景気を悪化させる法人税率の引き下げ

曽我 純:
日経平均株価は6週連続で値上りし、5月第2週以来の高い水準に上昇した。外人が大幅に買い越しているからである。FRBが追加金融緩和策を発表した11月第1週以降、外人は6週連続、日本株を買い越し、12月第1週までの累計額は7,306億円に達し、年初以来の買い越し規模になっている。12月第1週の東証1部売買代金(委託)に占める外人比率は66.4%と引き続き高く、日本株は外人主導で引き上げられている。
経済指標など脇において、買えば上がる、上がるから買うといった調子で株価は、糸の切れた凧のように上がっている。なにかをきっかけに外人買いが途切れることになれば、日本株は一気に崩れるだろう。椅子取りゲームは最終場面に近づいている。
10月の『景気動向指数』が発表されたが、一致指数は前月比-1.4%と2ヵ月連続のマイナスとなり、景気は8月をピークに明らかに失速している。先行指数は4ヵ月連続の低下となり、しかもピークは4月である。ディフュージョン・インデックス(DI)も一致は33.3%と景気の分れ目である50.0%を09年4月以来18ヵ月ぶりに下回った。今年3月まで3ヵ月連続して100%を付けたが、その後、景気の良い部分は少なくなり、10月はついに50.0%を下回ってしまった。DIの先行指数は6月以降5ヵ月連続の50.0%割れとなり、10月は20.0%まで低下した。
『法人企業景気予測調査』によると、大企業製造業の売上高は今年度上期の前年比13.4%から下期は1.9%に鈍化する見通しである。下期の売上高は前回調査(1.5%減)を上回ったが、経常利益は前回の4.7%から今回は12.2%減の減益予想となり、大幅な下方修正となった。大企業非製造業の下期の売上高、経常利益はともに前回よりも下方修正され、特に、経常利益は15.4%と伸び率は前回調査の半分に低下するようだ。
大企業製造業の「貴社の景況判断BSI」(前期と比べて「上昇」-「下降」社数構成比)は10-12月期、-8.0%と09年4-6月期以来6四半期ぶりのマイナスとなった。前回予想(0.0%)を下回り、これで2四半期連続の下方修正だ。大企業製造業BSIの改善は7-9月期までの2四半期で止った。大企業非製造業のBSIも10-12月期、-3.4%と前回を下回り、3四半期ぶりのマイナスになった。プラスに浮上していた期間は2四半期にすぎず、非製造業の景況は再び悪化しつつある。09年4-6月期以降、今年の4-6月期を除き、非製造業のBSIが前回予想を下回っている点を鑑みるならば、来年1-3月期の見通しは-1.2%だが、10-12月期よりも悪くなるのではないか。
『法人企業統計』でも企業業績のピークアウトがみられる。7-9月期の大企業売上高は前年比5.7%と伸び率は2四半期連続で低下し、営業利益も前期の152.8%から61.8%へと大幅に低下した。伸び率は低下したとはいえ、依然、営業利益は前年を大幅に上回っており、好調を持続しているようにも読み取れる。営業利益が高い伸びを維持しているのは、売上原価や販管費を抑えているからだ。売上原価は前年比4.5%、販管費は2.3%といずれも売上高の伸びを下回り、企業の支出抑制姿勢は強い。コストの主要部分を占める人件費は前年よりわずか0.6%高いだけで、売上高の伸び率との格差は大きい。だが、企業はこうした売上高と支出の伸び率の乖離した状態をいつまでも続けられるわけではない。企業の支出の抑制は家計の支出を阻み、他企業の収入にも悪影響することになり、早晩、企業の売上高に跳ね返ってくる。
企業は利益を溜め込んでいる。自己資本比率は上昇し続けており、7-9月期には42.8%と前年を1.1ポイント上回り、3四半期連続で過去最高を更新している。資産に目を向けると、9月末、「現・預金」は前年比6.7%増の37.9兆円、「投資その他の資産」は1.9%増加し225.1兆円と資金は有り余っている。
これほどカネが企業に滞っており、しかも政府は来年度の予算編成で四苦八苦している状況下にもかかわらず、マスコミの意見に押されて法人税率を引き下げようとしている。下げたいなら法人税率ではなく所得税率を下げるべきである。法人税率を引き下げれば、企業が手にするカネは増えるが、給与は増やさず、設備投資の拡大にも取り組まなければ、社内にカネは溜まる一方だ。企業が設備投資を拡大するとは考え難く、結局、国が国債発行により、余剰資金を吸い上げるという方法で貯蓄・投資のバランスが保たれるのである。
名目GDPがマイナスを続けるような経済では、設備投資の伸びは見込めず、法人税率を引き下げても、それによって入手したカネを企業は使い切ることができないのだ。法人税率などの議論に時間を浪費するのではなく、欠損法人(特に金融機関等)から税を取り立て、サラリーマンに偏っている不公平な徴税を改め、有価証券取引税の再導入を図ることが必要ではないか。
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中央銀行演出の危うい相場

曽我純 :
11月の米雇用統計は予想を下回ったが、NYダウは下落せず、商品市況は大幅に値上りし、債券は売られた。雇用統計に唯一素直に反応したのは為替のドル売りだけである。米10年債の利回りは3.0%と7月中旬以来の高い水準に上昇した。FRBの金融緩和策が発表されてから43ベイシスポイントも上昇し、国債相場はFRBの狙いとは反対の方向に進んでいる。長期金利が上昇すれば、回復力の弱い設備投資やバブル崩壊で落ち込んだままの住宅の回復を阻むことになる。
経済指標を相場に都合よく解釈することで、いつまで株式や商品相場を維持できるのだろうか。悪い指標が発表されても、相場は多数の市場参加者の美人投票に従って価格付けが行われ、必ずしも指標通りには変動しないが、最終的にはファンダメンタルズに屈服せざるを得ない。ファンダメンタルズを蔑ろにし、投機の深みに嵌っていくと、いつのまにか参加者は少なくなり、相場から降りるに降りられなくなる。
FRBのゼロ金利と国債買い取りがいつ終わるのか検討もつかないことが、投機家を強気にさせている最大の要因である。金融部門は金融緩和というコスト低下の恩恵をフルに受けており、金融部門の活動は実体経済からますます離れている。FRBは、金融緩和は資金を経済に行き渡らせ、景気をよくすると考えているが、住宅バブルの崩壊で資産価値は下落し、資金需要はきわめて弱く、金融機関にマネーは溜まり、ヘッジファンド等に貸し出されているはずだ。マネーは実体経済よりむしろ株式、債券、為替、商品といった金融市場に入り込んでおり、相場を吊り上げている。
11月の消費者信頼感指数、11月の主要小売業売上高、11月の新車販売、10月の仮契約住宅販売指数などは景気回復を期待させた半面、11月の雇用統計をはじめ製造業ISMや9月のS&Pケース・シラー住宅価格指数は景気の持続性に疑問を投げかける内容であった。最も注目されていた雇用統計は一顧だにされなかった。
非農業部門雇用者数は前月比3.9万人増と2ヵ月連続のプラスだが、増加数は10月の17.2万人から減少した。民間部門は5.0万人と今年1月以降、11ヵ月連続の増加である。ただ、10月までは4ヵ月連続して10万人を超えており、11月は今年1月以来の低い伸びとなった。しかも、民間部門を支えたのは派遣等の一時雇用(3.9万人増)であり、企業の姿勢は依然慎重である。製造業は1.3万人減と9月の横ばいを除く11月までの3ヵ月は前月比マイナスとなり、夏場以降、製造業は雇用を絞っている。11月の売上が伸びた小売部門の雇用は2.8万人減と2ヵ月ぶりに減少した。
11月の失業率は9.8%と前月比0.2ポイント上昇し、今年4月以来7ヵ月ぶりの高い水準だ。これで9.0%超えは19ヵ月連続となり、第2次石油危機のときに並び、今回はこれを大幅に更新することは間違いない。失業者は1,511万人と前年よりも1.4%減少したが、仕事を諦め労働力人口にカウントされない人が増加し、非労働力人口は35.5%と前年よりも0.4ポイント高くなり、実際の失業者は数値以上である。失業率の高止まりから、長期失業者(27週以上)は631万人、前年を7.0%上回り、失業者の41.8%を占めている。
失業率が歴史的に高い水準に高止まりしていれば、消費の伸びは期待できない。10月の個人消費支出は前年比3.6%伸びたが、7月の4.1%を下回ったままであり、伸びは頭打ちである。高失業率が続けば、個人消費支出は2%台に低下するかもしれない。消費の低迷は設備投資マインドを悪化させるだけでなく、雇用にも影響が及ぶだろう。
9月の住宅価格指数は前月比-0.7%と3ヵ月連続の低下となった。4月末に初回住宅購入者向け減税措置が打ち切られたため、5月以降、住宅販売が減少していることが響いている。住宅需要の低迷が、住宅価格を引き下げ、さらに消費マインドを悪化させるというプロセスに入っているように思う。
雇用や住宅価格の動向などに基づけば、米国経済の回復の道筋はみえてこない。みえてこないばかりか、金融の不安定性が高まり、それが経済を再び撹乱する恐れもでてきている。金融危機を引き起こした張本人は焼け太りの状態となり、金融危機以前と米経済構造はさして変わっていない。これでは、近いうちに、また金融バブルが膨らみ、破裂するという愚が繰り返されることになる。
実体経済に必要な貨幣量をはるかに上回る貨幣を供給することは、放蕩息子にカネを与えることと同じだ。ろくでもないことに湯水のように使い、すってんてんになるのは目に見えている。米国のマネタリーベース(MB)・名目GDP比率は13.3%と金融危機以前に比べると2倍以上である。因みに日本のMBはGDPの20%と米国よりも6ポイント以上高く、しかもこの状態を長期間、続けていることから、日本経済はマネー漬けとなっている。マネー漬けとなっても、一向に景気がよくならないのは、実体経済の必要量をはるかに超えている部分の多くは日々の暮らしの中に入ってきていないからだ。日米の中央銀行によって供給されたマネーは、放蕩息子の浪費のように良からぬところで使われているのである。マネーを野放図にしている付けは、必ずバブル発生・破裂という形で回ってくることを、中央銀行は肝に銘じなければならない。
欧州がアイルランド支援を決め、ECBが資金供給や国債買い取りの継続を発表したことで、ひとまず欧州の金融が落ち着き、投機筋がマネーゲームに参戦してきたように思う。だが、欧州経済が厳しい状況に置かれていることは間違いなく、度々、今回のような危機が起こるだろう。財政を建て直すために、緊縮財政を強いられる国の経済は今年よりも悪化し、政治的な問題が噴出し、経済が混乱する可能性が高い。
EUの経済見通しによると、ユーロ圏の実質GDP成長率は2011年、1.5%と今年より0.2ポイント低くなる。現在、一人勝ちのドイツの減速がユーロ圏に大きく影響する見通しである。青息吐息のアイルランドは今年の-0.2%から0.9%へとプラスを見込んでいるが、金融部門が脆弱で財政を絞るとなれば、プラス成長は非現実的だ。為替の調整メカニズムが作用しないため、引き続き欧州の支援で再生を図るしかない。
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政治的処理能力が問われている欧州の金融危機

曽我 純 :
米金融緩和の狙いはドル安、国債高であったが、最近はドル高、国債安となり狙いとは反対に動いている。米金融緩和策発表の約1週間後に顕著になってきたアイルランドに端を発する金融危機が南欧に伝播しつつあり、対ドルでユーロは3週連続安となった。住宅バブル崩壊や金融機関の不良債権は欧州経済に伸し掛かっており、それらの処理は一筋縄ではいかない。10月のインフレ率も米国の1.2%に対してユーロ圏は1.9%と高く、ユーロの価値は相対的に低下しており、ユーロ売りを誘っている。
07年頃までに膨れた住宅バブルは米国だけでなく欧州でも進行していたことを思い出せば、いままでアイルランドが平穏であったことが不思議である。膿をださねば経済は良くならないことはわかっているが、自国だけの力では手に負えず、アイルランドの回復はユーロ圏等がどれだけ負担に耐えられるかに掛かっている。
7-9月期のユーロ圏実質GDPは前期比0.4%と伸び率は前期よりも0.6ポイント低下し、米国を下回った。アイルランドのGDPはまだ発表されていないが、4-6月期は1.2%低下している。ギリシャは-1.1%とマイナスが続いており、スペインは横ばい、ポルトガルは0.4%の増加だ。ドイツは0.7%伸びたが、前期(2.3%)に比べれば大幅に鈍化した。
アイルランドは24日、財政再建計画を発表したが、前提となる2014年までの4年間の平均実質GDP成長率を2.75%としている。が、住宅バブル崩壊による消費マインドの悪化や巨額の不良債権を抱えて身動きのとれない金融機関の処理などを考えれば、とても実現できる成長率ではなく、計画は絵に描いた餅である。
07年までのアイルランドの実質GDP成長率は驚異的な伸びをみせ、ユーロ圏を大幅に上回っていた。こうした異常に高い伸びは不動産や金融部門に導かれたものであり、実体経済とマネー経済が完全に遊離してしまった。マネー経済の肥大化により、GDPは嵩上げされ、高成長となった。いまその反動減に見舞われている。
08年以降、状況は一変、前年比3.5%のマイナス成長となり、バブルの本家である米国よりも1年早く水面下に落ち込んだ。米国が1946年以来の大幅なマイナスになった09年には、アイルランドのGDPは7.6%減と急低下し、2010年にはいっても前年割れが続いている。これからバブル処理を本格化し、財政支出も削減しながら、2011年から高い成長を遂げることはとうてい不可能である。
単一通貨ユーロを導入し、金融政策も一元化したユーロ圏だが、実体経済の格差は縮小していない。ユーロ圏の7-9月期の実質GDP成長率は前年比1.9%だが、マイナス4.5%のギリシャから最高はドイツ(3.9%)まで格差は大きい。インフレ率もアイルランドの前年比マイナス0.8%から5.2%も上昇しているギリシャまで6.0ポイントの開きがある。これほど違いがあるにもかかわらず、政策金利は1.0%なのである。経済成長率だけみても今の政策金利が適切な国はすくない。
ユーロ圏で捉えると、インフレ率は1.9%上昇しているので、実質政策金利はマイナスとなり低すぎる。アイルランド等の金融部門を救済するために1.0%に抑えているが、正常な経済にとっては有利な措置となる。金融をさらに緩和しなければならない国、反対に引き上げが必要な国もあるが、弱いところに合わせざるを得ない。そして、強い国が手助けしてゆかねばユーロ圏はとても持つまい。ユーロ圏の政治の成熟度が試される事態が続くだろう。
■ 外需の伸び弱くなり政府の負担強まる
10月の貿易統計によれば、日本の輸出は前年比7.8%と8ヵ月連続で伸び率は低下した。対アジアは11.3%と依然2桁増を維持しているが、対米は4.7%に低下、対EUは-1.9%と昨年11月以来のマイナスになった。EUからの輸入は11.5%とやや伸びていることから、円高ユーロ安の影響がでている。最近、円高ユーロ安が再び強まっていることから、ユーロへの輸出はさらに厳しくなりそうだ。いずれにしても輸出の伸びはますます弱くなっており、低迷する内需を補うことができなくなってきている。
輸出を支えているのは一般機械であり、輸出の7.8%増のうち5.2%が一般機械だ。一般機械の輸出額の半分以上はアジア向けである。半導体、映像などの電機機器の伸び率は2.4%に低下し、寄与度は0.5%にすぎない。電気機器は一般機械よりもさらにアジア依存度が高く、日本の輸出はアジアで保たれているといっても過言ではない。そのアジアへの輸出もあきらかに鈍化してきており、数量ベースでは今年1月の前年比63.7%から10月は5.8%に低下し、11月は前年割れになるだろう。
内需が振るわず、輸出も前年を割ることになれば、頼りになるのは政府部門だけだ。民間部門や外需の不振による需要不足は、政府部門の拡大で自動的に補われるだろう。デフレにより消費が低迷し貯蓄が増加するいまの日本では政府支出は拡大せざるを得ない。さかんに法人税率の引き下げが言われているが、企業の設備投資意欲が低いときに、引き下げを実行すれば、政府部門がますます拡大することは貯蓄と投資の恒等関係からあきらかである。企業は政府の肩代わりなどできないのである。
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投機が渦巻く日本の株式市場

曽我 純:

日経平均株価は3週連続高となり、週末値では今年5月第2週以来の1万円台乗せとなった。予想株価収益率をみると日本株は海外に比べて割安ではなく、最近の日本株の上昇を説明できる材料はない。東証1部の売買代金の約7割を占める外人の買いで、株価は引き上げられている。商品市況があまりにも上昇しすぎたので、そこから撤退し、その資金を日本株に振り向けているのだろうか。株売り、債券買いのポジションを手仕舞う結果なのだろうか。いずれにしても投機資金による流入であることは間違いなく、流入が続くのか、途切れるのか、流出に転じるのかで日本株の帰趨は決まる。
株式市場が外人に7割も支配されていることは異常だ。今日本株に起こっていることは、新興国に投機資金が流入し市場が撹乱され、経済が混乱するのとおなじことである。海外の投機者によって、株価の変動が激しくなり、それにより日本経済が混乱するのでは困る。株式崩壊の90年代以降、何回株式の変動で経済が正常に機能しなくなったことだろう。日本経済は投機に弄ばれてきたといえる。投機から経済を護らなければいけないところを、投機を煽る政策を採ったことが最大の失敗であった。ケインズの「企業が投機の渦巻のなかの泡沫となると事態は重大である」(『一般理論』、p.159)との指摘は今の日本経済の実情を突いている。いまからでも株式から投機を遮断する取引税等の導入を図る必要がある。
■ はなはだ心もとないGDPの中身
1万円に乗せたことで、外人の当面の目標は達成されたと思う。今後、利益が上方修正されるような状況であれば、株価は持続するかもしれないが、これまでは、政府の経済政策により、日本経済は実力以上に嵩上げされていたが、今年度下期は政策効果が薄れていくことから、反動減に見舞われ、10-12月期以降のGDPは2四半期連続で減少するかもしれない。新車販売台数は10月、前年比26.7%減に落ち込み、景気にマイナスに作用しているが、エコポイントの薄型テレビ等も12月以降は、ポイント半減で売れ行きは激減するだろう。外需の輸出はすでに5ヵ月連続の前月比減となり、製造業の業績の足を引っ張っている。10月の鉱工業生産指数は大幅に低下する見通しであり、これも製造業の業績悪化を裏付けることになろう。
週初に発表された7-9月期のGDPをみても、政策効果があってもこの程度なのかという内容であった。デフレーターは前期比0.2%、前年比2.0%それぞれ低下した。前期比では2四半期連続、前年比では6四半期連続のマイナスである。名目GDPは前期比0.7%増加したが、4-6月期が前期比0.7%減だったため、1-3月期の規模に戻っただけだ。
0.7%増の寄与度をみると、最大は民間在庫品増加で0.4%、次が民間最終消費支出の0.2%である。まことに心もとない内容であり、これでは成長しているとはいえない。在庫はおそらく意図せざる増加であり、10-12月期はこれがマイナス幅をおおきくするだろう。民間最終消費支出が前期比0.4%伸びたくらいでは、成長率は決して高くならない。7-9月期の民間最終消費支出の規模は284.6兆円、GDPの58.9%を占めているが、前年よりも0.9ポイントの低下だ。民間最終消費支出は底であった09年1-3月期に比べても1.1%しか増加していない。
補助金、エコポイントがありながら民間最終消費支出が伸びないのは、報酬の低迷と将来の見通しが暗いからだ。事実、7-9月期の雇用者報酬は前期比0.1%減少しており、過去3四半期ほぼ同じである。前年比では1.0%増加しているが、これは前年同期が3.8%減少しているからであり、08年7-9月期に比較すると2.8%も減少している。家計の財布の紐はきつく縛られたままであり、消費の回復が期待できるような状態ではない。
■ デフレに近づく米国経済
米国経済も基本的には変化に乏しく、景気の足取りは重い。10月の小売売上高は前月比1.2%と大幅に伸びたが、自動車等を除けば0.4%とそれほどでもない。家具と家電はマイナスになるなど売上は全体に広がっていない。
10月の米鉱工業生産指数は前月比横ばいと前月のようにマイナスにはならなかったものの、それでも生産水準は金融危機の期間を除けば、6年前の04年秋の低い水準である。前年比では6月がピークとなり、すでに4ヵ月連続で伸び率は低下している。設備稼働率は74.8%と過去4ヵ月ほぼ横ばいだが、ハイテク関連は71.9%と全産業を下回っているばかりでなく、6月以降6ヵ月連続で低下している。
設備稼働率の回復の遅れは、消費者物価(CPI)の上昇を押える要因になっている。10月の米CPI(食品・エネルギーを除く)は前月比横ばいとなり、これで指数は3ヵ月同じである。CPIが横ばいになることは、カネとモノの交換が不活発になってきており、景気がよくないことを示している。CPIの前年比上昇率は0.6%と1957年以降では最低となり、米国はデフレ経済に近づきつつある。CPIは設備稼働率に遅行する傾向にあり、今後、設備稼働率が低下することになれば、日本のようにCPIはマイナスになるだろう。
デフレを示唆するもうひとつの指標に住宅着工件数を挙げることができる。10月は51.9万戸、前月比11.7%も減少し、最低であった09年4月以来の水準に落ち込んだ。4月末に減税が打ち切られてから、住宅着工は減少傾向にあり、これもCPIに影響している。住宅着工の縮小は消費減に繋がり、米国経済をデフレに近づけることになる。
今月に入り2度も預金準備率を引き上げた中国の引き締め策は明らかに米国への対抗措置だ。米国の金融緩和の効果を掻き消そうとしている。米国は中国の金融政策に振り回されている。おそらく、中国は利上げに踏み切り、さらに米国経済を追い詰めるだろう。米国は為替の問題を持ち出すことができなくなるかもしれない。米国は国内要因だけでなく中国からもデフレ圧力が掛かってきそうだ。
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米追加金融緩和策の弊害早くも露呈

曽我純:
3日発表の米金融緩和策の市場への効果は出尽くした。Dowは金融緩和策を発表した前日以来の低い水準に下落し、商品市況は急落した。金融緩和は世界にhot moneyをばら撒き、投機を煽り、株や商品価格を押し上げた。すでに、こうした流れは9月以降顕著になってきており、公表から1週間も経過しないうちに、賞味期限切れとなり、抗がん剤のような副作用があらわれてきた。
世界経済が減速していながら、株式や素材価格が上昇することは、実需ではなく単に値上り益だけを求めた投機マネーが流入していることを示している。FRBが国債を買うことによって、金利が下がり、それが景気を刺激することになるのだが、緩和策発表後、短期金利は横ばい、長期金利は上昇しており、FRBの目論見は投機家の期待を満足させただけとなった。
そもそも3ヵ月物の金利は0.3%を下回っており、いくら信用を緩めても、低下幅はたかが知れている。日本と違い米国経済はデフレではなく、7-9月期の名目GDPは前年比4.4%増と長期金利(2.6%)を大幅に上回っているため、長期金利の低下余地は乏しく、民間設備投資や住宅の購入を促すことはできない。
金融緩和をほのめかしたことにより、9月以降、株式や商品市場には政策を先取りした買いが活発になり、上昇力を強めていた。期待で上昇していただけに期待が現実になれば目標を失い、立ち竦むことになる。
資源価格の上昇は、輸入に依存している新興国の物価を押し上げ、インフレを警戒しなければならなくなった。原油や銅などの素材を大量に輸入している中国の物価が上昇するのは必至だ。FRBの金融緩和方針が期待を膨らませ、値上りすることのない資源価格を引き上げ、負の効果を世界経済に与えたことは間違いない。金融緩和は米国の為替や長期金利を思ったように動かすことができず、インフレ懸念や欧州の金融不安の引き金となった。アイルランド国債等の急落も、米金融緩和により、ユーロ高ドル安、国債価格の上昇を期待して買い持ちした投機者の読みが外れたからではないか。
新興国の物価上昇懸念が金利を引き上げ、景気拡大を抑えるだろう。日本の景気は言うに及ばず、米国の足取りも不確かであり、ユーロ経済は減速しつつある。これで新興国の景気が資源高、利上げで腰折れすることになれば、世界経済がおかしくなるのは目に見えている。
FRBの意味のない金融緩和が世界経済を苦境に追い込んでいる。08年10月以降、信用不安により準備預金の急増という形で銀行の資産は現金に傾斜してきた。FRBの国債やMBSの買い取りが銀行への資金供給となったが、貸付には回らず準備預金、国債に充当されてきた。10月の商業銀行の現金残高は1.12兆ドル、総資産の9.3%を占めており、金融危機以前の08年8月(2.9%)に比べれば、商業銀行の現金保有比率は異常に高い状態で推移している。商業銀行に買いオペでいくらマネーを供給しても現金を積み上げた状態が続いており、市中にでていかないのだ。このように貨幣が循環しない状況が続けば、FRBの資金供給作戦は失敗の烙印を押されることになるだろう。そもそも、貨幣を供給すれば経済が回復するというミルトン・フリードマンの思想を踏襲しているバーナンキFRB議長では、米国経済を立ち直らせることは無理なのである。
GDPは貯蓄と投資の関係で決まるのであり、貨幣供給は金利に影響する場合にのみGDPに関わってくるだけだ。金利が低下したとしても、消費性向等他の条件が変化すればその限りではない。家計が住宅価格の下落やローン返済で苦しんでいるときに、消費が回復することはないだろうし、消費の低迷が続けば、企業の設備投資意欲も盛り上がることは難しい。中間選挙で民主党が敗北したため、財政面からの景気てこ入れは期待できなくなり、米国経済は2番底に陥る事態もあり得るのではないか。
10月の米商業銀行の商工業貸出は前年比8.4%減と18ヵ月連続のマイナスだが、日本の銀行計の貸出も2.0%減と前年割れが続いている。「景気対応緊急保証制度」(36兆円規模、8,000万円まで無担保、信用保証協会の100%保証、期間来年3月末まで)で銀行は安心して貸し出すことができるにもかかわらず貸出は一向に持ち直さない。預金は3.1%も増加しているので、銀行は国債を買わざるをえない。それしか選択肢がないのだ。
『消費動向調査』によると、消費者態度指数(一般世帯)は6月をピークに4ヵ月連続の低下となった。7-9月期の企業業績が急増したのとは対照的である。7-9月期の上場企業の売上高は10%近く伸びた半面、勤労者世帯の実収入は0.2%の微増にとどまった。実収入は09年7-9月期が4.6%も減少しているため、2年前との比較では4.4%減である。大企業との比較とはいえ、企業の売上と勤労者収入の伸び率の隔たりはあまりにも大きい。営業利益が前年の5割り増しに拡大したのは、人件費を抑えた結果なのだ。人件費を切り詰めることによって、個々の企業の利益は増加するが、購買力が伴わないので長続きしない。一時的な利益拡大に終わらせないためにも、企業は売上の拡大と同じように人件費も増やさなければならない。
9月の景気動向指数によると、CIの先行指数は前月比-0.6%と3ヵ月連続の低下となり、一致指数も-1.3%と18ヵ月ぶりに低下した。ディフージョン・インデックス(DI)の先行指数も6月以降、景気の分れ目である50%を下回っている。一致指数は9月、55.6%と3月まで3ヵ月連続の100%を境に低下しつつあり、景気後退の範囲が広がりつつある。10月は50%を切ることになり、DIからも政府は景気後退判断を突きつけられるだろう。
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資産価格の上昇を煽るFRBの金融緩和策

曽我 純:
3日発表のFRBの金融緩和策は世界の株式や商品市場を活気づけた。NYダウは6営業日連続の上昇で08年9月8日以来の高い水準に回復し、金は過去最高を更新した。ドルのばらまき政策により、円を除く主要通貨に対してドルは弱くなった。長期金利は第1次量的緩和時(09年3月18日)のようには低下しなかった。第1次時点では株式は6,000ドル台に急落していたため、V字型に回復した。国債利回りは当日2.53%に急低下したが、その後3%台後半に急上昇していった。
米株式は金融緩和をすでに織り込んでいるため、このレベルからさらに上昇するには、実体経済の回復力が強まることが必要である。2010年7-9月期の実質GDP は第1次量的緩和期の09年1-3月期を3.3%上回っているだけであり、回復は緩慢である。10月の非農業部門雇用者は前月比15.1万人増と5ヵ月ぶりのプラスとなった。10月のISM景況感指数は製造業、非製造業ともに前月比プラスとなったが、前者は4月、後者は3月~5月の水準を下回ったままである。失業率の高止まりなどから、個人消費支出は9月、前月比0.2%と弱く、米国経済の不透明感は拭えていない。
FRBは6,000億ドルの国債を買い入れ、銀行にマネーを供給するが、家計等は不良資産を抱えたままであり、資金需要は弱く、銀行は貸出を伸ばすことはできない。銀行は国債を売却して入手した資金を国債に注ぎ込むか、資金運用機関に貸し出すか、貸出先は限られている。そうした分野にしかマネー需要は出てこないからだ。FRBの金融緩和は市場関係者に資産価格の値上り期待を抱かせ、株式や商品へのマネーの流入を誘いでいる。
バーナンキFRB議長は4日、ワシントン・ポスト紙への寄稿文で、金融緩和は資産価格の上昇効果が期待でき、それによって経済成長は促進されると述べている。これは実体経済の低迷を資産価格の上昇によって引き上げようとするものである。このような考え方は本末転倒であり、バーナンキFRB議長の放った第2弾の量的緩和は、グリーンスパン前FRB議長が、今回の住宅バブルを膨らませた04年までの超低金利政策を彷彿させる。サブプライムのように貸さないほうがよいところや貸してはいけないところへ資金が貸し出されつつある。
株式などの資産価格は実体経済を反映するものであり、その逆ではない。住宅バブルの破裂によって、住宅価格は大幅に下落し、不良資産や差し押さえ等の問題を処理している段階にあるため、米国経済の7割を占める個人消費が本格的に回復することはない。そのような経済環境下で株式や商品だけが上昇していけば、資産価格は実体経済から離れていくばかりである。住宅バブル崩壊の処理が道半ばのなかで、再び株式や商品相場が急落すれば、米国経済の土台は揺らぐことになり、元の健全な状態に戻るに予想もできない時間を要することになる。
バーナンキFRB議長はとにかく貨幣をばらまけば、景気は良くなると考えているようだ。貨幣需要が出てこないばかりか、FRBがさらなる金融緩和を実施したことは、景気は悪くデフレの心配もあると受け取られ、流動性選好はますます強まり、貨幣は経済に回らなくなる。ケインズのいう資本の限界効率が回復せず、消費性向も低下するなど、例え、貨幣が経済に流れたとしても、貨幣の供給は経済の刺激には結びつきにくい。
住宅のようなストックが毀損しているときには、強い流動性選好や資本の限界効率の低下によって、金融政策は実体経済の回復にはほとんど効かないのだ。効くとすれば資産価格の上昇であるが、これは一時的であり、しかもバブルの形成・崩壊という金融システムを破綻させる劇薬である。07年中央から深刻になってきた住宅バブルの破裂のようなことが、FRBの2度の量的緩和によって再び引き起こされようとしている。金融や市場関係者によって作り上げられたシナリオに乗ったバーナンキFRB議長の罪は重い。
日本株も米株高に連れ高している。今年度上期の企業業績がほぼ出揃ったが、日経の集計によると、全産業の経常利益は上期、10.68兆円、前年比2.6倍に拡大した。通期の18.31兆円予想から下期は7.63兆円と上期を3割近く下回る。09年度下期の経常利益は8.18兆円であるから、今年度下期は前年を6.3%下回る減益予想である。経常利益の前年比伸び率がピークアウトし、しかも減益に転じるときの株価上昇リスクは極めて高い。
10月の新車販売台数が前年比26.7%減と大幅に落ち込んだが、向こう1年、このような状態が続くだろう。9月の現金給与総額は前年比0.9%増加したが、前年が1.9%も減少していたからであり、景況感が悪化している状況下では、これからも良くて微増だと思う。所定内給与はプラス0.1%と浮上したものの、この程度の持ち直しでは購買意欲を掻き立てることはできない。総実労働時間は産業計で前月比横ばいとなり、製造業では2ヵ月連続のマイナスとなった。自動車、半導体等の減産により製造業の労働時間は減少するだろう。
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生産の急低下、株式に引導を渡す

曽我 純:
景気に鈍い動きをしていた株式もついにそれを注視せざるを得なくなった。米国の金融政策ばかりに気をとられていて、肝心な国内経済に注意を怠った付けが回ってきている。株式の景気への反応が遅れただけに、株価の下落は深くなりそうである。
貿易統計が示す輸出(季節調整値)は、すでに今年1月をピークに減少しつつあり、5月以降は5ヵ月連続で前月を下回るという不振だ。株式は日本経済が外需の増減で上下にぶれやすい単純な仕組みを蔑ろにしてきた。輸出の減少は鉱工業生産に直ちにあらわれ、生産は9月まで4ヵ月連続で低下した。生産の低下は景気だけでなく企業業績の悪化でもある。景気や企業業績が急激に悪くなりつつあるときに株式など買えるだろうか。
9月の鉱工業生産指数は前月比1.9%減と減少率は前回調査時の予測(-0.1%)を大幅に上回った。「生産は弱含み」などといっているが、弱含みなどではなく「著しく弱い」だ。10月の生産予測は前月比-3.6%と前回予測(-2.9%)よりもさらにマイナス幅は大きくなった。3.6%もの大きな下落は08年末から09年初めの期間を除けば、01年1月以来であり、過去20年間でも数えることができるほどである。
それほど稀な異常ともいえる生産の落ち込みに直面しても、目にするのは当たり障りのないコメントや正鵠を欠いた報道ばかりである。そうしたコメントや報道が跋扈することが日本を衰退に追いやっている原因のひとつかもしれない。90年代以降、景気や不良債権の異常を異常と捕らえず、杜撰ででたらめな分析をしてきたことが、今日の日本を作ってきたのである。今回も同じ轍を踏もうとしている。
内需は自動車などに政策の後押しがあったにもかかわらず、生産は5月をピークに下降していることは、政府支援がなくなれば生産が急低下することは目に見えている。輸送機械工業は補助金等の恩恵を受けていたが、生産はすでに5月から5ヵ月連続で低下し、9月はピークから11.0%も低下した。輸送機械工業の生産は9月、前月比4.2%低下したが、受注の激減に見舞われ10月は10.5%減もの急低下が予想されている。需要の低迷により電子部品・デバイス工業の生産も前月比5.0%減と前回調査予想を大幅に上回るマイナスとなった。DRAMの需給バランスは崩れたままであり、価格の下落はとまらない。10月の生産予想も前回のプラスからマイナス4.6%へと下方修正された。
鉱工業生産指数は年内、自動車や半導体を中心にかなりの勢いで低下するだろう。10-12月期も前期比減と2四半期連続のマイナスなり、前年の水準を下回るかもしれない。経営者のマインドは冷え込み、設備投資計画を下方修正するところもでてくるだろう。改善が遅れている雇用にも過剰感が強まり、失業率が上昇する事態も考えられる。
9月の小売業販売額と家計の消費支出は前月比3.0%、0.5%それぞれ減少し、消費も弱い。これまで消費は耐久消費財の支出増で大きく落ち込むことはなかったが、10月以降はそうした製品への支出増も期待できず、消費の動きは一層鈍くなるだろう。
慢性的な需要不足から消費者物価指数(生鮮食品を除く)は9月、前月比0.1%減と4ヵ月連続のマイナスとなり、前年比でも1.1%低下した。食料・エネルギーを除けば、前年比1.5%のマイナスであり、今後、需要が細ることになれば、マイナス幅は拡大するだろう。一方、国内企業物価指数は9月、前年比0.1%減となり、消費者物価ほどには下落しなかった。円高だが、国際商品市況の値上りにより、原材料価格が上昇し、企業収益を圧迫している。
商工中金の『中小企業月次景況観測』によると、10月の景況判断指数は46.4と前月比0.9ポイント低下し、2ヵ月連続で前月を下回った。特に、輸送や小売の低下幅が大きく、景気の好転・悪化の目安である50を一度も上回ることなく、下降に転じつつある。景気の山は景況判断指数に遅行するため8月以前に景気は後退局面に入ったと考えられる。製造業の景況判断指数は7月に50.0まで回復したが、その後3ヵ月連続で低下し、10月は48.0となったが、11月は44.9へと大幅に低下すると予想されている。
先週末、7-9月期の米GDPが発表されたが、実質前期比年率2.0%と伸び率は前期を0.3ポイント上回った。GDPは5四半期連続のプラスとなり、米国経済は回復しているようにみえる。だが、09年7-9月期以降の5四半期の回復を特徴づけているのは、需要の急激な減少に伴い在庫を処分した反動から、今度はその積み増しによる寄与が大きかったという点である。2010年7-9月期の在庫の寄与度は1.44%となり、これを除けばGDPは年率0.56%とほぼ横ばいになってしまう。
FRBは10-12月期の実質GDPを前年比3.0%~3.5%と予想しているが、この達成には前期比年率4.4%も伸びなくてはならない。沈滞した経済を回復させるためにFRBは国債を買うとのことだが、銀行にマネーが溜まるだけで、実体経済に影響はない。刺激をうけるのは株式や商品など投機の対象になるものだけである。08年以降の巨額の資産買い取りですでに証明されているにもかかわらず、効果のない愚策が繰り返されようとしている。愚かにも市場は買いとり金額に固唾を呑んでいる。
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米国経済を脅かす中国の利上げ

曽我 純:
週末のG20はただ寄り集まっただけで、議長声明も陳腐な内容であり、為替相場はこれまでの流れに沿った動きをするだろう。米国が住宅バブル崩壊から立ち直ることができずに内需が低迷している状態では、ドル安により外需の拡大を図りたいのは当然である。米国にとってはいまの為替相場の動向が好ましいのである。唯一人民元にたいしてはドルが高いことが不満だが、体制が違う中国が相手ではどうすることもできない。米国が市場原理主義を唱え、グローバル経済を鼓舞し、世界経済(中国のWTO加盟)に組み入れたことの結果といえる。
中国問題は米国が蒔いた種だが、自分のことは棚に上げ、中国同様、通貨安戦略を採っている。追加金融緩和策をちらつかせているのもその一環である。日本はなすすべがなく、5週連続の円高ドル安だ。米国の通貨安戦略に加え、米国の家計・銀行部門の保有する不良資産、日本の経常黒字、日米物価格差等から円高ドル安はさらに進行するだろう。
FRBが金利をゼロに引き下げてから2年近く経過し、円とともにドルは世界中に散布されている。先進国の金利がいずれも低いのでドルや円を調達し、それを金利高の新興国に投資しているのだ。FRBが買いオペを実施し、資金供給しても、住宅バブル崩壊により不良資産を抱えているため国内の資金需要は弱く、マネーは海外に流失しがちである。日本もゼロ金利期間が長いだけに、世界中に投機マネーを供給してきたし、これからも供給するだろう。ただ、米国のドルは基軸通貨であり、ゼロ金利政策は円と比較にならないほど投機資金を世界のすみずみまで行き渡らせる。FRBのゼロ金利政策は米国の内需拡大に結びつかず、その影響は世界の株式・商品市場等に顕著にあらわれている。
FHFAは21日、管理下に置くFannie MaeとFreddie Macの経営再建で最大2,150億ドルの追加資金を必要とすると発表した。財務省からすでに1,500億ドルの公的資金を注入されているが、一向に事態は良くならない。6月末のバランスシートをみると、両者の合計総資産は5.59兆ドル、その大半をモーゲージローン(4.82兆ドル)が占める。S&Pケース・シラー住宅価格指数によると、7月の住宅価格の水準はピーク比約30%も下落しており、両者のモーゲージローンの不良資産額は計り知れない。10%の不良化でも約5,000億ドルのロスが発生していることになり、FHFAの試算はきわめて楽観的な数値といえる。
モーゲージの問題が蒸し返されていることは、まだまだ家計や銀行が抱えているモーゲージが膿を出し続けていることでもある。不良資産でなく健全な資産になっていれば、問題などでるはずがないからだ。米名目GDPに匹敵する約14兆ドルのモーゲージを2年ほどできれいにすることはできない。バランスシートから完全に除去しなければ、計上されている資産はますます劣化し、不良資産は増加の一途を辿る。そのような事態に陥れば、景気もそれに足を引っ張られ、日本のようにデフレとなり、慢性的な不況になる。米国経済はそのようなリスクを払拭しきれていない。
9月の米住宅着工件数は前月比0.3%増と3ヵ月連続で増加した。だが、7-9月期では前期比2.2%減であり、なかでも1戸建ては10.8%減少した。先行きを占う建築許可件数は9月、前月比5.6%減少し、前年も10.9%下回った。1戸建ては0.5%とプラスに転じたが、過去3ヵ月の水準はきわめて低く09年4月以来の低水準であり、米住宅市場は超低空飛行の状態にあり、失速する可能性もある。
9月の米鉱工業生産指数は前月比-0.2%と15ヵ月ぶりのマイナスになり、設備稼働率も74.7%と過去3ヵ月ほぼ変わらず、景気は曲がり角に差し掛かってきていることを示している。7-9月期では米鉱工業生産指数は前期比1.2%と伸び率は前期よりも0.6ポイント低下し、09年4-6月期以来の低い伸びだ。消費財の伸びは拡大したが、設備投資関連の鈍化が目立つ。特に、7-9月期のハイテク関連は1.5%と前期(5.3%)から大幅に低下し、設備稼働率も73.4%、前期比0.7ポイント低下した。
米景気先行指数は前月比0.3%と3ヵ月連続のプラスとなったが、一致指数は9月までの3ヵ月間横ばいとなり、ディフュージョン・インデックスは4月の100%から9月は50%まで低下している。先行性を示す一致・遅行比率も3ヵ月連続で低下しており、米国経済は景気後退へのシグナルを発している。07年12月以来の中国の突然の利上げは、為替でうるさい米国経済への当て付けとも取れる。
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中央銀行の金融政策に騙されてはならない

曽我 純:
州司法当局がモーゲージを調査するとの発表により、米銀行株は売られ、株価指数も頭が重くなってきた。景気に対する楽観的見方やFRBの金融緩和期待により上昇してきただけに、不安材料がでるとすぐに買いの手が引っ込む。NYダウはおそらく4月の高値に達することなく反落するだろう。
本当に米国経済が確かな回復をしているのであれば、株式が上昇力を強め、ドルも強くなっているはずだ。だが、現実にはドルは売られており、ドル離れが続いている。米国経済の回復は表面的、一時的なものであり、内部には依然マグマが溜まっており、容易によくならない。金融恐慌を引き起こした不動産バブル崩壊の揺れは終わってはいない。米商業銀行の不動産貸付は9月、3.63兆ドルと減少しているが、ピーク(09年5月)から0.24兆ドルの減少にとどまり、バブル崩壊の膿がでてしまったとはいえない。資産価値下落に伴う不良資産を抱えた状態にあり、銀行のバランスシートは傷がついたままだ。だから、ドルが敬遠されているのである。3.63兆ドルのどの程度が傷ついているのか、本当のところがわからないことが、米国経済への不信感を強め、通貨安となっている。
9月の米商業銀行の商工業、不動産貸付は10.1%、3.3%それぞれ前年を下回っている一方、預金は3.4%増加しているため、日本の銀行と同じようにマネーを持て余している。FRBが国債買いを増額し、銀行にマネーをさらに供給しても、銀行は資金需要がないので国債等の有価証券を買わざるを得ない。新たなマネー需要がなかなか出てこないのは、家計や銀行等が不良資産を保有しており、その処理が進んでいないからだ。不良資産を抱えたうえにさらに借金を重ねるような行動は取らず、不良資産が清算されてから借入するのが普通である。米国のように不良資産が存在する経済や物価が下落する日本のデフレ経済ではFRBや日銀の国債等の資産購入はほとんど効き目がない。借金を増やすことができず、借金が不利となる状況では、新規の資金需要は弱く、ひいては資金は流れにくく、乗数効果も期待できない。
FRBの追加緩和策などに期待して株式に手を出せば、大やけどをすることになる。国債買い増しが景気拡大策にならないことが、すぐに明らかになるからだ。あたかもこうした金融政策が景気回復に役立つと当局はいうけれども、すでに述べた理由や約15年にもおよぶ日本の経験が効果のなさを実証している。過去に何度も政府や日銀の政策に期待して痛い目にあったことを忘れてはいけない。
9月の経済指標は国内景気が悪化していることを示唆している。商工中金の『中小企業月次景況観測』によれば、9月の景況判断指数は前月比1.1ポイント減の47.3と4ヵ月ぶりに低下した。10月予想はさらに低下しており、中小企業の景気は一段厳しくなる見通しである。内閣府の『景気ウォッチャー調査』によると、9月の景気の現状判断DIは41.2と前月比3.9ポイント減と2ヵ月連続で大幅に低下した。同じく『消費動向調査』も消費者マインドが冷えていることを示している。9月の消費者態度指数(一般世帯)は41.2と前月比1.2ポイント低下し、3ヵ月連続の前月比マイナスとなった。政府の減税や補助金によって自動車、家電、住宅・リフォーム等の販売が伸びていたときから、すでに消費者心理は悪化していたことになる。自動車の補助金打ち切りなどから、今後、内需の落ち込みは大きくなり、消費者や経営者のマインドはいま以上に悪化するだろう。
輸出の伸び率は低下しているが、9月は大幅に鈍化する見通しだ。9月上中旬の輸出は前年比6.1%と8月(19.1%)から急低下した。まだ下旬の動向によっては変動する余地はあるが、1桁増には間違いないだろう。これだけ輸出の伸び率が鈍化することは、世界の需要が弱くなっていることでもある。9月上中旬の輸入は2.4%と輸出の伸びを下回り、内需の弱さが露呈している。
週初に発表された8月のOECD景気先行指数(CLI)は前月比-0.1%の102.9と2ヵ月連続で低下し、世界景気の後退が視野に入ってきた。CLIの前年比伸び率は8月、5.8%と3月をピークに低下している。日本の輸出の前年比伸び率は2月をピークに6ヵ月連続で低下しており、CLIとほぼ同じ波長を描いている。過去の両者のグラフをみると、CLIの先行性が認められるが、近年は同じように変化していることがわかる。
内需の不振に輸出減が加われば、日本経済の後退は釣瓶落としの様相を呈するだろう。0.1%下げるかどうかというような不毛な議論に時間を浪費しているようなときではない。ゼロ金利にしてもマネーは保有コストがゼロであるため家計や企業は保有しつづけ、経済活動の中へ入っていかない。ゼロ金利政策では埒が明かないのである。
9月の預金通貨は前年比2.5%と伸び率は3ヵ月連続で上昇し、残高は417.7兆円に増加した。定期預金などの準通貨(残高555.1兆円)の伸び率は9月、0.7%に低下した。これだけ国民はマネーを持っているけれども、なかなか使わない。使わせる仕組みを作らなければ日本経済は沈んでいくだけである。
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米株式バブルによるドル安

曽我 純:

日銀は5日、0.1%の政策金利を0%~0.1%に変更し、ゼロ金利の長期継続、さらに資産(国債、社債、指数連動型上場投資信託、不動産投資信託)買入等の基金を創設することを発表した。こうした措置で景気が好転するくらいであれば、とっくに日本経済はよくなっていたはずだ。0.1%の低下でなにができるというのだろうか。ゼロ金利も経験済みのことだし、政策変更の効果があらわれるところといえば、資産買入も加わり市場の価格形成の歪みや投機といった副作用がでてくるだけではないか。
8月の銀行貸出は前年を2.0%も下回っている半面、預金は2.7%も増加している。金利がほとんど付かなくても、保有コストが掛からないため銀行にかねが集まり、銀行はかねを持て余しているのだ。貸出がマイナスということは貸すよりも返済が多いことであり、そこへ預金が流入してくるので、銀行はかねをどうしていいのかわからない。一番手っ取り早いのは国債を買うことである。日銀も買うのだから、国債価格の上昇は間違いなく、その甘い汁を吸うために銀行も国債買いに走っている。このような状態が続けば、国債は供給不足に陥るだろう。新規の国債発行を抑制しようとしているが、国債需要が旺盛になるので発行を増額しなければならないことになるだろう。結局、家計の貯蓄増は国債発行というかたちで国が吸収し、政府の支出増となるのである。
銀行が国債を買い、それを日銀が買うという流れが強まり、0.8%台に低下した国債利回りはさらに低下するだろう。03年6月には0.4%台まで低下したが、2010年までの10年間の年率経済成長率がマイナスになるように、収益率の観点からは限りなく低下しても不思議ではない。
政策金利をゼロにしてもかねは実体経済のなかを循環しない。デフレでかねの価値が自動的に上がり、保有意欲は弥が上にも高まる。他方、借手は負債額が増価するので極力借入を抑える。家計はかねを貯め、企業は借金を減らすので貯蓄超過の状態が常態化している。ゼロ金利でもかねは実体経済には入って行かず、マネーゲームの中に入っていきやすい。ゼロ金利なので僅かの鞘を抜くことができれば、利益を収めることができるので、投機市場に流入しがちだ。だから、実体経済が沈滞していても投機だけが活発になり歪な経済になる。実体経済は低迷したまま投機だけが勢いを増すことになれば、早晩、投機は行き詰まり、破綻することになる。
特にそのような傾向が顕著にあらわれているのが米株式市場と金を中心とする商品市場である。9月の米非農業部門雇用者は前月比9.5万人減少したが、NYダウは5月以来約5ヵ月ぶりに11,000ドルを回復した。非農業部門雇用者は4ヵ月連続の前月比マイナスとなり、米国経済の状態は良くない。民間部門の雇用者は前月比6.4万人増加したが、政府部門が15.9万人減少した。民間部門の増加数も2ヵ月連続減である。政府部門の雇用者は2,223万人と非農業部門雇用者の17.1%を占め、製造業の約2倍に規模である。政府雇用者の64%は地方政府で雇用されており、財政の悪化などから教育関連が約5万人削減されるなど地方で7.6万人減少した。
9月のISM非製造業景況感指数は53.2と前月比1.7ポイント改善したが、7月に比べれば1.1ポイント下回っている。9月のISM製造業景況感指数は前月比マイナスとなり、5月以降では8月を除けばすべて前月を下回った。企業利益の伸び率も鈍化しつつあり、米企業経営者のマインドは優れない。そうした経済状況下で、FRBのゼロ金利政策の長期化や国債買入の増額期待を背景に、株式市場は上昇力を強め投機的になっている。
米10年債の利回りは週末、2.39%と09年1月以来の低い水準に低下した。期待成長率の低下とゼロ金利の継続期待が国債利回りの低下に繋がったと考えられる。期待成長率の低下にもかかわらず異常なゼロ金利の長期化が株高の期待感を高めているのだと思う。だが、実際に成長率鈍化が顕在化したときには株価は大幅な調整を余儀なくされるだろう。4-6月期の名目GDPは前年比3.9%伸びたが、10-12月期には現状の国債利回りに近い水準に鈍化する見通しである。
ゼロ金利の長期化で米国の借金体質はさらに強められるだろう。1980年代以降の米国負債残高は急増しており、2009年末には50.2兆ドルとGDPの3.5倍の規模に達した。経済を立ち直らせるためのゼロ金利が、金融のウエイトを高め、負債漬けからの脱却を難しくしている。
ドル安になっているのは米株式が実体経済を離れバブルになっているからだ。株高は短期資金がうまく波に乗っていることで維持されているが、一旦、下落するとみんなが売り手になるため一気に値崩れしてしまう。米株式がそのような状態にあるため、ドル離れが起きているのだ。バブル崩壊に伴う後遺症を引きずり、期待成長率が低下しているなかで株式バブルが形成されている。
日銀がゼロ金利復活を発表した5日は円安ドル高にふれたが、6日以降は3営業日連続の円高ドル安となり、8日は1ドル=81円台で引けた。1995年4月の過去最高値79円75銭を突破するのは時間の問題だ。
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