「人間の経済」、第233号

・町工場の現場から(19)ー職人技 杉浦明巳

H社の鍛造は、製品が大きく、手作業という点で、他の鍛造会社とは異なっていた。普段は、材料の鋼材を切断して、建設機械や工作機械の部品を中心に作っている。

ただ、大手の鉄鋼会社が金型を持たない、イレギュラーな大きさの鋼材の注文が入ると、オーダーに合った製品を、自在に作ってしまうという技術の高さで、売り上げも好調な会社だった。つまり、量産型の製品ではない。

30センチ、40センチの丸や四角い鋼材に、熱を加えて、マニピュレーターと呼ばれる、大きな鋏でつかんで、プレス機に掛けながら、注文の長さに、伸ばしたり、球にしたりして成形していく。3、4人でチームを組んだ、この技は、長年の経験と勘による手作業で、社長の見立てひとつに掛かっていた。

1000度からの真っ赤な鉄の塊を扱っていると、化繊の衣類や、プラスチックの眼鏡のフレームなど、簡単に溶けてしまうのだそうだ。さながら、焦熱地獄のような、現場の様子に、思わずゾッとするが、そんな現場を一度、自分の目で確かめたいと思っていた。・・・

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