで4四半期連続して後者が前者を大幅に下回ったことになる。人件費を抑えたことなどで売上原価と販管費の伸びも売上高を下回り、営業利益の拡大につながった。人件費の伸びを売上高並みに増やしていれば、営業利益の伸びは17%に低下することになる。利益の源泉は人件費削減と輸出増であったため、企業は業績改善を素直に喜べず、国内最終需要の回復は期待できないと予想し、設備投資に踏み切ることができないのだ。今の業績回復が長続きしないと想定すれば、設備の拡大を抑えることになるが、そのことが企業収益をさらに悪化させるという連鎖が起こる。外需の支えがなくなれば、そのような連鎖によって、企業収益の減少は一気に加速することになる。
  
1月の鉱工業生産指数は前月比2.4%と3ヵ月連続で前月比プラスとなり、回復軌道に乗ったようにみえるが、出荷の伸びは1.1%と2ヵ月連続して生産の伸びを下回り、在庫は4.7%も急増、09年2月以来約2年ぶりの高水準となった。在庫がこれだけ増加したのは、昨年末ポイントが半減した液晶テレビ等の販売減と国内新車販売の不振による。液晶テレビに関連する情報通信機械工業の出荷は前月比16.1%減と2ヵ月連続の大幅減となり、在庫は40.7%と急増した。輸送機械工業も出荷が生産の伸びを下回り、在庫は19.5%と3ヵ月連続で増加した。液晶テレビや自動車の在庫急増によって、1月の耐久消費財の在庫は07年12月以来、約3年ぶりの高水準に積み上がった。
生産指数の前年比伸び率は4.7%と昨年3月をピークに低下している半面、在庫は7.3%と1998年3月以来約13年ぶりの高い伸びとなった。出荷は3.2%と生産を下回り、思うようにモノが出て行っていない様子で、意図せざる在庫が工場や倉庫に積まれているのだ。これほどの在庫の伸び率は、1980年代以降の30年間で6回認められるだけであり、稀なケースに入る。在庫が上昇する過程で、景気はピークを付けていることから、今回の在庫増も景気後退につながる可能性がある。
生産指数は前年比4.7%伸びているが、一般機械工業だけで引っ張っており、それの寄与度は4.3%ときわめて高い。一般機械工業のなかでも半導体製造装置やフラットディスプレイ製造装置の伸びが突出しており、これら一部の製品の生産拡大が、鉱工業生産指数全体を動かしているのだ。だが、電子部品デバイス工業の在庫は前年比53.8%も増加しており、生産調整しなければならない状態に陥っている。生産削減を迫られているときに、半導体製造装置を求めるようなことはしないはずだ。鉱工業生産に対する半導体製造装置の影響が大きいため、半導体製造装置の動向によっては、鉱工業生産は下振れするかもしれない。MEDIA GALLERY?
半導体等電子部品の輸出も1月、前年比12.6%減少し、外需も弱くなってきている。半導体電子部品を含む電気機器が1月、前年比7.5%減少し、輸送も0.2%の微増になるなどで輸出総額は1.4%まで低下しており、前年割れになりそうである。そうなれば、外需依存の高い鉱工業生産や機械受注は厳しい状況に追い込まれることになる。
『家計調査』によれば、1月の消費支出(2人以上の世帯)は前年比-0.9%と5ヵ月連続のマイナスとなり沈んだままだ。勤労者世帯に限れば、可
処分所得が3.3%も減少したことから消費支出も1.2%前年を下回った。有効求人倍率は緩やかに改善しているが、失業率は前月比横ばいの4.9%である。男性失業率は5.3%と0.1ポイント低下したが、3月は跳ね上がるかもしれない。内需が大きく上向くシナリオは描けず、このまま輸出が前年割れにでもなれば、09年3月を底に拡大してきた景気は後退に突入するのではないだろうか。
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FRBの国債購入による株高はいつまで続くか

曽我 純 :
昨年11月、FRBは6,000億ドルの国債購入を決めたが、その1ヵ月前から、外人の日本株買いは積極的になり、2月第2週まで連続して買い越している。昨年10月以降の買い越し額は2.4兆円になる。明らかに、FRBの金融緩和措置が外人の日本株買いの契機となり、株価上昇の原動力となった。だが、6月末でFRBの国債購入は終了することから、外人買いもそろそろ最終局面に近づいているように思う。
それにしてもNYダウの上昇力は異常に強く、09年3月の底から2年経過しないうちに、1.9倍ほど値上りした。前回の上昇局面でも同程度値上りしたが、5年を要しており、今回の値上りがいかに急速であったかを物語っている。09年3月の反発要因もFRBの国債等の買い取りであり、FRBの金融緩和策を材料に株価は上がっていった。今回の国債購入は6月末までだが、いまの経済情勢では、FRBの国債購入は必要ではなく、打ち切りとなるだろう。株式買いの主力材料である国債購入が打ち切りとなれば、景気拡大のよほど強いシグナルが発せられない限り、株式上昇の持続は難しい。
FRBは今年の実質経済成長率見通しを昨年11月の3.0%~3.6%から3.4%~3.9%へ上方修正した。上方修正したことは景気の先行きに自信を深めていることであり、これほどの成長を想定していることは、国債購入だけでなく、ゼロ金利政策の変更もあり得る。さらに、足元、名目で4.2%も伸びていながら、ゼロ金利や国債購入を継続する異常な金融政策によって、株式や素材だけでなく物価も反応してきた。1月の米消費者物価指数(コア)は前年比1.0%と前月よりも0.2ポイント高く、昨年5月以来の伸び率となった。2月以降もじわじわ上がるようだと、早い段階でFRBは利上げに踏み切らざるをえない。実質金利がマイナスの異常な状態を断たなければ、株式や商品のバブルは膨れ、08年以降の金融恐慌に耐えた試練や経験が水泡に帰すことになる。
■ 家計は痩せ企業は太る日本社会
GDP統計によると、昨年10-12月期の経済成長率は名目前期比0.6%減と2四半期ぶりのマイナスとなった。マイナス自体めずらしいことではなく、過去10年を振り返れば、しばしばみられる光景であった。消費支出が前期比1.0%減と09年1-3月期以来の減少となったことや公的部門さらに外需までもマイナスになったことが響いた。
自動車販売やたばこの駆け込み需要の反動減が消費を引き下げたことは事実だが、11月までは薄型テレビが急増していたことなどを考え合わせれば、消費の基調は弱いと言わざるを得ない。7-9月期でさえも消費支出は0.3%伸びたにすぎず、駆け込み需要の効果はたかが知れている。減税の恩恵を受けるものは買うけれども、それ以外の消費は削るという姿勢である。
民間部門で寄与度がもっとも高かったのは民間在庫品増加であり、2四半期連続のプラスだ。自動車やたばこの売上減は予想できたことだが、それでも在庫が増加していることは、企業の予想よりも需要は弱いということを示している。
10-12月期の消費を自動車やタバコのせいにし、今年1-3月期以降、成長率は回復するような見方が報じられているが、1月の新車販売は引き続き大幅な前年割れとなるなど、消費不況から抜け出すことは難しいのではないか。それは消費を決定付ける所得が減少しているからだ。10-12月期の雇用者報酬は前期比0.3%減と2四半期連続のマイナスとなり、これが家計の消費マインドを冷やしている最大の原因だ。デフレーターは3四半期連続の前期比マイナスとなり、デフレが和らぐ兆しはみえない。デフレでは消費や設備投資が活発になることは考えられない。デフレ経済では貨幣価値は上がり、ものの価値は下がるので貨幣を貯めることが、もっとも有利な選択になるからだ。しかもいま指摘したように報酬が減少しているので、財布の紐はことさらきつくなる。
10-12月期の名目GDPは金融危機以降の最低(09年1-3月期)を上回っているが、消費支出はそれを下回り、1996年1-3月期以来、約15年ぶりの低い水準に落ち込んだ。国内家計最終消費支出は2008年1-3月期をピークに減少しているが、その間、耐久消費財は5.2%減とサービス(4.0%減)より悪いが、半耐久財(14.3%減)や非耐久財(7.9%減)に比べると、減少率は緩やかである。
暦年のGDPをみると、2009年までの2年間で名目GDPは激減したが、2010年は1.8%の増加にとどまり、回復力は弱い。名目GDPは479.2兆円と昨年より8.3兆円増加したが、2009年を除けば、水準は1991年以来ということになる。さまざまな政策支援があったにもかかわらず昨年の消費支出は前年比1兆円も増加しなかった。これが回復力が弱くなった最大の原因である。民間部門では在庫増加の寄与度が高く、民間設備投資は微増にとどまった。最大の牽引者は外需であり、これだけでGDPを0.9%引き上げた。消費がこれほど弱いのは雇用者報酬が昨年、0.8%しか増えず、悪化する前の2008年を9.2兆円も下回っており、1992年のレベルにとどまっているからだ。
今年度の企業収益は大幅に改善するようだが、これは報酬を低い水準に据え置いているからで、売上の伸びと同程度に給与を引き上げれば、このような増益にはならないはずだ。このような給与抑制と雇用削減を続けることは、同時に需要を削減していることでもある。企業は収益を拡大し太るけれども、家計の取り分は少なくなり痩せていくのでは経済は縮小していくだけである。
昨年4月~12月の上場企業の売上高は前年比7%を超え、経常利益は8割も増えているけれども、同期間の現金給与総額の伸び率は1%にも満たないのである。所定内給与に限ればわずかだがマイナスという酷い状態である。企業は儲けを溜め込み、財務内容は良くなるが、製造した商品が売れなくなるという有効需要の不足を企業自ら演出している。売上高の伸びに比例した分配をしなければ、経済はうまく行かない。不公平な分配から生じた有効需要の喪失は、政府部門の大幅な赤字でもってしても、補えない規模に達している。企業は少なくても、売上高の伸び率に準じた給与を支払わなければならない。そうしなければ、昨年、1%しか伸びなかった設備投資は、深刻な消費需要不足により再びマイナスになり、内需はますます萎んでいくだろう。内需欠乏の墓穴を掘り、外需に頼らざるを得なくなったのは、企業自ら蒔いた種なのである。
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