ケインズのいう銀行員の常套手段とは

曽我 純:

FRBは16日、FOMC声明で特別に実施している流動性供給措置を来年2月1日で終了する予定と発表した。住宅ローン担保証券と政府機関債の買い取りは来年3月末で完了する見込みである。ただ、「FFレートは今後も長期間、異例の低水準とすることが正当化される可能性が高い」とほぼゼロ金利の状態を続ける意志が強いことを表明した。

11月の米鉱工業生産指数は99.4(2002年=100)、前月比0.8%と6月の底から3.8%回復したが、依然水準は低く、前年水準は下回ったままである。11月の小売売上高は前月比1.3%増加し、12月のミシガン大学消費者センチメント指数も大幅に改善したが、家計、金融セクターの資産劣化に伴うバランスシートの調整は道半ばであり、実体経済が本格的に回復できる下地は整っていない。

FRBは昨年12月16日、政策金利を史上初のゼロに引き下げ、それから1年が経過した。こうした異例の金融政策が効果を上げたかというと、金融機関の利益には大いに貢献したが、実体経済にとってはさほどの効果は上げていない。FFレートをゼロに引き下げ後、長期金利は2.0%近くまで急低下したが、金融危機が徐々に薄れてくると上昇し、現状では3.5%前後で推移したおり、利下げによる長期金利低下効果は出尽くしてしまった。利下げ以降、短期金利は低下している一方、長期金利は3%台に戻ったため、長短金利差は大幅に拡大しており、これによって米金融機関は巨利を手に入れている。金融機関の強欲によって引き起こされた金融危機が金融機関を崩壊させたが、政府とFRBの手厚い救済によって生き延びたばかりでなく、政策金利のゼロまでの引き下げによって途方も無い利益を懐にした。結局、馬鹿を見たのは非金融部門の弱者であった。90年代から今も続いている日本政府と日銀による金融機関の救済と同じことが、米国でも行われたということだ。・・・

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「人間の経済」、第233号

・町工場の現場から(19)ー職人技 杉浦明巳

H社の鍛造は、製品が大きく、手作業という点で、他の鍛造会社とは異なっていた。普段は、材料の鋼材を切断して、建設機械や工作機械の部品を中心に作っている。

ただ、大手の鉄鋼会社が金型を持たない、イレギュラーな大きさの鋼材の注文が入ると、オーダーに合った製品を、自在に作ってしまうという技術の高さで、売り上げも好調な会社だった。つまり、量産型の製品ではない。

30センチ、40センチの丸や四角い鋼材に、熱を加えて、マニピュレーターと呼ばれる、大きな鋏でつかんで、プレス機に掛けながら、注文の長さに、伸ばしたり、球にしたりして成形していく。3、4人でチームを組んだ、この技は、長年の経験と勘による手作業で、社長の見立てひとつに掛かっていた。

1000度からの真っ赤な鉄の塊を扱っていると、化繊の衣類や、プラスチックの眼鏡のフレームなど、簡単に溶けてしまうのだそうだ。さながら、焦熱地獄のような、現場の様子に、思わずゾッとするが、そんな現場を一度、自分の目で確かめたいと思っていた。・・・

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10月のOECD景気先行指数、前年比+6.0%と26年ぶりの高い伸び

曽我 純:

日本の景気の戻りが弱い。OECD景気先行指数によると、10月のOECDは前月比1.0%と今年2月を底に8ヵ月連続で改善した。金融危機に陥った昨年10月と比較すると、日本は2.2%増にとどまる一方、米国は4.0%、ユーロは9.3%も前年を上回っており、日本の戻りの弱さが目立つ。

主要株価指数を3ヵ月前と比較すると、下回っているのは日本株だけで、NYダウをはじめ欧州の株価指数はいずれも高く、日本株だけがおいてきぼりだ。基本的に日本株が上昇しないのは、景気の先行きに自信がもてないからである。

各国の株価の動向はOECDの景気先行指数の内容を概ね反映しているといえるが、ただ、OECD景気先行指数の前年比伸び率は6.0%と1983年10月以来26年ぶりの高い伸びとなり、早晩、ピークアウトするだろう。株価は先行指数が下降に転じる前に下がる傾向があるため、景気先行指数の急激な上昇が株価の先行きに影響を及ぼしているのかもしれない。利益水準に比べて株価が高いことが日本株の下降要因のひとつだが、景気先行指数の動向からも正常な水準へ向う動きだといえる。PDFを読む週刊マーケットレター(091214).pdf

日銀の資金供給手段を評価する

曽我 純:

・・・日銀の景気を刺激する弾はもはや尽きた。金利はほぼゼロだし、買いオペも準備預金に積み上がるだけで、その準備預金を元手に、日銀は国債等を買い入れる。金融機関は貸出先がなかなか見つからないから準備預金に積む。このように、日銀と金融機関の間を金が循環しているだけで、日銀と金融機関の外には金はほとんど出て行かない。

いままで散散行い効果の見られなかったこのようなオペを評価するなど、政府や市場参加者の気が知れない。政府に媚びする日銀、拙劣な措置を引き出しその場を繕う政府。株式バブル崩壊から年末で20年を迎えるが、その間してきたことは、効果のない政策の繰り返しであった。であるから20年経過しても株価はピークの4分の一ほどでしかないのだ。政府や日銀が、このまま過去の政策を踏襲していくならば、日本経済の衰退に歯止めはかからず、株価は下降トレンドを描いていくだろう。PDFを読む週刊マーケットレター(091207).pdf

FRBの甘い経済見通しとドル安

曽我 純:

ドバイショックで円は対ドルで急騰、一時、84円台まで上昇した。なぜこれほどまでに投機資金は円に向うのだろうか。日本経済の回復期待感が欧米よりも強いのであれば納得できるが、日本に対する期待が低いにもかかわらず、円が買われるという奇妙な現象が起こっている。日本企業の収益力は著しく低下しているし、地価の下落率も拡大するなど円の魅力は乏しい。それでも円が強くなる、その仕組みを抉りだそう。

ドバイの問題は限定的だと考えられるが、米国をはじめ欧州でも、デフレにより負債者の負担は増し、ドバイのような問題を抱えていることが、通貨価値に影響していると考えられる。米主要10都市の住宅価格は9月まで5ヵ月連続で上昇しているが、米金融機関の不良債権・貸出比率は9月末、4.9%と1983年以降最悪となり、金融機関の破綻も増え続けている。新たな金融危機のリスクが投機家の脳裏に浮かんだことも、ドル離れに走らせたのではないか。PDFを読む 週刊マーケットレター(091130).pdf

真正デフレに陥り約17 年前の水準に後退した日本経済

曽我 純:

20日の月例経済報告によると、日本経済は「緩やかなデフレ状況にある」と文言にデフレを挿入したが、今は緩やかと言える生易しい状態ではなく、かなり深刻なデフレ経済だ。11月16日発表の7-9月期のGDP統計によれば、実質は前期比1.2%増加したが、名目は0.1%減と6四半期連続のマイナスとなり、1992年1-3月期以来、17年半ぶりの低水準に落ち込んだ。われわれの生活水準は17年半前に後戻りしたということだ。
しかもIT関連の製品は目まぐるしいほど新製品が次から次ぎへと登場していることから、GDPの内容は悪くなっているのではないか。内容に大きな変化がなければ、2年で買い換えるのと4年で買い換えるのでは、GDPは2倍の差がつく。企業は目先の利益追求に、内容はほとんど変わらない製品を表面的に、さも目新しい新製品のように宣伝し、売り出す。こうした本当は新製品でない新製品を作り出すことに精を出し、自転車操業といえる経済体制を構築したことが、GDPを著しく内容の乏しいものにしてしまった。内容が粗末なだけでなく、走り続けなければならないという問題まで抱え込んだからだ。
携帯電話やパソコンはその最たるものだが、本来、家庭でしなければならないこと、作らなければならないものを外部に求めすぎたことも、経済の収縮を大きくしている。不況になれば、所得の減少により外部に求めることができなくなり、家庭への回帰が一層経済に打撃を与えている。PDFを読む

惰性に従って失敗を選ぶ日本の株式市場

曽我 純:

NYダウは年初来高値を更新しているが、日経平均株価は3週連続で値下がりした。主
要国の株価と比較して日本株の割り高が顕著になり、外人の買い超し額が減少しているか
らだ。日経平均株価の予想株価収益率は33倍に低下してきたとはいえ、成長力の期待が
喪失している日本経済を目の当たりに見れば、株価は異常に高く、予想株価収益率は10
倍前後に低下してもおかしくない。常識的に考えれば、5,000円でもまだ高いのだ。そん
なわかりきったことを無視して、日々の超短期売買に現を抜かしていれば、結果がどのよ
うになるかは明らかである。PDFを読む

厳しさを増す日米の雇用

曽我 純:

10月の米失業率は前月よりも0.4ポイント高い10.2%と1983年4月以来、26年半ぶり
の高い水準に上昇した。10月の失業者は15,700千人、前年比5,479千人の増加だ。失業の
仕方もレイオフではない失業者が前年を90.5%も上回り、失業期間も長くなっている。失
業期間が27週間以上の長期失業者(5,526千人)は前年比147.8%も増加し、失業者に占め
る比率は38.0%に上昇した。15〜26週間失業している人(2,883千人)も79.5%増加してお
り、失業期間は長期化しつつある。非農業部門雇用者は前月比19万人減と前月よりもマ
イナスは縮小したが、製造や建設だけでなく小売業も減少するなど、幅広い産業で人員削
減が行われており、雇用の厳しい状況は続くだろう。 PDFを読む

信用不安が募る米国経済

曽我 純:

10月25日、米商業用不動産金融大手のキャップマーク・フィナンシャル・グループの
破産申請に続き、同30日にはノンバンク大手CITの破産法申請が近いということから、
再び、米国では信用不安が強まっている。信用不安は株式市場を直撃し、NYダウは30日、
249ドル下落した。「株式の暴落は、投機的な確信あるいは信用の状態のいずれかが弱ま
ったことによるものであった」(『一般理論』、p.158)というケインズの指摘がそのまま
当てはまる。PDFを読む

米実体経済弱く、マネーは商品市場に流れる

曽我 純:

週末、ドルユーロ相場は1ユーロ=1.5005ドルで終わり、週末値では08年8月第2週
以来、約1年2ヵ月ぶりのユーロ高ドル安である。ユーロ圏が米国の景気よりも回復力が
強いことが、ユーロ高ドル安を進行させている。ユーロの短期金利は0.68%とドル金利を
0.4%も上回っており、金利差からもユーロに資金が向かいやすい地合だ。PDFを読む