週刊マーケットレター 2003

米物価の歴史的な低下、低報酬・稼働率 2003-12-22

7−9月期の実質GDPが前期比年率8.2%の高成長となったが、物価が一段と沈静化して いる要因のひとつに、雇用者報酬の抑制を挙げることができる。01年7−9月期までは名
目GDPが雇用者報酬の伸びを下回っていたが、01年10-12月期以降は8四半期連続で名目 GDPが雇用者報酬を上回った。03年7−9月期の前年比伸び率の差異(名目GDP–報酬)は
2.7ポイントに拡大しており、雇用者の分け前は縮小している。

 11月の設備稼働率は75.7%と6月の74.0%を底に回復しているが、前年比では0.3ポイント の上昇にとどまっている。02年までの平均稼働率(81.3%)を依然大きく下回っており、
稼働率の上昇が生産性を高め、物価を押し下げる役割を果たしていように見受けられる。

80%程度までの稼働率上昇であれば、引き続きコスト低下につながり、物価低下に寄与す るであろう。7−9月期の労働生産性は前年比+5.0%と2四半期連続して伸びは拡大した
が、機械設備に余裕があることから来年も労働生産性の高い上昇が期待できそうである。

*今年の週刊マーケットレターは今回で終わります。次回は1 月12 日号からとします。年 末年始は市場参加者が少なく、ヘッジファンドなどが薄商いを突いて相場が大きくぶれる
こともあります。ユーロがさらに上昇するかどうかも興味あるところです。商品市況は世 界的な物価安定により、落ち着くでしょう。よいお正月をお迎えください。

機械受注の大幅増にも株価反応薄 2003-12-15

 10月の民需(船舶・電力を除く)は前月比17.4%増と予想を上回る伸びとなったが、株式市場の反応は限定的であった。製造業は10.2%と2ヵ月連続の2桁増となったことに加えて、非製造業も20.1%増と急増した。製造業ではウエイトの高い電気機械や一般機械が大幅に伸び、非製造業は主力の通信業が33.4%も増加した。これだけ機械受注が伸びても、株式相場の反応が鈍いのは、すでに相場に織り込み済なのか、これ以上の受注の伸びは期待できないと思っているからであろう。
 民需の前年比伸び率は23.1%と00年10月以来の高い伸びとなった。民需が前年比20%を越えることは稀であり、ピークが近いと判断してよい。ITバブルのときのピークでは45.8%(00年8月)も増加したが、ピーク以前に20%を上回ったのは2ヵ月であり、ピーク後を加えても5ヵ月に過ぎず、頻繁にみられる現象ではないのである。
 10月20日をピークに日経平均株価は下降しているが、下降局面では株価は機械受注に先行していることが読み取れ、機械受注からも厳しい状況にあることが窺える。「あしぎんFG」の出来高が膨らんだことで、出来高は引き続き多いが、売買代金では1兆円を下回っており、市場参加者は売買を手控えている。信用買い残の整理も進んでおらず、信用買いの手仕舞いが、今後売り圧力になることは間違いない。日経平均株価の予想株価収益率は23.5倍に上昇し、配当利回りは0.99%と長期金利を下回っており、株価は割高である。
 日本不動産研究所によれば、9月末の全国全用途平均地価指数は前年比7.9%減とマイナス幅は3月比0.8ポイント拡大し、過去最大となった。デフレが沈静化するどころか、地方を中心に拡大する有様では、株式など買えるわけがない。儲けることができたとしても偶然であり、深追いすれば必ず大きくやられることになる。株式投資はデフレが鎮まってから始めるべきである。

7−9月期の企業収益、一部に偏る 2003-12-07

 財務省の『法人企業統計』によると、7−9月期の売上高は前年比+2.2%と2四半期連続で増加した。昨年7−9月期が-6.9%の大幅減収だったことからみれば、伸び率は決して高くない。製造業は+1.3%と前期の+3.9%から伸びは低下した。一般機械や輸送機械は2桁増となったが、夏場の低温によって食品が2桁減となったほか、クーラー等の不振で電気機械もマイナスとなった。サービス業や運輸・通信業の拡大により、非製造業の売上高は2.6%増と製造業の伸びを上回った。

 営業利益は前年比10.3%増と02年7−9月期以降、5四半期連続のプラスとなった。製造業は18.6%増加したが、02年10-12月期の71.2%増をピークに3四半期連続で伸び率は鈍化した。非製造業は5.3%と2四半期ぶりのプラスとなったが、営業利益の前年比増加額の7割弱は製造業が占めた。製造業の営業利益のうち電気機械が66.5%、一般機械が20.6%を占めており、営業利益の増加は一部の業種に偏っているのである。

 

金融不安の再燃 2003-12-01

 株価がピークアウトした時期に「足利銀行破綻」の悪材料が飛び出し、信用不安の 後退により上昇した銘柄が、売り圧力にさらされることになりそうだ。「りそな」へ
の公的資金注入が信用不安を鎮め、株式市場に好影響を与えたが、国有化し株式価値 がゼロとなった今回の措置によって、金融不安が再び台頭してこよう。4月末以降、
銀行、建設、不動産といった不良資産を多く抱えた企業の株価が急騰したが、信用不 安の高まりで手放す動きが強まる見通しである。

 名目GDPの減少とデフレという厳しい経済情勢のなかでは、公的資金の投入を続け るだけでは金融部門はなかなか健全な姿に戻れない。財政が危機的状況にある一方
で、国民負担となる金が「金融危機対応会議」の数十分の議論で使われる理不尽なこ とがまたも遂行された。日債銀や長銀が国有化された後に発見された膨大な不良債権
を公的資金で埋め合わせた教訓が活かされることなく、安易に国有化の道を選んだ。

 10月の銀行貸出残(396兆円)は前年比-4.7%と減少し続けているが、地方銀行 (131兆円)は前年比0.6%増加した。都銀は大企業の借入返済や不良債権処理などで
貸出は7.6%減と大幅に減少したが、地銀は不良債権処理が思うように進展せず、貸出 をそのままにしているケースが多いのではないか。地方経済の不振が地価下落に拍車
を掛けていることも、地銀のバランスシートを痛めていると考えられる。7−9月 期、GDPデフレーターは前年比2.7%下落したが、デフレが企業の資産劣化や収益悪化
を引き起こし、貸付や利払いの焦げ付きとなっている。

日経平均の10,000円割れとドル全面安 2003-11-25

 先週、日経平均株価は10,000円の大台をあっさり割り込み、一時9,600円台に下落した。週末は9,800円台にやや回復したが、戻りは弱く、このままずるずると下値を切り下げていきそうだ。

 上場企業の収益は回復しているとはいえ、外需頼みでは来期の利益がさらに増大するとは考え難く、株価にもっとも影響力のある業績面からの株価支援は期待できない。エレクトロニクス関連企業の株価収益率は異常に高く、業績を度外視した短期売買で株価はなんとか維持されてきたが、買い手控えられ短期売買が出来なくなると、株価は下振れしていくのである。信用不安の一時的後退によって、低位の信用不安銘柄が急騰したが、「山高ければ谷深し」で今度はそうした銘柄が急落している。

  

 米国では投信の短期売買等が問題になっているが、運用体制が欧米に大きく遅れている日本の機関投資家の運用姿勢はどうだろうか。運用に無知な人材が投信会社の重要なポストに就き、経験の浅いファンドマネジャーが資産を運用している状況を直視するならば、米国以上に日本の投信の問題は大きいように思う。

7−9月期の日本経済、デフレ拡大しマイナス成長に反落 2003-11-17

先週末、7−9月期のGDPが発表された。デフレーターは前年比2.7%低下し、前期よ りもマイナス幅はやや拡大し、実質的に日本経済は94年7−9月期以降、9年以上の
長期にわたる物価下落に苦しめられている。民間最終消費支出のデフレーターは1.6% 減と前期と同じだが、民間企業設備は7.2%下落し、5四半期連続して過去最大を更新
した。民間設備投資に比べれば、下落率が小幅な公的固定資本形成も2.4%低下した。 世界経済史上類を見ない物価の長期下落は、需要の低迷と固定資本ストックの過剰に
よって引き起こされており、デフレが終息する兆しは見えない。

 物価下落により実質GDPは嵩上げされ、前年比2.5%増加したのを見て、「景気の回 復傾向が鮮明になってきた」とコメントする社説も見受けられるが、新聞社では物価
の下落率が、売上げの減少率を上回り、実質プラスとなれば、「売上げの回復傾向が 鮮明になってきた」と評価するのであろうか。戦前の大本営発表と変わらない新聞報
道が社会を惑わしている。

 名目GDPは前年比-0.3%と2四半期ぶりにマイナス成長になり、経済規模は3.3兆円 縮小した。4−6月期は9四半期ぶりのプラスになったが、プラス成長は1四半期で
終わった。民間最終消費支出は3四半期連続で微減だったが、7−9月期は-1.4%と 99年10-12月期以来の大幅な減少となり、個人消費の不振がプラス成長を阻んだ。GDP
の下落をこの程度にとどめることができたのは、純輸出(輸出–輸入)が前年比 +51.9%と急増し、GDPを0.6ポイント引き上げたからである。

 個人消費が減少する半面、民間設備投資は6.0%増と4四半期連続のプラスだ。だ が、個人消費が減少している状態では、民間設備投資の拡大を持続させることは不可
能である。輸出関連やハイテクの一部では生産設備の増設が期待できるが、内需関連 は設備増強ではなく設備処理が優先されよう。需要の減少が止まらないなかで、物価
を安定させることができるのは既存の過剰設備を破棄し、適正規模に縮小することに よってのみ可能になる。

選挙後、株式相場への疑念強まる見通し 2003-11-10

 9月の世界半導体売上高が前年比17.5%増加したことや10月のISM製造業景気指数の上昇を好感し、ハイテク関連企業を多く抱えるナスダックは堅調に推移した。一方、週末に発表された10月の米雇用統計が改善したにもかかわらず、NYダウは値を下げた。衆議院選挙を控え、日経平均株価も頭の重い展開となり、週間の上昇率は小幅にとどまった。 

強い経済指標でるが、外需頼みで楽観は禁物 2003-11-03

・・・最終製品の多くはアメリカへ向っている。7−9月期の米国経済成長率が前期比年率7.2%伸びたことが、日本の半導体・電子部品等の輸出を引き上げたことは間違いない。

 輸出は好調な半面、内需は引き続き不振である。9月の輸出額(季節調整値)は4兆7千8百億円と6ヵ月連続で前月を上回り、10ヵ月ぶりに過去最高を更新した。輸出数量指数も9月、前年比4.5%と3ヵ月連続のプラスとなった。他方、9月の商業販売統計は前月比3.0%低下し、1年ぶりに90年代の最低を更新した。このように、内外需の動向はきわめて対照的であり、依然不振な国内需要だけで鉱工業生産を3.0%も引き上げることはできなかったはずだ。輸出と半導体関連の強い需要に支えられたからこそ強い数字がでたのである。内需が主力のパルプ・紙・紙加工品工業は2ヵ月連続の前月比マイナスとなっており、国内景気は鉱工業生産が示すほど良くない。10-12月期の米経済成長率は鈍化する見通しであり、輸出に過度の期待を寄せるのは危険だと思う。

収益回復阻む過剰資産 2003-10-27

 『法人企業統計』(財務省)によると、02年度の全産業売上高は前年比-0.9%と2年連続で減少した。販管費比率は横ばいだが、粗利率の改善により、営業利益は8.4%増と2年ぶりのプラスになった。売上げが減少する環境で利益を拡大できたのは、従業員を71万人、前年比2.0%削減したからである。これによって、従業員給与が2.4兆円削減され、同額、営業利益は増加した。

株式市場のバブル化2003-10-20

 9月の企業倒産件数は1,238件、前年比18.2%減少し、99年4月以来約4年半ぶりの低い水準となった。企業倒産件数は01年10月のピーク(1,911件)以降も高水準に張り付いていたが、すでに本レポートで取り上げたように、今年2月に始まった「資金繰り円滑化借り換え保証制度」によって、中小企業の借り換えが容易に行われるようになり、倒産件数は著しく減少してきている。経済状態が大きく改善したわけではなく、人為的に企業を救済していることから、企業倒産件数の減少は一時的であり、借り換えが一巡すれば、倒産件数は増加することになろう。
 日銀の量的緩和や倒産件数減、外資の買い等により、銀行株は大商いが続き、小会社の証券会社の株価も急騰した。ソフトバンク等の情報通信関連株もITバブル期を彷彿させるような値上がりとなり、投機色が強まっている。10月10日現在の信用買い残は2兆332億円と2000年12月以来の2兆円超となった。急騰した銘柄の株価収益率(株価を1株当り当期純利益で割ったもの)は異常に高くなっており、日本の株式市場は再びバブルに突入したといっていいだろう。

 

景気に効かない量的緩和 2003-10-13

 日銀は10日の金融政策決定会合で、日銀当座預金残高の目標値の上限を2兆円増額し、これまでの「27〜30兆円程度」から「27〜32兆円程度」に引き上げた。福井俊彦氏が日銀総裁に就任してから、これが4度目の量的緩和である。同日、衆議院が解散され総選挙に突入したが、小泉政権を金融面から支援する意図も感じられる。
 週末、円ドル相場は108円台に上昇した。過去1ヵ月で8円強上昇した急激な円高を阻止する狙いも窺われるが、量的緩和では効き目はない。ゼロ金利下では日本サイドの円安誘導は不可能である。円売りドル買いで買い増した米短期証券を売却する方法もあるが、売却資金のドルを円に変えることはできず、結局、ドル資産の購入に落ち着くことになる。いつものことながら、為替相場は今回も米政府の意向が強く反映されたものになろう。
 量的緩和をしても、資金需要は生まれず、銀行に資金は滞留するばかりだ。9月の貸出(銀行計)は前年比-5.0%と減少幅は依然大きく、返済された資金の大半は国債の運用に振り向けざるを得ない。日銀は銀行保有の国債を購入し、日銀当座預金残高を積み増すというのが量的緩和である。9月末の日銀当座預金残高は34.5兆円、前年比16.0兆円増加し、日銀保有の国債は91.8兆円、同8.2兆円増加した。
 量的緩和は銀行保有の国債を日銀当座預金に変えるだけである。銀行資産の大半は貸出と有価証券だが、国債を日銀に売却し、その売却額が当座預金に振り向けられているのである。日銀は新発の国債を購入できないが、銀行経由ではいくらでも国債を購入できるようになっている。資金需要が盛り上がらずに貸出の減少が続くことになれば、銀行は国債を購入し、それを日銀が購入するという仕組みは続くであろう。
 日銀によれば、量的緩和は「景気回復に向けた動きをより確実なものとすることに資する」ようだが、銀行資産を国債から当座預金に変えているだけであり、景気にはなにの影響も与えることはできない。いくら量的緩和をしても、貸出の落ち込みを止めることができないことが、量的緩和の行き詰まりを証明しているではないか。マネーサプライでさえもマネタリーベースの10分の1程度しか伸びていない。日銀当座預金残高は準備預金等の10倍程度に膨らんでいることから、信用乗数は極端に低下している。量的緩和では日本経済を刺激することができないのは明白である。

生産減速下での円高 2003-09-29

8月の貿易黒字は前年比23.1%増と2ヵ月連続の増加となった。対米黒字額は5.0%減少 したが、対アジアの黒字額が+42.0%と急増したからだ。対世界の輸出指数(数量ベース)
は前年比-0.1%と2ヵ月ぶりに減少した。昨年11月の17.6%増をピークに伸びは急速に鈍化 している。対米の輸出指数(数量ベース)は-12.3%の大幅減となり、今年2月以降、7ヵ
月連続の前年割れだ。対米輸入指数(数量ベース)は8月、-24.0%の大幅減となったこと が、対米黒字額の減少を小幅にとどめた。本来、対米輸出指数の減少は円高を阻止する要
因になるはずだが、米政府主導の円高では、国内要因の為替レートに及ぼす力は微力であ る

 輸出数量指数と鉱工業生産指数は相関性が強く、一般的に、輸出にやや遅れて鉱工業生 産が変化するといわれている。輸出数量指数の前年比伸び率は昨年11月をピークに低下し
つつあるが、2ヵ月遅れて、鉱工業生産指数もピークをつけ、7月は前年を0.3%下回った

このように、すでに輸出数量が減少しているときに、円高ドル安が急速に進行することに なれば、鉱工業生産の減少が加速することは目に見えている

 経済産業省の『商業販売統計』によると、8月の小売業販売額は前年比2.0%減少した

マイナス幅は7月に比べて縮小したが、最終需要は引き続き弱く、プラスに転じる展望は 描けない。小売の不振は生産に影響しているが、製造業が円高で痛められることになれば、
製造業部門の購買力の低下が小売業に影響しよう

 9月の月例経済報告(9月12日)で、政府は「景気は、持ち直しに向けた動きがみられ る」との基調判断を示した。「持ち直しに向けた動きがみられる」ということは、政府は
円高ドル安の材料を提供したことになる。だが、生産や消費の動きは「持ち直しに向けた 動き」をみせておらず、景気は悪化の方向を向いている。政府の景気判断が円高に荷担し、
製造業を中心とした景気マインドの悪化が真実味を帯びてきた。

無視できない円高 03 年9 月22 日週号

 外人は日本株を引き続き買い越しており、4月第3週以降、22週連続の買い越しで ある。5月に発表された1−3月期の実質GDPが前年比+2.9%に上昇し、米国の成長率
を0.9ポイント上回った。日本の実質成長率が米国を上回ったのは01年4−6月期以 来、7四半期ぶりである。03年4−6月期も日本の成長率が高くなり、成長率格差の
観点から対日株式投資を増やしているのだろう。ただ、4−6月期の名目成長率はプ ラスになったとはいえ0.5%増にすぎず、米国のほうが高い。単に、実質成長率の比較
だけで投資方針を決めることは非常に危険だ。

 外人は円高ドル安の進行を見込んで、日本株買いを積極化している側面もある。米 雇用環境は依然厳しく、米国は為替メカニズムによる貿易収支の改善を期待してい
る。20日のG7の声明文にも「為替レートの更なる柔軟性が望ましい」と謳われてお り、日本政府は7月までに実施したような過度の市場介入に踏み込めない言質を取ら
れた。

 「個人消費が強まっている半面、労働市場は依然弱含んでいる」との連邦公開市場 委員会(FOMC)声明文(16日)のように、米国は景気回復期に見られないような厳し
雇用環境に直面している。来年、大統領選を控えているが、ブッシュ大統領の支持率 は低下傾向にあり、雇用の回復はイラク情勢とともに支持率回復の重要な政策課題で
ある。

 貿易黒字国に対して為替レートの調整を主張することは、米国の常套手段であり、 今後、日本や中国に対してさらに圧力をかけてくると、株式・為替市場は読んでいる
のではないか。円高ドル安は相当のタイムラグはあるが、米失業率の引き下げに関連 がありそうだ。日本が米国よりも成長率が高いことから、今度は日本がブッシュ政権
を為替を通して支えるべきだと要求しているのだろう。

 政府は今年7月までの7ヵ月で約9兆円の大規模な円売りドル買い介入を行った が、円高傾向を止めることができなかった。8月以降は、市場介入を控えていること
も、最近の円買いドル売りを勢いづかせている。

 6月調査の『短観』によると、事業計画の前提となっている想定円ドルレート(大 企業・製造業)は117.88円である。すでに想定レートよりも4円弱の円高に振れてい
ることから、企業収益の下振れ要因になろう。市場信奉者の多い米政策当局者の顔ぶ れから判断すると、為替メカニズムによる調整をもっと前面に打ち出してくる可能性
もある。そうなれば日本の株式市場は為替問題を無視できないはずだ。

信用収縮に歯止めは掛からず 2003-09-15

 日銀の量的緩和政策によって、マネタリーベースは今年3月の前年比10.9%を底に 回復していたが、8月は20.5%増とここ3ヵ月、伸び率はほぼ横ばいである。20%強増
加しているといっても、増加額の8割は日銀当座預金の寄与分であり、日銀券の寄与 は2割にすぎない。日銀当座預金には29.2兆円積み上げられているが、8月の銀行貸
出は前年比5.2%減と2ヵ月連続でマイナス幅は拡大しており、量的緩和は貸出に結び ついていない。マネタリーベースの伸びによって、マネーサプライ(M2+CD)も増加
しているが、伸び率は緩慢である。準通貨のマイナス幅は1%以下になってきたが、 縮小は依然続いており、規模では現金・預金通貨を30兆円ほど下回っている。郵便貯
金の前年割れ等により、8月の広義流動性は+1.1%の低い伸びにとどまった。M2+CDを マネタリーベースで除した信用乗数の低下に歯止めは掛かっておらず、信用収縮の状
態から抜け出していない。

 主要行12行だけでも43.7兆円の不良債権を抱えており、地銀や信金等を加えると、 不良債権はこれを大きく上回ることは間違いない。こうした巨額の不良債権が資金の
流れを滞らせ、経済の本格回復を阻害していると考えられる。株式相場の回復によ り、悲観論は後退しているが、日本経済の金融構造は依然脆弱なままである。巨額の
不良債権を裏返せば、企業の過剰資本ストックに突き当たる。需要が右肩下がりの状 態にあることから、資本ストックを適正規模に削減することは容易ではない。

株式市場は企業収益の鈍化にいつ気付くのか 2003-09-08 

株式は出来高が10億株を越える大商いが続いており、先週も日経平均株価は続伸し た。景況感の回復を背景に、米国株を始め外国株式も底堅い動きをしており、景気回
復期待を織り込みつつある。7月のOECD景気先行指数は前月比1.1%上昇した。今年4 月まではもたついていたが、その後、回復力は強まり7月までの3ヵ月で3.0%の上昇
となった。景気の改善を示す統計に反応して主要国の債券利回りは急上昇したが、週 末の米非農業部門雇用者減によりやや持ち直した。    東証によると、信用買い残は1.5兆円(8月29日時点)に達し、昨年8月以来の高
水準となった。買い残は今年1月第2週(8,099億円)を底に7ヵ月以上増加してい るが、特に、6月以降は外人買いに刺激され、急激に増加しており、株価上昇要因の
ひとつに挙げることができる。   買いが買いを呼ぶという投機相場が信用買い残を膨らましているが、企業業績を顧 みるならば、投機にうつつを抜かしてもいられないことが分かる。先週4日に発表さ
れた『法人企業統計』(財務省)によると、今年4−6月期の全産業売上高は前年比 2.4%増と8四半期ぶりの増収となったが、営業利益は2四半期連続で低下し、4.6%増
益にとどまった。製造業は21.3%増と高い伸びを維持できたが、非製造業は-3.3%と2 四半期ぶりの減益となった。運輸通信業や電気業などが大幅減益になったことに加え
て、小売業も減益から抜け出すことができなかったからだ。非製造業の営業利益は今 年1−3月期に+1.2%と僅かに浮上したが、プラスは2四半期続かなかった。製造業
では鉄鋼業や精密機械が大幅増益となったが、電気機械は6.9%増と伸び悩んだ。昨年 10-12月期、製造業は前年比+71.2%に急回復したが、営業利益の伸びは急速に鈍化し
つつあり、7−9月期の増益率はさらに低下する見通しである。  設備投資は+6.4%と7四半期ぶりの前年比プラスになったが、収益に遅行するた
め、今後、伸びの拡大は期待できないであろう。一般機械や輸送用機械は2桁増と なったが、主力の電気機械が7.3%の増加にとどまり、食料品や化学が2桁減と不振で
あったことから、製造業では3.8%増の低い伸びとなった。不動産やサービス業はプラ スとなったが、建設や電気業などがマイナスとなり、非製造業でも業種によりまちま
ちだった。  上場企業の大半を含む大企業(資本金10億円以上)の営業利益は前年比+2.0%に低 下した。4四半期連続の増益だが、伸び率は昨年10-12月期の35.3%増をピークに低下
傾向をはっきり認めることができる。製造業は32.2%増だが、非製造業は-16.3%と4 四半期ぶりの減益となった。99年の回復期には、営業利益は99年1−3月期に前年比
プラスに転じてから4四半期目の同10-12月期に伸び率は最大になった。ITバブルの 余熱により、株価は営業利益の伸びが鈍化していた00年4月まで上昇した。
 家計消費や小売売上高などが大きく落ち込んでいることから、7−9月期の企業収 益の伸び率回復は見込めそうにない。株式市場は今年1−3月期以降の収益率鈍化に
いつ気付くのだろうか。遅れれば遅れるほど、痛みは大きくなるのだが。

実体経済と乖離する株価 2003-09-01

 7月の鉱工業生産指数は前月比+0.5%と2ヵ月ぶりにプラスに転じたが、前年比で は変わらずとなり、今年1月の8.0%増をピークに伸び率は低下し、前年割れ寸前の状
態にある。出荷指数は2ヵ月連続の前月比減となり、在庫と在庫率指数はともに前月 比で増加した。

 鉱工業生産指数の前年比増減率と株価は、相関度が強いことがチャートから読み取 ることができる。生産の伸びが低下しているときに、株価が本格的に上昇するケース
は見当たらず、今回の反発は短期で終わりそうだ。ハイテク産業の代表である電子部 品・デバイス工業の生産は昨年10月の前年比38.0%をピークに今年7月には8.4%に鈍
化した。情報通信機械工業と電気機械工業は2.4%、1.8%にそれぞれ低下しており、ハ イテク産業の生産は明らかに下降しているといえる。

 売上げの不振を反映して耐久消費財の出荷は2ヵ月連続の前月比大幅減となり、前 年比でも-0.5%と昨年6月以来の前年割れとなった。在庫は6月まで5ヵ月連続の前
月比減と在庫調整は進んでいたが、7月は前月比8.2%と急増した。非耐久消費財の出 荷も7月、前月比4.3%減少した半面、在庫は5.4%増加し、今後、在庫減らしのために
消費財の生産は抑制されるであろう。生産財の在庫も4ヵ月連続で増加し、前年比で も2ヵ月連続のプラスだ。景気指標の好転を指摘するコメントが目に付くが、実際の
指標は生産が落ち込み、意図しない在庫が積み上がるといった景気下降のリスクが高 いことを示唆している。

 実体経済と市場の乖離は拡大しつつある。投機が優勢なときほど、実体は霞んで見 え難くなるということを80年代後半以降のバブルで経験したが、出来高が膨らみバブ
ルに直面すると、またも実体を見失ったようである。

輸出に遅行する生産2003-08-04

6月の鉱工業生産指数は前月比-1.2%と2ヵ月ぶりに低下した。今年1月以降、プ ラスとマイナスが交互にあらわれており、先行きに自信が持てない企業心理を裏付け
ているようだ。前年比では2.8%と前月よりは持ち直したものの、前年同月がプラスと なる7月は、伸びが1%程度に鈍化し、今年1月をピークとする生産減に歯止めは掛
かっていないことが確認できるだろう。景気に敏感な生産財生産指数も前月比0.9%減 少する半面、在庫は4月以降、3ヵ月連続のプラスとなった。生産財生産指数は4−
6月期でも前期比減となり、景気の不透明感は増している。

 商業販売統計や家計調査からも販売や消費低迷の様子が明らかであり、国内最終需 要だけで生産を引き上げることは容易ではない。これまでも鉱工業生産を回復に導い
たのは輸出であり、輸出数量指数(前年比)との相関性が高いことがチャートからも 分かる。しかも、輸出数量が鉱工業生産に先行している様子が窺える。

 02年11月、輸出数量は前年比18.2%増加したが、その後、伸び率はほぼ一貫して低 下し、6月は-0.4%と02年3月以来の前年割れとなった。輸出数量に2ヵ月遅れて、
鉱工業生産もピークアウトした。鉱工業生産の回復には輸出数量の増加が不可欠だ が、輸出も主力製品の電気機器や輸送用機器の伸びが鈍化し、金額ベースでも6月は
微減となった。米国向けが2桁減となったほか、韓国や台湾もマイナスとなった。中 国向けは24.7%も伸びたが、アジア全体では3.8%増にとどまった。米国、アジアへの
輸出数量の伸びは今後、一層低迷する方向にあり、それに伴い鉱工業生産も低下して いく見通しである。

ハイテク生産に連動しないソニーの売上げ 2003-07-28

鉱工業生産によると、5月の電気機械工業生産指数は前年比4.6%と伸び悩んでいるほ か、情報通信機械工業はプラスを維持しているものの、前年すれすれの状態だ。電子
部品・デバイス工業の生産は11.3%増だが、昨年10月の+38.0%をピークに大幅に伸び は鈍化している。このような生産指数の動きからも、ソニーを始めとするハイテク企
業の業績が、先行き悪化しそうだという見通しを与えてくれる。

 電子部品・デバイスが01年第4四半期を底に急回復したにもかかわらず、ソニーの 売上は改善しなかったことは重要である。ソニーは海外売上高比率が高く、国内の生
産回復に連動しにくい側面があることは否めないが、ハイテク産業の生産指数との相 関性のなさはソニーブランドの陰りをあらわしているのかもしれない。

 電気機械や情報通信機械の足取りの重さ、電子部品・デバイスの伸び率の大幅な鈍 化などを勘案すると、今後、ソニーの業績はさらに厳しい方向に進むことが予想され
る。ソニーの利益は、クリスマス商戦に当たる10-12月期に偏っており、米国の消費 に依存する度合いが大きい。先週末から、米国では就業児童を持つ家庭に一律400ド
ルの小切手が送付された模様。今後、どの程度、消費を刺激することになるかが焦点 となるが、深刻な財政難から各州は歳出抑制や増税に動いており、政府の減税を相殺
しそうだ。ソニーの業績見通しが、米国の消費回復に大きく依存しているようであれ ば、下方修正のリスクは高い。

転機を迎えた株式相場 2003-07-21

 日経平均株価の週間騰落率はマイナスとなり、4月末以降の急速な上昇相場は転機を迎えたようだ。7月第2週の外人買越額は5,561億円と高水準を維持し、7月の買越額は2週間ですでに1兆1,856億円に達し、6月の規模を越えた。これだけ外人が買っているのに、上昇力が衰えてくるのは、いかに売りが嵩んでいるかということだ。これから、外人は長い夏季休暇に入るが、その前に利益を確定しておくだろう。
外人の買い動向をみると、買い越しは年前半に集中していることが、過去の統計から明らかである。米株式相場がもたついていることも、利益確定を促すはずだ。外人以外に買い主体を見出せない日本の株式市場の構造的な問題が、またも暗雲として垂れこめてきた。

株式の強気心理揺らぐ 2003-07-13

政府の公的資金注入や企業倒産件数の減少により、信用不安が一時的に後退した点は98年末以降の上昇と類似しているが、景気動向はまったく違う。景気が底入れしそうであれば、調整が入ったとしても、上昇は持続しようが、今は、景気が下向きになっており、単に、信用不安の後退だけでは、上昇力の持続性には疑問を持たざるを得ない。

 相場上昇の牽引役であった外人(主力はヘッジファンド)は7月第1週、6,295億円買い越した。買い越しは12週連続となり、累計の買い越し額は2兆8,388億円に達した。米国を中心とする世界のヘッジファンドの規模は6,500億ドル(02年)と過去3年で35%も増加し、世界の金融・資本市場を席捲している。日本の株式市場にもヘッジファンドの資金が流入し、相場を好転させたと考えられる。だが、逃げ足の速いヘッジファンドの資金がいつまでも日本に滞留するわけはなく、すでに次の有望な投資先にポートフォリオを組み替えているのかもしれない。

 先週、証券会社の店頭には、最近ではみられないほどの多数の個人投資家で賑わっていた。株式投資から遠ざかっていた個人が、値上がりに釣られて参加してきていることを物語っている。普段、株式に関心を持たない人まで株式に関心を示しだすと、相場は終わりになるケースが多い。 

投機の罠に陥る個人投資家 2003-07-07

 
売買高は5月29日以降、27日連続して10億株超の大商いが続いている。7月3日は20億株を上回り、売買代金は1兆7,154億円に達した。外人買いによる株価のじり高傾向が、尻の重い個人投資家を市場に駆り立ててきたからだ。株数ベース(東証1部)では委託に占める個人比率は6月、45.5%となり、4月の
38.7%から6.8ポイント上昇し、個人が参加してきていることを裏づけている。株価が天井に近いところで個人が参加し、ばばを掴むことがこれまでしばしば見られたが、今回も同じ轍を踏むことになるのではないか。インターネット証券の注文件数が過去最高を更新し、東証の相場情報が遅れるなど、今の株式市場は異常である。株価が上がれば、普通預金に積みあがっている資金を元に、つい株式に手を出してしまうのだろう。金に対する執着が、結局は投機の餌食になり、貴重な預金が失われてしまうことになりかねない。90年代、このような繰り返しであったが、またも投機の罠に陥りそうだ。

米国の無効な利下げ

 米連邦準備理事会(FRB)は25日の連邦公開市場委員会(FOMC)でフェデラルファンド(FF)レートを0.25%引き下げ、年1.0%とすることを決めた。政策金利の引き下げは昨年11月以来であり、1958年以来45年ぶりの低水準となった。01年1月3日に6.5%から6.0%に引き下げて以来の累計下げ幅は5.5%に達した。
 政策金利の引き下げにもかかわらず、25日のNYダウは下落し、債券も大きく値を下げた。

材料出尽くしと収益不安で米株式軟調な展開か 2003-06-23

 5月の米消費者物価指数が前月比横ばいとなったことから、デフレ懸念が後退し米債券相場は下落した。欧州の債券相場も売りが優勢となったほか、利回りが0.5%を下回るまで買われていた日本の債券も大幅な調整を余儀なくされ、19日には一時0.67%まで急騰した。
 だが、OECDの景気先行指数は4月、前年比では-0.2%と昨年5月をピークに低下し続けており、景気先行指数はOECDの景気下降を示している。主要国の債券は売られたが、世界景気の低迷により、債券安は一時的な現象にとどまり、資金は再び債券市場に流れることになろう。

株式市場のバブル化、経済の撹乱要因に 2003-06-16

 日経平均株価は9,000円手前まで回復、3月11日(7,862円)の安値から14.2%上昇した。ただ、上値は重くなってきており、外人買いだけでは9,000円を突き抜け、さらに上伸していくことはないはずだ。外人買いは8週連続の買い越しとなり、6月6日週の買い越し額は5,016億円(約定ベース)と昨年3月8日週以来の高水準。この間の買い越し額は1兆5,580億円と昨年6月14日週までの9週連続の買い越し額(1兆5,402億円)を上回った。
 NYダウは9,100ドル台に回復したが、米経済環境は不透明であり、金融緩和期待と減税効果を織り込む動きとなっている。5月の小売売上高は前月比0.1%増にとどまったほか、6月のミシガン大学消費者センチメント指数は、期待に反し前月比4.9ポイント悪化の87.2となり、個人消費の足踏み状態は続く見通しである。米国経済の低迷を反映して、堅調な米株式市場が息切れすることになれば、日本株の買い余力も衰え、昨年のような厳しい展開になることも想定しておくべきだ。

株式市場、投機がピークに 2003-06-09

 主要国の株式相場は堅調な展開が続いている。日経平均株価は3週連続の上昇で、年初来高値に接近した。NYダウは9,000ドル台を回復し、昨年7月以来の高水準である。国内債券は上昇相場が持続し、欧米の債券相場も底堅い。政府の円売り介入によって、円は対ドルで弱含み、ユーロも1ユーロ=1.17ドルに下落した。
 国内の株式は活況を呈している。出来高が5月29日以降、10億株を上回り、週末には15億株弱と約10年ぶりの大商いとなった。10億株超の出来高は7営業日連続となり、特殊要因を除けば、株式バブルがピークに達した89年12月にかけての8日連続以来だ。低位の鉄鋼やエレクトロニクス関連の出来高が急増し、流動性に主眼を置く投機が市場を支配している。米国株の上昇に伴い、外国人の資金流入が国内株式を刺激しているというが、米国株も経済実態を反映しているわけではなく、FRBの利下げを先取りした投機が市場を席捲している可能性が高い。

資産運用、現金と債券比率の引き上げ 2003-06-01

中小企業の景況感も徐々に悪化しつつある。商工中金の月次景況観測によると、5月の景況判断指数は43.7と2ヵ月連続で低下した。昨年5月に45.6まで回復したが、景況感の分かれ目である50に達することなく低下局面入りしたようだ。前回のピークも49.8と50に届かなかったが、今回はそれよりもさらに低い水準でピークアウトしており、中小企業の状態は厳しさを増してきているといえる。

投機色強まる株式市場 2003-05-26

 日経平均株価は4月第3週以降、5週連続の外人買い越し(6,158億円)で8,000円台に 乗せることができた。ただ、上昇幅は300円にすぎず、売り圧力は依然大きい。リスクの
高い株式を保有できる投資家は限られており、円高ドル安に伴う外人買いが途切れること になれば、反落することになろう。  売買高が高水準で推移していることも不安材料だ。

りそなに資金注入、一時的な癒し 2003-05-17

「りそなホールディングス」は自己資本比率が4%を割り込んだため、公的資金の注入を申請し、事実上破綻した。政府は公的資金の注入を決定したが、300
兆円前後と推計される非金融法人の過剰資産や急激なデフレの進行などから推測すれば、金融機関の大半はどこも似たり寄ったりの状況に陥っているのではないか。長い間、杜撰な経営計画よって自己資本を水増しするなどの放漫経営をしていたところへ公的資金を注入しても、一時的に傷を癒すだけで、傷口は再び広がることになり、行き詰まるのは目に見えている。

実体経済を織り込んでいない債券利回り 2003 年5月11 日

先週、日経平均株価は8,000 円台を4日連続で維持できた。債券相場は引き続き堅調に推移し、利回りは過去最低を更新した。円は対ドルで上昇し、一時、116
円台前半まで進んだ。海外でも株価は強含み、債券相場は堅調であった。ユーロはドルに対して強く、1ユーロ=1.15 ドル台に上昇した。ユーロ圏の景気も低迷しているが、米連邦準備理事会が6日の連邦公開市場委員会で「リスクは経済が弱含みになる可能性があることに重点が置かれる」と当面の政策運営方針を景気配慮型に転換したことが為替相場に影響した。

異常なシグナルを発している米経済統計 2003-05-05

 米国の雇用は引き続き悪化している。4月の非農業部門雇用者は前月比4.8万人減少し、3ヵ月連続の減少となった。非農業部門雇用者は景気の山(01年3月)をピークに減少していたが、昨年5月から8月には増加に転じていた。だが、その後、雇用の足取りは重く一進一退の状態であったが、今年に入り雇用は減少傾向を強めている。
 4月の非農業部門雇用者は前年比-0.3%と3ヵ月連続のマイナスだ。1月を除けば01年9月以降、前年割れとなり、過去にない長期減少である。90年7月をピークとする景気後退では前年割れは15ヵ月だった。70、80年代の景気後退にも経験しなかった雇用の長期減少が起こっている。4月のPMI指数(50%を下回ると景気後退、上回ると拡大)は45.4%、前月比0.8ポイント低下したように、米国の企業経営者マインドは冷えており、雇用の拡大には慎重である。

3月の米設備稼働率、約20ぶりの低水準 2003-04-21

 米製造業の設備稼働率は3月、72.9%と2ヵ月連続で低下した。昨年12月の設備稼働率を下回り、83年5月以来の低稼働率だ。ITバブルの崩壊によって、2001年に設備稼働率は急低下したが、回復力は弱く、昨年の夏以降、再び緩やかに低下している。
 3月のハイテク産業稼働率は62.1%と製造業を約10ポイント下回っており、低稼働率に苦しんでいる。コンピュータ関連は79.0%まで上昇したが、通信は50.9%、半導体等は65.4%と低く、収益が拡大する状態ではない。(来週の週刊マーケットレターは休みます)

実体経済からの乖離が大きい米国株式 2003-04-13

バクダッド陥落にも米国株式が反応しないのは、戦争終結をすでに織り込んでいたことに加えて、米国の短期景気循環が下降しつつあるからだ。OECDの米景気先行指数は2月、129.7と2ヵ月連続で低下した。昨年末には回復しつつあったが、昨年4月の131.8を超えることはなく、失速していきそうだ。ミシガン大学消費者センチメント指数(4月、83.2)や小売売上高(3月、前月比2.1%増)は前月比では上昇したが、センチメント指数の水準は低く、小売売上高も前年比で回復していくかどうか不透明である。

米国景気の悪化 (マーケットレター)2003-04-07

「・・・米国の景気も悪化方向にあり株式は割高だ。3月のISM景気指数は46.2、前月比4.3ポイント低下したほか、3月の非農業部門雇用者は前月比10.8万人減と2ヵ月連続で減少した。非農業部門雇用者の減少に歯止めは掛からず、01年3月のピークから205.3万人の減少となった。建設雇用以外はすべて前月比減となり、米国景気の低迷はほぼすべての分野に波及していることが分かる。雇用者数の減少は消費の削減に繋がり、さらに設備投資に影響することになる。住宅や自動車の需要が伸びきっていることから、金融政策で景気を刺激することはできず、米国の景気回復は容易ではない。・・・」

米国経済、足踏み状態で債券強含みか (マーケットレター) 2003-03-30

 イラク戦争の短期終結観測の後退からドルは主要通貨に対して下落した。急騰したNYダウは28日まで3日続落となり、つれて欧州の株式も売られた。一方、急落の反動から欧米の債券や原油等は買い戻された。市場は戦況に左右されるめまぐるしい展開となった。
 日本株は前週比ではわずかに上昇したが、商いは低調であり、売買代金は26日以降、4,000億円台にとどまった。

原油価格、戦争終結織り込む(マーケットレター) 2003 年3月23 日

原油価格、戦争終結織り込む3月21 日のNY ダウは8,521 ドルと8営業日連続の上昇となり、その間の上げ幅は約1,000ドルとなった。週間では+8.4%と1982
年以来の上昇率だ。19 日から米英のイラク攻撃が始まったが、米英軍のイラクへの進攻が速く、戦争の短期終結観測が強まったからだ。独DAXが13.0%の高パフォーマンスを見せたほか、英FTSE100
も7.2%上昇するなど、世界の株価は軒並み急騰した。半面、債券は売られ、原油は急落、ドルは買い戻された。

原油・金価格の急落 2003-03-17 (マーケットレター)

 3月第2週のマーケットは、2週連続で下げていた米国株式が上昇(前週末比)したことから、ドルが主要通貨に対して上昇した。予想外に上昇していた商品市況は、イラクへの武力行使が近いとの読みから、原油と金価格は大幅に下落した。海外債券相場は週央までは堅調であったが、週末にかけて英・独債は売られた。一方、国内債券相場は週末比では変わらずだが、11、12日と過去最低を更新し、0.71%まで低下した。

1月の機械受注、電気機械受注はピークに (マネーサプライ)

受注総額は前月比+18.4%と大幅に増加した。民間設備投資に先行する民需(船舶・電力を除く)は7.0%増と2ヵ月連続のプラスとなった

2月のマネーサプライと貸出・資金吸収動向

■昨年11月以降、マネーサプライ(M2+CD、MS)は3ヵ月連続で伸びが鈍化していたが、2月は前年比2.0%増と前月の伸びを0.1ポイント上回った。ただ、昨年3月の3.7%増をピークに緩やかに低下している流れは変わっていない。現金と預金通貨の合計額であるM1の伸びは低下し、定期預金等の準通貨のマイナス幅は縮小しているが、M1(336.0兆円)が準通貨(317.2兆円)よりも多い状態が昨年4月以降、11ヵ月続いている。

量的緩和剥げ、2月のマネタリーベースの伸び鈍化

3月4日、2月のマネタリーベース(MB)が発表されたが、前年比12.6%と3ヵ月連続で鈍化した。ピークである昨年4月に比べると、伸び率は3分の一に低下した。01年12に、日銀は日銀当座預金残高を10〜15兆円程度に拡大したことから、MBの伸びは高くなり、02年4月には36.3%に急伸した。昨年10月から日銀当座預金残高を15〜20兆円へとさらに増やし、昨年12月以降、日銀当座預金は上限に張り付いている。が、量的緩和の効果は一巡しつつあり、日銀当座預金が現状の規模にとどまるならば、MBの伸びは低下していくことになろう。

資金運用は株式から債券へ  2003年2月28日

28日の円ドル相場の終値は118円10銭と前週末比55銭の円高となった。日銀総裁に福井氏が内定したことから、金融政策の大きな変更はないと判断、円は一時116円台に上昇した。インフレターゲットの導入に積極的ではないとの見方から、為替相場に影響力の大きい日米の物価格差は引き続き円高に作用する見通しだ。週末にかけては2月の当局の介入が明らかになるなどで118円台に弱含んだ。前週末比、ユーロも対ドルで上昇し、ドルはじり安傾向にある。イラク攻撃にs踏み切った場合、米国経済は消費者マインドの冷え込みなどで、景気の腰折れが予想される。FRBはFFレート(現状1.25%)をさらに引き下げて、金融面から景気を支援することになろう。こうした金利の先行き低下見通しもドル安を誘っている。2月の米消費者センチメント指数は79.9と2000年5月をピークとする悪化に歯止めは掛かっていない。米消費者センチメント指数はすでに9年前の低い水準に落ち込み、消費マインドは戦争突入を織り込みつつある。

景気に反応しない日本株

「・・・・02年12月20日の日経平均株価は8,406円だが、89年末の過去最高(38,915円)に比べ ると、78.4%の減少だ。六大都市商業地地価よりも株価の下落率が小さいことから、
土地よりも株式を売るという裁定が働くことになるはずだ。土地並みに下落すれば、 日経平均株価は6,304円と現状をさらに25%下回ることになる。六大都市商業地の処分
はほとんど手着かずの状態であり、土地の処分売りはこれから出てくるであろう。こ れだけ下落したけれども、土地バブルは完全に弾けておらず、首都圏でオフィスビル
供給が大幅に増大する03年には商業地の下落幅は拡大する可能性が高い。03年9月の 六大都市商業地が前年比13%下落することになれば、ピークの14.1%になる。これを株
価に当てはめれば5,487円となるが、バランスシートの改善が遅れている現状に鑑みれば、想定しておくべき水準だといえるのではないか。「人間の経済」第65号、0
2年12月22日刊)