利益に見合った水準に落ちて行く日本株

曽我 純:
10月の米新車販売台数は前年を31.9%も下回り、年率販売台数は1983年2月以来、25年8ヵ月ぶりの記録的な低水準に落ち込んだ。昨年11月から前年を割り込んでいたが、住宅バブル破裂の影響が深刻化するにつれて、マイナス幅は5月の10.7%から10月には3割を超える異常な不振へと拡大し、米自動車産業はもはや自力で存続することが不可能な状態に陥っている。

もっと見る

週間マーケットレター 2007

減益予想下ではまだ割高な日本株 2007-12-30

pdf

07年の日経平均株価の年間騰落率はマイナス11.1%と02年以来5年ぶりの下落となっ
た。サブプライムで揺れている米国はNYダウの+7.2%(先週末時点)をはじめいずれも
プラスであるほか、欧州の主要株価指数も06年末を上回っており、日本株の不振が目立つ。
今年2月には2兆円超買い越した外人は、8月以降掌を反したように売り優勢となり、
同時に、株価は下げ足を速めていった。外需頼みの日本経済は米国などの影響が大きく、
来年の企業業績は厳しいものになると予想しているように思う。

欧米金融機関への出資で株式投資への余力減退 2007-12-24

pdf

次々に明らかになる欧米金融機関のサブプライム関連損失により、日本株の中心プレー
ヤーである外人はリスクを回避せざるを得なくなり、12月第2週、外人は5,527億円の日
本株を売り越した。サブプライムの根は深く、金融機関がバランスシートから完全に不良
資産を外すには相当の時間を要し、その間は、日本株を積極的に買うというスタンスはと
れないはずだ。主力プレーヤーがサブプライという病で重症に陥っている状況では、日本
株の上昇は期待できない。

日本経済不振のもとになっている分配の歪み 2007-12-17

pdf

消費者心理や企業の景況感は悪化しつつあるが、特に、消費者マインドは急速に冷えて
おり、これが日本経済の閉塞感を生むもとになっているように思う。11月の『景気ウォッ
チャー調査』や『消費動向調査』によると、景気の現状判断、消費者態度指数はいずれも
03年央以来の水準に落ち込み、消費者等の景気に対する感じ方はかなり深刻な状態になっ
ていることがわかる。企業についても、11月の景況判断指数(商工中金)は46.9へと低下
し、06年3月の51.5をピークに1年8ヵ月も下降している。仕入れ価格の上昇と販売価
格の低迷によって、採算状況も悪化しており、中小企業の業績は厳しさを増しているよう
だ。12月調査の『短観』でも業況判断は予想よりも悪く、内需の不振が企業業績の下振れ
要因になりつつある。内需不振の種をまいたのは企業自身であり、利益を溜めることのみ
に邁進したことの付けが回ってきたといえるだろう。家計が消費することによって企業は
潤うことになるのだが、消費の原資となる給与が増えないようでは、企業の売上、利益は
伸びるわけがない。

サブプライム証券化商品、海外公的部門が多量に保有か 2007-12-03

pdf

米政府のサブプライム救済策や金融緩和期待等によって、NYダウは4日連続の上昇と
なった。半面、米債は売られ1週間で0.16%の大幅上昇となった。米債の利回りが05年6
月以来の低い水準まで低下していたことから、利食い売りがでたのだろう。トレンドとし
ては米株式は下降、米国債は上昇すると考えられる。日本の景気から判断すれば円安ドル
高に向かうはずだが、サブプライ問題がドル売り要因となり、動き難くなっている。どち
らの要因が強くなるかで方向は決まるはずだ。

株式・債券市場、米利下げを織り込む 2007-12-02

pdf

シティのアブダビ投資庁(アラブ首長国連邦)から75億ドルの出資受け入れやFRBの
金融緩和期待感の高まりなどから主要国の株式市場は反発した。特に、12月11日のFOMC
で利下げが実施されるとの観測から、資金は米国債に向かい、結果的にドルも上昇した。
米債の利回りは4%を下回り、政策金利のFFレートよりも0.5%以上も低く、0.25%の利
下げを完全に織り込んでしまった。
11月28日公表の地区連銀報告書で米景気拡大のペースは以前より減速したと景気判断
を下方修正し、その翌日、バーナンキFRB議長は講演で「FRBは異例の警戒態勢と柔軟
性を維持する必要がある」と金融政策についてかなり踏み込んだ発言をした。ただ、米景
気の減速はFRBの認識を上回っており、リセッションに陥る確率は高いといえる。

時間との戦いとなった米金融機関の焦げつき処理 2007-11-25

pdf

米住宅不況の混迷により、米国景気の足取りは不安を増し、後退懸念が強まっている。
10月の米住宅着工件数は前月比3.0%増加したが、一戸建てが7.3%減少したほか、建築許
可件数も6.6%前月を下回った。米住宅市場底打ちの展望がまったく見えないことが、企業
の設備投資意欲や消費者心理を冷やしている。OECDによれば、サブプライ関連の損失額
は3,000億ドルに達すると予想されたが、これはFRB予想の倍となり、90年代、日本の銀
行が不良債権額を決算毎に拡大させたことを髣髴させる。おそらく時間が経過するにつれ
て損失額は4,000億ドル、5,000億ドルに跳ね上がることになろう。日本で経験したように、 時間がたつにつれて債権の価値はどんどん低下し、不良債権額はとんでもない額になるの
である。そうして、金融機関は巨額の焦げつきに持ちこたえることができなくなり、最終
的には政府や中央銀行にすがりつき、税金が投入されることになる。それでも、CEOは巨
額の退職金をさらっていくというのが、これまでの御定まり。「自分たちの立場に疑念を
起こさせてはならないということ、手遅れになるまでは、自らの立場を自分で決して疑わ
ないということ、それだけが銀行家の常套手段なのである」(ケインズ、『貨幣価値の崩
壊が銀行に及ぼした帰結』、1931年)。銀行家とはそういう人物なのであるから、複雑な金
融商品に問題が発生したならば、ただちにSECが検査にはいり、初期段階で膿を出し切る
以外に良い解決方法はない。次の決算まで待つなどといった悠長な取り組みでは税金を吸
い取られるだけである。まさに、米国は正念場に立たされているといえる

国内経済に起因する日本株の下落 2007-11-11

pdf

サブプライムに関係する米金融機関の損失拡大が米国の資金の流れを変えている。米国
では株式を売り、財務省証券や国債に資金を避難させており、TB(3ヵ月物)の金利は3%
台前半まで低下し、10月中旬の水準を約1%下回った。国債の利回りも05年9月以来に
低下し、大量の投機資金がリスクを回避するために、安全な場所を求めて移動している。

バーナンキFRB議長は8日、サブプライム関連の焦げつきが金融機関などに1,500億ド
ルの損失をもたらす恐れがあると発言したが、前号で紹介したように、この程度ではとて
もおさまらず、90年代後半、いつまでも曖昧にされた日本の不良債権のように、前言を翻
し、損失額は膨らむことになるだろう。損失額が拡大するにつれて、金融緩和も野放図に
進められ、FFレートは3%台に引き下げられ、米債券利回りは4%を下回ると予想してい
る。米国が金利をどんどん下げていくことになれば、日銀も政策金利を0.5%に維持するか、
ゼロに下げることもあり得る。日本の債券利回りも1〜1.5%のレンジに向かうはずだ。

金利見通しの違いによるユーロ高ドル安続く 2007-11-04

pdf

欧米の金融機関はサブプライムに関係する巨額の評価損を計上しているけれども、まだ処理されていない部分も相当な額に上ると予想され、市場は引き続き神経質な動きをするだろう。07年6月末の米モーゲージ残高は約14兆ドル、前年比7.7%増である。その1割ほどがサブプライムとしても1.4兆ドルの残高となり、この3割程度が値下がりしたと仮定すると、損失額は4,200億ドルに達する。金融機関のこれまでの損失額はこれに比べれば小さく、処理は十分でないように思う。値段が付かない証券も多く存在し、損失は3割をはるかに超えるだろう。金融機関の一挙手一投足に目が注がれるのはしかたのないことである

いつ急落してもおかしくない原油価格の異常な上昇
2007-10-28

pdf

欧米の株式相場が底堅く、商品市況が高騰しているのは、米国の政策金利が引き下げられ、日本も超低金利が続くという見通しが強まっているからだ。30日開催のFOMCを前に米短期金利(3ヵ月物)は5%を下回った。ユーロも低下しつつあるが、米国の下げ幅が大きく、そのことがユーロ高ドル安を導いている。米国とユーロの景況感はさらに拡大すると考えられるためユーロ高ドル安基調は長続きしそうである。

米国よりも急激に落ち込む日本の住宅着工 2007-10-22

pdf

9月の米住宅着工件数が年率119.1万戸と93年3月以来14年半ぶりの低い水準に落ち込み、原油価格はバレル90ドルを一時越え最高値を更新、さらに企業業績の不安が加われば、米株式市場も楽観から悲観へと180度転換せざるをえない。
米住宅着工件数は06年1月のピークから110万戸も減少した。これだけ住宅需要が落ち込めば、住宅価格も下落し、価格の下落は需要を手控えさせ、価格はさらに下落するという悪循環に陥る。住宅貸付の担保となっている不動産価値の低下は金融機関の債権を不良化させることにもなる。米銀行・証券会社はすでに多額の損失を計上しているが、住宅着工件数の減少が続き、不動産価格の下落に歯止めがかからなければ、それにつれて新たな損失が発生するはずだ。
米国経済は実体経済の悪化がマネーの循環を阻害しており、マネーや信用の障害が実体経済に悪影響をおよぼしている。過剰に積み上がっている住宅ストックが実需に見合った水準に減少するまで住宅不況は続くだろう。過去にも何度も住宅のブームとバストを経験しているが、91年以降15年も続いた過去最長の住宅ブームであっただけに、調整期間も長引くことは間違いない。80年代後半の前回の住宅不況は5年続き、最後は景気後退という結末となったが、今回も住宅不況がリセッションへと結びつく可能性は高い。03年に1%に引き下げられた極端な金融緩和措置が、不動産取得意欲を高め、住宅バブルを作り上げた。

楽観ムードに支配されている米株式市場 2007-10-14

pdf

原油価格の最高値更新にもかかわらず米株式相場は強く、その流れが日本株にも波及している。米国や欧州の株式相場が強くなれば、外人の日本株買い増し余力は大きくなり、
外人は日本株に資金を振り向ける。
日本株の国内の買い要因としては、日銀が金利を据え置き、超低金利がまだ続くことくらいだろう。9月の『消費動向調査』や『景気ウオッチャー調査』によれば、消費者マイ
ンドは低迷したままであり、消費の面から景気が本格的に上向くシナリオは考え難い。機
械受注(船舶・電力を除く)も8月、前月比マイナスとなり、これまでの受注と合わせて
推測しても、設備投資にこれまでのような景気を牽引していく力はないだろう。

世界経済を左右する米住宅不況と資源高 2007-10-01

pdf

NYダウは過去最高値に近づき、高値を更新した原油価格や金の高騰などをみると、米
住宅不況はそれほど大きな問題にはならない印象を与えている。だが、先週発表の米経済
指標によると、個人消費支出を除けば、住宅関連指標は住宅不況が依然深刻な状態にある
ことを示し、設備投資もその影響を受け低迷、消費者マインドも冷えるなど、米国経済は
厳しさを増している。
米株式市場などは米国経済は良くないけれども、欧州やアジアなどの好調持続により、
米国経済の減速分は十分カバーでき、世界経済は巡航速度を保つことができると読んでい
るのだろうか。確かに、日本の輸出も対米は不振だが、欧州やアジア向けは順調であり、
全体の輸出は思いのほか伸びている。資源高の経済的インパクトは予想外に強く、市場の
動きは資源国の資本財需要やオイルマネーの循環が米国の住宅不況を吹き飛ばすような感
じをあたえる。

年内の利下げを織り込む米株式市場 2007-09-23

pdf

06年6月に5.25%に引き上げられてから、1年4ヵ月据え置かれていた米政策金利が、
ついに引き下げられた。FRBもサブプライム問題の実体経済への影響が、予想以上の広が
りをみせてきたことに、とまどいを感じていたからだ。0.5%下げの4.75%と思い切った下
げ幅となったが、必要に応じてさらなる緩和措置をとる姿勢を示しており、米金融政策は
利下げへと舵をとった。年内、連邦公開市場委員会(FOMC)は10月30、31日と12月11
日の2回開催されるが、いずれも0.25%引き下げられ、FFレートは4.25%に低下するだろ
う。

米国景気の悪化と資源相場崩落の不安 2007-09-09

pdf

週末に発表された8月の米非農業部門雇用者が4年ぶりの前月比減となったことからNY
ダウは大幅安となり、主要通貨に対してドルは売られた。半面、米債券相場は急騰、利回
りは06年1月以来、約1年4ヵ月ぶりの低い水準に低下した。
いくつかの経済指標は米国経済がすでに減速過程に入っていることを示していたが、そ
うした指標を市場は無視して、FRBの楽観的な景気見通しを信用していた。今回の雇用統
計はそうした甘い見方を砕き、米国経済が景気後退に陥る可能性があることを市場関係者
に植え付けた。
どのように考えてみても、今回の米住宅不況は短期間で回復に向かうことはなく長期化
し、米国経済を蝕むだろう。さらに、その影響は日本をはじめ世界経済に伝播する可能性
が高い。米国の株価は景気の減速や景気後退の恐れを十分に織り込んでおらず、米株式市
場は厳しい状態が続くだろう。他方、債券相場は急騰したが、まだ、上昇の余地があり、
7−9月期以降の経済成長率によっては、4%を下回ることもあり得る。独Ifo景況指数
も6月以降、3ヵ月連続で低下しており、債券相場は世界的に上昇局面に入ったと考えられる。円ドル相場は円を借りて他通貨に転換した逆の動き等が、円高ドル安の進行を速め
たが、そうした反対売買が出尽くせば、円安ドル高に向かうはずだ。米政策金利の引き下
げが実施されれば、日本経済の不安感は弥が上にも高まり円は売られるだろう。

サブプライム問題に腰を上げる米政府とFRB 2007-09-02

pdf

月末、市場原理主義者のブッシュ大統領も日々深刻さを増すサブプライ問題を見過ごす
ことができなくなり、政府機関の債務保証の拡充や借り手の所得税控除等税制面での支援
策を発表した。同日、バーナンキFRB議長も講演で、「必要であれば追加措置をとる準備
ができている」と述べ、米国は財政と金融の両面からサブプライム問題に取り組んでいく
姿勢を示した。ただ、法案が成立し効力が生じるようになるまでには時間を要し、その間、
新たな問題が発生する可能性もある。また、救済策がどの程度の力を持つのかもわからず、
当面は金融政策に頼らざるを得ないのではないか。

米国の需要減速を裏付ける日本の対米輸出(5ヵ月連続の前年割れ)2007-08-26

pdf

先週、先物の買戻しなどで、日経平均株価は約1,000円戻したが、市場参加者の心理は
冷えており、このまま上昇していく地合いではない。日本株の下げが欧米に比べて大きか
ったのは、日本株が利益水準に対して買われすぎていたこと、言い換えれば、欧米市場と
は比べものにならないくらい、投機が相場を支配していたからである。1%未満の金利が
約12年も続いていることが、投機性を強めたことは間違いない。政府も「貯蓄から投資
へ」のスローガンを掲げ、マスコミもそれに同調し、株式投機を煽っている。その企業が
なにをしているのかもわからず、値段だけをみて売買を繰り返す博徒が市場を席捲するこ
とになれば、市場がどのようになるかは言わずもがなである。

数%の政策金利の引き下げと財政資金の投入もあり得る米住宅不況 2007-08-19

日経平均株価は週末比で1,491円も急落し、昨年7月以来の低い水準に落ち込んだ。
サブプライム問題の震源地である米国よりも下げは激しく、株式市場は様変わりしてしま
った。外人のヘッジ外しにより円は急騰し、約1年ぶりの円高ドル安だ。債券相場も急上
昇し、利回りは1.5%台へと大幅に低下した。これまでの株買い、円売り、債券売りの反対
の動きが噴き出した。

実体経済から掛け離れた米モーゲージ残高 2007-08-12

サブプライム問題はヨーロッパにも飛び火し、欧州中央銀行は9日、10日と2日続けて
合計1,558.5億ユーロの資金を短期金融市場に供給した。本家本元の米国でもFRBは9日
の240億ドルの資金供給に続き、10日には「必要に応じて米金融市場に流動性を供給する」
との緊急声明を発表、当日は合計3回のオペで380億ドルを供給、NYダウは下げ幅を縮
小し小幅安で引けた。

住宅不況の設備投資への波及を察知していない米株式市場 2007-07-29

PDFを読む

 すでに何ヶ月も前から表ざたになっていたサブプライム問題が、ここにきてやっと株式市場に深刻な影響を及ぼすようになってきた。株式市場の情報判断能力のなさと非効率性が露呈した。米住宅市場のバブルはいまも萎んでいる途上にあり、落ち着く時期を予想することは難しい。6月の米一戸建て住宅販売件数は-22.3%と依然大幅な前年割れが続いており、米国経済を蝕んでいる。住宅のGDPに占める割合は5%(2006年)と低いけれども、住宅の建築や買い替えにはそれに付随する膨大な需要が伴い、米国の実体経済を潤していた。
 住宅は実体経済だけでなくマネー経済とも深く関わり、米株式・金融市場を襲っている。不動産価格が上昇していたときには、住宅ローンの借り替えによって、より多額のローンを入手でき、それを住宅以外の消費に当てていた。が、不動産市況が弱くなり、返済の遅延やそれが滞るようになると、雇用は増加しているとはいえ、住宅市場が好況であったときのように消費は伸びないはずだ。さらに、今回のように住宅ローンを証券化した商品の価値が暴落することになれば、それを購入したファンド等は行き詰まることになる。

「物価よりも景気」が気掛りな米国経済 2007-07-22

PDFを読む

 バーナンキFRB議長は18日の議会証言で「FOMC(連邦公開市場委員会)はインフレ
を第1の懸念とみている」と述べ、景気よりも物価を重視した金融政策を目指しているよ
うだ。だが、6月の消費者物価のコア指数は前年比2.2%と前月と同じ伸びとなり、昨年9
月の2.9%から緩やかに低下している。生産者物価指数も6月、1.8%と6ヵ月連続1%台で
推移しており、インフレ懸念はむしろ弱まっているのではないか。原油価格はバレル75
ドル台と昨年7月以来の高い水準に上昇し、銅も再び値上がりするなど、商品市況は予想
以上に強く、これがインフレ期待を高める恐れはあるが、実体経済の需要が昨年よりも弱くなっており、素材価格の上昇を最終製品へ転嫁するのはなかなか難しいのではないかと
思う。

円安から逃れられない日本経済 2007-07-08

PDFを読む

 夏のガソリン需要期に入り、原油価格が昨年8月以来の高い水準に上昇、銅市況も再び
上向くなど、商品相場は強く、これが世界経済を引っ張るひとつの要因になっている。特
に、欧州経済は商品市況高騰の恩恵を大きく受けており、米国よりも高い成長を実現しそ
うである。資源国のロシアや中近東の好景気が、地理的に近い欧州に広範囲に及んでいる
からだ。5月のユーロ圏の失業率は7.0%と前月より0.1ポイント低下し、2004年前半に比
べれば3ポイント近くも改善した。1−3月期のユーロ圏の資本財生産は前年を7%も上
回り、製造業の新規受注も前年比8.5%増と好調だ。資源高を背景に輸出入も堅調であり、欧州の景気拡大は持続しそうである。

 

5月の対米輸出(2ヵ月連続の2桁減)が示す米国経済の実態 2007-07-01

pdf

 ヘッジ・ファンドは鵜の目鷹の目であるから、サブプライムを証券化した債券を購入し たファンドはベア・スターンズ傘下のヘッジ・ファンド以外にもあり、そうした債券は世
界中に散らばっているはずだ。日本の投資信託や投資顧問等の機関投資家もいくらか抱えているのではないだろうか。なにしろ米国のモーゲージの規模は巨額であり、その1割が
サブプライムとしても1.35兆ドルの残高である。すべてが証券化されているわけではない
が、証券化が儲かる手段であるため、投資銀行は挙って証券化し、売り出したと考えられる。

運用が行き詰まったBear Stearns傘下のヘッジファンド、サブプライムの傷口広がる 2007-06-25

pdf

 米株式市場は1998年に破綻したLTCM以来のヘッジファンド破綻の危機に脅えている。
先週半ばからベア・スターンズ傘下のヘッジファンドが巨額の損失をだし、行き詰まった
という報道がなされたが、週末、再び32億ドルの資金支援が必要と報じられ、NYダウは
大幅に下落した。

杞憂に終わった米物価上昇力 2007-06-18

pdf

 米債券利回りは12日、5.29%へと急騰したが、物価の落ち着きなどから週末には5.16%
に低下した。債券相場の回復を反映して米株式も値を戻している。だが、米国景気の底堅
さから原油価格はバレル68ドルへと昨年8月以来の高水準に上昇した。CRBも昨年11月
以来の高いレベルに上昇しており、物価の問題がすべて拭えたわけではない。ただ、世界
景気は昨年の前半のような勢いはなく、このまま原油等の商品が値上がりし続けることは
ないだろう。

実体経済から乖離した米債券利回りの急騰 2007-06-10

PDFを読む

 今後の米国経済や企業業績からは考えられないほどの強気相場が続いていたことが、米株式市場を不安定にしている。5月の雇用統計や新車販売台数が予想以上に米景気テンポの回復を裏付け、債券相場への影響を醸成していたが、ついにISM景気指数や労働生産性の発表により債券相場が急落、債券利回りの上昇が株式市場を直撃した。これほど債券相場が株式相場にインパクトを与えたことは、市場参加者が高水準の株価に不安を覚えていたからである。

楽観シナリオを織り込む米株式市場 2007-06-03

PDFを読む

 それにしても米株式市場は強く、S&P500も過去最高値を更新した。1−3月期の米GDP改定値(30日公表)が前期比年率0.6%に下方修正されたが、消費支出は4.4%と4四半期ぶりに高く、設備投資も2.9%と2四半期ぶりにプラスになり、GDPの内容は数値ほど悪くなかった。その前日に公表された5月のFOMC議事録は「景気の下振れリスクがやや後退した」と指摘し、株式市場の強気派を勢いづかせた。4月の米個人消費支出は前月比0.5%増加し、5月の非農業部門雇用者も前月比15.7万人増と前月の増加数を上回り、米国経済が回復軌道に戻るような感じを抱かせた。

 日本資産の保有リスクを高める円安 2007-05-28

PDFを読む

 今期の企業収益に自信が持てないことから株式相場は引き続き変化に乏しい地合であった。5月にはいり外人は3週連続の買い越しとなり、金額も拡大しているためなんとか値を保っているが、円安により実質的には外人の成果は上がっていないようだ。対ドルでも円はじわじわと売られており、週末ベースでは02年12月以来、約5年半振りの円安ドル高となった。

企業収益の急低下を示す機械受注の大幅減見通し

PDFを読む

 3月の第4週以降、日経平均株価の週末値の高安は266円の小幅な変化にとどまり、相場は膠着状態に陥っている。4−6月期の機械受注の見通しが大幅な悪化を示したにもかかわらず、週間で株価が1%に満たない低下で持ち堪えたことは不思議である。景気がはっきり下り坂に向かっていることから、日銀の超低金利政策に変更はなく、0.5%の継続が株価の急落を防ぐことができると考えているのだろうか。金利据え置き期待が強まり、円安がさらに進行し、輸出関連企業の収益拡大を見込んでいるのだろうか。

日本と欧米の景気格差拡大 2007-05-14

PDFを読む

 先週発表の3月のOECD景気先行指数によると、OECD全体では前月比+0.2%と3ヵ月連続で上昇した半面、日本は-0.8%と3ヵ月連続の低下となり、日本の景気不透明感が際立つ内容となった。住宅等の不安材料を抱えている米国は前月比0.6%上昇したほか、EUも微増ながら2ヵ月続けて上昇した。ただ、米国の3月の経済指標はイースター商戦の前倒しという特殊要因によって上振れしているため、4月の小売売上高等によりすでにあきらかになったように、4月の景気先行指数は悪化するだろう。
 OECDの景気は全体的には緩慢になってきており、これからはインフレよりも景気に軸足を移した政策が必要になるように思う。FRBは9日のFOMCで今回も政策金利を5.25%に据え置き、景気と物価のどちらにも配慮した姿勢を示したが、4月のPPIコア指数が2ヵ月連続の前月比横ばいとなり、4月の小売売上高が前月比0.2%減少するなど、消費も陰りがみえるなど景気を重視する方向に舵をとらざるを得ないのではないか。

米国経済、住宅不況に遅れて設備投資の悪化懸念 2007-04-30

PDFを読む

 NYダウは25日、初めて13,000ドル台に乗せた。その後も続伸し、市場は楽観ムードが広がっているように感じられる。原油価格がバレル66ドル台に上昇し、1−3月期の実質GDPが前期比年率1.3%と4年ぶりの低い伸びになったことなどまったく気にならないようだ。債券相場も目立った動きをみせず、対ユーロでドルが最安値近くまで値下がりしたことくらいが、悪材料への反応と言って良いだろう。
 3月の米非国防資本財受注(航空機を除く)は前月比4.5%増加したが、前年比では引き続きマイナスとなり、設備投資は下げ止まったと判断するわけにはいかない。住宅市場も底入れしたとは言えず、米国経済は不安材料を抱えたままだ。中古住宅販売件数は3月、前月比で大幅に減少し、住宅の需給は供給過剰になっているが、需給がほぼ等しくなる水準まで価格は下がるはずだ。住宅問題が処理されるには長い期間が必要であり、その間、米国経済は不安定な状態から抜け出すことは難しい。

米実体経済の不透明感拭えず 2007-04-23

PDFを読む

 NYダウは最高値を更新し、13,000ドルを約40ドルほどの上昇で突破する水準に達した。NYダウは昨年末を4.0%上回り、日経平均株価の上昇率(1.3%)よりも高い。米国よりも景気が良い欧州では独DAXが11.3%も上昇しており、ユーロ高やポンド高も加わり、欧州への投資は予想以上の運用成果を上げていると考えられる。
 06年10-12月期までの3四半期、ユーロ圏の実質GDP成長率が米国を上回っており、消費者物価(食品・エネルギーを除く)の上昇率もユーロ圏のほうが低い状態が続いていることから、ユーロ圏への資金流入は続きそうである。

全体的に減速している米国経済 2007-04-15

PDFを読む

 原油価格が3月下旬以降、バレル60ドル台に乗せているため、3月の米PPIは前月比1.0%と2ヵ月続けての大幅上昇となった。が、食品・エネルギーを除くコア指数は前月比横ばいとなり、インフレ懸念が高まっているわけではない。ただ、原油価格が高騰している状況では、FRBは安易に金利を下げるような行動はとらないはずだ。景気の下振れを示すようなシグナルがでるまでは現状の水準を維持するだろう。
 これまで発表された指標では米個人消費は底堅いが、原油価格の上昇で3月、4月の米消費者マインドは悪化し、3月以降の米個人消費は伸び悩んでいるのではないだろうか。3月の非農業部門雇用者は前月を18万人上回ったが、前年比での伸びは鈍化しており、これが止らないようであれば、個人消費も冷え込む恐れがある。

4月2日週号は休刊とします。2007-04-02

著者、急用のため、マーケットレター、4月2日週号は休刊とします。

株式に比べて土地は割安 2007-03-26

PDFを読む

 NYダウの5営業日連続高や地価の16年ぶりの上昇により、日経平均株価は大幅に戻した。株価は反発したが、債券利回りは一時1.545%まで低下するなど、債券市場の景気見通しは、株式市場とは異なるようだ。また、株高や米利下げ期待などから、円ドル相場は円高に振れてもおかしくないが、逆に、円安ドル高に動いた。
 公示地価によると、今年1月1日時点の全国全用途平均は前年比0.4%と1991年以来16年ぶりに前年を上回った。上昇率が高かった東京圏など都市部も全用途平均は16年ぶりだが、三大都市圏の商業地は昨年すでにプラスに転じており、2年連続の上昇になる。一方、地方平均は住宅地、商業地ともにマイナスから抜け出せず、都市と地方の地価の格差は拡大しつつある。地価が下けていることは、土地の需要が少なく、経済活動も滞っていることの反映だ。人口の深刻な減少に見舞われている地方は、経済の衰退によってますます都市部への人口の流出が起こり、そのことが地価の下落、地域経済の不振をさらに強めるといった悪循環に陥っている落し続。

外人買い期待できず厳しい状態続く日本株 2007-03-19

PDFを読む

 週末比で日経平均株価は3週連続安となり、昨年12月第2週以来の水準に低下した。2月、外人は日本株を2兆円超も買い越したが、2月末から米国景気の不安などから売り越しに転じた。いつものことだが、日本株市場は他に買い手が不在なため、外人が売ればすぐに腰砕けとなる。

足踏み状態の世界景気 2007-03-12

PDFを読む

 OECDの景気先行指数によると、1月までの4ヵ月、指数はほぼ横ばいとなり、世界景気は足踏み状態である。OECD景気先行指数は前月比-0.1%と小幅な低下にとどまったが、国別では、EU15は前月比変わらずだが、米国と日本が0.4%、0.5%それぞれ下落した。米国は2ヵ月連続、日本は3ヵ月連続の前月比減と冴えず、両国が世界景気拡大の阻害要因なっている。日本の指数は昨年4月がピークだが、米国は11月が高く、米国よりも日本の景気の不透明感が強いといえる。ただ、世界経済に及ぼす影響力は米国がはるかに大きく、米国経済の低迷がいっそう深刻になれば、日本をはじめ世界の景気が後退に陥ることになる。

米国経済の減速が世界同時株安を引き起こす2007-03-04

PDFを読む

 先週27日、上海総合株価指数が過去最大の前日比8.8%減となったことが引き金となり、世界の株式市場から資金は逃げ出し、それは債券市場に向かった。為替相場は「円借り取引」の巻き戻しから対ドルで円が急騰し、昨年12月中旬以来の円高ドル安となった。ユーロなどの対ドルレートは小幅な上昇にとどまり、「円借り取引」を手仕舞うという観測が、円の値上りに拍車を掛けたといえる。

マネー経済の膨張を止めるためにはさらなる利上げが必要 2007-02-25

PDFを読む

 日銀は21日、政策金利である無担保コールーレート(翌日物)を0.25%引き上げ年0.5%とすることを決定し、即日実施した。利上げ当日、為替相場は円安ドル高、債券利回りは低下と金利引き上げと逆行するような動きをした。一方、21日の株式市場が小幅安にとどまったことから、買い安心感が強まり、その後の2営業日で275円も上げた。

設備投資への依存を強める日本経済 2007-02-18

PDFを読む

 GDP統計への期待から日本株は買われ、日経平均株価は昨年来高値を更新した。確かに、昨年10-12月期の名目経済成長率は前期比1.2%増加し、今回の景気拡大過程で最大の伸びとなり、これを文字通り受け取れば、日本経済は米国やEUよりも好調であると言える。だが、7−9月期が前期比-0.1%に下方修正されており、7−12月期の半期でとらえてみると、0.5%程度の成長となり、取り立てて景気の足取りが確かになっているわけではない。

円安でも景気が良くならない日本経済 2007-02-12

PDFを読む

 マネーは経済成長率が相対的に高い国に向かう。今、円よりドル、ドルよりユーロが選好されており、円の評価がもっとも低くなっている。日本の景気拡大は長期化しているけれども、実体により近い名目成長率は1%の低成長であり、先行きこれを大きく上回る成長など期待できないと判断すれば、円の地位は今よりもさらに下がるであろう。

日銀の金利据え置きと米国経済の回復期待に基づく外人の日本株買い 2007-02-05

PDFを読む

 日経平均株価は3週連続の上げとなり、昨年来高値近辺まで上昇してきた。戻しの原動力は、いつものように外人買いである。昨年5、6月は売り越しとなったが、その後は買い越しに転じ、12月は1.67兆円と05年8月以来の規模に膨れた。今年1月も第4週までに約1.4兆円を買い越し、外人買いの勢いによって、株価は回復力を強めている。

巨額介入の付けが回ってきた円ドル相場 2007-01-28

PDFを読む

 先週末、昨年12月の消費者物価指数(CPI)が公表されたが、前年比伸び率は前月と同じ0.3%増であった。8月には0.9%まで上昇したが、その後伸び率は低下しており、物価の面からは金利を引き上げる必要性は認められない。生鮮食品を除く指数は前月を0.1ポイント下回る+0.1%に低下し、さらに、食料(酒類除く)・エネルギーを除く指数は-0.3%とマイナスが続いている。季節調整値でもCPIは前月比横ばいとなり、生鮮食品を除くと食料(酒類除く)・エネルギーを除くはいずれも前月比で低下し、物価は上昇よりもむしろ下落を心配しなければならない状況にある。
 一方、米国で発表された経済指標は予想よりも良く、日米の景気の温度差は開きつつある。昨年12月の米非国防資本財受注(航空機を除く)は前月比2.4%と3ヵ月ぶりのプラスとなり、12月の新築住宅販売戸数は112万戸と2ヵ月連続増となるなど、米国経済は緩やかな回復が期待できるようになってきた。

投機市場を潰さないための利上げ見送り 2007-01-21

PDFを読む

 金融政策決定会合の前には利上げで調整していると報道されていたが、蓋を開けてみれば、利上げ見送りであった。いつものことだが、専管事項といいながら、日銀は金融政策に自信が持てないのか、決定会合の前に観測記事がしばしばでる。観測記事によって政治家の感触を探っているのだろう。
 今回も政府・与党から強い反発が沸き起こり、そうした声に利上げは押しつぶされてしまった。決定会合以前に観測記事が出ること自体、日銀の情報に対する姿勢の甘さが窺える。記事にするということはなんらかの裏づけが得られたからであり、今回のケースもかなり意図的に情報が提供されたのではないか。村上ファンドに拠出しても、その地位にとどまるような総裁では政府にお伺いを立てるのは当然なのだろう。

日米の実体経済の相違により円安ドル高進む2007-01-15

PDFを読む

 米貿易赤字の減少や小売売上高の予想を上回る伸びによってドルが買われ、対円では120円台に上昇した。週末比では05年12月以来の円安ドル高となったが、足取りの重い日本経済の歩み具合に変化がなければ、円安ドル高傾向は続くだろう。
 今週開催(17、18日)される日銀の金融政策決定会合で利上げ云々が喧伝されているが、そのことに為替市場はまったく関心を示していない。日本の利上げと米国の利下げ観測は円高ドル安を招くはずだが、為替市場が注目しているのは金利の動向ではなく実体経済である。

世界景気の不安を示唆する商品市況の急落 2007-01-08

PDFを読む

 年明け早々、商品市況は急落し、代表的指標であるCRB指数は前週末比5.3%下落した。なかでも銅は9.3%も急落し、昨年5月に付けた最高値から33.2%も落ち込み、下落率は原油価格よりも大きくなった。昨年の値上がりが異常であっただけに、値下がりも派手である。
 ヘッジファンド等の短期資金が投機目的で流入して形成した相場は、とても実体経済から説明できるものでない。今度は、損を覚悟で資金を引き上げつつあるが、清算が終わるまで相場は落ち着かないだろう。首尾よく逃れたところはいいが、高値掴みのポジションを抱えたまま、巨額の損に苦悶しているファンドやそこに資金を貸し付け返済が危ぶまれる金融機関もあるのではないだろうか。

週間マーケットレター 2006

来年のポイントは金利、米の利下げと日本経済の低温に悩む日銀 2006-12-24

PDFを読む

 外人の日本株買い越し額が11月第3週にプラスに転じてから、毎週、純流入額は拡大し、12月第3週には6,204億円と8月第3週以来の規模に膨れた。おそらく、先週も外人の買い越し基調は続き、それによって日経平均株価は今年5月以来の17,000円台乗せになったのだと思う。外人は株式だけでなく、債券も大幅に買い越しており、11月の約1.8兆円に続いて、12月も第3週までにすでに前月並みの規模に達しており、外人の対内証券投資は勢いを増している。

証券優遇税制の延長と超低金利継続期待に踊る株式市場

PDFを読む

 日経平均株価は5営業日連続で上昇し、4月に付けた年初来高値(17563円)に迫りつつある。企業減税や証券優遇税制の延長、米の金利据え置きと日本の利上げ観測の後退、NYダウ最高値更新による外人買いの持続期待などの好材料が日本の株式市場を強気ムードに変えた。

非製造業の設備投資、バブル期以来の3期連続の2桁増

PDFを読む

 財務省の『法人企業統計』によると、7−9月期の全産業売上高は前年比7.3%と前期より伸び率は1.3ポイント低下したものの依然高い増収を維持している。売上原価は売上高の伸びを上回ったが、販管費が下回ったため、営業利益は+12.5%と2四半期連続で拡大し、05年1−3月期以来6四半期ぶりの2桁増益となった。これで営業利益の前年比プラスは4年以上続いており、前回(ITバブル期)のときの8四半期を大きく超えた。経常利益は営業外収入が増加した一方、営業外費用が減少したため、15.5%と2四半期連続の2桁増となり、06年度上期の利益計画を大幅に上回る好業績を収めたといえる。

曖昧な根拠で売られたドル 2006-11-27

PDFを読む

 主要通貨に対してドルは下落し、特に、対ユーロでは1.3ドル台へと週末ベースでは05年4月以来の低い水準まで下げた。重要な経済統計の発表がなく、米株式や債券が売られた形跡もないなかで、なぜドルが値を下げるのか判然としない。米国経済はユーロ圏や日本に比べて景気の減速が大きいわけでもなく、先行きの景気も米国のほうが深刻になるという見方も説得力はない。米国とユーロ圏の景気波動はほぼ同じであり、景気のずれからくる通貨の強弱を判断することは難しい。7−9月期の実質GDPは米国が前期比0.4%、ユーロ圏も0.5%と似たり寄ったりである。米国の経済成長率は2四半期連続の低下となり、ユーロ圏よりも減速の程度は大きいが、住宅の急激な落ち込みが止れば、成長率の回復はユーロ圏より期待できそうである。

実体経済を反映しない日本のGDP統計 2006-11-19

PDFを読む

 GDP速報発表当日の日経平均株価は上昇したが、その後は3連敗とだれた。債券相場も公表日は弱気が優勢となり売られたが、売りが続くことはなく、地合いはしっかりしている。7−9月期の名目GDPは前年比1.9%と前期の伸びを0.5ポイント上回り、債券利回りよりも高くなったが、民間最終消費支出の伸びがゼロとなったことに不安を募らせたようだ。消費が伸びなければ、今景気を牽引している民間設備投資も早晩失速することは避けられないからである。

消費不振の日本経済 2006-11-12

PDFを読む

 給与は増えず消費は不振に陥っている。9月の『毎月勤労統計』によれば、現金給与総額は前年比横ばいであったが、所定内給与は-0.2%と5ヵ月連続のマイナスとなり、企業収益が拡大しても、企業は給与の抑制姿勢を緩めていない。こうした、企業の賃金政策によって、勤労者世帯の消費は9月、前年比5.9%減少し、今年は一度も前年を上回っていない。自動車等の耐久財だけでなく、ここにきてサービスの不振も目立つ。可処分所得は0.1%増加したが、消費の削減幅が大きく、平均消費性向は前年比5.2ポイント低下した。景気拡大期間は最長を記録しているが、給与の上昇は期待できないと諦めたような、消費行動になっている。

米住宅部門の不振、80年代後半のようには深刻化せず 2006-10-30

PDFを読む

 週末に発表された米GDPの伸びが予想を下回ったため、資金は米株式市場から債券や商品に流れた。過去最高値を更新していただけに、NYダウも経済成長率の減速を嫌気し、ドルも主要通貨に対して売られた。ただ、消費や設備投資関連の指標は米国経済の底堅さを示しており、米株式が急落するとか、ドルが下がり続けるような事態には至らないと思う。成長率の減速やデフレーターの低下によって、債券は強含みで推移するだろう。

原油高の足枷外れ世界景気の拡大期待強まる 2006-10-23

PDFを読む

 OPECは20日の緊急会合で11月から120万バレルの減産を決めたが、減産は加盟国の自主性に任せられていること等から、原油価格は下げ止まらず56ドル台に下落した。原油価格は3週連続安となり、昨年11月中旬頃の水準に戻ったが、これまでの異常な値上がりの反動安は容易に止ることはなく、実需と見合う水準を模索する動きが続くだろう。
 世界の最終生産物価格が数%の緩やかな上昇にとどまっているため、原油産出国の購買力は飛躍的に拡大している。原油収入の急増により、原油産出国は生産財や消費財の購入を増やしているが、財やサービスの購入にも限度があり、産油国の収入は支出を上回っている。こうした産油国の貯蓄超過が世界景気に悪影響を及ぼしていると考えられるが、現在進行中の原油高の修正は、産油国の超過貯蓄や資金の偏在の解消につながり、世界経済の改善要因になる。

金融不安定性を高める日本の超低金利政策 2006-10-16

PDFを読む

 NYダウの高値更新による外人の買い増し余力増などから、日本株も3週連続で上昇し、回復力を強めている。外人は10月の第1週までの2週間で約8千億円を買い越し、いつもの通り、今回も外人主導の上げだ。米インフレ懸念の後退から米政策金利の据え置き、ひいては日銀も様子見姿勢をとり、超低金利が続きそうだ。日本の超低金利が投機的資金需要を増大させ、そうした資金が株式市場に流入していると考えられる。不透明な景気をよそに、超低金利が株価を支えるといった、実体経済とはどこか違う感じを抱かせる市場になっている。
 実体経済に関連する分野の資金需要が弱いため、超低金利政策は投機的なところばかりへ資金が流れやすくなる仕組みを作り出している。過去5年の年平均名目成長率がたったの0.1%であったことを想起すれば、実体経済に関わる資金需要は弱く、超低金利だからといって貸出が増えるものではない。借りやすいけれども、実際は借りる必要はなく、投機的な分野へと資金は集まっていった。実需が伴わない状況下での超低金利政策は、将来に金融不安定性を高める政策なのだということを今一度、90年代の教訓として思い起こす必要がある。

インフレになることなく原油価格は下落する2006-10-11

PDFを読む

 原油価格(WTI)は今年2月以来の60ドル/バレル割れとなり、世界的にインフレ懸念は後退しつつある。債券利回りの低下は一服しているが、まだ下がる余地はある。NYダウが2000年1月以来、約6年9ヵ月ぶりに最高値を更新したり、欧州や日本の株式が堅調に推移しているのは原油価格などの商品市況が下落しているからである。先週、CRB指数も約1年4ヵ月ぶりに300の大台を下回り、インフレ懸念が薄れ、債券利回りの低下が期待できそうだ。
 これまでの行過ぎた資源高の調整がはじまり、原油価格は大幅に下落するだろう。06年1月の世界の原油備蓄量は1.29億バレル、前年を27.2%も上回っており、最新の米在庫も前年比7.4%と高い水準を保っている。原油価格の高騰により、供給は増加する一方、需要は減少しており、原油はだぶついている。いつまでも法外な値段が持続することは、過去の経験からみてもあり得ない。

原油価格下落の米消費と設備投資に及ぼす影響 2006-10-02

PDFを読む

 NYダウは債券利回りの低下により、瞬間的には過去最高値を更新した。商品市況の下落によりインフレ懸念が薄れ、景気も緩やかに減速していることが、株式市場を底堅くしている。ただ、景気の減速は企業収益の減少につながるため、株価が本格的に上昇することにはならないはずだ。債券利回りと収益を天秤にかけながら、慎重な判断が要求される難しい時期といえるだろう。

物価よりも景気が心配になってきた米国経済 2006-09-24

 商品市況の急落は米金融政策にも影響を及ぼしている。20日のFOMCで政策金利を前回(8月8日)に続いて据え置きとし、年5.25%がピークになる可能性が高くなった。これほど商品市況が落ち込み、先行き物価が低下すると見込まれるときに、利上げなどできない。

PDFを読む

株高、企業業績の拡大により綻びを逸らした小泉政権 2006-09-18

PDFを読む

 景気拡大は56ヵ月目に入っており、いざなぎ景気を超えようとしているが、庶民の実感としては、本当に景気はよいのだろうか反問せざるを得ない。確かに、企業業績はすでに4年連続の増益となり、雇用等は大幅に改善しているが、家計の消費行動をみればそのような改善もさしたる影響をおよぼしていないように思う。企業の体力は回復したけれども、家計の力は衰えており、政府の財政は瀕死の状態にある。日本全体が好転しているのではなく、どこかが良ければ、ほかのところが綻びているというのが現実ではないだろうか。家計や政府の犠牲の下に、企業の体力は回復しているといってよいだろう。

商品市況変調来たす2006-09-10

PDFを読む

 原油価格は5日連続安となり、4月上旬以来約5ヵ月ぶりの安値となった。商品市況をあらわす代表的な指数であるCRBも3月下旬以来の低い水準に下落し、資源高の下降局面入りを窺わせる。資源高が世界経済を熱くしていただけに、もし市況が急激に冷えることになれば(市況とはそういうものだが)、世界経済に及ぼす影響は相当なものになるだろう。

資源高特需で拡大する米国経済2006-09-03

PDFを読む

 米GDP改定値によれば、4−6月期の実質経済成長率は前期比年率2.9%と速報値よりも0.4ポイント上方修正された。名目ベースのGDPは13.2兆ドル、個人消費支出だけで9.2兆ドル(1ドル=117円円換算で1,076兆円)もあり、米国経済の規模は桁違いに大きく、世界経済の行方は米国次第だということを再認識させられる

日本の金融政策を決定付ける米国の利上げ休止 2006-08-27

PDFを読む

 8月第3週の外人の日本株買い越し額は6,747億円に拡大した。これで5週連続の買い越しとなり、しかも05年9月第2週以来、約1年1ヵ月ぶりの規模に膨れ、日本株回復を主導した。先週は大幅買い越しの後だけに、外人も手控えた模様で、週間ベースで日経平均株価は6週間ぶりに反落した。
 7月末発表の6月の『鉱工業生産指数』が伸び、8月9日発表の6月の『機械受注』が予想をはるかに上回り、4−6月期の『GDP速報値』(8月11日発表)も拡大したことなどが、外人買いの背景と考えられる。この間の値上がり幅は約1,700円に達し、株価収益率は20倍を超え、7月中旬から1.7ポイント上昇、株価は実体経済を織り込んでしまったと言ってよいだろう。

米国の原油輸入減で原油高もピークか 2006-08-20

PDFを読む

 米鉱工業生産指数は7月、前月比0.4%と2ヵ月連続のプラス、前年比も4.9%増加し、米国の生産は拡大している。生産は拡大しているが、06年1−6月期の米石油関連製品輸入量(原油含む)は前年比2.0%減と半期ベースでは02年1−6月期以来、4年ぶりのマイナスとなった。原油価格高による節約の影響もあらわれているが、米国景気が減速に向かっている兆候なのかもしれない。原油の輸入量に限れば、05年7-12月期に前年割れとなり、06年1−6月期も2.7%減少した。原油価格は1バレル=70ドルを依然超えているが、すでに1年、米国の原油輸入量は前年を下回っており、需要は減退している。原油市場がこうした事実を直視することになれば、中近東の不安材料はあるものの、原油価格は間違いなく大幅に下がるだろう。

資源高による景気拡大は続くか 2006-08-13

PDFを読む

 週末に発表された4−6月期の『GDP速報』によると、名目で前期比+0.3%と伸び率は2四半期連続で低下し、日本の景気は減速しつつあることが読み取れる。民間最終消費支出は0.6%と前期よりも伸びは高くなり、民間企業設備も3.7%と好調だったが、民間住宅、外需さらに公的需要の減少が成長の足を引っ張った。

好調な輸出と低調な内需が混在する日本経済 2006-07-30

PDFを読む

 週末に発表された4−6月期の米GDPがコンセンサスを下回ったことから、次回FOMCによる利上げが見送られる観測が強まり、米長期金利は約1ヵ月半ぶりに5%を下回った。一方、為替レートは米国経済減速、金利差縮小を期待し、主要通貨に対してドルは売られ、円ドルレートも114円台に振れた。景気減速という不安材料を脇に置き、利上げ打ち止めという好材料だけを評価し、米株式相場は反発した。
 日経平均株価も4−6月期の業績を好感し、15,000円台を回復した。6月調査の『短観』によれば、大企業製造業の経常利益は前年比6.0%減の見通しだが、4−6月期の出だしはそれほど悪くないようだ。製造業の業績が伸びている最大の要因は、輸出が好調なからである。6月の数量ベースの輸出は前年比8.6%と前月よりも伸び率は低下したが、それでも高い伸びであり、こうした好調な輸出が企業業績を押し上げているのだと思う。

日米の金利低下と株式不振 2006-07-23

PDFを読む

 日銀はゼロ金利を解除したが、週末、長期金利は1.815%と2週連続の低下となった。20日には1.81%まで下がり、7月6日の直近ピークから0.165%低下した。ユーロ円(3ヵ月物)は上昇を続けていたが、日銀がゼロ金利を解除する前日の13日をピークに低下しており、金融市場は行過ぎていた金利を修正しつつある。日本経済の成長がさらに高くなるよりも低くなる可能性が大きく、政策金利の早期引き上げは行われないだろうという見方が優勢になっている。翌日物と短期金利の差が大きいため、短期金利の低下はまだ続き、それに伴い長期金利も緩やかに下がるだろう。

名目経済成長率伸びず超低金利続く 2006-07-17

PDFを読む

 14日、日銀は01年3月から続けていたゼロ金利を解除した。0.25%に引き上げたが、すでにユーロ3ヵ月物は0.4%を超えており、市場の動きに約1ヵ月半遅れて引き上げたにすぎない。市場金利が顕著に上昇しているときに、0.25%の利上げを9人もの高給取りが集まり決定すべきことなのだろうか。それこそ金と時間の無駄だと思うが。独立しているといいながら、国債の買い入れ額は現行通り月1.2兆円を維持し、政府に貢ぎ続けるのである。結局は国のいいなりになり、国の放漫財政を許し、財政赤字の拡大に加担していることを日銀はどのように考えているのだろうか。

政府の「骨太の方針」、3%程度の経済成長を前提 2006-07-11

PDFを読む

政府は7日、「骨太の方針2006」(経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006)を閣議決定し、06年度の政府経済見通しを改定した。それによると、06年度の名目GDPは当初見通しを0.2ポイント上方修正し2.2%とし、07年度は2%台半ばを見込んでいる。06年度は0.6%のゲタを履いているけれども、それでも06年4−6月期以降、前期比0.6%強の成長を続けなければ見通しにはとどかない。

FRBの利上げはまだ続く 2006-07-02

PDFを読む

 FRBは28、29日開催のFOMCで政策金利を0.25%引き上げ年5.25%とした。FOMCの声明は、今後の追加利上げは物価と経済成長の両面を睨みながらになると述べ、金利引き上げが最終段階に差し掛かっていることを窺わせた。声明を好感し、米株式と債券相場は上昇した半面、主要通貨に対してドルは売られた。ドル安により金や原油等の商品市況は強含んだ。
 米1−3月期の実質GDPは年率5.6%に上方修正され、4−6月期がこのような高い成長から減速することは間違いないが、05年の3.5%程度は確保できるのではないだろうか。1−3月期の伸びは05年10-12月期が1.7%に低下したことの反動であり、05年9月から06年3月までの半年でみれば3.7%と05年4月から9月までの成長率と同じである。やや長い期間をとれば、米経済成長率は低下しているとはいえない。FRBは「最近の指標をみると、経済成長は06年初めの極めて力強いペースから減速しつつある」と心配しているが、4−6月期は適正な姿に戻るだけで、減速という表現は相応しくない。

円安ドル高と外人の日本株売り 2006-06-25

PDFを読む

米国の利上げと日本のゼロ金利継続見通しにより、対ドルで円は約2ヵ月ぶりに116円台に値下がりした。5月の米住宅着工件数は195.7万件、前月比5.0%増加し、4月まで3ヵ月連続減と先行きを不安にさせていたが、ひとまず増加に転じ、景況感にプラスに作用したようだ。米長期金利は5.2%台まで上昇したが、長期的にはまだ低い水準にあり、住宅着工を著しく阻害する要因にはならないだろう。住宅着工が緩やかに減少していけば、消費者物価を落ち着かせることにもなり、景気拡大を支えることにもなる。
 設備投資もまだ高い水準を維持できそうである。5月の米耐久財受注によると、資本財(航空・軍需除く)は前月比1.0%と2ヵ月ぶりにプラスとなり、前年比では10.0%の増加だ。在庫は前年比4.0%増にとどまっており、受注の伸びを下回っている。米国企業の設備投資意欲は旺盛であり、いまのところ長期金利の上昇もさほど影響していない。

日銀の信用揺らぎ金融規律は緩む 2006-06-18

PDFを読む

 日銀の福井総裁が村上ファンドに1千万円を拠出していたことがあきらかになった13日、株式は614円安と米同時テロ直後の01年9月12日以来の下げ幅を記録した。ゼロ金利は容易に解除できないという見通しが強まり、債券は買われ円は売られた。
 福井総裁は村上ファンド以外にも株式を保有しているという。日銀の最高幹部であり、金融政策決定会合の議長である日銀総裁が、株式の取得・売却を報告義務だけで済ますことができる日銀の内規にも問題があるが、福井総裁はあまりにも地位にふさわしくない資産管理をしていたといえる。日銀の内部規定も杜撰であり、一部の政策委員には信託に預けるように忠告していたようだが、身内の総裁にたいしては具申することも憚られるのか、あるいは信頼しきっていたのか、株式を信託に預けることもなく、村上ファンドへの投資も放置されたままになっていた。
 日本銀行の接待汚職事件で98年3月、日銀副総裁を退任した福井総裁は、99年に村上ファンドに拠出したという。日銀不祥事のことは忘れて、不祥事を起こし逮捕された人物のファンドに関っていたのである。村上はインサイダー取引で金儲けをして捕まったが、福井総裁もインサイダーを他人事のように考えていたのであろうか。これだけインサイダー取引が喧しく言われているなかで、金融政策のトップがインサイダーに疎い資産管理をしていたとはもってのほかで、金融政策など論じる資格はないのではないか。一度不祥事の責任を取り辞めた人物が、最高幹部のポストに就くという人事を遂行した責任は重い。

欧米に相対的に劣る日本の景気と株価の上昇 2006-06-11

PDFを読む

 1週間でTOPIXは108ポイント、4月7日の年初来高値から285ポイントの急落である。いつものことだが、いったん相場が下げだすと不安が不安を呼び、つるべ落としのように下落する。日本経済が過去数ヵ月で劇的に変化したわけではないが、株価が実体経済から遊離していたため、なんらかの不安な兆しがあらわれることになれば、一気に売り姿勢に傾いてしまう。特に、集団志向が強い日本人は、外人の売りにつられて株式市場の出口に殺到している。
 景気は拡大しているとはいえ、6月で拡大期間はすでに53ヵ月に達しており、戦後2番目の長期拡大である。これだけ景気拡大が続いていることは、景気は成熟し、ピークアウトするときが近づいていることでもある。いま景気が好調であるという報道を鵜呑みにするわけにはいかないのである。景気の長期拡大が先行きを不安にし、市場を神経質にしているのである。

金を増やす巧い話は無い 2006-06-04

PDFを読む

 経営を正すという触れ込みで企業の株式を買い占めていた「村上ファンド」の実態が暴かれようとしている。ライブドアの虚偽事件が冷めやらぬうちに、「中央青山監査法人」の業務停止処分や今回のインサイダー疑惑が持ち上がり、証券市場は疑惑の巣窟の観を呈している。暴利を得るためには、市場を首尾よく利用することが最も手っ取り早く、ルールすれすれの取引や嘘の報告、内部情報といった違法行為がはびこる土壌の改善は容易ではない。これからも同じような違法行為が手を代え品を代えてあらわれるだろう。

景気減速による債券高・株安 2006-05-29

PDFを読む

前週末、日経平均株価は16,000円を割り込み、昨年末の値段を下回ってしまった。外人が日本の株売り、債券買いの姿勢を引き続きとっているからだ。5月第3週、外人は日本株を4,835億円売り越し、債券を8,377億円買い越した。日本経済の長期的な成長率から判断して、国債利回りの2%超えは、行き過ぎだと捕らえたからである。名目経済成長率は01年度を底に、4年連続の上昇となったが、それでも05年度は1.7%にすぎず、実体経済に照らしあわせば、債券はあきらかに売られすぎだし、株式は前年を5割近くも上回っており、買われすぎなのである。

米住宅着工の減速により物価の安定続く 2006-05-21

PDFを読む

 4月の米消費者物価指数(CPI)発表後、NYダウなど米株価は軒並み急落した。予想よりもCPIの上昇率が高く、インフレ懸念が強まり、FRBの利上げがまだ続くということが下げの要因になったようだ。CPIコア(食品・エネルギーを除く)は前月比0.3%と前月と同じ上昇率であり、前年比では2.3%と3月よりも0.2ポイント高くなった。これだけの理由でなぜこれほど下げたのだろうか。商品市況が過去最高を更新するなかで、物価上昇に点火するかもしれないといった不安が市場心理を冷やしたのだろうか。

実体経済からみてドルは売られすぎ

PDFを読む

 一次産品価格の高騰は衰えることなく、CRB指数は過去最高を更新した。米債券・株式相場は下落し、米国から投機資金は流失、ドルは大幅安となった。10日、FRBは政策金利を0.25%引き上げ年5.0%とし、今後の変更は経済動向次第だと声明に明記した。とはいえ、物価は安定しており、政策金利を引き上げるにしても、小幅な上昇にとどまるはずだ。政策金利の上昇が限られたものであれば、米債券利回りの上昇も最終局面にあるといっていいだろう。

夏頃には円安ドル高へ 2006-05-03

PDFを読む

先週、週初から急激な円高ドル安が進み、週末には113円台へと昨年10月以来の円高となった。原油高によって原油消費量の多い米国景気が減速に向かい、政策金利の引き上げも最終局面に近づきつつあるとの見通しからドルは売られた。バーナンキFRB議長の政策金利の早期打ち止めを示唆する議会証言や1−3月期のGDPの高い伸びも4−6月期以降減速するとの見通しからドル売り材料になった。
 米長期金利は5%強に上昇し、政策金利よりも高くなった。長期金利と政策金利の相関性は強く、長期金利が政策金利の方向を予想しながらやや先行する傾向がある。インフレが2%前後にとどまるという期待のもとでは、長期金利はほぼ政策金利の上昇を織り込んでしまった。長期金利が上昇する過程では、米債券投資は手控えられることから、ドル需要は減少し、円高ドル安に向かいやすい。

資源高でもつ脆い世界経済の地盤 2006-04-24

PDFを読む

 原油価格は過去最高を更新しているが、3月の米消費者物価指数(コア)は前月比0.3%、前年比2.1%と落ち着いている。過去1年間を振り返ってみても、前年比2.0%〜2.2%の狭い範囲の動きとなっており、原油高の影響は限定的である。衣料やコンピューター関連製品価格は引き続き前年を下回っており、消費者物価を引き下げている。原油多消費国の米国でさえこの程度の値上がりにとどまっていることは、欧州の物価はさらに安定し、日本にいたってはかろうじてプラスというのもうなずける。世界のコア上昇率も2%程度であり、物価については理想的ともいえる伸びといえるだろう。

今の2%近い長期金利は行き過ぎ 2006-04-16

PDFを読む

 原油価格が昨年9月以来の高い水準に上昇したほか、銅も6,000ドルを突破するなど商品市況は高騰を続けている。国際エネルギー機関の幹部が「現状の原油価格は需給では説明できない」と述べているように、69ドルの原油価格は世界経済の動向を反映しているとは言いがたい。だが、これだけ原油等の値段が高水準に維持されていることは、なにか高水準を保つことができる要因があるはずだ。イランの核問題も供給不安につながるし、原油の利権をめぐる中国の動き、さらにロシアの資源外交も原油需給に影響しているのだろう。

ゼロ金利による株高、バブル膨らむ2006-04-09

PDFを読む

 3月調査の日銀「短観」の業況判断は足踏みを示したが、日経平均株価は5週連続の上昇となり、00年7月以来の高い水準で引けた。一方、債券相場は下落し、利回りは急上昇したが、米国の堅調な景気を反映して、為替相場は円安ドル高となった。銅や金などの市況は引き続き強く、商品市況と一般物価水準の開きはますます拡大してきている。そのため資源供給国の資金は潤沢となり、そうした資金が世界の株式市場になだれ込んでいるようだ。

ゼロ金利と外需に委ねた設備投資の危うさ 2006-04-02

PDFを読む

 27日に発表された1−3月期の「法人企業景気予測調」によると、大企業製造業「貴社の景況判断BSI」(「上昇」−「下降」)は3.1%と前回調査時の予想を下回り、前期比7.4ポイント低下した。大企業非製造業は7.9%、前期比2.6ポイントの低下となり、大企業の業況は悪化した。4−6月期以降の景況判断は改善する見通しだが、原油が60ドル台半ばに上昇するなど、原材料高が収益を圧迫することも予想され、先行きは不透明である。景気の影響を受けやすい中小、中堅企業(製造業)の景況判断は大幅に悪化し、マイナスに転落した。

米物価安定と景気不安材料2006-03-26

PDFを読む

 2月の米消費者物価(コア)は前月比+0.1%と安定した動きをしており、インフレに進むような気配は感じられない。総合指数も0.1%にとどまり、前年比では3.6%と昨年9月から1.1ポイント低下した。生産者物価も2月、前年比3.7%と昨年9月の6.9%から大幅に低下しており、消費者物価の低下要因になろう。原油価格は依然バレル60ドル台にあるが、前年比では10%台に低下しており、物価への影響は薄れ、夏にかけて消費者物価のコアは前年比1%台に低下するであろう。
 FRBは今週のFOMCでFFレートを0.25%引き上げ4.75%にする見通しだが、物価ではなく実体経済の強さを和らげるための利上げなのだろう。バーナンキ議長をはじめとする理事・総裁は、実体経済は予想を上回る成長を維持しているととらえており、実体経済の強さがいずれ物価に波及するとみているのではないか。

3月20日号は著者都合により休刊となります。

量的緩和解除によりマネタリーベース収縮へ2006-03-12

PDFを読む

 3月9日、日銀は01年3月に導入した量的緩和の解除を決定し、即日実施すると発表した。金融市場調節の操作目標を日銀当座預金残高から無担保コールレート(翌日物)に変更するが、日銀は現状と同じゼロ%で推移するように促すことを声明に書きとめた。
 新聞は量的緩和解除をトップ記事として大々的に報道したが、量的緩和とはなにかについて核心を突く記事はみられなかった。準備預金の調整は政策金利の変更と並んで金融政策の中心をなす。銀行は預金の一部を日銀に無利子で預ける仕組みが準備預金制度だが、法律で定められた金額以上の預金を日銀に預けることは、それだけ銀行にとっては貸出等運用にまわす資金が少なくなることであり、金融引き締めになる。預金が貸出され、貸出が他の銀行の預金になるという貨幣の流れによって信用が創造されるが、銀行預金のうち日銀に預ける割合が大きくなれば、信用は収縮することになる。

量的緩和という曖昧な中身2006-03-06

PDFを読む

 日銀の量的緩和解除観測が株式・債券市場に影響を及ぼしていると言われている。株価と債券相場は下落し、為替はやや円高ドル安に振れた。量的緩和解除が実体経済に悪影響するのであれば、株式は下落するが、債券は上昇し、円は売られるだろう。量的緩和が解除された後には、金利の引き上げが控えており、そのことが相場に影響しているのだろうか。日銀のことだから、ゼロ金利をすぐに1%に引き上げるようなことはせず、0.1%程度の微調整がやっとだと思う。それでも不安なのは、実体経済に自信が持てないからである。すこしでも金利が上がることになれば、長期的に拡大している景気の腰を折ることになりかねず、デフレに舞い戻ってしまうと考えているのだろうか。

米国景気の拡大によりドル高円安へ 2006-02-27

PDFを読む

 原油等の鉱物性燃料の輸入増や一般機械、電気機器の輸入拡大によって、輸入が輸出を上回り、1月の貿易収支は3,489億円の赤字となった。赤字は01年1月以来、5年ぶりである。地域別には、対米国・欧州の黒字は増加したが、対中東や中国の赤字が拡大し、黒字を維持できなかった。
 貿易収支は赤字だが、対米輸出は好調であり、金額ベースでは1月、前年比21.7%伸びた。一般機械、電気機器も堅調だが、特に、自動車が好調であり、前年比43.1%も伸び、対米輸出の伸びの5割強を自動車が占めた。対EUの輸出も14.8%増と2桁増となったが、対アジアは5.1%と6ヵ月ぶりの低い伸びとなった。
 対米輸出は数量ベースでも12.0%と昨年7月のマイナス1.0%を底に拡大しつつある。日本からの輸出がこれだけ伸びていることは、米国の消費は強く、景気は拡大していると考えてよさそうだ。OECDの米景気先行指数によると、04年以降、05年の半ばまで米景気は踊場にあったが、その後、拡大しつつあることがわかる。

米実体経済強く利上げ続く 2006-02-19

PDFを読む

 バーナンキFRB議長の議会証言はFOMCの内容を踏襲し、金融政策は今後の経済の動きいかんだという、ごくありふれたものであった。1月の米鉱工業生産は前月比0.2%低下したが、電力・ガスの落ち込みによるものであり、製造業は0.7%増と底堅い。小売売上高は1月、前月比2.3%、前年比では8.8%も増加した。自動車等を除いては前月比2.2%、前年比9.9%も増加し、米国の消費は力強さを増したといえる。ただ、2月のミシガン大学消費者センチメント指数は前月よりも悪化し、消費者心理は統計数値のように良くない。1月の生産者物価指数は前月比0.3%、前年比5.7%伸び、コア(食品・エネルギーを除く)は前月比0.4%と高めだが、前年比では1.5%と昨年7月の2.8%をピークに大幅に鈍化してきており、物価上昇圧力は低下してきている。生産者物価指数の前年比伸び率の鈍化は、しばらくして消費者物価の低下につながるだろう。実体経済は堅調であり、物価も沈静しつつあるのであれば、金融政策を弄る必要はないように思うが、FFレートは4.5%と名目経済成長率を下回っており、5%台半ばまで引き上げる可能性は高い。

金利上昇のにおいを嗅ぎ取る株式市場 2006-02-13

PDFを読む

 日銀は3月8、9日開催の金融政策決定会合で量的緩和を解除するようだ。福井日銀総裁は「日本経済については、理想的とまでは言わないが、どの角度から見ても比較的バランスの良い経済の姿になって」おり、消費者物価(除く生鮮食品)も「1月分の指数は、これまでの数字に比べよりはっきりとしたプラスになっていくと見込んでいる」と述べ、量的緩和を解除する条件が整ってきている点を強調している

米長短金利の逆転 2006-02-05

PDFを読む

 日経平均株価は昨年来高値を更新したため、債券は売られ、日米金利差のさらなる拡大を背景に円安ドル高が進行した。OPEC総会で原油生産量を現状維持にすることが決まったことから原油価格は値下がりしたが、銅を始めとする非鉄金属の値段は鰻登りの様相を呈しており、ロンドン市場で銅先物価格は先週末、前年比67.8%も値上がりした。米株式相場の上値は重く、債券相場も膠着状態にあるためか、投機資金は商品市場に向かっているようだ。

個人は株になぜこれほど強気になれるのか2006-01-29

PDFを読む

 日経平均株価はライブドア事件後の急落を完全に埋め、昨年来高値を更新した。ライブドア事件が発覚し急落した1月20日までの1週間に個人は5,296億円と約18年ぶりの大幅な買い越しを記録した。13日までの1週間でも3,755億円を買い越し、年初からでは9,145億円となり、外人(2,756億円)の買い越し額の3倍強に膨れた。

「貯蓄から投機」に導いた政府・日銀の政策、ライブドア問題の根源 2006-01-22

PDFを読む

 数々の疑惑が明らかになり、上場廃止になると思われるライブドアに売りが殺到、その影響が市場全体に波及している。18日には東証は売買停止に追い込まれ、昨年からのシステムダウンの教訓がまったく活かされることなく、またも大失態を演じた。
 実体経済が良好なので株式市場の調整は一時的であり、日経平均株価は15,000円台から大きく値下がりしないだろうという見方が一般的だが、ライブドア一社の問題によってなぜこれほど激しいパニック的な売りが出てくるのだろうか。基本的には実体経済を無視した水準にまで値上がりしていたことが、このような爆発的な売りを引き起こしたと理解すべきではないか。

信用買い残の急増 2006-01-15

PDFを読む

 1月6日時点の信用買い残(3市場)は5.45兆円、前週比2,227億円も増加し、上昇の起点になった8月からは約2倍に拡大した。個人は現物では昨年5月以降売り越しているが、信用では同8月以降買い越しており、12月は9千億円超と外人の買い越し額を上回った。信用買いによって株価は上昇し、さらに信用買いを誘い込むという構図になっている。

5割近い株式の値上がりは続かない2006-01-09

PDFを読む

 昨年からの強基調を引き継ぎ、年明け以降も3営業日連続高となり、日経平均株価は昨年来高値を更新した。株高にもかかわらず、長期金利は低下気味であり、為替相場は大幅な円高ドル安となった。原油や金の再燃からCRB指数は過去最高を記録し、今年も一次産品価格の動向が経済や市場を支配する気配が窺える。
世界の主要株価指数なかでも日本株の上昇がトップクラスだが、実体経済面からそれを裏付けることができるだろうか。日経平均株価のPERは24倍を超え世界的に割高になっているが、この割高を正当化できるほど期待経済成長率が高くなったのだろうか。国勢調査により人口減に突入したことがはっきりしたが、これが長期期待経済成長率にどのように影響するのだろうか等々を考えることなく、市場は見切り発車してしまったようである。

週間マーケットレター 2005

山高ければ谷深し2005-12-19

 週初めの12日、日経平均株価は前日比334円高と今年一番の上げ幅を記録したと思ったら、12月調査の『短観』が公表された14日には314円安となり、株価の変動率は大きくなってきた。株価のブレが激しくなってきたことは、市場参加者の株式市場に対する気持ちが神経質になってきていることのあらわれである。8月以降の急騰をみれば、上がり方が異常であることはだれもが認めざるをえないだろう。だから、いまの値段に不安を抱き、神経質な値動きになるのだ。

増益率の低下と株価の上昇2005-12-12

 財務省発表の『法人企業統計』によると、7−9月期の全産業営業利益は前年比+3.7%と伸び率がピークを付けた04年4−6月期以降、5四半期連続の低下となり、02年4−6月期以来の低い伸びとなった。営業利益の伸びが大きく低下しているなかで、株価の上昇が強まるという不思議な現象が起こっている。営業利益の伸びが低迷しているときに株価が急伸することは、糸が切れたタコのように、株価が独自の動きをしていることであり、いつ失速し急降下するかもしれない不安定な状態にあることなのである。

「構造改革」相場を担ぐ外人買い 2005-12-05

 日経平均株価は棒状の上げ相場となり、難なく15,000円を超えてしまった。14,000円台にとどまった営業日は18日にすぎず、13,000円台の30営業日に比べると、相場はいかに短期に急上昇したかがわかる。週末の日経平均株価の水準は前年を40.5%上回り、NYダウやナスダック総合指数の1桁の伸びを大きく引き離している。FT100、DAXは2桁増だが、日経平均株価の伸びが高く、最近の日本株上昇は世界市場のなかでも群を抜いているといえる。 

投機的資金の供給源はどこか 2005-11-27

 日経平均株価は7営業日連続の上昇となり、15,000円まであと200円強である。先週、東証1部の売買単価は1,000円を上回り、5,595億円も買い越した11月第3週に引き続き、第4週も外人の資金が大量に日本の株式市場に流入したと考えられる。米国や欧州の株式市場も堅調だが、日本株の上昇力が群を抜いており、値上がり益を求めた外人買いが勢いを増しているようである。
 11月第4週、個人は売り越したが、投資信託と事業法人は大幅に買い越し、買い手は外人だけでなくなってきている。10月、事業法人は4,500億円、投資信託は801億円を買い越したが、11月も買い越しを維持するだろう。上昇の最終局面にしばしば登場し、高値掴みをしがちな投資信託、事業法人が買い手として現われたことは、相場が最終局面に近いことを示唆しているといえる。

 

株価、債券価格を歪めた小泉発言 2005-11-20

 小泉首相の量的緩和解除は「まだ早いのではないか。‥まだデフレ状況だ」(14日)との発言を受け、債券利回りは大幅に低下し、為替相場は円安に振れた。首相を始め政府、自民党の政策担当者が、福井日銀総裁の量的緩和解除に向けた発言を真っ向から批判したことによって、量的緩和解除時期やさらにその先に控えているゼロ金利解除の時期が遠のいたことが、株価上昇に大きく寄与したと考えられる。
 さらに、10月の米経済指標が米国経済の消費や生産が底堅く、物価も十分に抑制されていることを裏付け、安定成長を持続しているという安心感を植え付けるものであった。こうした予想を上回る良好な米国経済を反映して、外人の日本株購入が期待されただけでなく、売買単価の上昇に窺えるように、先週も外人は大幅に日本株を買い越したようだ。外人買いに先導された個人の商いも引き続き活発であり、週末、東証1部の売買代金は3兆円弱に増加した。

TOPIXの前年比上昇率37%、ピーク近づく 2005-11-14

 11月4日に14,000円台に乗せた日経平均株価は、先週も底堅く推移し年初来高値を更新した。東証1部の売買高は8日、45億株を超え過去最高を記録するなど、流通市場は過去にない大商いに沸いている。相場をリードしているのは外人であり、11月5日までの半月間の買い越し額は約1兆円に膨らんだ。
 個人は売り越しているが、信用では買い越しており、4日時点の信用買い残は3兆7,637億円に拡大、株価が上昇し始めた3ヵ月前から約1兆円増加した。個人の売買高に占める信用取引の比率は約5割と高く、頻繁に繰り返される信用取引が売買高を過去最高に引き上げた要因と考えられる。

金利上昇に耐え得る資産運用の構築へ2005-10-31

7−9月期の米GDPは実質前期比年率3.8%と前期を0.5ポイント上回った。ハリケーン等の影響があらわれ減速すると予想されていたが、個人消費支出が前期よりも高い3.9%も伸びたことにより、それだけでGDPを2.7%引き上げた。民間設備投資は6.2%増と前期よりも2.6ポイント低下、寄与度は0.7%にとどまった。GDPの価格指数は3.1%と前期を0.5ポイント上回ったが、1−3月期と同じ伸びであり、原油価格が高騰しているわりには落ち着いているといえる。

「根拠なき熱狂」で維持されている日本の株式相場 2005-10-17

 8月の『機械受注』の伸びが予想を上回ったことを好感し、11日の日経平均株価は今年最大の上げ幅を記録した。だが、10月第1週の信用買い残が前週比2,827億円増と12年半ぶりの急増となったことから、信用買い残をさらに積み上げることに躊躇したのか、その後はじり安歩調を辿っている。政策金利の引き上げ、原油高、インフレ懸念等により米国株式市場が軟調なことも、外人買いの先細りを予想させ、上値を重くしているのだろう。

日銀『短観』からみた企業の実態 2005-10-10

 日銀『短観』の業況判断が予想を下回ったことや米国のISM非製造業景気指数の急低下により、日米の株価は大幅に下落した。特に、日本の株式市場は、景気が紙上で言われているほど改善されておらず、日本経済を過剰評価していたことにやっと気づきだしたようだ。

暴走する株式市場 2005-10-02

 先週の東証1部の売買高は5日連続、30億株を超え、売買代金も2日は3兆円を上回るという記録的な週となった。9月の東証1部の売買高回転率は年率200%を超えており、株式が2回転もする異常な出来高である。
 上昇相場に乗り遅れた外人などがあとからあとから市場に雪崩れ込んできているのだろう。9月の日経平均株価は前月比9.4%、前年比では25.4%も上昇したが、世界景気が本格的に上向いているわけではなく、むしろ、成長率は減速に向っており、当然、収益の伸び率も低下するなかで、日本の株式だけが舞い上がっていることは、市場が暴走しているとしかいいようがない。

日本の株高と円安ドル高 2005-09-26

日本の株価上昇の勢いは止まるところをしらず、20日には、日経平均株価は01年6月以来の13,000円台を回復した。5月の安値から約2,300円の値上がりとなり、前年比でも19.4%上昇した。景気の「踊り場」脱却や脱デフレを信用して、日本株に巨額の資金を振り向けている外人の強気姿勢が、日本の株価上昇の原動力になっている。

選挙に賭けた危うい相場 2005-09-12

日経平均株価は先週も値上がりし、これで8月8日の解散・総選挙宣言から914円、率にして7.8%も上昇した。同期間、東証1部株価指数は8.5%増と日経平均株価の上昇率を上回った。なかでも、大型株指数(9.2%)は中型株指数(8.2%)、小型株指数(6.9%)、2部(6.5%)よりも上昇率が高く、外人主導の物色が色濃くあらわれている。NYダウ、ナスダック総合、FTSE100等の海外の主要株価指数はほぼ横ばいに近い値動きにとどまっており、日本の株価指数の値上がりが際立っている。
 今日投票の衆議院選挙において、反対議員を切り捨て郵政民営化一本槍で押した自民党が、単独過半数を獲得することを株式相場は完全に織り込んでしまったといっていいだろう。

選挙と景気の踊り場脱却ではしゃぐ株式市場の盲点 2005-09-05

 欧米の株式相場は足踏みしているが、日本の株価は年初来高値を更新し、好調そのものである。8月の東証1部の月間売買代金、売買高はいずれも過去最高を更新、株式流通市場はバブル期を上回る活況を呈している。8月8日の衆議院解散・総選挙の決定と政府の景気の踊り場脱却表明を契機に活発になった外人の大量買いが(8月、約2兆円の買い越し)、日経平均12,000円突破の原動力となった。

人口、税制等改革の本丸を郵政民営化にすり替えた小泉首相の策略 2005-08-28

 郵政民営化を選挙の最大の争点に据えることで、国民の目をそちらにそらし、勝利をもくろむというのが小泉首相の戦略である。だが、国民の目は節穴ではなく、取り組まなければならない重要課題はほかにあることを知っている。問題のすり替えやレトリックだけでは、国民の信任を得ることはできないと思う。

幻想でしかない「官から民への資金の流れ」 2005-08-22

 銀行貸出(銀行勘定)の減少は続いており、7月も前年比2.4%減少した。民間企業の設備投資は4−6月期も前年比4.4%増とほぼ2年堅調に推移しているが、銀行貸出はいっこうに増加しない。増加しないばかりか、これまでの借入を返済しており、貸出は長期的にマイナスなのである。リストラ効果に業績の伸びが加わり、企業資金は潤沢であり、銀行から資金を借り入れなくても、企業は自前の資金で設備投資をすることができるからである。
 銀行は預金増と企業からの返済資金で有価証券を購入せざるを得ない状況に置かれている。1999年4月の銀行貸出(平残)は470.6兆円であったが、05年6月には393.8兆円へと約6年で76.8兆円減少した。一方、国債保有額は同期間32.7兆円から105.4兆円へと貸出減少額にほぼ見合う72.7兆円増加している。官から民に資金の流れを変えると声高々に郵政民営化を唱えているが、皮肉にも資金は「官から民へ」の流れを強めているのである。

ゼロ金利によるバブル相場、80年代の教訓活かされず
2005-08-15

 内閣府と日銀は衆議院解散翌日の9日発表した「月例経済報告」、「金融経済月報」でいずれも景気判断を上方修正、景気の踊り場脱却を表明した。政府・日銀の景気に対する強気な見方を額面通りに受け取った市場参加者は、買い姿勢を強め11日までの4日間で日経平均株価は500円弱の大幅な上げとなった。加えて、同日発表された『機械受注』が予想を上回ったことやバブル期以来の高水準に積み上がっていた信用の売りの買戻しも、株価の急騰に影響している。こうした株価急騰は、週初の郵政民営化法案の参議院否決に伴う衆議院解散・総選挙の不安を掻き消してしまった。

米不動産バブルの破裂と中国経済の混乱2005-07-25

 人民元の切り上げによって、主要通貨に対してドルは一時的に売られたが、対円でも週末には111円台に上昇し、ドル高傾向は続く見通しである。GDPに占める設備投資の比率が5割近い歪な中国経済よりも安定し底堅く推移している米国経済に魅力を感じるのは自然の成り行きである。米不動産バブルの破裂リスクは高いが、そのような事態が発生したとしても、FRBは政策金利の大幅引き下げを実施し、米国債券の利回りは急低下する可能性が高い。米株式市場は混乱するだろうが、米国債の上昇を見込んだ債券市場への資金流入は途絶えることはないだろう。

米株価は実体経済を反映しているか 2005-07-18

 米国経済の改善を示す経済指標の発表を受け、NYダウは3日続伸、S&P500やナスダック総合指数は7日連続の上昇となった。株式市場は物価の安定や生産、小売の伸びを評価しているようだが、経済指標の中身をみると、米国経済はそれほど順調に推移しているとはいえない。米国の株式は経済を過剰に評価しつつあるように思う。

世界景気の減速強まり債券相場の上昇続く 2005-07-11

 主要通貨に対してドルは強含みで推移するだろう。円ドル相場も年初の1ドル=102円から112円台まで円安ドル高が進行したが、日米の景況差からさらに円安ドル高が進むとみている。OECD発表の景気先行指数によると、日本の先行指数の落ち込み方が米国よりも大きくなっており、資金の流れは日本から米国へ向うはずだ。

ゼロ金利と量的緩和によるバブル相場
2005-07-06

 日経平均株価は出来高を伴いじり高で推移しているが、先週の商い集中度は高く、投機相場の様相を強めている。29日にはエス・サイエンス(5721)だけで5.3億株の出来高を記録し、1銘柄だけで東証1部の出来高の30%を占めた。トップテンでは45.0%に達し、個人、証券会社の自己を中心とした超短期売買が市場を席捲している様子が窺える。
 新規資金が株式市場に流入しているのではなく、一定の資金をもとに頻繁に売り買いが繰り返されている投機相場だ。04年度の個人株式保有比率(全国証券取引所上場会社、時価総額ベース)は20.3%であったが、03年度を0.2ポイント下回っており、個人は新規資金を株式市場に振り向けていないことがわかる。
 日銀のゼロ金利政策や株式手数料の引き下げが、個人を投機に走らせているが、投機は株式だけでなく、不動産にも広まっており、80年代後半のバブル相場に似てきた。「喉元過ぎれば暑さを忘れる」という諺通り、個人や金融機関はあれほど苦しめられた土地と株式にのめり込んでいる。人口減、高齢化、増税、社会保険負担増等により、日本の長期成長率はプラスを維持することも難しい状況に陥っている。長期成長率がマイナスもあり得るシナリオでは、株価収益率は10倍前後に低下しても不思議ではないし、土地の需要減によって、地価も下落していくだろう。80年代の利下げがバブル化を助長したのと同じことが、今またゼロ金利と量的緩和の長期化のもとで、不幸にも再現されようとしている。

米政策金利の打ち止めを見込んだ円安ドル高 2005-06-27

 過去2ヵ月ほどで500ドル以上上げていたことや原油価格の最高値更新に嫌気し、23、24日の2日でNYダウは300ドル弱下落した。資金は株式市場から債券、商品に向かい債券利回りは再び3%台に低下し、ドル高にもかかわらず金は440ドル台に上昇した。
 いまのところ米国の物価上昇圧力は緩やかだが、原油高が長期化することになれば、米国経済をじわじわ蝕むことになろう。早い段階に、そうした不安を摘み取るためにも、FRBは今週開催のFOMCで政策金利を0.25%引き上げ3.25%にするはずだ。政策金利の引き上げを見込んで、米短期金利は3.5%弱まで上昇し、長期金利との金利差は0.44%に縮小してきた。

米金融政策と景気のミスマッチが不動産をバブル化 2005-06-13

先週末の米債券相場は反落したが、その他主要国の債券利回りは低下し、資金は引き続き債券市場に流入している。特に、欧州の債券相場は堅調であり、英国やドイツの利回りの低下は過去3ヵ月で0.6%を超えた。1−3月期のEU GDP(名目)は前年を3.3%上回ったが、4−6月期以降、大幅にスローダウンする見通しであり、欧州債券相場はこうした経済成長率の低下を反映した上昇だと考えられる。
 4月のOECD景気先行指数は前月比0.3%減と3ヵ月連続のマイナスだ。ピークの1月から0.8%低下し、OECDの景気は緩やかな下降に向かいつつある。過去3ヵ月の落ち込みが大きいのは米国とドイツであり、1.5%、1.4%それぞれ下落した。日本も0.9%低下し、米国、ドイツ、日本の3カ国が世界景気の足を引っ張っている。

米長期期待成長率の低下による債券相場の上昇2005-06-05

 フランスとオランダが欧州連合憲法の批准を否決したことからユーロが売られた。欧州中央銀行の経済見通しによると、05年のEU実質GDPの伸び率は3月の1.6%から1.4%に下方修正され、EUの景気低迷からの脱出は容易でないこともユーロ離れに拍車を掛けている。ユーロの短期金利もじりじり低下しているが、特に、景気不振のドイツの長期金利は過去3ヵ月で0.5%以上の大幅な下げを記録した。5月のIfo景況感指数は92.9と4ヵ月連続の低下となり、ドイツの景気不振がEU全体に不安な影を投げかけている。

過去10年の日本の平均経済成長率は+0.3% 2005-05-29

 日本の株価は長期金利の低下で支えられている。今期の予想配当利回り(東証1部、加重平均)は1.25%と長期金利と同じであり、長期金利がさらに低下するならば、株式の優位性が高まるだろう。日本の経済成長率は明らかに低下しており、長期金利はいずれ1%を再び割り込むはずである。経済成長率の低下は当然、収益の伸び率を引き下げ、配当も現状を維持できなくなるであろう。

■ OECD景気先行指数の訴えるもの

2005-05-16

 米債券相場は堅調であり、先週末の利回りは4.12%と2月中旬以来の低い水準に低下した。投機資金の流入によって急騰していた商品市況は、信用不安の噂などに敏感に反応し、相場は急落した。米株式相場も冴えず、資金は債券市場に流れ込んでいる様子である。為替市場ではヘッジファンドなどによるドルの買い戻しによって、主要通貨に対してドルは上昇した。
 米債券利回りは経済成長率に比べて低く、利回りと実体経済にはギャップがあり、いずれ利回りは上昇するというシナリオが描かれていた。こうした予想に反して、債券利回りが低下したのは、GMやフォードの格下げだけでなく、米国経済に先行き不安感が増したことが影響しているように思う。

日米の株価ともに前年割れ 2005-05-09

 日経平均株価は11,000円割れまで急落したが、個人の買いで落ち着きを取り戻しつつある。市場参加者は下がったところでは買い、高くなると売るという姿勢を崩しておらず、すでに1年半以上にわたり、狭い範囲の往来相場となっている。ただ、生産や消費は冴えず、実体経済の側面から株価を支えにくくなっていることに加え、信用買い残の増加や外人の売り越し等が株価の上昇力を削いでいるように思う。
 4月末の日経平均株価は前年比6.4%減と2ヵ月連続の前年割れとなった。経験則から推し量れば、いったん前年割れになるとこの傾向は続き、90年代では少なくとも25%減程度まで落ち込まなければ反発しない傾向が読み取れる。株価の下落率は景気の下降速度と後退期間によって決まってくる。鉱工業生産の在庫率はITバブル期のように高い水準に上昇していないことから、生産も大幅な調整にはいたらず、景気もだらだらとした判然としない状態が続くような気がする。とはいえ、日経平均株価はいつまでも今の水準を保てるわけはなく、近いうちに10,000円の大台を割ることになろう。

日銀のジレンマ 2005-04-25

 米国の短期金利が上昇に向っているなかで、日本の政策金利はゼロに置かれたままである。定期預金もほとんど利息がつかず、ただ預けているだけである。利息がゼロに近いにもかかわらず、銀行預金は増加している。一方、貸出は減少し続けており、例えば、都銀の預金は255.4兆円(3月平残)だが、貸出は211.3兆円と預金が貸出を大幅に上回っているのである。短期貸出金利は1%台前半だが、それでもなぜ借り手が少ないのかは、消費者物価の前年割れが続き、デフレ経済から抜け出すシナリオを描くことができないからだ。経済成長率がゼロ近辺を行きつ戻りつしていることも、企業マインドを慎重にさせ、リスクテイクに踏み出すことを阻止している。

薬が切れつつある米国経済 2005-04-18

 NYダウは3日連続の大幅安となり、昨年11月上旬のレベルに落ち込んだ。米国を代表するGM、フォードの業績悪化とジャンク債寸前の格付け、さらにIBMの収益低迷などが売りの引き金となり、米国の主要株価指数はいずれも急落した。企業収益の伸び率が鈍化しているときに、値が保たれていたミスプライスが修正されているのである。FRBの実体経済を無視した超低金利政策によっても株価はファンダメンタルズ以上に引き上げられており、政策金利の引上げも株価を正常な姿に戻すであろう。株価の急低下を受けて、債券市場に資金は流入し、利回りは週で0.24%も低下した。原油価格は下げており、3月中旬には322まで上昇していたCRB先物指数は300を割った。
 3月の米小売売上高は前月比0.3%増加したが、自動車等を除けば+0.1%の低い伸びとなった。家具や電気製品は前月比減となり、ガソリン価格高によるガソリンスタンドの販売増が小売をプラスに保っている状況だ。小売売上高は前年比5.8%増だが、3ヵ月連続の低下となり、昨年12月から3.1ポイントも低下した。4月のミシガン大学消費者心理指数は88.7、前月比3.9ポイント悪化し、03年9月以来の低い数値となった。消費者心理が悪化するなかで、米貿易赤字は過去最高を更新しており、米国のフラストレーションは高まっている。

株価下落のシグナル、3月末の株価20ヵ月ぶりの前年割れ 2005-04-10

 日経平均株価は昨年末以降、11,000円台の狭い範囲内の動きにとどまっているが、3月末値は前年をやや下回った。月末ベースの前年割れは03年7月以来20ヵ月ぶりであり、過去のデータに基づくならば、いったん株価が前年水準を下回ると、前年割れは長期化するのが普通である。前回ITバブル後の調整では、00年2月に前年比伸び率のピークをつけてから、4ヵ月目に前年を下回ったが、減少率の最大は前年割れから15ヵ月経過した01年9月であった。今回、前年比増加率がピークに達したのは昨年4月(+50.2%)であり、ピークをつけてから11ヵ月後にマイナスに転じたことになる。従来、最大の伸びを記録してから半年前後にマイナスに転換するのが一般的だが、今回はプラス期間が長く、株価がそれだけ底堅く推移していたといえる。だが、3月末にマイナスに転じたことは、株式相場が下げの局面に入ったことを示唆したと読み取れる。減少率の期間と幅は景気次第であり、景気後退が深く長期化すれば、株式の下げも大きくなる一方、景気後退が浅く短期で拡大に向う観測が強まれば、株式相場の調整も深刻なものにはならないはずである。

実体経済と『日銀短観』の隔たり 2005-04-03

 3月調査の『日銀短観』によると、大企業製造業の業況判断(「良い」−「悪い」、%)は14%と12月調査から8ポイント低下した。先行きは14%と横ばいになっているが、05年度上期の業績は04年度下期の伸びを下回り、経常利益は前年割れの計画である。大企業非製造業の業況判断は11%と前期比横ばいであり、先行きも10%の見通しだ。だが、04年度下期の経常利益は前年比-6.9%と上期の+31.1%から減益に転じる計画であり、業況判断を収益との関連で考えるならば、業況判断に違和感を覚えるのは不思議ではない。
 05年上期の収益計画は前年割れを見込んでいるが、大企業の設備投資は05年度上期、前年比+9.6%と04年度下期をやや上回る計画である。財務省の『法人企業統計』によると、大企業全産業の設備投資は04年10-12月期、前年比13.4%増と高い伸びを維持している。ただ、『短観』のように04年度下期が上期を大幅に上回ることは考えにくい。全産業の設備投資は04年10-12月期、前年比+3.5%と7−9月期まで3四半期連続の2桁増から鈍化した(『法人企業統計』)。『短観』では全規模全産業ベースの設備投資は04年上期の+4.7%から下期には+8.8%に拡大する計画である。機械受注や資本財出荷が大幅に落ち込んでいるなかで、設備投資が拡大するというのはあまりにも現実離れした計画ではないだろうか。

■ 米債券利回り上昇トレンドへ 2005-03-29

 米連邦準備理事会は22日の連邦公開市場委員会でフェデラルファンズ・レート(FFレート)を0.25%引き上げ、年2.75%とした。これで昨年6月以降、7回連続の小幅引き上げとなり、01年9月以来の高い水準に上昇した。原油価格が高値圏で推移していることにより、物価水準もじわじわ上昇しつつあり、米連邦準備理事会は引き続き政策金利を引き上げる方針である。連邦公開市場委員会の声明文でも「ここ数ヵ月で物価の上昇圧力が強まり、企業が生産コストの増加を製品価格に転嫁する動きが広がってきた」と指摘し、場合によっては大幅な利上げも辞さない姿勢を滲ませている。

原油価格高騰の結末 2005-03-21

 原油価格の高騰は、最終製品の価格への転嫁を通して世界経済に影響を及ぼすことになろう。原油産出国は莫大な利益を獲得するが、原油を産出しない途上国の国際収支は急速に悪化し、借入等の返済が滞る事態も予想される。原油価格の最終製品への価格転嫁が行われるあいだ、先進国の経済も混乱や摩擦が生じるけれども、いったん物価水準が上がってしまえば経済は落ち着くであろう。国内の消費者物価は前年割れで推移しているように、過去のオイルショックとは比べものにならないくらい原油高騰の物価への影響は軽微にとどまる見通しである。

週刊マーケットレター(05年3月14日週号)

 商品市況高騰に端を発した米国市場の動揺 先週の日本と米国の市場は、トリプル高・安の正反対の動きをした。米短期金利の持続的な上昇が、長期金利を刺激し、利回りは昨年7月以来の高い水準まで上昇した。債券利回りの上昇が株式相場へも影響してきており、債券相場の動向に一層注意が注がれることになろう。
 需給関係の逼迫見通しによって、原油価格は過去最高値近辺に高止まっており、エネルギー多消費国である米国経済に、インフレ懸念が台頭している。商品市況の高騰は原油だけでなく金や穀物にも波及しており、商品市況の代表的指標であるCRBは過去3ヵ月で15.2%も上昇した。

一部の支出でプラスになった消費 2005-03-06

 消費関連指標も1月分は強めの指標がみられた。ただ中身を検討すると、必ずしも強気にはなれないのである。経済産業省の『商業販売統計』によると、1月の小売業販売額は前年比2.2%増加したが、そのうち8割は燃料小売業の寄与率となっており、大半の小売業の伸びは低迷しているのである。
 総務庁の『家計調査』によれば、1月の勤労者世帯の消費支出は前年比2.6%増と6ヵ月ぶりの高い伸びとなったが、その8割近くが自動車等購入や通信などで占められており、全体の消費が盛り上がっているわけではない。新車販売台数は2月も前年を1.2%下回り、2ヵ月連続のマイナスとなった。

ユーロの反発 2005-02-27

 原油価格が50ドル(WTI)台に乗せたことから、石油株が買われNYダウは昨年12月下旬の高値近辺まで上昇した。商品市況の代表指数であるCRB先物指数は先週末、24年ぶりの300台乗せとなったが、米債券相場は株式のように反応しなかった。23日に発表された2月の米消費者物価指数(食品・エネルギーを除く)が前月比+0.2%にとどまり、物価上昇が加速する内容でなかったことが、債券相場の安定に寄与しているようだ。

■ 事実を曲げた当局の景気判断 2005-02-20

 2月16日に昨年10-12月期のGDPが発表されたが、実質ベースで3四半期連続の前期割れとなり、日本経済は真正の景気後退に陥っていることがわかった。だが、竹中経済担当相は、「経済の動きは大局で見ると回復局面にある。やや長い踊り場になっている」と事実を歪曲した景気判断を示した。「踊り場」は平らなところを指すけれども、実質GDPは3四半期連続で減少しており、右肩下がりの「踊り場」ではない状態にある。なんという厚顔無恥な発言なのか。内閣府で3四半期連続減のGDP統計を発表しておきながら、統計を無視した判断を示すとは、何のために時間と金をかけ統計を作成しているのだろうか。景気は悪いのに、「踊り場」にあり心配することはないということは、国を誤った方向に導くことになる。悪ければ悪いような対策を取らねばならないが、放置しておけば、ますます悪いほうに傾いていくのは必定である。初期治療を疎かにすれば、病巣は拡大し、治療は困難を極めることになるのと同じことである。事実を事実とみない当局の陋習が、いつもの事ながら国民に犠牲を強いる形で跳ね返ってくるだろう。右肩下がりの状態を「踊り場」と判断した当局の責任は重い。

銀行支配になっても変らない証券会社の体質 2005-02-14

 円ドル相場は昨年12月半ば以来の円安となり、三井住友FGと大和証券の統合報道や機械受注の発表等によって、日経平均株価は1ヵ月ぶりに11,500円台を回復した。両者の統合が実現すれば、一部を除き大半の証券会社は銀行の軍門に降ることになる。預金・貸出が細るなかで、収益力を強化する方策として証券会社を囲い込んでいるが、特定の個人がネット取引に集中している状況で、証券ビジネスを拡大させることは容易ではない。いまのところ異常な出来高によって収益を維持できているが、風向きが逆風に転じたときには、証券会社の経営はすぐに行き詰まってしまうだろう。
 証券会社の営業担当者の知識・判断力は短期間で習得できるものではなく、長期の経験と広い知識を要求される。

米政策金利の引き上げは資金の流れを変える 2005-02-06

先週末発表の米雇用統計が、米国経済の緩やかな拡大を裏付けたことから、米株式・債券相場はいずれも大幅に上昇した。FRBは2月2、3日開催のFOMCでFFレートを0.25%引き上げ、年2.5%とした。FOMCの声明によると、「超低金利政策を慎重なペースで解除できる」と従来通りの判断を示し、これからも小幅な引き上げを続けていく方針のようである。
 実体経済のインフレ懸念は弱いが、不動産や株式市場は膨れており、資産インフレの懸念は強い。FFレートを6.5%から1%に引き下げ、超低金利の長期化が、資金の流れを預金から実物資産へと変えた。超低金利の解除は、資金の流れを実物資産から預金に変えることになり、実物資産は萎むことになろう。

外需不振が鉱工業生産に影響 2005-01-30

外需頼みの鉱工業生産は、輸出数量の減少の影響が色濃くでている。12月の貿易統計によると、輸出数量指数は前年比2.6%増と6月の17.9%増を境に伸びは大幅に鈍化してきた。輸出数量が伸びれば鉱工業生産も伸び、その逆もまた真なりという関係が認められることから、このまま輸出数量指数の伸びが沈んでいくことになれば、やや遅れて鉱工業生産も下降を強めるはずだ。

■ 株式のバブル化と個人の市場離れを危惧 2005-01-23

 日経平均株価の上値は重く狭い範囲の往来相場が続いているが、商いは依然衰えず、売買高は15億株(東証1部)程度を保っている。個人のネット取引による超短期売買が売買高を異常に膨らませており、売買高から判断すれば今の株式市場は明らかにバブルと言える。低取引コストを背景に、経済実態を無視し、僅かの材料を手掛かりに売買を繰り返し、日銭を稼ごうとしている個人投資家が著しく増加したことを売買活況の要因のひとつに挙げることができる。ゼロ金利に我慢できない個人投資家が目先の金ほしさに株式市場に参入しており、いまでは東証1部の売買高の5割前後、2部では8割超を個人が占めている。売買代金ベースでも東証1部の約3割、2部では8割強を個人が占め、外人に次ぐ影響力を持っているのである。

米政策金利引上げにより円高ドル安基調持続 2005-01-17

 先週、円ドル相場は一時101円台を付け、再び円高ドル安の様相をみせてきた。昨年12月の米小売売上高や鉱工業生産指数の伸びは予想を上回ったが、11月の貿易赤字が過去最大になり、12月の生産者物価指数が前月比で低下したことなどから、ドル売り、円買いの勢いが強まった。昨年12月の外人の日本株買越額が9,492億円に及び、1月第1週も1,983億円と大幅な資金流入が続いていることも円相場を押し上げている。

■ OECD景気先行指数から推測した05年の株式相場 2005-01-09

 11月のOECD景気先行指数は、前月比+0.2%と4ヵ月ぶりに上昇し、03年3月を底とした回復過程で最高を付けた。回復当初は力強い上昇を見せていたが、04年2月以降はほぼ横ばいに近い動きを示しており、世界景気はやっと拡大を維持できている状態にある。

■ 日本株保有の魅力失せる 2004-12-19

 欧米の株高や長期金利の低下等によって、日本の株価も値を保っていると言われているが、実体経済の悪化には逆らえず、下値を探る展開となろう。欧米の株式が堅調になれば、日本株も底堅く推移するというコメントをよくみかけるが、過去の関係をみると相関関係の強いときもあるし、逆相関の期間も認められる。90年代以降のトレンドはほぼ逆に動いており、欧米の株高が直ちに日本の株高に結びつくというのはあまりにも単純だ。米国の収益増加率はピークアウトしており、米株価は実体経済からずれてきているのではないか

■ 設備投資の冷え込みによる景気悪化のリスク高まる 2004-12-13

バブル崩壊後の経済成長率としては、消費税税率の引き上げによる駆け込み需要で伸びた97年1−3月期以来となった今年1−3月期の名目成長率(前年比3.2%)は、その後、1%台前半に低下した。名目前期比では4−6月期マイナス0.6%、7−9月期横ばいと冴えず、景気は後退といえる状況にある。

■ 国内景気の減速ピッチ速まる 2004-12-06

 国内の景気減速は強まっているが、今後、さらに厳しい状況に陥るであろう。株価は11,000円台に戻ったが、景気減速下での買いは限定的であり、実体経済からズレた動きは長続きするはずがない。景気循環に則るならば資産運用は株式から債券に移すのが定石といえる。機関投資家を始めとする多くの資産運用者は実体経済をろくに見ることなく、資産運用に取り組むという愚を犯している。実体経済を読み解く訓練を怠ったことによる運用損は計り知れない。

週刊マーケットレター 2004

■ 日本株保有の魅力失せる 2004-12-19

 欧米の株高や長期金利の低下等によって、日本の株価も値を保っていると言われているが、実体経済の悪化には逆らえず、下値を探る展開となろう。欧米の株式が堅調になれば、日本株も底堅く推移するというコメントをよくみかけるが、過去の関係をみると相関関係の強いときもあるし、逆相関の期間も認められる。90年代以降のトレンドはほぼ逆に動いており、欧米の株高が直ちに日本の株高に結びつくというのはあまりにも単純だ。米国の収益増加率はピークアウトしており、米株価は実体経済からずれてきているのではないか

■ 設備投資の冷え込みによる景気悪化のリスク高まる 2004-12-13

バブル崩壊後の経済成長率としては、消費税税率の引き上げによる駆け込み需要で伸びた97年1−3月期以来となった今年1−3月期の名目成長率(前年比3.2%)は、その後、1%台前半に低下した。名目前期比では4−6月期マイナス0.6%、7−9月期横ばいと冴えず、景気は後退といえる状況にある。

■ 国内景気の減速ピッチ速まる 2004-12-06

 国内の景気減速は強まっているが、今後、さらに厳しい状況に陥るであろう。株価は11,000円台に戻ったが、景気減速下での買いは限定的であり、実体経済からズレた動きは長続きするはずがない。景気循環に則るならば資産運用は株式から債券に移すのが定石といえる。機関投資家を始めとする多くの資産運用者は実体経済をろくに見ることなく、資産運用に取り組むという愚を犯している。実体経済を読み解く訓練を怠ったことによる運用損は計り知れない。

■ バブルが癒えぬまにまたバブルに染まる日本の株式市場 2004-10-25

 日本のハイテク企業の業績は米国に連動しているため、米国のハイテク企業の不振は、即日本の不振となり、株価にも反映されることになる。今週、ハイテク企業の業績発表が集中するが、決して株価を回復させるような内容にはならないであろう。むしろ、回転売買等により、吊り上っている投機相場の矛盾が噴出しそうである。
 東証1部の売買高は10億株を上回り、売買代金は1兆円前後を維持している。信用買い残はピークに比べれば5,400億円減少したが、依然2.5兆円もが売り圧力として現存している。個人参加者が短期売買を繰り返していることが、売買高が高い水準を維持できている要因と考えられるが、実体経済を無視した思惑だけの材料株中心の商いでは、早晩、行き詰まるのは目に見えている。
 売買手数料の低下が、個人投資家を株式市場に呼び込むことに成功したようにいわれているが、実際、相場は超短期売買中心になり、日本は米国以上に投機性の強い市場となった。投機が行き過ぎることになれば、どのような結末になるか、80年代後半のバブルで懲りたはずである。そのバブルの痛手から完全に立ち直らないうちに、再びバブルに染まるとは、日本の株式市場はもはや救いようがないとしかいいようがない。
 流動性が増せば増すほど投機性が強まり、相場は不安定になることが明らであるにもかかわらず、流動性を高める政策を推進した市場関係者の責任は重い。90年代以降、世界経済史に類を見ないバブル崩壊に見舞われたが、それに対する考察、反省がないままに、バブルを生み出す政策が取られてしまった。
 当局は直接金融に肩入れするために手数料の自由化を導入し、証券会社は手数料欲しさに個人を回転売買に走らせている。株式相場が右肩上がりのときは、首尾よくいくが、一旦相場が下降しだすと、すべては悪い方向に進むことになる。相場の厳しい下落は参加者を排除するだけでなく、期待収益率を低下させ、設備投資マインドに悪影響する。景気は下振れし、そのことが株式相場を一層冷やすことになるのである。日本の株式市場は、超短期売買という極めて脆弱な仕組みの上に成り立っていることを忘れてはならない。
来週は休刊いたします。

■ 不安募る米雇用統計 2004-10-11

 市場関係者だけでなく選挙関係者も注目していた9月の米非農業部門雇用者数は前月比9.6万増と予想や前月の数値を下回り、米国の雇用改善が弱まってきていることを裏付けた。今年3月には35.3万人増加したが、その後増加ペースは落ちてきており、米国経済の勢いは弱まりつつある。過去数ヵ月、労働時間は一定だし、時間当りの賃金も微増に押さえられており、原油価格は53ドル台まで急騰したが、インフレが心配されるような情勢ではない。
 個人消費支出は8月、前年比5.1%増と03年7月以来の低い伸びとなり、米国経済のエンジンである消費の減速が、企業の雇用政策に影響を及ぼす段階に差し掛かってきた。資本財受注の前年比伸び率も緩やかに低下しており、米企業は設備投資に慎重になりつつある様子が窺える。ITバブル期でさえも資本財受注の伸びが10%を超えたのは2ヵ月に過ぎなかったことから判断しても、今回の拡大がいかに強いものであったかがわかる。だが、いつのときも設備投資は行き過ぎる傾向があり、好調であればあるほど落ち込みも大きくなるものだ。米資本財受注の伸びはピークを付けた可能性が高く、資本財受注の先行性から推し量れば雇用の悪化する時期は近いのではないか。
 9月のISM製造業景況指数は58.5と2ヵ月連続で低下し、今年1月に付けたピークから5.1ポイント低下した。水準自体は50を超えており、製造業の拡大を示しているが、雇用統計に先行する傾向があり、ISM製造業景況指数のピークからの低下は、その後に雇用の伸びが反落に向うことを示唆しているようだ。

■ 投機支配の脆い相場 2004-09-13

 経済実態など眼中にないその日暮らしの相場が続いており、日本の株式市場は空前のマネーゲームの様相を呈している。個人投資家や証券会社が飛びつきそうな低位の危ない銘柄に商いは集中しているため、10億株を割り込んでいた出来高は9月3日以降、ほぼ15億株を上回ってきており、低下していた売買回転率は上昇しつつある。投機相場は投機的確信が揺らぐところまで持ち堪えるが、いつ投機心理に変化が生じるか予測はできず、リスクの高い不安定な相場といえるだろう。
 市場参加者は景気に対して不安を感じ始めていることも、投機相場に拍車を掛けているのだろう。横並び意識の強い日本人の心理からすれば、市場全体に景気懸念が一気に広がることも予想され、そうなれば株価は急落し痛い目に合うからだ。そもそも、遠い将来の利益を得るために株式を買う人はいないも同然で、大半は今日中にも利益を得ようとしているのである。だが、短期売買で儲かるのであれば、証券会社は顧客などいらないことになる。自己売買で稼げばよいのだから。これが通用するのは右肩上がりのときだけであり、相場が横ばいないしは下向きになると、個人同様、自己もお手上げになるのである。すでに相場は下降していることから、短期売買で利益を上げることは至難の業である。4月末の高値で掴んだ信用買いの期日も近づいてきた。傷口が大きくならないうちに、手掛けている信用取引を手仕舞い、戦略を練り直すことが必要である。目先の利益だけを追うという超短期売買に耽っている場合ではないのではないか。

■ ITバブルの再来 2004-09-06

 米非農業部門雇用者増加数(前月比)は3月を最高に減少していたが、先週末発表の8月分は前月比144,000人増と7月の73,000人増を上回った。だが、8月の主要小売業売上高が低迷するなど、個人消費は減速に向っており、米国経済が再び力強さを回復することはないであろう。米国の新車販売台数が8月まで3ヵ月連続の前年割れになったほか、ハイテク企業の代表であるインテルが7−9月期売上高を下方修正するなど、ハイテク企業の業績にも暗雲が垂れ込めてきており、米国の株価は下値を探る展開が予想される。一方、米国債券は雇用統計により売られたが、米国経済の減速傾向が強まるにつれて買われるはずだ。1−3月期までの強い経済統計の発表時期でさえドルの戻りは一時的であったことから推測すれば、円ドル相場は年末にかけて、円高ドル安に向うのではないか。日本の株式市場も米国経済・株式の影響を受けざるを得ず、4月下旬をピークとした下げが、どの程度まで続くかに関心は向っている。
 前回のITバブル破裂で大打撃を受けた日本のハイテク企業がおなじ轍を踏む様相を帯びてきている。ブームの末期であるにもかかわらず巨額の設備投資に邁進して、身動きが取れなくなる事態が迫ってきているようだ。企業は、在庫管理や意思決定の簡素化などを打ち出して設備投資の失敗を繰り返さないというが、所詮人間のやること、大航海時代と同じ不確実性から現在も逃れることはできないのである。
 企業内部にいても分からないことが、ましてや、外部のアナリストなどわかりようがない。アナリストの企業分析などないよりはマシの程度であり、彼らが書いたレポートをもとに株式の売買行為をするなどもってのほかだ。ITバブルを膨らませた原因のひとつにアナリストの思慮に欠けたレポートの存在を忘れてはいけない。

■ 原油価格の急反落間近 2004-08-22

 原油先物市場には投機資金が押し寄せ原油価格は最高値を更新した。買うから上がり上がるから買うといった経済実態を無視した投機相場がいつまでも続くことはなく早晩急激な下げ相場がくるであろう。株式相場以上に、商品市況は山高ければ、谷ふかしとなるのが通例であり、相場に深入りした投機家は破綻するはずだ。
 原油のような一次産品価格は需給の微妙な関係で価格が大きく変動することがあるが、価格が上がれば、需要は減少し供給は増大することになり、いずれ実体経済に相応しい水準に落ち着くことになろう。中国等の予想を上回る需要増が発生した半面、イラク、ロシア等の政治に根差した供給不安が原油価格に火をつけた。だが、米国に引っ張られて回復していた世界経済は、米国経済の減速とともに拡大過程から下降過程へと転換しつつある。
 OECDの景気先行指数は今年2月以降、ほぼ横ばいとなっており、景気の勢いは衰えてきている。前年比伸び率は3月をピークに3ヵ月連続で低下しており、景気転換のシグナルは鮮明にあらわれている。3月のピークでは前年比7.3%増とITバブル期のピークを上回り、87年9月以来の高い伸びであったことも、景気後退が深くて大きくなりそうな予測を可能にさせる。
 90年代後半以降のOECD景気先行指数(前年比)とWTI価格を比べてみると、景気先行指数がピークをつけた後にWTIもピークアウトしている傾向がでており、実体経済が原油価格を決定づけていることが明らかだ。98年の底値11ドル台から50ドル弱と4倍以上に急騰した原油価格が、世界景気後退により激しい下落に直面するのは時間の問題である。

■ ピークアウトした日本の経済成長率2004-08-16

 日本の4−6月期GDP(国内総生産)はデフレーター(物価指数)が引き続き大幅に下落したため、実質では前年比4.4%増加した。伸び率は前期より1.5ポイント低下したが、物価の下落による嵩上げにより、高成長が続いていることになる。これで8四半期連続のプラスとなり、ITバブル期の7四半期を超えた。
 だが、実態をあらわす名目GDPは前年比1.8%増と前期の伸びを1.4ポイント下回り、プラス期間も3四半期にとどまっている。今年1−3月期が3.2%と97年1−3月期以来の高い伸びとなったことから、05年1−3月期は前年割れになる見通しであり、前年比プラスは5四半期で途切れることになりそうだ。消費支出は1.8%増と前期並みに伸びたが、民間企業設備は4.0%と前期の半分以下に低下した。外需は28.8%増に鈍化したものの成長率を0.5ポイント引き上げた半面、公共事業の削減から公的需要は3.0%減少し、民需と外需がプラス成長を支えている。
 経済成長率は04年1−3月期がピークになり低下していくことになろう。米国経済の減速がこれまで成長を牽引していた外需を弱めるほか、すでに5四半期連続で拡大している民間設備投資も、ほぼ一巡したもようであり、伸びは鈍化していくはずだ。4−6月期の雇用者報酬は前年比-0.9%とマイナス幅は縮小したが、4四半期連続の前年割れとなり、消費が本格的に回復する状況ではない。民間設備投資と外需により回復してきた今回の景気は、年末にかけて下降する可能性が濃厚になってきた。

■ 7月の米雇用統計の衝撃

 週末発表の7月の米雇用統計は予想を大幅に下回り、米国の景気拡大ペースが明らかに
鈍ってきていることを示した。景気拡大ペースの鈍化がはっきりしたことから、株式を売
り、債券を買う動きが活発となり、NYダウは年初来安値を更新、債券相場は急騰した。原
油価格は過去最高を更新するなど、商品市況も高い水準にあるが、米国景気のスローダウ
ンを反映し、早晩、弱含むであろう。対円でも強含みで推移していたドルも雇用統計によ
って、全面安の展開となっており、巨額の貿易黒字を抱える円に対してはさらに円高ドル
安が進行する見通しである。

■ 米消費ピークアウトに根差す世界株安 2004-07-25

 週末、NYダウは2ヵ月ぶりの1万ドル割れとなり、ナスダック総合は年初来安値を更新した。ナスダック総合は年初来高値(1月26日)から14.1%下げた。日経平均株価は7月の頭まで回復していたが、12,000円の壁は厚く跳ね返され、再び下降しつつある。日米ともに、実体経済がピークを超えたにもかかわらず、政府の「堅調に回復」などの口車に乗せられて、買い進めてきた付けが回ってきた。
信用買い残は3週連続で増加し、今回の信用買い残の増加過程でほぼピークの水準にある。株価が下がり続けることになれば、信用買いの損失は拡大し、持ちこたえることができなくなるはずだ。年末にかけて、景気の減速が顕著になると考えられるが、そうなって始めて、世間は景気悪化に目を向けることになり、処分売りが加速することになりそうである。景気の甘い判断を信用し、投機に走った結末がどのようになったか、90年代の暴落を今一度思い起こす必要があるように思う。
 グリーンスパンFRB議長は20日の議会証言で「景気は自律的な拡大局面に入った」と景気への自信を深めているが、株価は下げ足を速めている。「個人消費は底堅さを保つだろう」との発言も説得力に欠ける。6月の米小売売上高は前年比6.3%増と前月より伸び率は2.9ポイント低下した。電気製品の売上高は8.5%増と2月の13.3%増から大幅に低下しており、消費の勢いは明らかに弱くなっている。米国経済の約7割を占める消費の伸びが鈍化すれば、設備投資マインドにも影響することは間違いなく、企業収益も悪化するだろう。このような米実体経済の減速見通しが、市場参加者の不安を掻き立て米株価を押し下げ、さらには日本株・欧州株など世界的な株安の引き金となっている。米国の消費失速を食い止める要因は見当たらず、米株価の下げ相場は続くであろう。。

■ 米株式相場、経済成長鈍化を織り込む動きへ

 米国経済は主力エンジンである消費によって拡大してきたが、すでに消費の拡大ペースは落ちてきており、米国経済はスローダウンの途上にあるという見方が広まってきたことが、米国株式不調の最大の理由であるように思う。
 米商務省によると、5月の個人消費支出は前年比6.8%増と高い伸びを保っているが、2月の7.4%増を最高に鈍化しており、これを再び抜くようなことにはならないであろう。6月の小売売上高は自動車関連の不振などから前月比1.1%減少した。6月の個人消費の伸びも低下する可能性が高く、個人消費の伸び率鈍化がやや遅れて設備稼働率の低下を促すはずである。6月の設備稼働率は77.2%、前月比0.4ポイント低下し、昨年6月を底とした設備稼働率の回復も最終段階に差し掛かったと判断できる。

■ 株式相場、『短観』が戻りの限界を示す2004-07-05

 『日銀短観』(6月調査)の業況判断が予想を上回る内容を示したが、期待以上に買われていたことから株式市場の反応は鈍く、上値の重さが確認される結果となった。発表翌日には売買高が2月26日以来の10億株割れとなり、投機熱が冷めてきていることが窺われる。週初発表の5月の商業販売統計が6ヵ月ぶりに前年を割れたことや5月の鉱工業生産指数が予想を大幅に下回ったことなどを無視した相場の行き過ぎに、『日銀短観』発表による材料出尽くし感が加わり、投資家心理を不安にさせた。実体経済がピーク近辺にあることから、日経平均株価は4月26日の年初来高値(12163円)を抜くことはできず、下降していくことになろう。
 一方、債券相場は売られすぎの反動から上昇し、利回りは1.7%台に低下した。6月の米雇用統計が予想を下回り、米国経済の拡大テンポが緩やかになることを示唆したことなども、日本の債券相場を支えよう。6月30日、約4年ぶりにFRBは政策金利であるフェデラルファンズ・レートを0.25%引き上げ年1.25%としたが、非農業部門雇用者増加数の3ヵ月連続縮小や原油価格の下落によって、金利引き上げペースはより緩やかになり、対円でもドルは弱含むであろう。

■ 米利上げは1ドル=100円の突破もあり得る円高の始まり2004-06-28

 5月の日本の貿易黒字(季節調整値)は1.28兆円、99年1月以来の高い水準に拡大した。他方、米国の赤字額は4月、483億ドルと過去最高を5ヵ月連続で更新した。4月のような赤字が続くことになれば、赤字は年6,000億ドルに近くに達することになる。米国の輸入は多くがドルで行われおり、米貿易収支に為替レートの調整メカニズムは効き難い。
 米国経済が拡大を続けているときは、世界からモノを購入し、米国の不足を賄う必要があり、赤字拡大を免れない。5月の米資本財受注は前月比3.0%減と2ヵ月連続のマイナスである。前年比でも10.5%と伸び悩んでおり、米国景気の拡大ペースは鈍ってきている。資本財受注は米貿易赤字の拡大が徐々に緩やかになることを示唆している。
 米貿易赤字は超低金利と相俟って、過去にないようなドル余剰が発生し、ドルの残高は増加しつつある。世界のドル残高の増大は、円を始めユーロなどに対してもドルが減価していく主因と考えられる。米利上げ観測で一時的にドルは上昇したが、毎月1兆円前後の日本の貿易黒字がドル高に向っていた流れを逆転させた。余剰ドルを他の通貨に配分するにはユーロ、円の買い増しは不可避なのであろう。余剰ドルの増加が円高やユーロ高をもたらすのである。

 米国の政策金利(FFレート)と円ドル相場のチャートをみると、政策金利が引き上げられる過程で、円高ドル安が急速に進んでいることがわかる。政策金利のピークと円高ドル安のピークがほぼ一致している。 
 なぜか。利上げの過程では、米債券相場は下落するので米債の売りが増加する。債券利回りのピークは政策金利にやや先行し、米債券相場が底入れした時点で米債の購入が膨らみ、ドル高に切り換わるのである。こうした米政策金利の変更時と円ドル相場の関係から推測すると、今後、円高ドル安に向う可能性が高い。今週、実施される米利上げは、向こう1年以上継続される見通しだ。その間、円高ドル安が続けば、1ドル=100円の大台を突破することも想定しておいたほうがよさそうである。

■ 米国の実体経済と政策金利  債券相場は4週連続の下落となり、利回りは一時1.94%まで跳ね上がった。債券利回り の上昇により、株式配当利回りとの格差が広がり、株式が割高になったことに、韓国、台
湾の株式市場でハイテク株が急落したことが加わり、日経平均株価の上値は重く、11, 000円台の相場が続いている。値動きが乏しいことから、3兆円弱の信用買い残がしこり
となり、売買高は10〜12億株程度に縮小してきた

 堅調な経済指標の発表にもかかわらず、月末にFOMCを控えていることから、米国株式も 動きが鈍い。騒がれていた原油価格は落ち着きを取り戻しつつあり、物価上昇懸念はピー
クを超えたようだ。1−3月期の米経常赤字が過去最高を更新したことを材料に、投機資 金は為替市場に流入し、ドルは売られ、対円でも108円台と5月上旬以来の円高ドル安と
なった

 「現時点で深刻なインフレ懸念はない」(グリーンスパンFRB議長、6月15日)との発 言により、米債券市場は落ち着きを取り戻した。月末の利上げ幅は予想通りの0.25%にと
どまる見通しである

 5月の米消費者物価指数は前月比+0.6%の大幅上昇となったが、食品・エネルギーを除 くコア指数は0.2%増と伸び率は2ヵ月連続して低下するなど、インフレ懸念が高じる状況
ではない。コア指数の前年比伸び率は+1.7%と前月を0.1ポイント下回り、依然、歴史的な 低水準にある

 米設備稼働率は5月、77.8%と前月比0.7ポイントの上昇となり、01年5月以来の高い稼 働率となった。ただ、ウエイトの高い中間財が80.6%、前月比1.1ポイント上昇した半面、
最終製品は0.5ポイント上昇の73.6%にとどまっている。半導体等は80%を超えたが、通信 関連が50%強で低迷しているため、ハイテク製品の稼働率は71.0%と低く、物価安定に寄与
していると考えられる。米個人消費支出の前年比伸び率は4月まで2ヵ月連続で低下して おり、需要の側面からも物価上昇圧力は和らいでいる

 02年の年初以降、個人消費と鉱工業生産は立ち直り拡大してきたが、消費者物価指数 (コア)の前年比伸び率は昨年まで下がり続けた。原油価格の急騰により、2月以降上昇
しているが、個人消費や鉱工業生産の伸びはピークを超えたと予想され、需給関係による 物価上昇圧力は徐々に弱まるであろう

 消費者物価指数(コア)は5月、前年比+1.7%とフェデラルファンズ・レートを0.7%上 回り、実質金利はマイナスだ。景気拡大のほかにこうしたマイナス金利を解消するために、
FRBは政策金利を引き上げる。当面、FFレートは消費者物価指数(コア)の伸びに見合う 水準まで引き上げられるであろう。消費者物価指数(コア)の伸びが上昇すれば、それに
伴いFFレートの目標も高くなる。さらに、設備稼働率の上昇や民間設備投資の拡大などが みられれば、引き上げ幅は大きくなるはずだ。9月21日開催までの3回のFOMCでそれぞれ
0.25%の利上げが実施される見通しである。その後は実体経済の動向を睨みながらの政策 金利の変更ということになろう。

4月のOECD景気先行指数、17年ぶりの上昇で世界景気はピークか 2004-06-15

 債券相場は急落し、先週末の利回りは1.78%と00年11月以来の水準に上昇した。利回りは3週連続の上昇となり、その間の上げ幅は33ベイシスポイントに達した。週初、株価が今年最大の上げ幅をみせたほか、強目の経済指標(4月の『機械受注』や5月の『企業物価指数』)の発表などが債券関係者の心理を弱気にさせた。
 5月の国内企業物価指数は前年比+1.1%と6年7ヵ月ぶりの1%超となった。鉄鋼、非鉄の上昇率が3ヵ月連続の2桁増となったほか、原油高により石油・石炭製品などの素材製品が前年を上回った。ただ、主力の電気機械、輸送用機械は引き続きマイナスとなっており、全体の伸びを押さえている。今後、素材価格の上昇が電気機械、輸送用機械に波及する可能性はあるが、影響は限定的だと思う。原油価格も落ち着きを見せ始めており、世界の景気循環からも原油がさらに上昇することはないはずだ。鉄鋼、非鉄等の素材価格もこれまでの行き過ぎが是正され、国内企業物価も一時的な上昇にとどまる見通しである。
 不動産やリースのマイナス幅が大きく、4月の企業向けサービス価格指数は前年比0.6%減と前月と同じ下落率となった。経済に占めるサービス部門の比率が高いことから、素材価格の上昇だけで、物価全体が著しく値上がりすることはないであろう。
 世界景気と商品市況の代表的な指標であるCRB先物指数を比較してみると、オイルショックのように、商品市況の急騰が景気を失速させるケースもあったが、通常、商品市況は景気に遅行する傾向がみられる。
 4月のOECD景気先行指数は前年比7.4%増と前月と同じ伸びとなり、頭打ち感が強まった。これほどの伸びは90年代ではみられず、1987年8月まで遡らなければならない。景気先行指数の急激な伸びは、短期的に、世界景気はピークに達したと判断してよいのだと思う。世界経済の牽引役である米国景気の勢いに鈍化の兆しがある。OECD発表の米景気先行指数は昨年3月を底に、過去にないような急激な上昇を続けてきたが、6ヵ月比年率は昨年12月をピークに4ヵ月連続で低下しており、今後、経済成長率は減速していくと予想できるからだ。
 商品市況の遅効性から判断すれば、CRB先物指数はしばらく高止まり、国内企業物価に上昇圧力をかけるかもしれないが、長期金利は世界景気の減速に反応し、1%台前半の水準に落ち着くであろう。

設備投資、04年1−3月期がピークに 2004-06-07

 財務省の『法人企業統計』によると、今年1−3月期の全産業の売上高は前年比2.4%増加した。4四半期連続のプラスだが、伸び率は前期より0.7ポイント低下した。販管費比率は前年と同じだったが、売上高原価率が0.6ポイント改善したため、売上高営業利益率は4.0%と0.6ポイント上昇し、営業利益は20.8%の増加となった。営業利益は01年10-12月期の31.1%減を底に回復過程にある。ITバブル期は底から6四半期目に最高となったことなどから予測すれば、昨年10-12月期(22.0%)がピークになる可能性が強い。
 収益に遅行する設備投資は10.2%増とITバブル期を上回り、消費税率引き上げ前の駆け込み需要で急増した97年1−3月期以来7年ぶりの高い伸びとなった。底からの拡大期間は8四半期目となり、前回ピークを付けるまでに要した期間が経過し、設備投資はおそらく1−3月期がピークになるはずだ。設備投資を企業規模別にみると、中小企業(資本金1億円未満)は+25.1%と急増しているのに対して、大企業(10億円以上)は+3.6%と低調なのである。中堅企業(1億円以上10億円未満)も16.8%増加しており、大企業の慎重な投資マインドが浮き彫りになる。
 業績の拡大によって、人件費は前年比2.3%増と2四半期連続のプラスとなり、売上高の伸びとほぼ同じになった。昨年10-12月期までの5四半期、売上が人件費の伸びを上回り、収益の拡大に寄与していたが、人件費の増加傾向が続けば収益を圧迫することになろう。人員は+3.2%と4四半期連続の増加となったが、1人当りの人件費は前年を0.9%下回っている。大企業と中堅企業は1.2%、1.5%それぞれプラスだが、中小企業は1.7%減だ。中小企業の人員は全体の66%を占めており、消費へのインパクトは大きい。長期的に1人当りの人件費をみると、04年1−3月期までの14年間で中小企業は8.3%、中堅は11.9%、大企業は15.9%の増加となっており、企業規模による人件費格差は拡大している。1人当りの人件費の格差拡大が消費の回復を遅らしているだけでなく、社会的ストレスの増大ともなり、経済の安定性を損なう要因になっているように見受けられる。

生産と消費の拡大は持続するか 2004-05-31

 ドルは主要通貨に対して下落したが、米長期金利は落ち着きをみせ、NYダウは上昇した。原油価格の高止まりや混迷するイラク情勢に加え、5月の消費者マインドが予想を下回ったことなどが為替相場に影響したようだ。4月の米耐久財新規受注が前月急増の反動から減少し、米個人消費支出も前年比伸び率が低下しており、米国経済の勢いは鈍化しつつある。
 4月の『鉱工業生産指数』や『家計調査』など日本では強い指標が相次ぎ、対ドルで円は上昇、債券は売られた。株式は薄商いのなか3日続伸となり、11,300円台まで回復した。

04年1−3月の実質GDP、13年ぶりの高成長 2004-05-24

 18日、内閣府より1−3月期のGDP(国内総生産)速報が発表された。物価下落により嵩上げされた実質GDPは前年比5.4%と7四半期連続のプラスとなり、91年1−3月期(6.3%)以来13年ぶりの高成長となった。公的固定資本形成と公的在庫品を除けば、いずれも前年を上回り、日本経済は順調に拡大しているように見受けられる。民間最終消費支出は3.5%増加し、消費税率が引き上げられる直前の97年1−3月期(4.2%)以来の高い伸びとなった。民間最終消費支出のプラス成長は4年を超え、実質ベースでは消費不況といえない拡大を続けていることになる。民間企業設備は前期と同じ14.7%増と好調であり、実質GDP成長率の半分は民間企業設備が寄与した。90年以降、民間企業設備の2桁増は2四半期連続が最高であり、3四半期以上は一度もない。前回ITバブルのときは、伸び率が最低をつけてから、8四半期目に最大となったが、今回の拡大も8四半期目である昨年10-12月期でピークを付けたと考えられ、設備投資がさらに拡大する余地はさほど残されてはいない。

株安は景気・業績不安を反映 2004-05-16

 米金利上昇懸念から株価は急落、週末比、日経平均株価は3週連続の値下がりとなった。年初来高値を付けてから約3週間で1,300円を超す下げである。4月の最終週以降、外人は3週連続で売り越した模様であり、米政策金利の引き上げ機運は、外人を除き買い手不在の日本の株式市場に衝撃を与えている。外人の日本株売りが為替相場に影響し、円ドル相場は6週連続の円安ドル高となり、1ドル=114円台に下落した。外人は株売りに伴う円安で2重のマイナスを被っており、ドルベースの株価はピーク比では20%近い値下がりとなった。長期金利が上昇した米国でもNYダウとナスダック総合は3週連続安と冴えず、外人の日本株投資のリスク許容度は低下しつつある。昨年度、日本株を14.1兆円も買い越した唯一の買い手である外人が売り越しに変われば、たちまち日本株は値下がりするという市場の脆弱性が露呈した。
 株価値下がりのきっかけは、米利上げ不安だが、景気および企業業績が曲がり角に差し掛かっていることや、約1年の値上がりによって株価が将来の企業業績までを織り込んでしまったことなどが株安の基本的な背景なのである。最近の値下がりによって、予想株価収益率は20倍台前半まで低下してきたが、S&P500の18倍をはじめ海外の主要な株価収益率は日本を下回っている。日本企業の業績は今期も増益が見込まれているが、伸び率は大幅に鈍化すると予想されており、株価を引き上げるには力不足である。
 内閣府の機械受注統計によると、3月の受注額合計は前年比-1.4%と2ヵ月ぶりのマイナスとなった。外需や官公需はプラスだったが、民需が2桁のマイナスになったからだ。外需も昨年12月までは5割を超す月もあったが、今年1月以降は1桁増に鈍化しており、外需も変調を来たしている。船舶・電力を除く民需は+0.2%と弱く、昨年10月の23.1%増をピークに下り坂にあることは間違いない。民需の約6割を占める非製造業(船舶・電力を除く)は-7.1%と2ヵ月ぶりのマイナスだ。1−3月期の四半期ベースでも2四半期ぶりの前年割れとなり、今回の回復過程でも非製造業のプラスは2四半期連続にとどまり、非製造業の回復力の弱さが目立つ。
 機械受注がピークを超え下降しつつあることは、景気は近いうちに山を付け、企業業績も悪化に向う可能性が高いということである。機械受注と株価のチャートをみると、株価のピークは機械受注に先行していることがわかる。今回、機械受注のピークアウトに対する反応が遅れているが、遅れれば遅れるほど実体経済とのズレが大きくなり、下げがきつくなるのである。

世界の注視を浴びる米国経済の動向2004-05-09

 5月4日のFOMC声明や予想を上回る改善をみせた4月の米雇用統計によって、早期利上げ観測が強まり、米国の株式・債券相場は大幅に値を崩した。一方、金利上昇期待の高まりを背景に、投機資金は米国の流動性の高い資産に行き場を求めており、対円でドルは112円台へと昨年9月下旬以来の水準に上昇した。当面、債券利回りが収益率に見合う水準に上昇するまで、運用者は流動性を重視した姿勢を取り続けるだろう。投機資金は米国に還流し、世界の株式・債券相場は弱基調で推移する見通しである。
 経済成長率と釣り合わない米国の超低金利政策は資産インフレを拡大させたが、引き締めは資産収縮の引き金となり、資産価格の下落が実体経済に悪影響を及ぼすと考えられる。日本の例を持ち出すまでもなく、実体経済以上に上昇した部分が破裂し消滅するのは必定である。特に痛手を被るのは家計部門であり、不動産価値の減価により、家計のバランスシートは悪化し、消費マインドは冷え込むことになろう。米国経済の7割超を占める主力の家計部門の不振は国内生産物だけでなく、世界の供給を消化できなくなり、米資産価格の下落は世界経済をスランプに陥れるかもしれない。
 3月のOECD景気先行指数は前年比7.6%増と前月の伸びを11ヵ月連続で上回り、87年8月以来の高い伸びとなった。ウエイトの高い米国が+11.3%の高い伸びとなり、世界の成長を牽引したからだ。だが、米国の景気先行指数の伸び率がピーク近辺にあることは間違いなく、雇用統計の改善等に気を取られていると、思わぬ景気の変化に遭遇するかもしれない。3月の個人消費支出は前年比+7.1%と前月よりも減速しており、個人消費拡大による景気拡大は限界にきている。ISM製造業景況指数の頭打ちや新規受注指数の低下などもみられる時期に、長期金利の大幅な上昇や政策金利の引き上げは実体経済の下降を速めることになりかねない。いままで以上に世界は米国経済の動向に目を注がねばならなくなってきた。

米個人消費、GDPの7割を超える2004-05-03

 1−3月期の米実質GDPは前期比年率4.2%増と前期の伸びを0.1ポイント上回った。個人消費は3.8%増加し前期よりも高い伸びとなったが、民間設備投資は+7.2%と2四半期連続で低下した。自動車等が前期比減となったため耐久消費財は減少したが、食品・衣類等の非耐久消費財やサービスが増加し、消費を支えた。民間設備投資は工場や輸送機器は減少したが、IT関連は好調を維持できた。政府部門は2四半期ぶりにプラスになったが、寄与したのは軍需であり、連邦政府の非軍需は微増、財政の厳しい州・地方はマイナスになった。

米国の超低金利政策と不動産バブル 2004-04-26

 超低金利政策は物価安定を損なわず経済成長を促している一方、資金は株式や不動産に流れ、資産価格は膨れつつある。00年2月をピークに下落していた株式市場は、昨年3月を底に盛り返している。ただ、金利はいずれ引き上げられることから、上値の重い値動きを余儀なくされよう。10年物の債券利回りは先週末、4.45%と1ヵ月で76ベイシスポイント(1bp=1/100%)の大幅上昇となったことも、株式の魅力を削いでいるようだ。
 米住宅着工件数は好調に推移しており、不動産価格も上昇している。03年末の米家計の不動産価額は15.1兆ドル、前年比10.2%増加した。過去3年の年率上昇率は11.2%と2000までの10年間の伸び率(年率5.3%)の2倍だ。不動産バブルが発生しS&Lが行詰まった80年代の年率8.4%増を上回る速度で上昇しており、またも不動産バブルが膨れてきた。2000年までの10年間、名目GDPは年率5.4%伸び、不動産価額とほぼ同じ拡大をしたが、03年までの3年間、名目GDPは年率3.8%と低く、不動産価額の伸びは実体経済から掛け離れた動きをしている。
 政策金利の引き上げは実体経済にブレーキを掛けることよりも、資産価格を反落させる影響力のほうが大きく、とくにバブルで膨れていればいるほど、資産価格の下がりかたは急激となる。一旦下落しだすと、損失売りが出尽くすまで価格は下がり続けることになり、資産の目減りが実体経済に悪影響を及ぼすことになる。政策金利の引き上げが、経済成長率を下げる程度であれば、過度に心配する必要はないが、資産価格暴落の引き金になる恐れがあるだけに、政策変更は慎重にならざるをえない。
 03年末の米不動産価額は27兆ドルと名目GDPの約2.5倍の規模である。10%の下落で2.7兆ドルの価値が吹き飛ぶ。株式下落の影響も軽視できないが、不動産は株式(15.5兆ドル)の1.7倍超の規模であるだけに、その影響力は大きい。家計だけで15.2兆ドルの不動産を保有しており、不動産価額の増大が消費マインドを好転させてきたが、不動産価額の減価は消費マインドを冷やすことになろう。不動産価額の下落が消費を冷やし経済が悪化する。経済の不振は不動産市況をさらに下振れさせるという悪循環も予想され、FRBの金融政策の舵取りはこれまでにない困難に逢着するとみている。。

プロフィール
曽我純イメージ

曽我 純(Soga,Jun)

1949年、岡山県生まれ。
国学院大学大学院経済学研究科博士課程終了。

87年以降証券会社で経済・企業調査に従事。

「30年代の米資産減価と経済の長期停滞」、「景気に反応しない日本株」(『人間の経済』掲載)など多数

メールマガジン
曽我純の週刊マーケットレター (マガジンID:0000108093)

メールマガジン登録


メールアドレス:



メールマガジン解除


メールアドレス:



Powered by
まぐまぐ
 

 

苦渋の選択を迫られるFRB

 3月の米雇用統計が予想を大きく上回ったため、NYダウは上昇、債券相場は急落した。非農業部門雇用者数は前月比30.8万人増と2月の4.6万人増から大幅に増え、7ヵ月連続の前月比プラスとなった。製造業は横ばいと改善しなかったが、小売、企業サービス、教育、娯楽等のサービス部門の雇用が拡大した。一方、求職者の増大により、失業率は5.7%と前月よりも0.1ポイント上昇した。労働時間は前月比0.3%減少し、週平均賃金は+0.1%の微増にとどまり、非農業部門雇用者の改善だけが目立つ内容となった。
 非農業部門雇用者の拡大が4月以降も続くことになれば、FRBの超低金利政策は早い時期に解除されるという観測から、2日の米債券相場は崩れ、利回りは前日比0.27%上昇の4.14%に急騰した。円ドルレートも104円台へと円安ドル高に振れたが、為替市場は米債券相場のような反応を示さなかった。
 昨年第2四半期以降の高成長が雇用増に結びついてきたと考えられるが、成長を牽引した消費がこのまま高い伸びを維持できるかどうか不透明である。2月の個人消費支出は前年比7.2%と00年6月以来の高い伸びとなり、過去の経験則からこのような高水準の消費が持続すると想定することはできない。3月の消費者信頼感指数は88.3と2ヵ月連続の前月比減となり、消費者マインドも盛り上がりに欠ける。
 経済成長が高い伸びをみせているなかで、賃金の伸びは低い水準に押さえられており、雇用の改善と減税が消費に寄与している。さらに、低金利の継続により不動産取得意欲が旺盛であり、不動産価格も上昇している。
 昨年末の家計部門保有の不動産価額は15.1兆ドル、前年比1.4兆ドル増加した。株式価額も1.1兆ドル増の5.7兆ドルに回復し、不動産と株式を合計すれば、資産価値は1年間で2.5兆ドルの大幅増となった。不動産と株式の増加額は03年の可処分所得(8.2兆ドル)の34.1%に当る。昨年末の不動産と株式の価額は20.8兆ドルと過去最高を3四半期連続で更新しており、こうした資産増が消費マインドを刺激しているといえる。
 FRBの超低金利政策により、資金は株式や不動産市場に流れ込み、資産価格は実体経済に釣り合わない高い水準に押し上げられつつある。あまり高い水準に上昇すれば、日本のバブル崩壊のように、長期におよぶ経済スランプに陥るかもしれない。雇用統計だけでなく、政治的圧力による低金利継続と資産価格バブルのはざまで、FRBは苦渋に満ちた選択を迫られている。

苦渋の選択を迫られるFRB

 3月の米雇用統計が予想を大きく上回ったため、NYダウは上昇、債券相場は急落した。非農業部門雇用者数は前月比30.8万人増と2月の4.6万人増から大幅に増え、7ヵ月連続の前月比プラスとなった。製造業は横ばいと改善しなかったが、小売、企業サービス、教育、娯楽等のサービス部門の雇用が拡大した。一方、求職者の増大により、失業率は5.7%と前月よりも0.1ポイント上昇した。労働時間は前月比0.3%減少し、週平均賃金は+0.1%の微増にとどまり、非農業部門雇用者の改善だけが目立つ内容となった。
 非農業部門雇用者の拡大が4月以降も続くことになれば、FRBの超低金利政策は早い時期に解除されるという観測から、2日の米債券相場は崩れ、利回りは前日比0.27%上昇の4.14%に急騰した。円ドルレートも104円台へと円安ドル高に振れたが、為替市場は米債券相場のような反応を示さなかった。
 昨年第2四半期以降の高成長が雇用増に結びついてきたと考えられるが、成長を牽引した消費がこのまま高い伸びを維持できるかどうか不透明である。2月の個人消費支出は前年比7.2%と00年6月以来の高い伸びとなり、過去の経験則からこのような高水準の消費が持続すると想定することはできない。3月の消費者信頼感指数は88.3と2ヵ月連続の前月比減となり、消費者マインドも盛り上がりに欠ける。
 経済成長が高い伸びをみせているなかで、賃金の伸びは低い水準に押さえられており、雇用の改善と減税が消費に寄与している。さらに、低金利の継続により不動産取得意欲が旺盛であり、不動産価格も上昇している。
 昨年末の家計部門保有の不動産価額は15.1兆ドル、前年比1.4兆ドル増加した。株式価額も1.1兆ドル増の5.7兆ドルに回復し、不動産と株式を合計すれば、資産価値は1年間で2.5兆ドルの大幅増となった。不動産と株式の増加額は03年の可処分所得(8.2兆ドル)の34.1%に当る。昨年末の不動産と株式の価額は20.8兆ドルと過去最高を3四半期連続で更新しており、こうした資産増が消費マインドを刺激しているといえる。
 FRBの超低金利政策により、資金は株式や不動産市場に流れ込み、資産価格は実体経済に釣り合わない高い水準に押し上げられつつある。あまり高い水準に上昇すれば、日本のバブル崩壊のように、長期におよぶ経済スランプに陥るかもしれない。雇用統計だけでなく、政治的圧力による低金利継続と資産価格バブルのはざまで、FRBは苦渋に満ちた選択を迫られている。

株式相場、ITバブル期を彷彿 2004-03-29

 日経平均株価は24日以降、3日連続して上昇し、昨年来高値を更新した。24日、S&Pが日本国債の格付け見通しを「引き下げ方向」から「安定的」に引き上げたことから、外人が買い意欲を強めたようだ。財務省が25日発表した3月15〜19日までの外人の日本株買越額は、1兆1,483億円と統計を取り始めた01年4月以降では最高になったが、前週も引き続き巨額の資金が株式市場に流入したのであろう。2月の貿易統計によると、出超額は前年比51.7%増の1兆4,069億円と2月としては過去最大となり、外需による景気牽引が引き続き期待できるなど、実体経済も市場参加者に安心感を与えたのではないか。
 ただ、株価収益率は30倍弱と過去3ヵ月で約5ポイント上昇したほか、配当利回り(加重)は0.89%と債券利回りを0.51ポイント下回るなど株式の割高感が強まってきている。ハイテク株から内需、さらにハイテクへと投機資金は物色対象をめまぐるしく変えているが、循環物色もほぼ行きつく所までいったのではないか。個別的には数年先の利益をも織り込んでしまった銘柄も見受けられ、前回のITバブル期の相場を彷彿させる。
 相場が上昇基調にあるときは、証券会社のレポートはもとよりマスコミも好材料のみを強調し、悪材料は片隅に追い遣られる。相場が相当激しく下落してからでないと、行き過ぎであったことなど報じられないのだ。上昇傾向を後押しすることで、証券会社には手数料が転がり込み、マスコミも売上増の恩恵に与るからだ。
 日経平均株価の前年比上昇率(月末値)はこの水準が続けば、3月は50%弱の上昇とIT期を上回り、96年6月以来の高い伸びとなる。だが、このような伸びが持続しえないことをチャートは示している。3月19日末の信用買い残は2.3兆円に膨らみ、今回の上昇過程で最大となった。まもなく始まる下降相場で積み上がった買い残の手仕舞いが、下落速度を加速させるはずだ。激しい売りに耐えられるかどうかという初めての試練に、インターネット証券は直面することになろう。

OECD景気先行指数が示す為替相場の方向 2004-03-22

 一時、円は対ドルで112円台まで売られていたが、先週、スノー米財務長官の円売り介入牽制発言により、円高に急速に戻り、週間で4円20銭円高ドル安の106円台に上昇した。ただ、円の上値余地は大きくなく、前回の円高局面でのピークである101円50銭(00年1月)を抜くことはないであろう。
 円ドル相場は02年1月の134円70銭を底に円高ドル安に転じ、円高トレンドは2年を超えた。期間では前回を上回り、長期化の様相を呈しているが、いつまでも円高が続くわけではない。現在の円高ドル安は、近いうちに円安ドル高に向きを変えるはずだし、そのような気配を感じさせる経済指標もみられる。
 円ドル相場の傾向を決定付けるのは景気であり、日本の景気拡大が円高、後退が円安を引き起こす。景気が良くなると予想されるところに資金は流入し、景気が冴えないところから資産は流出するのである。巨額のホットマネーが値上がりしそうな資産を虎視眈々と狙っており、外人がいつ日本株から他の資産に資金をシフトさせるとも限らない。
 OECD発表の日本の景気先行指数は、景気の谷(02年1月)に2ヵ月先行する01年11月に前年比-5.1%の最低をつけてから、上昇傾向を示している。奇しくも、円ドル相場も景気の谷と同じ02年1月を境に円高に向った。昨年3月から5月に、景気先行指数は前年比マイナスとなったが、その後持ち直し、プラス幅が拡大するにつれて、円高傾向は強まった。景気先行指数(前年比)のピークとボトムが円高のピークと円安のピークにほぼ対応していることから判断すると、今回のトレンドも転換点に接近しつつあるように思われる。
 日本の景気拡大は外需に支えられており、内需の回復力は依然弱い。1月のOECD景気先行指数は前年比6.1%増と日本の2.7%増を大幅に上回っており、世界の景気に引っ張られている様子が窺える。世界経済の機関車である米国は9.0%増と10ヵ月連続して伸び率は上昇した。米国の景気拡大のテンポは速く、前年比伸び率は84年1月以来20年ぶりの高さとなり、景気のピーク感が強く出ている。
 巷では景気好転が喧伝されているが、日本の景気先行指数の伸びは鈍ってきており、円高の勢いも弱まるであろう。今回の景気拡大も年央には転換点を迎え、円高も修正される見通しである。来年4月からはペイオフが実施されることになるが、為替が円安ドル高傾向になっていれば、個人の預貯金が海外に流失し、思わぬ円安ドル高に見舞われるかもしれない。

米貿易赤字とドル問題 2004-03-15

 米国は貿易赤字拡大に歯止めはかからず、1月は過去最高を更新した。実効ドル相場は過去2年で大幅に下落したが、貿易収支の改善には寄与していない。為替レートの貿易収支に及ぼす影響は小さく、赤字縮小にそれほど効果があるわけではない。景気が拡大していれば、貿易赤字が増大する仕組みが米国経済には組み込まれているのである。景気が後退すれば、赤字の拡大は止まることになるが、多くのものがドルで取引されているため、ドル安の効果は限定的だ。米国で為替レートが重要なのは、政治的な道具として有効であるからだ。ドル安が貿易収支の改善につながらなくても、国民に効果があるように思わせることのほうが大事なのである。
 低金利と減税によって、米国の需要は拡大し、世界経済の機関車の役割を果たしている。中国や日本は米国需要増大の恩恵を受けており、輸出の対価として受け取ったドルは、日本では円に交換され給与や原材料費として支出される。交換されたドルは持ち手を変えながらもドルとして世界を駆け巡ることになる。米国以外ではドルでものを買うことができないので、ドルは米国に還流するのである。米国が経済、政治、軍事の面で圧倒的な地位保っている限り、ドルの問題が問題になることはなく、ドルは基軸通貨として地位を維持できるであろう。米国の貿易赤字の拡大を心配するよりも、自国の経済を立て直すことのほうがはるかに大事なのである。

鉱工業生産、一部産業に偏る急上昇の脆さ 2004-03-02

 鉱工業生産は01年11月を底に02年半ばまで回復力が強かったが、その後、勢いは弱まり昨年8月までもたついていた。だが、昨年9月以降急速に回復しており、1月には前月比3.4%増の高い伸びとなった。情報通信を除けばすべての業種で前月比プラスとなり、生産は広い分野に波及しているようにみえる。だが、前年比伸び率(5.0%)に対する寄与度は電子部品・デバイスが2.8%と抜きん出ており、一部の産業に偏っていることが気掛かりだ。これに一般機械を加えると4.4%となり、鉱工業生産の伸び率の9割近くが、2業種に依存しているという脆さを抱えている。突き詰めた言い方をすれば、鉱工業生産は変動の激しい半導体産業と一蓮托生の関係にあるということなのである。

日本経済、民需の持続性には疑問 2004-02-23

 昨年10-12月期の名目GDPは前年比0.9%増と2四半期ぶりのプラスとなった。民間最終消費支出が+0.5%と5四半期ぶりに前年を上回ったほか、民間企業設備が5.6%増と00年10-12月期以来の高い伸びとなった。純輸出も54.0%増と好調であり、これだけでGDPを0.6%引き上げた。半面、公的需要は消費、公共事業ともにマイナスとなり、寄与度は-1.1%とマイナス幅は3四半期連続で拡大した。
 民間需要(民間最終消費支出、民間企業設備等)は昨年1−3月期以降、4四半期連続して前年を上回ったが、公的需要(政府最終消費支出、公的固定資本形成)は02年10-12月期以降、5四半期連続のマイナスとなり、公需から民需へとバトンタッチが行われつつあるようだ。だが、民需がこのままプラス成長を維持でき、GDPが拡大基調に乗れるかどうか疑問である。デフレーター(物価指数)は前年比-2.6%とマイナス幅は拡大し、消費や設備投資を先に延ばすように仕向けるだろう。収入増が期待できないことに、年金不安・負担増や増税観測などが加わり、消費マインドの好転は期待できない。前回の景気拡大期、民間企業設備は前年比プラスに転じてから5四半期目にピークをつけたが、今回、すでにプラスが3四半期続いていることから、ピークは間近かなのではないか。外需も年率9兆円を超えており、円高や米国景気などを考えれば、これ以上の拡大は望めそうにない。GDP寄与度の最も高い民間企業設備が失速すれば、GDPの伸びも落ち込むことになるであろう。名目GDPに占める民間企業設備の比率は15.1%(03年10-12月期)だが、米国は10.2%と約5ポイントの差がある。この差が外需依存の不安定な経済を作り上げている。民間企業設備の比率を落とすような政策を推し進めなければ、日本経済の安定性はなかなか確保できないのである。

いつまで続く不毛な金融政策 2004-02-16

 1月のマネタリーベース(MB)は前年比13.6%増と前月の伸びをやや上回った。一方、マネーサプライ(M2+CD)は+1.6%と引き続き低い伸びにとどまっている。MBの平均残は1月、108.3兆円と前年比12.9兆円増加したが、日銀券発行高は72.7兆円、前年比1.8兆円の増加にすぎず、増加額の大半は日銀当座預金(前年比11兆円増の31.2兆円)によるものだ。
 銀行貸出が前年を大幅に下回る半面、預金は増加しているため、銀行は債券の購入だけでなく日銀当座預金の拡大に対応すことも可能となった。政府の円売りドル買い介入による円散布も日銀当座預金の拡大要因だ。銀行の預金増、貸出減の状態が続けば、先月35兆円に引き上げられた当座預金の目標値は、さらに上方修正が可能なのである。資金需要が弱いことが、日銀券の低い伸びと当座預金の拡大を導いているといえる。量的緩和という当座預金の引き上げによって、日銀は債券購入額を増やしており、先週末の国債残は91.7兆円に増加した。
 当座預金という量的緩和を続けても、銀行に金が溜まるだけで、経済的効果は不明である。このような金融政策によって、日銀は国民を煙に巻き、金融面から景気回復を支援しているという。小泉首相の「構造改革」と同じであり、真剣に取り組んでいることを認めてもらうための方便なのである。それによって、日本経済が健康体を取り戻すことができるかといったことはどうでもよいのである。こうした分かりにくい曖昧な経済・金融政策がいつ終わるともなく続くことほど、日本の将来が危ぶまれることはない。

日本政府の本音は円高ドル安 2004-02-09

 日本の株式相場は外人買いにより、ここまで回復してきたが、外人買いが途切れることになれば、株価は反落することになろう。1月も外人は1.5兆円近く買い越し、相場を支えた。これで16ヵ月連続となり、ITバブル(18ヵ月)以来の長期買い越しだ。円高が持続する見通しのもとでは、外人は日本株投資を継続するかもしれない。だが、円高が転換しそうな兆しをみせれば、利益確定に走り日本株を手放すことになろう。
 個人株取引は増加しているが、外人買いに追随しているだけであり、下落相場になれば、個人の信用の投げが発生し、相場を大きく崩す原因になるであろう。株式の買い手が国内では不在の状態では、円ドルレートの反転は当局にとっても好ましくない。ドル安でブッシュ政権を支援し、円高で株価を保ちながら7月の参議院選挙に臨むのであろう。政府の本音は緩やかな円高・ドル安であり、今、円ドル相場が反転しては困るのである。

外需で持つ日本経済2004-02-02

 12月の完全失業率は前月比0.3ポイント改善の4.9%と01年6月以来の5%割れとなった。医療・福祉、教育・学習支援業などの非農林雇用者が増加したことが失業率の改善につながった。業績が回復している製造業雇用者は引き続き前年を下回っている。就職を諦め労働力人口が減少していることも失業率の低下要因だ。昨年の就業者数は6,316万人と97年をピークに6年連続で減少し、6年間で就業者数は248万人減少した。そのうち雇用者56万人、家族従業者80万人、自営業主112万人と小規模経営の従業員が失職した。小泉首相は構造改革を唱えることで、現状からうまく国民の目をそらしているが、零細企業を潰し続け、いつまでも泥沼から抜け出せない状況を作り出しているのが小泉内閣の実態なのである。
 12月の勤労者世帯の消費支出は前年比0.7%増と4ヵ月ぶりのプラスになったが、可処分所得は3.6%減と大幅なマイナスだ。世帯主(男)の定期収入、臨時収入・賞与ともに前年を下回り、社会保険料の増大が響いた。03年の実収入と消費支出は2.6%、1.5%それぞれ減少し、マイナス幅はいずれも拡大した。1月の東京都区部消費者物価指数は前年比-0.6%、生鮮食品を除くも-0.3%といずれもマイナス幅は拡大し、デフレは厳しさを増している。
 米国経済の拡大によって輸出は好調であり、12月の数量指数は前年比12.6%増と昨年2月以来の2桁増となった。対米は微減だが、欧州およびアジア向けが好調である。輸出の拡大により12月の鉱工業生産指数は前年比5.7%と1月以来の高い伸びとなった。昨年夏には前年を割れていたが、再び盛り返してきた。鉱工業生産を引き上げているのは電子部品・デバイスと一般機械であり、両部門の12月の伸びに対する寄与度は5.2%と高い。一般機械の主力は半導体製造装置であることから、世界の半導体需要の行方が鉱工業生産を決定づけているとみていい。

米国の低金利、ドル安、株高戦略 2004-01-26

 円売りドル買い介入により、日銀当座預金残高の目標値を維持できなくなったため、20日、日銀は「27〜32兆円程度」の目標値を「30〜35兆円程度」に拡大した。今後、円売りドル買いが大規模に行われることになれば、目標値はさらに上方修正されよう。
 大統領選挙を控え、FRBは現状の超低金利政策を余儀なくされよう。設備稼働率は低く、実体経済からみても物価安定が損なわれる状況ではない。低金利の持続によって、ドル安を維持し、経済成長を支えようとしている。現政権にとって景気拡大は最重要課題であり、拡大維持のためには形振り構わぬ政策を打ち出すことも考えられる。そうした政策により株価の上昇力を強め、支持率を引き上げ当選を果たすというのがブッシュ大統領の戦略なのだ。
 こうしたブッシュ大統領のドル安政策を支えているのが日本の円売りドル買い介入なのである。いまのところ、日本の為替介入によってドルの下落速度は許容範囲に収まっており、米政権にとっては、理想的は経済状況にあるのではないか。ただ、低金利の長期化で米株式市場は上昇力を強め、NYダウは10,600ドル前後まで回復し、ファンダメンタルズから説明がし難くなってきた。FRBも選挙を控え「根拠なき熱狂」と揶揄することもできず、株式バブルは膨らみ続ける見通しである。

米国景気、稼働率伸び悩み物価安定 2004-01-19

12 月の米鉱工業生産指数は前月比+0.1%と4ヵ月連続のプラスになった。10-12 月期では年率6.2%増となり、00 年4−6月期以来の高い伸びだ。昨年第4四半期の伸びは高くなったが、03
年では0.3%増にとどまり、過去の景気回復期に比べて回復力は弱い。景気の谷(01年11 月)から25 ヵ月経過したが、その間、鉱工業生産指数は3.5%上昇したにすぎず、前回の景気回復期の伸び(8.6%)の半分にも満たない。生産の回復力の弱さは設備稼働率にもあらわれており、昨年12
月は75.8%と景気の谷を0.5 ポイント上回っているだけである。
四半期では2期連続の上昇になったが、年ベースの稼働率は01 年以降、3年連続の低下となった。
鉱工業生産が僅かだが上向いているのは、ハイテク産業が好調なからだ。通信機器は依然弱いが、コンピュータや半導体が勢いを増しており、自動車関連も堅調である。12
月のハイテク産業生産指数は前年比24.5%増、景気の谷からは45.7%上昇した。
設備稼働率が75%程度にとどまっているため、物価上昇力は引き続き弱く、12 月の消費者物価(食品・エネルギーを除く)は前年比1.1%と前月と同じ伸びとなった。1月のミシガン大学消費者センチメント指数(先週末発表)が予想を大幅に上回る103.2(12
月92.6)に上昇したが、債券利回りの上昇が前日比+0.05%にとどまったのは、物価の安定した状態が続くと予想しているからであろう。

米国景気の転換点は間近 2004-01-12

 OECD発表の11月の米景気先行指数は前月比1.4ポイント上昇し、昨年3月を底に8ヵ月連続のプラスである。米国の景気拡大に引っ張られて、OECDの景気先行指数は米国よりも緩やかだが、同じような傾向を示している。11月の米景気先行指数は前年比8.2%と96年6月以来の伸びとなった。チャートをみると90年代ではピーク近辺に位置していることがわかる。これだけ景気のテンポが力強さを増していながら、雇用が改善しないことは、今後、雇用環境は厳しさを増す可能性のほうが高いのではないか。

2003年分のマーケットレターバックナンバー

週刊マーケットレター 2003

米物価の歴史的な低下、低報酬・稼働率 2003-12-22

7−9月期の実質GDPが前期比年率8.2%の高成長となったが、物価が一段と沈静化して いる要因のひとつに、雇用者報酬の抑制を挙げることができる。01年7−9月期までは名
目GDPが雇用者報酬の伸びを下回っていたが、01年10-12月期以降は8四半期連続で名目 GDPが雇用者報酬を上回った。03年7−9月期の前年比伸び率の差異(名目GDP–報酬)は
2.7ポイントに拡大しており、雇用者の分け前は縮小している。

 11月の設備稼働率は75.7%と6月の74.0%を底に回復しているが、前年比では0.3ポイント の上昇にとどまっている。02年までの平均稼働率(81.3%)を依然大きく下回っており、
稼働率の上昇が生産性を高め、物価を押し下げる役割を果たしていように見受けられる。

80%程度までの稼働率上昇であれば、引き続きコスト低下につながり、物価低下に寄与す るであろう。7−9月期の労働生産性は前年比+5.0%と2四半期連続して伸びは拡大した
が、機械設備に余裕があることから来年も労働生産性の高い上昇が期待できそうである。

*今年の週刊マーケットレターは今回で終わります。次回は1 月12 日号からとします。年 末年始は市場参加者が少なく、ヘッジファンドなどが薄商いを突いて相場が大きくぶれる
こともあります。ユーロがさらに上昇するかどうかも興味あるところです。商品市況は世 界的な物価安定により、落ち着くでしょう。よいお正月をお迎えください。

機械受注の大幅増にも株価反応薄 2003-12-15

 10月の民需(船舶・電力を除く)は前月比17.4%増と予想を上回る伸びとなったが、株式市場の反応は限定的であった。製造業は10.2%と2ヵ月連続の2桁増となったことに加えて、非製造業も20.1%増と急増した。製造業ではウエイトの高い電気機械や一般機械が大幅に伸び、非製造業は主力の通信業が33.4%も増加した。これだけ機械受注が伸びても、株式相場の反応が鈍いのは、すでに相場に織り込み済なのか、これ以上の受注の伸びは期待できないと思っているからであろう。
 民需の前年比伸び率は23.1%と00年10月以来の高い伸びとなった。民需が前年比20%を越えることは稀であり、ピークが近いと判断してよい。ITバブルのときのピークでは45.8%(00年8月)も増加したが、ピーク以前に20%を上回ったのは2ヵ月であり、ピーク後を加えても5ヵ月に過ぎず、頻繁にみられる現象ではないのである。
 10月20日をピークに日経平均株価は下降しているが、下降局面では株価は機械受注に先行していることが読み取れ、機械受注からも厳しい状況にあることが窺える。「あしぎんFG」の出来高が膨らんだことで、出来高は引き続き多いが、売買代金では1兆円を下回っており、市場参加者は売買を手控えている。信用買い残の整理も進んでおらず、信用買いの手仕舞いが、今後売り圧力になることは間違いない。日経平均株価の予想株価収益率は23.5倍に上昇し、配当利回りは0.99%と長期金利を下回っており、株価は割高である。
 日本不動産研究所によれば、9月末の全国全用途平均地価指数は前年比7.9%減とマイナス幅は3月比0.8ポイント拡大し、過去最大となった。デフレが沈静化するどころか、地方を中心に拡大する有様では、株式など買えるわけがない。儲けることができたとしても偶然であり、深追いすれば必ず大きくやられることになる。株式投資はデフレが鎮まってから始めるべきである。

7−9月期の企業収益、一部に偏る 2003-12-07

 財務省の『法人企業統計』によると、7−9月期の売上高は前年比+2.2%と2四半期連続で増加した。昨年7−9月期が-6.9%の大幅減収だったことからみれば、伸び率は決して高くない。製造業は+1.3%と前期の+3.9%から伸びは低下した。一般機械や輸送機械は2桁増となったが、夏場の低温によって食品が2桁減となったほか、クーラー等の不振で電気機械もマイナスとなった。サービス業や運輸・通信業の拡大により、非製造業の売上高は2.6%増と製造業の伸びを上回った。

 営業利益は前年比10.3%増と02年7−9月期以降、5四半期連続のプラスとなった。製造業は18.6%増加したが、02年10-12月期の71.2%増をピークに3四半期連続で伸び率は鈍化した。非製造業は5.3%と2四半期ぶりのプラスとなったが、営業利益の前年比増加額の7割弱は製造業が占めた。製造業の営業利益のうち電気機械が66.5%、一般機械が20.6%を占めており、営業利益の増加は一部の業種に偏っているのである。

 

金融不安の再燃 2003-12-01

 株価がピークアウトした時期に「足利銀行破綻」の悪材料が飛び出し、信用不安の 後退により上昇した銘柄が、売り圧力にさらされることになりそうだ。「りそな」へ
の公的資金注入が信用不安を鎮め、株式市場に好影響を与えたが、国有化し株式価値 がゼロとなった今回の措置によって、金融不安が再び台頭してこよう。4月末以降、
銀行、建設、不動産といった不良資産を多く抱えた企業の株価が急騰したが、信用不 安の高まりで手放す動きが強まる見通しである。

 名目GDPの減少とデフレという厳しい経済情勢のなかでは、公的資金の投入を続け るだけでは金融部門はなかなか健全な姿に戻れない。財政が危機的状況にある一方
で、国民負担となる金が「金融危機対応会議」の数十分の議論で使われる理不尽なこ とがまたも遂行された。日債銀や長銀が国有化された後に発見された膨大な不良債権
を公的資金で埋め合わせた教訓が活かされることなく、安易に国有化の道を選んだ。

 10月の銀行貸出残(396兆円)は前年比-4.7%と減少し続けているが、地方銀行 (131兆円)は前年比0.6%増加した。都銀は大企業の借入返済や不良債権処理などで
貸出は7.6%減と大幅に減少したが、地銀は不良債権処理が思うように進展せず、貸出 をそのままにしているケースが多いのではないか。地方経済の不振が地価下落に拍車
を掛けていることも、地銀のバランスシートを痛めていると考えられる。7−9月 期、GDPデフレーターは前年比2.7%下落したが、デフレが企業の資産劣化や収益悪化
を引き起こし、貸付や利払いの焦げ付きとなっている。

日経平均の10,000円割れとドル全面安 2003-11-25

 先週、日経平均株価は10,000円の大台をあっさり割り込み、一時9,600円台に下落した。週末は9,800円台にやや回復したが、戻りは弱く、このままずるずると下値を切り下げていきそうだ。

 上場企業の収益は回復しているとはいえ、外需頼みでは来期の利益がさらに増大するとは考え難く、株価にもっとも影響力のある業績面からの株価支援は期待できない。エレクトロニクス関連企業の株価収益率は異常に高く、業績を度外視した短期売買で株価はなんとか維持されてきたが、買い手控えられ短期売買が出来なくなると、株価は下振れしていくのである。信用不安の一時的後退によって、低位の信用不安銘柄が急騰したが、「山高ければ谷深し」で今度はそうした銘柄が急落している。

  

 米国では投信の短期売買等が問題になっているが、運用体制が欧米に大きく遅れている日本の機関投資家の運用姿勢はどうだろうか。運用に無知な人材が投信会社の重要なポストに就き、経験の浅いファンドマネジャーが資産を運用している状況を直視するならば、米国以上に日本の投信の問題は大きいように思う。

7−9月期の日本経済、デフレ拡大しマイナス成長に反落 2003-11-17

先週末、7−9月期のGDPが発表された。デフレーターは前年比2.7%低下し、前期よ りもマイナス幅はやや拡大し、実質的に日本経済は94年7−9月期以降、9年以上の
長期にわたる物価下落に苦しめられている。民間最終消費支出のデフレーターは1.6% 減と前期と同じだが、民間企業設備は7.2%下落し、5四半期連続して過去最大を更新
した。民間設備投資に比べれば、下落率が小幅な公的固定資本形成も2.4%低下した。 世界経済史上類を見ない物価の長期下落は、需要の低迷と固定資本ストックの過剰に
よって引き起こされており、デフレが終息する兆しは見えない。

 物価下落により実質GDPは嵩上げされ、前年比2.5%増加したのを見て、「景気の回 復傾向が鮮明になってきた」とコメントする社説も見受けられるが、新聞社では物価
の下落率が、売上げの減少率を上回り、実質プラスとなれば、「売上げの回復傾向が 鮮明になってきた」と評価するのであろうか。戦前の大本営発表と変わらない新聞報
道が社会を惑わしている。

 名目GDPは前年比-0.3%と2四半期ぶりにマイナス成長になり、経済規模は3.3兆円 縮小した。4−6月期は9四半期ぶりのプラスになったが、プラス成長は1四半期で
終わった。民間最終消費支出は3四半期連続で微減だったが、7−9月期は-1.4%と 99年10-12月期以来の大幅な減少となり、個人消費の不振がプラス成長を阻んだ。GDP
の下落をこの程度にとどめることができたのは、純輸出(輸出–輸入)が前年比 +51.9%と急増し、GDPを0.6ポイント引き上げたからである。

 個人消費が減少する半面、民間設備投資は6.0%増と4四半期連続のプラスだ。だ が、個人消費が減少している状態では、民間設備投資の拡大を持続させることは不可
能である。輸出関連やハイテクの一部では生産設備の増設が期待できるが、内需関連 は設備増強ではなく設備処理が優先されよう。需要の減少が止まらないなかで、物価
を安定させることができるのは既存の過剰設備を破棄し、適正規模に縮小することに よってのみ可能になる。

選挙後、株式相場への疑念強まる見通し 2003-11-10

 9月の世界半導体売上高が前年比17.5%増加したことや10月のISM製造業景気指数の上昇を好感し、ハイテク関連企業を多く抱えるナスダックは堅調に推移した。一方、週末に発表された10月の米雇用統計が改善したにもかかわらず、NYダウは値を下げた。衆議院選挙を控え、日経平均株価も頭の重い展開となり、週間の上昇率は小幅にとどまった。 

強い経済指標でるが、外需頼みで楽観は禁物 2003-11-03

・・・最終製品の多くはアメリカへ向っている。7−9月期の米国経済成長率が前期比年率7.2%伸びたことが、日本の半導体・電子部品等の輸出を引き上げたことは間違いない。

 輸出は好調な半面、内需は引き続き不振である。9月の輸出額(季節調整値)は4兆7千8百億円と6ヵ月連続で前月を上回り、10ヵ月ぶりに過去最高を更新した。輸出数量指数も9月、前年比4.5%と3ヵ月連続のプラスとなった。他方、9月の商業販売統計は前月比3.0%低下し、1年ぶりに90年代の最低を更新した。このように、内外需の動向はきわめて対照的であり、依然不振な国内需要だけで鉱工業生産を3.0%も引き上げることはできなかったはずだ。輸出と半導体関連の強い需要に支えられたからこそ強い数字がでたのである。内需が主力のパルプ・紙・紙加工品工業は2ヵ月連続の前月比マイナスとなっており、国内景気は鉱工業生産が示すほど良くない。10-12月期の米経済成長率は鈍化する見通しであり、輸出に過度の期待を寄せるのは危険だと思う。

収益回復阻む過剰資産 2003-10-27

 『法人企業統計』(財務省)によると、02年度の全産業売上高は前年比-0.9%と2年連続で減少した。販管費比率は横ばいだが、粗利率の改善により、営業利益は8.4%増と2年ぶりのプラスになった。売上げが減少する環境で利益を拡大できたのは、従業員を71万人、前年比2.0%削減したからである。これによって、従業員給与が2.4兆円削減され、同額、営業利益は増加した。

株式市場のバブル化2003-10-20

 9月の企業倒産件数は1,238件、前年比18.2%減少し、99年4月以来約4年半ぶりの低い水準となった。企業倒産件数は01年10月のピーク(1,911件)以降も高水準に張り付いていたが、すでに本レポートで取り上げたように、今年2月に始まった「資金繰り円滑化借り換え保証制度」によって、中小企業の借り換えが容易に行われるようになり、倒産件数は著しく減少してきている。経済状態が大きく改善したわけではなく、人為的に企業を救済していることから、企業倒産件数の減少は一時的であり、借り換えが一巡すれば、倒産件数は増加することになろう。
 日銀の量的緩和や倒産件数減、外資の買い等により、銀行株は大商いが続き、小会社の証券会社の株価も急騰した。ソフトバンク等の情報通信関連株もITバブル期を彷彿させるような値上がりとなり、投機色が強まっている。10月10日現在の信用買い残は2兆332億円と2000年12月以来の2兆円超となった。急騰した銘柄の株価収益率(株価を1株当り当期純利益で割ったもの)は異常に高くなっており、日本の株式市場は再びバブルに突入したといっていいだろう。

 

景気に効かない量的緩和 2003-10-13

 日銀は10日の金融政策決定会合で、日銀当座預金残高の目標値の上限を2兆円増額し、これまでの「27〜30兆円程度」から「27〜32兆円程度」に引き上げた。福井俊彦氏が日銀総裁に就任してから、これが4度目の量的緩和である。同日、衆議院が解散され総選挙に突入したが、小泉政権を金融面から支援する意図も感じられる。
 週末、円ドル相場は108円台に上昇した。過去1ヵ月で8円強上昇した急激な円高を阻止する狙いも窺われるが、量的緩和では効き目はない。ゼロ金利下では日本サイドの円安誘導は不可能である。円売りドル買いで買い増した米短期証券を売却する方法もあるが、売却資金のドルを円に変えることはできず、結局、ドル資産の購入に落ち着くことになる。いつものことながら、為替相場は今回も米政府の意向が強く反映されたものになろう。
 量的緩和をしても、資金需要は生まれず、銀行に資金は滞留するばかりだ。9月の貸出(銀行計)は前年比-5.0%と減少幅は依然大きく、返済された資金の大半は国債の運用に振り向けざるを得ない。日銀は銀行保有の国債を購入し、日銀当座預金残高を積み増すというのが量的緩和である。9月末の日銀当座預金残高は34.5兆円、前年比16.0兆円増加し、日銀保有の国債は91.8兆円、同8.2兆円増加した。
 量的緩和は銀行保有の国債を日銀当座預金に変えるだけである。銀行資産の大半は貸出と有価証券だが、国債を日銀に売却し、その売却額が当座預金に振り向けられているのである。日銀は新発の国債を購入できないが、銀行経由ではいくらでも国債を購入できるようになっている。資金需要が盛り上がらずに貸出の減少が続くことになれば、銀行は国債を購入し、それを日銀が購入するという仕組みは続くであろう。
 日銀によれば、量的緩和は「景気回復に向けた動きをより確実なものとすることに資する」ようだが、銀行資産を国債から当座預金に変えているだけであり、景気にはなにの影響も与えることはできない。いくら量的緩和をしても、貸出の落ち込みを止めることができないことが、量的緩和の行き詰まりを証明しているではないか。マネーサプライでさえもマネタリーベースの10分の1程度しか伸びていない。日銀当座預金残高は準備預金等の10倍程度に膨らんでいることから、信用乗数は極端に低下している。量的緩和では日本経済を刺激することができないのは明白である。

生産減速下での円高 2003-09-29

8月の貿易黒字は前年比23.1%増と2ヵ月連続の増加となった。対米黒字額は5.0%減少 したが、対アジアの黒字額が+42.0%と急増したからだ。対世界の輸出指数(数量ベース)
は前年比-0.1%と2ヵ月ぶりに減少した。昨年11月の17.6%増をピークに伸びは急速に鈍化 している。対米の輸出指数(数量ベース)は-12.3%の大幅減となり、今年2月以降、7ヵ
月連続の前年割れだ。対米輸入指数(数量ベース)は8月、-24.0%の大幅減となったこと が、対米黒字額の減少を小幅にとどめた。本来、対米輸出指数の減少は円高を阻止する要
因になるはずだが、米政府主導の円高では、国内要因の為替レートに及ぼす力は微力であ る

 輸出数量指数と鉱工業生産指数は相関性が強く、一般的に、輸出にやや遅れて鉱工業生 産が変化するといわれている。輸出数量指数の前年比伸び率は昨年11月をピークに低下し
つつあるが、2ヵ月遅れて、鉱工業生産指数もピークをつけ、7月は前年を0.3%下回った

このように、すでに輸出数量が減少しているときに、円高ドル安が急速に進行することに なれば、鉱工業生産の減少が加速することは目に見えている

 経済産業省の『商業販売統計』によると、8月の小売業販売額は前年比2.0%減少した

マイナス幅は7月に比べて縮小したが、最終需要は引き続き弱く、プラスに転じる展望は 描けない。小売の不振は生産に影響しているが、製造業が円高で痛められることになれば、
製造業部門の購買力の低下が小売業に影響しよう

 9月の月例経済報告(9月12日)で、政府は「景気は、持ち直しに向けた動きがみられ る」との基調判断を示した。「持ち直しに向けた動きがみられる」ということは、政府は
円高ドル安の材料を提供したことになる。だが、生産や消費の動きは「持ち直しに向けた 動き」をみせておらず、景気は悪化の方向を向いている。政府の景気判断が円高に荷担し、
製造業を中心とした景気マインドの悪化が真実味を帯びてきた。

無視できない円高 03 年9 月22 日週号

 外人は日本株を引き続き買い越しており、4月第3週以降、22週連続の買い越しで ある。5月に発表された1−3月期の実質GDPが前年比+2.9%に上昇し、米国の成長率
を0.9ポイント上回った。日本の実質成長率が米国を上回ったのは01年4−6月期以 来、7四半期ぶりである。03年4−6月期も日本の成長率が高くなり、成長率格差の
観点から対日株式投資を増やしているのだろう。ただ、4−6月期の名目成長率はプ ラスになったとはいえ0.5%増にすぎず、米国のほうが高い。単に、実質成長率の比較
だけで投資方針を決めることは非常に危険だ。

 外人は円高ドル安の進行を見込んで、日本株買いを積極化している側面もある。米 雇用環境は依然厳しく、米国は為替メカニズムによる貿易収支の改善を期待してい
る。20日のG7の声明文にも「為替レートの更なる柔軟性が望ましい」と謳われてお り、日本政府は7月までに実施したような過度の市場介入に踏み込めない言質を取ら
れた。

 「個人消費が強まっている半面、労働市場は依然弱含んでいる」との連邦公開市場 委員会(FOMC)声明文(16日)のように、米国は景気回復期に見られないような厳し
雇用環境に直面している。来年、大統領選を控えているが、ブッシュ大統領の支持率 は低下傾向にあり、雇用の回復はイラク情勢とともに支持率回復の重要な政策課題で
ある。

 貿易黒字国に対して為替レートの調整を主張することは、米国の常套手段であり、 今後、日本や中国に対してさらに圧力をかけてくると、株式・為替市場は読んでいる
のではないか。円高ドル安は相当のタイムラグはあるが、米失業率の引き下げに関連 がありそうだ。日本が米国よりも成長率が高いことから、今度は日本がブッシュ政権
を為替を通して支えるべきだと要求しているのだろう。

 政府は今年7月までの7ヵ月で約9兆円の大規模な円売りドル買い介入を行った が、円高傾向を止めることができなかった。8月以降は、市場介入を控えていること
も、最近の円買いドル売りを勢いづかせている。

 6月調査の『短観』によると、事業計画の前提となっている想定円ドルレート(大 企業・製造業)は117.88円である。すでに想定レートよりも4円弱の円高に振れてい
ることから、企業収益の下振れ要因になろう。市場信奉者の多い米政策当局者の顔ぶ れから判断すると、為替メカニズムによる調整をもっと前面に打ち出してくる可能性
もある。そうなれば日本の株式市場は為替問題を無視できないはずだ。

信用収縮に歯止めは掛からず 2003-09-15

 日銀の量的緩和政策によって、マネタリーベースは今年3月の前年比10.9%を底に 回復していたが、8月は20.5%増とここ3ヵ月、伸び率はほぼ横ばいである。20%強増
加しているといっても、増加額の8割は日銀当座預金の寄与分であり、日銀券の寄与 は2割にすぎない。日銀当座預金には29.2兆円積み上げられているが、8月の銀行貸
出は前年比5.2%減と2ヵ月連続でマイナス幅は拡大しており、量的緩和は貸出に結び ついていない。マネタリーベースの伸びによって、マネーサプライ(M2+CD)も増加
しているが、伸び率は緩慢である。準通貨のマイナス幅は1%以下になってきたが、 縮小は依然続いており、規模では現金・預金通貨を30兆円ほど下回っている。郵便貯
金の前年割れ等により、8月の広義流動性は+1.1%の低い伸びにとどまった。M2+CDを マネタリーベースで除した信用乗数の低下に歯止めは掛かっておらず、信用収縮の状
態から抜け出していない。

 主要行12行だけでも43.7兆円の不良債権を抱えており、地銀や信金等を加えると、 不良債権はこれを大きく上回ることは間違いない。こうした巨額の不良債権が資金の
流れを滞らせ、経済の本格回復を阻害していると考えられる。株式相場の回復によ り、悲観論は後退しているが、日本経済の金融構造は依然脆弱なままである。巨額の
不良債権を裏返せば、企業の過剰資本ストックに突き当たる。需要が右肩下がりの状 態にあることから、資本ストックを適正規模に削減することは容易ではない。

株式市場は企業収益の鈍化にいつ気付くのか 2003-09-08 

株式は出来高が10億株を越える大商いが続いており、先週も日経平均株価は続伸し た。景況感の回復を背景に、米国株を始め外国株式も底堅い動きをしており、景気回
復期待を織り込みつつある。7月のOECD景気先行指数は前月比1.1%上昇した。今年4 月まではもたついていたが、その後、回復力は強まり7月までの3ヵ月で3.0%の上昇
となった。景気の改善を示す統計に反応して主要国の債券利回りは急上昇したが、週 末の米非農業部門雇用者減によりやや持ち直した。    東証によると、信用買い残は1.5兆円(8月29日時点)に達し、昨年8月以来の高
水準となった。買い残は今年1月第2週(8,099億円)を底に7ヵ月以上増加してい るが、特に、6月以降は外人買いに刺激され、急激に増加しており、株価上昇要因の
ひとつに挙げることができる。   買いが買いを呼ぶという投機相場が信用買い残を膨らましているが、企業業績を顧 みるならば、投機にうつつを抜かしてもいられないことが分かる。先週4日に発表さ
れた『法人企業統計』(財務省)によると、今年4−6月期の全産業売上高は前年比 2.4%増と8四半期ぶりの増収となったが、営業利益は2四半期連続で低下し、4.6%増
益にとどまった。製造業は21.3%増と高い伸びを維持できたが、非製造業は-3.3%と2 四半期ぶりの減益となった。運輸通信業や電気業などが大幅減益になったことに加え
て、小売業も減益から抜け出すことができなかったからだ。非製造業の営業利益は今 年1−3月期に+1.2%と僅かに浮上したが、プラスは2四半期続かなかった。製造業
では鉄鋼業や精密機械が大幅増益となったが、電気機械は6.9%増と伸び悩んだ。昨年 10-12月期、製造業は前年比+71.2%に急回復したが、営業利益の伸びは急速に鈍化し
つつあり、7−9月期の増益率はさらに低下する見通しである。  設備投資は+6.4%と7四半期ぶりの前年比プラスになったが、収益に遅行するた
め、今後、伸びの拡大は期待できないであろう。一般機械や輸送用機械は2桁増と なったが、主力の電気機械が7.3%の増加にとどまり、食料品や化学が2桁減と不振で
あったことから、製造業では3.8%増の低い伸びとなった。不動産やサービス業はプラ スとなったが、建設や電気業などがマイナスとなり、非製造業でも業種によりまちま
ちだった。  上場企業の大半を含む大企業(資本金10億円以上)の営業利益は前年比+2.0%に低 下した。4四半期連続の増益だが、伸び率は昨年10-12月期の35.3%増をピークに低下
傾向をはっきり認めることができる。製造業は32.2%増だが、非製造業は-16.3%と4 四半期ぶりの減益となった。99年の回復期には、営業利益は99年1−3月期に前年比
プラスに転じてから4四半期目の同10-12月期に伸び率は最大になった。ITバブルの 余熱により、株価は営業利益の伸びが鈍化していた00年4月まで上昇した。
 家計消費や小売売上高などが大きく落ち込んでいることから、7−9月期の企業収 益の伸び率回復は見込めそうにない。株式市場は今年1−3月期以降の収益率鈍化に
いつ気付くのだろうか。遅れれば遅れるほど、痛みは大きくなるのだが。

実体経済と乖離する株価 2003-09-01

 7月の鉱工業生産指数は前月比+0.5%と2ヵ月ぶりにプラスに転じたが、前年比で は変わらずとなり、今年1月の8.0%増をピークに伸び率は低下し、前年割れ寸前の状
態にある。出荷指数は2ヵ月連続の前月比減となり、在庫と在庫率指数はともに前月 比で増加した。

 鉱工業生産指数の前年比増減率と株価は、相関度が強いことがチャートから読み取 ることができる。生産の伸びが低下しているときに、株価が本格的に上昇するケース
は見当たらず、今回の反発は短期で終わりそうだ。ハイテク産業の代表である電子部 品・デバイス工業の生産は昨年10月の前年比38.0%をピークに今年7月には8.4%に鈍
化した。情報通信機械工業と電気機械工業は2.4%、1.8%にそれぞれ低下しており、ハ イテク産業の生産は明らかに下降しているといえる。

 売上げの不振を反映して耐久消費財の出荷は2ヵ月連続の前月比大幅減となり、前 年比でも-0.5%と昨年6月以来の前年割れとなった。在庫は6月まで5ヵ月連続の前
月比減と在庫調整は進んでいたが、7月は前月比8.2%と急増した。非耐久消費財の出 荷も7月、前月比4.3%減少した半面、在庫は5.4%増加し、今後、在庫減らしのために
消費財の生産は抑制されるであろう。生産財の在庫も4ヵ月連続で増加し、前年比で も2ヵ月連続のプラスだ。景気指標の好転を指摘するコメントが目に付くが、実際の
指標は生産が落ち込み、意図しない在庫が積み上がるといった景気下降のリスクが高 いことを示唆している。

 実体経済と市場の乖離は拡大しつつある。投機が優勢なときほど、実体は霞んで見 え難くなるということを80年代後半以降のバブルで経験したが、出来高が膨らみバブ
ルに直面すると、またも実体を見失ったようである。

輸出に遅行する生産2003-08-04

6月の鉱工業生産指数は前月比-1.2%と2ヵ月ぶりに低下した。今年1月以降、プ ラスとマイナスが交互にあらわれており、先行きに自信が持てない企業心理を裏付け
ているようだ。前年比では2.8%と前月よりは持ち直したものの、前年同月がプラスと なる7月は、伸びが1%程度に鈍化し、今年1月をピークとする生産減に歯止めは掛
かっていないことが確認できるだろう。景気に敏感な生産財生産指数も前月比0.9%減 少する半面、在庫は4月以降、3ヵ月連続のプラスとなった。生産財生産指数は4−
6月期でも前期比減となり、景気の不透明感は増している。

 商業販売統計や家計調査からも販売や消費低迷の様子が明らかであり、国内最終需 要だけで生産を引き上げることは容易ではない。これまでも鉱工業生産を回復に導い
たのは輸出であり、輸出数量指数(前年比)との相関性が高いことがチャートからも 分かる。しかも、輸出数量が鉱工業生産に先行している様子が窺える。

 02年11月、輸出数量は前年比18.2%増加したが、その後、伸び率はほぼ一貫して低 下し、6月は-0.4%と02年3月以来の前年割れとなった。輸出数量に2ヵ月遅れて、
鉱工業生産もピークアウトした。鉱工業生産の回復には輸出数量の増加が不可欠だ が、輸出も主力製品の電気機器や輸送用機器の伸びが鈍化し、金額ベースでも6月は
微減となった。米国向けが2桁減となったほか、韓国や台湾もマイナスとなった。中 国向けは24.7%も伸びたが、アジア全体では3.8%増にとどまった。米国、アジアへの
輸出数量の伸びは今後、一層低迷する方向にあり、それに伴い鉱工業生産も低下して いく見通しである。

ハイテク生産に連動しないソニーの売上げ 2003-07-28

鉱工業生産によると、5月の電気機械工業生産指数は前年比4.6%と伸び悩んでいるほ か、情報通信機械工業はプラスを維持しているものの、前年すれすれの状態だ。電子
部品・デバイス工業の生産は11.3%増だが、昨年10月の+38.0%をピークに大幅に伸び は鈍化している。このような生産指数の動きからも、ソニーを始めとするハイテク企
業の業績が、先行き悪化しそうだという見通しを与えてくれる。

 電子部品・デバイスが01年第4四半期を底に急回復したにもかかわらず、ソニーの 売上は改善しなかったことは重要である。ソニーは海外売上高比率が高く、国内の生
産回復に連動しにくい側面があることは否めないが、ハイテク産業の生産指数との相 関性のなさはソニーブランドの陰りをあらわしているのかもしれない。

 電気機械や情報通信機械の足取りの重さ、電子部品・デバイスの伸び率の大幅な鈍 化などを勘案すると、今後、ソニーの業績はさらに厳しい方向に進むことが予想され
る。ソニーの利益は、クリスマス商戦に当たる10-12月期に偏っており、米国の消費 に依存する度合いが大きい。先週末から、米国では就業児童を持つ家庭に一律400ド
ルの小切手が送付された模様。今後、どの程度、消費を刺激することになるかが焦点 となるが、深刻な財政難から各州は歳出抑制や増税に動いており、政府の減税を相殺
しそうだ。ソニーの業績見通しが、米国の消費回復に大きく依存しているようであれ ば、下方修正のリスクは高い。

転機を迎えた株式相場 2003-07-21

 日経平均株価の週間騰落率はマイナスとなり、4月末以降の急速な上昇相場は転機を迎えたようだ。7月第2週の外人買越額は5,561億円と高水準を維持し、7月の買越額は2週間ですでに1兆1,856億円に達し、6月の規模を越えた。これだけ外人が買っているのに、上昇力が衰えてくるのは、いかに売りが嵩んでいるかということだ。これから、外人は長い夏季休暇に入るが、その前に利益を確定しておくだろう。
外人の買い動向をみると、買い越しは年前半に集中していることが、過去の統計から明らかである。米株式相場がもたついていることも、利益確定を促すはずだ。外人以外に買い主体を見出せない日本の株式市場の構造的な問題が、またも暗雲として垂れこめてきた。

株式の強気心理揺らぐ 2003-07-13

政府の公的資金注入や企業倒産件数の減少により、信用不安が一時的に後退した点は98年末以降の上昇と類似しているが、景気動向はまったく違う。景気が底入れしそうであれば、調整が入ったとしても、上昇は持続しようが、今は、景気が下向きになっており、単に、信用不安の後退だけでは、上昇力の持続性には疑問を持たざるを得ない。

 相場上昇の牽引役であった外人(主力はヘッジファンド)は7月第1週、6,295億円買い越した。買い越しは12週連続となり、累計の買い越し額は2兆8,388億円に達した。米国を中心とする世界のヘッジファンドの規模は6,500億ドル(02年)と過去3年で35%も増加し、世界の金融・資本市場を席捲している。日本の株式市場にもヘッジファンドの資金が流入し、相場を好転させたと考えられる。だが、逃げ足の速いヘッジファンドの資金がいつまでも日本に滞留するわけはなく、すでに次の有望な投資先にポートフォリオを組み替えているのかもしれない。

 先週、証券会社の店頭には、最近ではみられないほどの多数の個人投資家で賑わっていた。株式投資から遠ざかっていた個人が、値上がりに釣られて参加してきていることを物語っている。普段、株式に関心を持たない人まで株式に関心を示しだすと、相場は終わりになるケースが多い。 

投機の罠に陥る個人投資家 2003-07-07

 
売買高は5月29日以降、27日連続して10億株超の大商いが続いている。7月3日は20億株を上回り、売買代金は1兆7,154億円に達した。外人買いによる株価のじり高傾向が、尻の重い個人投資家を市場に駆り立ててきたからだ。株数ベース(東証1部)では委託に占める個人比率は6月、45.5%となり、4月の
38.7%から6.8ポイント上昇し、個人が参加してきていることを裏づけている。株価が天井に近いところで個人が参加し、ばばを掴むことがこれまでしばしば見られたが、今回も同じ轍を踏むことになるのではないか。インターネット証券の注文件数が過去最高を更新し、東証の相場情報が遅れるなど、今の株式市場は異常である。株価が上がれば、普通預金に積みあがっている資金を元に、つい株式に手を出してしまうのだろう。金に対する執着が、結局は投機の餌食になり、貴重な預金が失われてしまうことになりかねない。90年代、このような繰り返しであったが、またも投機の罠に陥りそうだ。

米国の無効な利下げ

 米連邦準備理事会(FRB)は25日の連邦公開市場委員会(FOMC)でフェデラルファンド(FF)レートを0.25%引き下げ、年1.0%とすることを決めた。政策金利の引き下げは昨年11月以来であり、1958年以来45年ぶりの低水準となった。01年1月3日に6.5%から6.0%に引き下げて以来の累計下げ幅は5.5%に達した。
 政策金利の引き下げにもかかわらず、25日のNYダウは下落し、債券も大きく値を下げた。

材料出尽くしと収益不安で米株式軟調な展開か 2003-06-23

 5月の米消費者物価指数が前月比横ばいとなったことから、デフレ懸念が後退し米債券相場は下落した。欧州の債券相場も売りが優勢となったほか、利回りが0.5%を下回るまで買われていた日本の債券も大幅な調整を余儀なくされ、19日には一時0.67%まで急騰した。
 だが、OECDの景気先行指数は4月、前年比では-0.2%と昨年5月をピークに低下し続けており、景気先行指数はOECDの景気下降を示している。主要国の債券は売られたが、世界景気の低迷により、債券安は一時的な現象にとどまり、資金は再び債券市場に流れることになろう。

株式市場のバブル化、経済の撹乱要因に 2003-06-16

 日経平均株価は9,000円手前まで回復、3月11日(7,862円)の安値から14.2%上昇した。ただ、上値は重くなってきており、外人買いだけでは9,000円を突き抜け、さらに上伸していくことはないはずだ。外人買いは8週連続の買い越しとなり、6月6日週の買い越し額は5,016億円(約定ベース)と昨年3月8日週以来の高水準。この間の買い越し額は1兆5,580億円と昨年6月14日週までの9週連続の買い越し額(1兆5,402億円)を上回った。
 NYダウは9,100ドル台に回復したが、米経済環境は不透明であり、金融緩和期待と減税効果を織り込む動きとなっている。5月の小売売上高は前月比0.1%増にとどまったほか、6月のミシガン大学消費者センチメント指数は、期待に反し前月比4.9ポイント悪化の87.2となり、個人消費の足踏み状態は続く見通しである。米国経済の低迷を反映して、堅調な米株式市場が息切れすることになれば、日本株の買い余力も衰え、昨年のような厳しい展開になることも想定しておくべきだ。

株式市場、投機がピークに 2003-06-09

 主要国の株式相場は堅調な展開が続いている。日経平均株価は3週連続の上昇で、年初来高値に接近した。NYダウは9,000ドル台を回復し、昨年7月以来の高水準である。国内債券は上昇相場が持続し、欧米の債券相場も底堅い。政府の円売り介入によって、円は対ドルで弱含み、ユーロも1ユーロ=1.17ドルに下落した。
 国内の株式は活況を呈している。出来高が5月29日以降、10億株を上回り、週末には15億株弱と約10年ぶりの大商いとなった。10億株超の出来高は7営業日連続となり、特殊要因を除けば、株式バブルがピークに達した89年12月にかけての8日連続以来だ。低位の鉄鋼やエレクトロニクス関連の出来高が急増し、流動性に主眼を置く投機が市場を支配している。米国株の上昇に伴い、外国人の資金流入が国内株式を刺激しているというが、米国株も経済実態を反映しているわけではなく、FRBの利下げを先取りした投機が市場を席捲している可能性が高い。

資産運用、現金と債券比率の引き上げ 2003-06-01

中小企業の景況感も徐々に悪化しつつある。商工中金の月次景況観測によると、5月の景況判断指数は43.7と2ヵ月連続で低下した。昨年5月に45.6まで回復したが、景況感の分かれ目である50に達することなく低下局面入りしたようだ。前回のピークも49.8と50に届かなかったが、今回はそれよりもさらに低い水準でピークアウトしており、中小企業の状態は厳しさを増してきているといえる。

投機色強まる株式市場 2003-05-26

 日経平均株価は4月第3週以降、5週連続の外人買い越し(6,158億円)で8,000円台に 乗せることができた。ただ、上昇幅は300円にすぎず、売り圧力は依然大きい。リスクの
高い株式を保有できる投資家は限られており、円高ドル安に伴う外人買いが途切れること になれば、反落することになろう。  売買高が高水準で推移していることも不安材料だ。

りそなに資金注入、一時的な癒し 2003-05-17

「りそなホールディングス」は自己資本比率が4%を割り込んだため、公的資金の注入を申請し、事実上破綻した。政府は公的資金の注入を決定したが、300
兆円前後と推計される非金融法人の過剰資産や急激なデフレの進行などから推測すれば、金融機関の大半はどこも似たり寄ったりの状況に陥っているのではないか。長い間、杜撰な経営計画よって自己資本を水増しするなどの放漫経営をしていたところへ公的資金を注入しても、一時的に傷を癒すだけで、傷口は再び広がることになり、行き詰まるのは目に見えている。

実体経済を織り込んでいない債券利回り 2003 年5月11 日

先週、日経平均株価は8,000 円台を4日連続で維持できた。債券相場は引き続き堅調に推移し、利回りは過去最低を更新した。円は対ドルで上昇し、一時、116
円台前半まで進んだ。海外でも株価は強含み、債券相場は堅調であった。ユーロはドルに対して強く、1ユーロ=1.15 ドル台に上昇した。ユーロ圏の景気も低迷しているが、米連邦準備理事会が6日の連邦公開市場委員会で「リスクは経済が弱含みになる可能性があることに重点が置かれる」と当面の政策運営方針を景気配慮型に転換したことが為替相場に影響した。

異常なシグナルを発している米経済統計 2003-05-05

 米国の雇用は引き続き悪化している。4月の非農業部門雇用者は前月比4.8万人減少し、3ヵ月連続の減少となった。非農業部門雇用者は景気の山(01年3月)をピークに減少していたが、昨年5月から8月には増加に転じていた。だが、その後、雇用の足取りは重く一進一退の状態であったが、今年に入り雇用は減少傾向を強めている。
 4月の非農業部門雇用者は前年比-0.3%と3ヵ月連続のマイナスだ。1月を除けば01年9月以降、前年割れとなり、過去にない長期減少である。90年7月をピークとする景気後退では前年割れは15ヵ月だった。70、80年代の景気後退にも経験しなかった雇用の長期減少が起こっている。4月のPMI指数(50%を下回ると景気後退、上回ると拡大)は45.4%、前月比0.8ポイント低下したように、米国の企業経営者マインドは冷えており、雇用の拡大には慎重である。

3月の米設備稼働率、約20ぶりの低水準 2003-04-21

 米製造業の設備稼働率は3月、72.9%と2ヵ月連続で低下した。昨年12月の設備稼働率を下回り、83年5月以来の低稼働率だ。ITバブルの崩壊によって、2001年に設備稼働率は急低下したが、回復力は弱く、昨年の夏以降、再び緩やかに低下している。
 3月のハイテク産業稼働率は62.1%と製造業を約10ポイント下回っており、低稼働率に苦しんでいる。コンピュータ関連は79.0%まで上昇したが、通信は50.9%、半導体等は65.4%と低く、収益が拡大する状態ではない。(来週の週刊マーケットレターは休みます)

実体経済からの乖離が大きい米国株式 2003-04-13

バクダッド陥落にも米国株式が反応しないのは、戦争終結をすでに織り込んでいたことに加えて、米国の短期景気循環が下降しつつあるからだ。OECDの米景気先行指数は2月、129.7と2ヵ月連続で低下した。昨年末には回復しつつあったが、昨年4月の131.8を超えることはなく、失速していきそうだ。ミシガン大学消費者センチメント指数(4月、83.2)や小売売上高(3月、前月比2.1%増)は前月比では上昇したが、センチメント指数の水準は低く、小売売上高も前年比で回復していくかどうか不透明である。

米国景気の悪化 (マーケットレター)2003-04-07

「・・・米国の景気も悪化方向にあり株式は割高だ。3月のISM景気指数は46.2、前月比4.3ポイント低下したほか、3月の非農業部門雇用者は前月比10.8万人減と2ヵ月連続で減少した。非農業部門雇用者の減少に歯止めは掛からず、01年3月のピークから205.3万人の減少となった。建設雇用以外はすべて前月比減となり、米国景気の低迷はほぼすべての分野に波及していることが分かる。雇用者数の減少は消費の削減に繋がり、さらに設備投資に影響することになる。住宅や自動車の需要が伸びきっていることから、金融政策で景気を刺激することはできず、米国の景気回復は容易ではない。・・・」

米国経済、足踏み状態で債券強含みか (マーケットレター) 2003-03-30

 イラク戦争の短期終結観測の後退からドルは主要通貨に対して下落した。急騰したNYダウは28日まで3日続落となり、つれて欧州の株式も売られた。一方、急落の反動から欧米の債券や原油等は買い戻された。市場は戦況に左右されるめまぐるしい展開となった。
 日本株は前週比ではわずかに上昇したが、商いは低調であり、売買代金は26日以降、4,000億円台にとどまった。

原油価格、戦争終結織り込む(マーケットレター) 2003 年3月23 日

原油価格、戦争終結織り込む3月21 日のNY ダウは8,521 ドルと8営業日連続の上昇となり、その間の上げ幅は約1,000ドルとなった。週間では+8.4%と1982
年以来の上昇率だ。19 日から米英のイラク攻撃が始まったが、米英軍のイラクへの進攻が速く、戦争の短期終結観測が強まったからだ。独DAXが13.0%の高パフォーマンスを見せたほか、英FTSE100
も7.2%上昇するなど、世界の株価は軒並み急騰した。半面、債券は売られ、原油は急落、ドルは買い戻された。

原油・金価格の急落 2003-03-17 (マーケットレター)

 3月第2週のマーケットは、2週連続で下げていた米国株式が上昇(前週末比)したことから、ドルが主要通貨に対して上昇した。予想外に上昇していた商品市況は、イラクへの武力行使が近いとの読みから、原油と金価格は大幅に下落した。海外債券相場は週央までは堅調であったが、週末にかけて英・独債は売られた。一方、国内債券相場は週末比では変わらずだが、11、12日と過去最低を更新し、0.71%まで低下した。

1月の機械受注、電気機械受注はピークに (マネーサプライ)

受注総額は前月比+18.4%と大幅に増加した。民間設備投資に先行する民需(船舶・電力を除く)は7.0%増と2ヵ月連続のプラスとなった

2月のマネーサプライと貸出・資金吸収動向

■昨年11月以降、マネーサプライ(M2+CD、MS)は3ヵ月連続で伸びが鈍化していたが、2月は前年比2.0%増と前月の伸びを0.1ポイント上回った。ただ、昨年3月の3.7%増をピークに緩やかに低下している流れは変わっていない。現金と預金通貨の合計額であるM1の伸びは低下し、定期預金等の準通貨のマイナス幅は縮小しているが、M1(336.0兆円)が準通貨(317.2兆円)よりも多い状態が昨年4月以降、11ヵ月続いている。

量的緩和剥げ、2月のマネタリーベースの伸び鈍化

3月4日、2月のマネタリーベース(MB)が発表されたが、前年比12.6%と3ヵ月連続で鈍化した。ピークである昨年4月に比べると、伸び率は3分の一に低下した。01年12に、日銀は日銀当座預金残高を10〜15兆円程度に拡大したことから、MBの伸びは高くなり、02年4月には36.3%に急伸した。昨年10月から日銀当座預金残高を15〜20兆円へとさらに増やし、昨年12月以降、日銀当座預金は上限に張り付いている。が、量的緩和の効果は一巡しつつあり、日銀当座預金が現状の規模にとどまるならば、MBの伸びは低下していくことになろう。

資金運用は株式から債券へ  2003年2月28日

28日の円ドル相場の終値は118円10銭と前週末比55銭の円高となった。日銀総裁に福井氏が内定したことから、金融政策の大きな変更はないと判断、円は一時116円台に上昇した。インフレターゲットの導入に積極的ではないとの見方から、為替相場に影響力の大きい日米の物価格差は引き続き円高に作用する見通しだ。週末にかけては2月の当局の介入が明らかになるなどで118円台に弱含んだ。前週末比、ユーロも対ドルで上昇し、ドルはじり安傾向にある。イラク攻撃にs踏み切った場合、米国経済は消費者マインドの冷え込みなどで、景気の腰折れが予想される。FRBはFFレート(現状1.25%)をさらに引き下げて、金融面から景気を支援することになろう。こうした金利の先行き低下見通しもドル安を誘っている。2月の米消費者センチメント指数は79.9と2000年5月をピークとする悪化に歯止めは掛かっていない。米消費者センチメント指数はすでに9年前の低い水準に落ち込み、消費マインドは戦争突入を織り込みつつある。

景気に反応しない日本株

「・・・・02年12月20日の日経平均株価は8,406円だが、89年末の過去最高(38,915円)に比べ ると、78.4%の減少だ。六大都市商業地地価よりも株価の下落率が小さいことから、
土地よりも株式を売るという裁定が働くことになるはずだ。土地並みに下落すれば、 日経平均株価は6,304円と現状をさらに25%下回ることになる。六大都市商業地の処分
はほとんど手着かずの状態であり、土地の処分売りはこれから出てくるであろう。こ れだけ下落したけれども、土地バブルは完全に弾けておらず、首都圏でオフィスビル
供給が大幅に増大する03年には商業地の下落幅は拡大する可能性が高い。03年9月の 六大都市商業地が前年比13%下落することになれば、ピークの14.1%になる。これを株
価に当てはめれば5,487円となるが、バランスシートの改善が遅れている現状に鑑みれば、想定しておくべき水準だといえるのではないか。「人間の経済」第65号、0
2年12月22日刊)