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WIR、経済協同組合の輪--歴史的回顧

::エミール・シュテュツ(WIRバーゼル) 翻訳 Morino,Eiichi

WIR、経済協同組合の輪--歴史的回顧 エミール・シュテュツ(WIRバーゼル)

経済協同組合の輪WIRは1934年10月16日、 チューリッヒで設立された。それゆえ我が組織が 生まれて50年になるまでを考慮することができ る。

 我が組織の半世紀の歴史はもちろん回顧される べき機会を提供しているが、同時にその始まりを 公にし、我が自律的組織の現在の目標を明らかに する義務をも与えている。

 この簡潔な発表には、WIRの歴史的な歩みに加え て、設立時の目標と理想、時の経過のなかでのそ の変容、また、今日に至るまでの経済活動の企業 体としての発展までを読者に提供しようとの意図 がある。したがって、出来事を詳細に解き明かす ことで正確な年代記を提供しようとするものでは ない。

 同時に、設立時から今日までのWIRの清算システ ムの機能の仕方も過去を回顧するさいの対象ではな い。実際、読者はルーカス・マイヤーホッファー博 士の「経済リングWIRの経済分析」の要約ヴァージョ ンで知識をうることができる。この祝典に際し、こ の論文も収録されている。

 WIRの清算システムがその設立時から、変更や修正、 新たな手法の導入によって経験してきたところをみて 驚かされるのは確実だ。WIRの参加者はなによりも、い ま、この50年にあたり、その技術的側面が管理の観点 からみて驚くほど単純化された事実に関心をよせること になるだろう。

 また、WIRの理念は常に経済条件や社会環境に適用され てきた。反対にその基本的な思想--システムが必要とする 相互扶助--は少しも変わることなく、今日に至るまで、経 済協同組合の輪、WIRの政治的位置や経済方針の重要なラ イトモチーフであり続けている。

 私はWIR経済の輪の設立から始め、5つの特徴的な時期を 取り上げていきたい。

1934−1938 設立と理念の次元での闘いの時期 1939−1949 立ち直り、刷新、新たな出発 1950−1971 成長期 1972−1984 新たな意識の獲得、構造の洗練化 質的、量的成長

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1934−1938 設立と理念の次元での闘いの時期

設立時、42000フランの資本金を持ち寄った16人 の会員が中心人物であった。協同組合は法律的には企業 であり、その組合員の人数は制限されるものではない。に もかかわらず、経済リングWIRの設立者たちはこれに「私 設協同組合」との名称を与え、新たな組合員の加入を拒否 した。その時の協同組合の理事会はこうした制限的手法を 正当化し運営を続け、そこに含まれるリスクを承知で資本 を投資し、WIRの新たな名義人になろうとする者を受け入れ ようとはしなかった。

 反対に口座保有者としての加入の可能性は誰に対しても 開かれており、かつての口座保有者のインデックスにみつ けることができるように、事業家ばかりか労働者、サラリー マン、職人などがいた。賃金稼得者は現金と引き替えにWIR 資産を獲得した。こうしたひとたちの関心は一方で、その設 立期に、「WIRの実験」の理念の確立を分かち合おうというも のであったし、他方では、設立時のことではあったが、システ ムのもたらす利益をえようとするものであった。

「図版、WIRの略号、昔といま」入る。 下記参照

http://www.geocities.com/Eureka/Business/1701/wir1.gif

1934年11月から1935年12月まで 1936年1月から1962年6月まで 1962年7月から1972年3月まで 1972年4月から1982年12月まで 1983年1月から

30年代の危機

いま働き盛りの世代でも、30年代に、世界 の随所で支配的であった経済状況と社会の不 安定な状態を容易には想像できなかろう。19 34年の終わりに、WIRが創設された年だが、3 0年代の危機はその頂点に達した。こうした歴 史のなかで、運悪くも引き続いた、破滅的でもあ る経済上の出来事がふたつ発生した。1929 年のニューヨーク市場の株価下落が引き金になっ て世界大恐慌が始まった。この株式市場のクラッ シュは小手先の対策など効かず、世界的な景気後 退の連鎖を引き起こしていった。政府がとった対 策はといえば、資本逃避を回避するために、輸入 に障壁を設け、外国との金融取引を制限すること であった。こうした一国的な色彩をもつ保護的手 法は経済危機のもたらす帰結を増幅させるだけの ものであった。スイスもこうした破滅的動きのな かで同様の方策をとった。信用は壊滅的状態で、 経済を回復させる信頼が全般的に欠けていたので ある。経済の動力である流通する貨幣量はドラス ティックに減少していった。スイスでは10人に 1人の割で失業していた。中規模の商工業も厳し い事態に遭遇していた。いまあるような国の社会 諸制度はその時代にはほとんどなかったし、勤労 者は経済の破産状態と貧困に置かれていた。小企 業の破産と減少はかつてない数字に達していた。

自由経済の素晴らしい恩恵

自由経済の理論によれば、こうした惨憺たる状況 は、責任を負うべき当局の不十分な貨幣供給と、 蓄財によって変調を来した貨幣流通に原因がある。 こうした危機の時代、助け合いの協同組織が世界 のいくつかの場所で作られ、とりわけ米国でのそ れは、事業の不振と失業にバーター取引の手法に よって取り組もうとするものであった。ヨーロッ パでは、英国、フランス、独、オーストリアの随 所で、資金の移動を伴わない交換の輪が形成され た。

 スイスでの経済リングの創設者はヴェルナー・ ツィマーマンとポール・エンツであり、二人とも 自由経済理論の断固とした支持者であった。彼ら は「北欧の清算のための組織」をモデルに社会経 済協同の輪WIRを設立するために、理想主義者の一 団に彼らの理念を広めた。その組織と主導者たちは 個人的に、デンマークへ調査旅行したいと考えた。

 交換の輪のどの組織もヨーロッパではほんの僅か の期間しか機能しなかった。国によっては、基礎的 な法的な要件を欠いていたり、また、破産したり、 危機から脱出するにつれて、その重要性が減ってき たりしてである。

http://www.geocities.com/Eureka/Business/1701/zimmer.htm

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スイスの経済リングだけが生き延びることが できた。

スイスの経済リングは当初4年間、各方面か らのかなりの攻撃にもかかわらず、驚異的に 成長した。1935年の終わりには、WIRは3 000人の参加者を数えていた。若干の議会 からの攻撃があったが、幸運なことに、連邦 のレベルでは、WIRのシステムが我らが民主主 義の法的秩序を侵害しているとは示しえなかっ た。その出発が成功裏に経過したことは、創 設者たちがとても熱心に取り組んだこと、また 多大な金融上の犠牲にもかかわらずその理念を 守ろうとし、そして、中規模事業者がこれを歓 迎し好意的な見方をもってくれたという事実に よって説明される。当時の刊行物がこの出来た ての経済リングの多岐にわたる活動を教えてく れる。リングはスイス全土で、信頼で結ばれた 65のサービス・インフォーメーションを作り かなりな数の地方グループがWIRの株式名義人た ちによって作られ、WIRの地方定期市が開催され た。

 しかし、外部からの、新聞や一部の経済団体に よる攻撃や一部の人間の理解不足による内部の軋 轢、そしてもっとも深刻であったのだが、信用の 領域においてかなりな損失を引き起こす一部の人 間の力不足といったものが理想主義的な創設者た ちの厳しい試練となった。そしてこれらが、この 出来たての協同組合を1939年に深刻な危機に 陥れたのである。

 今日とは違って、現在はどのような信用も指導 的な銀行をベースに承認されるが、当時、信用は 預託された商品、あるいは銀行が受け入れないよ うな担保によって保証されていた。その管理サー ビスは担保のない様々な信用を暴露し続けた。そ して連邦銀行委員会がかなりの額の債務償還を債 務者に要求したことで、バランスシートの赤字が 生まれることとなった。

 健全化策の実施で協同組合の資本は5%の減額 をみた。それで、当時としては相当な額の、総計 150000フランの新規出資が提案された。

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(簡単すぎる記述でちょっとわかりにくいところもありますが、ご辛抱を。そのうちわかると思います)

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1939−1949 立ち直り、刷新、新たな出発

1939年4月22日、チューリッヒで総会が開催 され、約款が変更された。そこでは新たな会員の加 入が認められ、「参加者のWIR」というスローガンの もと口座の名義人に対して協同組合を開放することが 表明された。

新しい人々---新しい飛躍

このことは同時に新たな時代の始まりでもあった。WIR の運動は新たな力によって活性化されたのである。そ して、生き延びるための死闘が始まった。1939年の 夏が過ぎるまでに、新たな組合員を獲得し、当初の募集 額120000フランの参加資本を集めることができた。

世界大戦、1939−1945

1939年にチューリッヒで、忘れがたい国家規模の博 覧会、「Landi」が開催された。しかしこのときはまた、 第二次界大戦の勃発でもあった。WIRの参加者は郷土に対 する義務を果たすために召集された。戦争という出来事 はWIRの再組織化と刷新を妨げた。追加的な二次募集が なによりも成功をおさめるためには必要であった。刷新 しようとの努力のもと、一次募集は20%まで償還して しまい、協同組合には45000フランの資本しか残ら なかった。

 刷新の第二年度はWIRにとって闘いと確認の時期であっ た。我々がいま限りない尊敬と感謝を捧げるその理想主 義と代表者たちの参加の意志に立ち返ることであった。 1940年の9月、経済の輪の新たな組織に集まる協同 する人間たちの会議がオルテンで開催され、5人の理事 会理事の選挙が行われた。

 戦争が続く間、商品の欠乏状態はひどくなり、また軍 役に従事するため参加者の多くが不在の状態が続いた。 WIRの清算システムはそのもっとも単純なかたちへと落ち 込み、戦後も取引量は緩慢な増加しかもたらさなかった。

刷新が損失を弁済した。

この件につき述べておくべきは、WIR協同組合のすべての 出資が完全に償還されたということである。

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1950−1971 成長

その効果的な進展は1950年になって始まった。 年々の成長率はほぼ100%を達成したのである。 景気の上昇と平行してWIRの清算システムは経済 成長の時代の利益を受けたのである。1960年 には、取引額は67,4百万に達し、1970年 には183,3百万フランに上った。この10年 間は金融の面からみてもWIR経済リングの強化の時 期でもあった。準備金が積み上げられ、立派な不動 産への投資が行われた。

物事にはすべて裏がある。

一方で高度成長の期間が経済リングにとって金融的 にみて非常に都合がよかったとしても、他方で、WIR の清算システムの質はみるみるうちに悪化した。新 たな会員にとってはその個人的な利益や関心が第一 であった。WIRの参加者の多くがWIRの清算システム をその商品を強気な値付けで提供したり、いちばん 質の悪いサービスを提供する機会をうるために活用 した。その直接の帰結は値引きによるWIR資産の不正 取引の横行であった。協同組合の評判は人々を動揺 させた。そしてまじめな中規模事業者は次第に、WIR に残る者も入る者も減少してきた。しかしこの展開 は協同組合の人間の関心を寄せるところではなく、 1969年以降、根本的な意見の相違が当時の理事 会で現れることとなった。

 1971年の特別総会の折りに、たくさんの理事 会メンバーが更迭された。そして新たな理事会には 協同組合を新たな指導方針に適用させる重い責任が 課せられたのである。

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1972−1984 新たな意識の獲得、構造の浄化、質的、量的 成長

1972年は経済リングの決定的な転換点であった。 新たな責任者たちが重要な決定を行った。物質的な 利益に関する理念ではなく、むしろWIRの元々の理念 のもつ価値意識を新たに取り上げたのである。

 そのときの理事会の総裁であった、H.R. Richard は経済リング創設40周年の機会に、こう書いてい る。 「成長がお金や利益しか意味しないのなら、また、 フランで表した額、別なふうにいえば清算システム の取引額しか意味しないのなら、われわれは私が引 き締めとか意識の獲得とかいう言葉で定義する時期 にまさしくおかれていることに気づくであろう。  時代はいま、無限の成長という夢が少しずつ薄れ てきている。現在ある発展を見、おそらく常に要求 される習慣を見失っていたのである。そして意識の 獲得が重要にならねばならないのだ。こうした意識 の獲得はお金や利益や取引額を超えた基本的な価値 観でなければならない。質の観念が量の観念に置き 換えられる必要があるだ。」

 経済リングが作り上げた基礎、そして構造はこう した精神の中にあり、それを実際に実現していく望 みの中にある。

 なによりも理事会とその指導は重要な改革プログ ラムに依拠した。この重要な取り組みは審議会と特 別委員会によって効果的に実施された。  実際、経済リングのあらゆる領域で、革新の重要 さの程度に応じて根本的な転換を図るという改革が 着手されたのである。わたしは下記にそれを引用し たいと思う。

(この項続く)

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WIR資産の不正取引に対する対策--新たな企業 の条件

WIR資産の不正取引に対する取り組みは、数十年 来我が協同組合が採用してきた最重要でもっとも 一貫した以前からの決定である。選択された方向 は容易なものではない。実際的な、また法的な意 味で、数か月間も諮問せざるをえなかったもので あるし、理事会がWIRの運動の歴史のなかで、こう した基準を課すほかなかったということだ。

 1973年の春から積極的な新取引指導が始まり WIR資産の流動資産との不正取引は違反すれば制裁を 受けるというかたちで禁止された。理事会は全協同 組合員によってその決定を承認されていなかったの で、協同組合員の総会とそれに続く自発的セッショ ンで激しい非難のなかその考えを擁護しなければな らなかった。

 1973年秋の臨時総会は新たな約款の承認をもっ て理事会の決定を確認した。

 浄化のプロセスは、取引額の減少やWIR参加者の減少 にもかかわらず、成果を上げていった。現在、WIRの清 算システムは70年代始めよりも数量的にも純額で上 回るものとなっている。そして不正取引は実際に除去 されている。

 WIR資産の不正取引禁止による協同組合の成功は、組合 の存在が危険に導かれることを回避させ、健全な成長に必 要な基礎を鍛え上げたのである。

協同組合のシンボルマークの変更

この変更で、経済リングWIRが下記に述べるような 諸方策をとろうとしていること、また現代の要請に 応える企業イメージをもっていることを積極的にア ピールした。 -外部への開放性。協同組合は中産階級に関連した諸 問題に開かれた姿勢をとり、他の社会団体との関係に 配慮するよう努める。 -月刊の機関誌「WIRインフォーメーション」の刊行を 意図し、準備する。 -1975年に、ルセルヌの支部が新たにWIRビルを手 に入れ、この商業ビルによって我々が輝かしい地方を 代表する存在であることを示した。 -1977年春、新たな中央管理部門が設立され、それ はバーゼルの、国の代表機関や銀行、新聞社が位置する 「Heuwaage」地区に置かれた。 -チューリッヒやベルン、ルセルヌ、サン・ガルの各地方 支部は適切な仕方で近代化され、1977年秋、支部の 開店の祝典がスイス、ローザンヌで行われた。 -「新しい協同のイメージ」のもと、印刷物や案内書が 次々と、いましているような近代的なかたちで刊行され た。またWIRの振替指図書には基本的には、効果的なWIR清 算システムの要求基準が適用させられた。

 1972年から1981年の期間、我々の協同組合の 取引高は44%増をみ、平行してそれ以外の事業も発展 した。

WIRデータ
年度 取引高(百万フラン) 流通するWIR資産(百万フラン) WIR参加者
1935 1,0 0,1 2950
1940 2,0 0,2 1097
1945 0,5 0,2 624
1950 3,8 1,0 1574
1955 39,1 10,5 7231
1960 67,4 15,4 12567
1965 111,9 25,5 14367
1970 183,3 57,2 18239
1975 204,7 78,9 21869
1980 255,3 94,1 24227
1981 275,2 103,3 24501
1982 330,0 127,7 26040
1983 432,3 159,6 28418

1981年の経済不況

 1981年末の経済不況はWIRにとって、加入する 中規模企業に、期待された、また緊急の支援を提供 する機会であった。それは取引量の減少を埋め合わせ るためであった。信用コストの急速な高騰は、同時に WIR清算システムを利用した取引量の増加をもたらし、 このときWIRのシステムは揺らぐことなく、加盟中小企 業の要求に応えたのである。

結論に代えて

「WIR50年の式典」はわたしにとって、我が協同組合 の、その設立から今日の成長に至るまでの成果に我が身 を浸し、関心をよせてくださる方々にこれを紹介する幸 運な機会でした。

 50年間という「敬意を表すべき」期間が過ぎたにもか かわらず、われわれは、今日も若々しく、効果的なWIR経 済協同の輪のなかにいますし、現在と将来の任務を成功さ せる前線にいるのです。

(Emil Stutz の報告、終わり)

次回から、ルーカス・マイヤーホッファーの 「経済の視点からみた経済リング」を紹介予定。

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スイス産業におけるWIRの清算システム--実地調査 の結果 (「WIR経済リングの経済分析」、1984年、バーゼル、 の要約)

ルカス・マイアーホッファー、バーゼル大学

 1.機能の仕方  WIR経済リングは1934年に秋に協同組合として設立された。 1948年に本部がバーゼルに移転した。

 この協同組合が追求する目的は下記に示す約款の形態(第2条 第1項)で明らかにされている。 「協同組合WIRは商業や家内工業、サービス提供に従事する諸企業の 相互扶助組織である。その目的は参加者を支援することであり、WIR システムによって購買力を相互に行使しあうことである。またこの輪 のなかで購買力を維持し、そのことで参加者に追加的な事業量を確保 することである。」

 こうした目的を達成するために、本部によって補完通貨が発行され た。このWIR通貨は、協力組合の範囲内で記帳に使用される口座に貯 蓄として払い込まれた。

 経済リングはニュメーレール(流通媒介物)なき清算システムを指 す。他の参加者に対する支払いは口座を使った資金振替で実行される。 それぞれ口座は、一方は借り方に、他方は貸し方に記入される。支払 いを証する書類は小切手のかたちをとり、BAあるいは支払指図書とい われる。

 WIRの清算システムは統合された参加者の間でしか機能しない。法定 通貨(以下、単に貨幣と表記する)のかたちでの資産の振替は引き受け られない。したがって参加者はWIRシステムにおける収入を再投資する 必要に迫られる。追加的購買力は経済リングに結びつけられており、外 部への流出は不可能である。

 しかしWIRのシステムは貨幣システムから独立してはいない。このこと は一方ではWIR資産がフランで表現され、他方で獲得された商品の支払い がほとんどの場合、WIR通貨でしか行えないという事実によって示される。 したがって経済リングは二種類の貨幣が同時に利用される構造をもって いる。

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2 WIRシステムへの参加

WIR協同組合の二種類の口座(公式口座、非公式口座) を区別する必要がある。公式口座の名義人である参加者 は参加者便覧に記載される。この便覧は毎年更新される。 そして彼らは「WIRインフォーメーション」に公表される。 そうして、こうした情報の送付と告知によって認知が進ん でゆく。公式の参加者は、他のWIR口座の名義人との商業 関係に入り、販売高の一定割合をそのWIR口座上に手形の かたちでもつことを受け入れる。どれくらいの割合をWIR にするかは常に公表され、別の割合にすると公表するまで は変更できない。この割合の最低限は、2000フランま での取引では、30%である。

 公式口座と対照的に、非公式口座の名義人は匿名であり、 どれくらいの割合をWIRにするか決めた割合を維持しなくて よい。その結果、彼らはWIRの情報告知手段を利用できない。  原理上、参加者は3つの仕方でしかWIR資産をもちえない。 すなわち、

 -WIRシステム内部での商品の販売  -協同組合の貸付、あるいは  -本社での貨幣の両替  -税額は、もちろん、WIRシステムに参加したときから、WIR 会員から徴収される。  -資金振替指図の処理費用として、資金受領者は取引額の1% をコミッションとして課される。  -会員便覧である「WIRインフォーメーション」の送付や支払い 指図書用紙、口座明細発行の費用として、年間32フランが口座 から引き落とされる。  -信用が供与されるときは、それに関連して利子が支払われる必 要がある。

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前回(WIRBank50Jahre15)の訂正、「協力組合の範囲内で記帳に使 われる口座」→「組合の本社で」

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貨幣の創造と破壊

WIRの清算システムは流動性が存在せず、唯一つ の銀行システムが金融取引を扱うモデルのひとつ であり、そこでは貨幣理論は適用しえないものと なっている。ただ貨幣の創造と破壊の基本的なプ ロセスの探求のみが可能である。このモデルはWIR システムのなかに真の類似物を見いだすことにな る。

 貨幣の創造は新たな資産の提供申し出毎に生 み出され、参加者の間の取引では貨幣の提供は ない。それは処分可能な資産が他者の口座で会 計処理されるからである。追加的な支払い手段 は本部が参加者に新たな資産を授与するときに のみ払い込まれる。したがってWIR本部は自律的 に貨幣を創造することができる。

 経済リングにおける貨幣の創造は随所で信用 供与で実現されている。この場合、WIR本部は債 務者に対して政策的な慎重さに従い、堅実な貸付 構造を整える。1983年末、貸付の83%が抵 当によって担保された。信用供与された総額の 6,3%だけが(会員債務者と名付けられる)当 座口座の当座貸し越しによっている。

 信用創造以外にも、別の形態の貨幣創造が存在 しているが、相対的にあまり重要性をもってはい ない。

-WIRの参加者に対して本部は支出の流れが生まれ るよう務め、またWIR資産での支払いができるよう にしている。 -貨幣の創造はまた、参加者がWIR資産を本位貨幣で 獲得するとき発生する。

 追加的な貨幣創造は経済リングを確固たるものと するという目的を達成するために決定的である。そ のため、信用はWIRシステムにおいて基本的な重要性 を有している。本位貨幣のシステムの銀行と比べて WIR経済協同組合はきわめて低い利子をつけている。 WIR本部は「手堅い前貸しや担保つき貸付」の元本の 貸付に1,7%の利子を要求している。これは86 年末、供与された貸付の86%に適用されている。

 この利子率は、WIRが自律的な仕方で貨幣創造する 能力をもつことで実施される融資であるため十分に 低いものである。信用供与は利子支払いを伴う外部 の貨幣の獲得を必要としないわけだ。従って、WIRの 融資に係る利子率は商業銀行による支払い利息と受け 取り利息の差(預金利息と貸出利息の差)と比較され ることとなる。

 本位通貨のシステムと比べて、経済リングは貸付を 受ける者に数多くの利点を提供している。この協同組 合がフランでみて160百万フランもの取引総量を達 成しえてきたという事実そのものがこれを説明してい る。それは、別の資産(たとえば不動産)を手に入れ たり、取引コストや事務所費用を負担することでは、 これと同額の取引額を実現しえなかったということだ。

 貨幣の創造に加えて、貨幣の破壊が持続的に実行さ れている。貨幣の破壊は本部への支払いがWIR資産で行 われるたびに発生する。

 組合参加者は様々な方法でWIR本部への支払いをしている。 -貸付に関連した利子支払いや償還 -口座の年会費 -取引のさいの資金振替に関連した費用の口座からの控除 -WIRインフォーメーションへの掲載費の支払い

 こうしたことがWIR貸付に関連しているが、利子支払 いは完全にWIR通貨で行われ、貸付額によって90%、 ないし100%の貸付の償還についてもそうである。 反対に、取引額に対するコミッションはWIR建てで徴収 され、税の計算は本位通貨建てで行われる。ただ組合員 だけはWIR建てで支払える。月刊の情報誌掲載費用は完全 にWIR建てで処理される。

 このようにして、組合員はWIR通貨建てと本位通貨建て を併用して本部との資金振替を行っている。貨幣の破壊 は、すなわち参加者の資産の削減は、WIR建てで支払いが 行われるたびに発生している。

(この項、終わり、次回は「WIR本部の流動性」)

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4.WIR本部の流動性

 独立した貨幣創造の能力に関して、この通貨システム のなかでWIR本部は中央銀行と比較されうる。支払いの 流れはこの協同組合の外部にはでていかないが、口座に は様々な貯蓄の機会を与える。したがって銀行システム における流動性というよくある問題は存在しない。それ にもかかわらず、本部は一定の流動性の要求に応える額 を口座に保有しなければならない。その理由は支出のか なりの部分がWIR通貨建てで実行されるわけではないから である。本部は十分な本位通貨の準備をもつ必要があるわ けだ。

 この協同組合は様々な仕方で本位通貨への欲求に応えよ うとしている。その最重要な源泉は下記のようなものだ。 -取引高に対するコミッション(組合員だけがWIR建てで支払いが可能) -貸付の償還の一定額を本位通貨で行う(現在少なくとも本位通貨建てで10%) -不動産賃貸料の受領はこの協同組合に属する。 -協同組合への新規出資金

 この協同組合がどれくらいの本位通貨を必要とするかとい う適切な流動性への計画的な配慮がWIRの運営に課されてい る。本部は本位貨幣での入金の増加のなかで適切な入金管理 を行うためのさまざまな手段を行使している。

(この項、終わり、次回はWIR通貨の受容による収益性の分析です。)

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5. WIR通貨の受容による収益性の分析

経済リングへ参加すると、WIRシステムのあり方 についてその経済的な有利性を簡単な仕方で説明 してもらえる。すなわち、WIR清算システムへの 登録が追加的な購買の能力やまた、取引額を増加 させる可能性を意味していることをである。その 上、有利な貸付条件がコスト削減を可能にするこ とも。

 しかし、WIR通貨の受容はその利用が制限されて いるが故に、部分的なものでしかない。なによりも WIR通貨の受容は投資機会の度ごとにこれに対応し なければならないのだが。こうした理由でWIRの取引 額は付随的な商業活動に止まっている。参加者にとっ ての、その重要性は、だからといって過小評価される べきものでもない。WIRに負っている取引が現行の力 量の制限のなかで実現されているかぎり、追加的な コストは事業コストに制約されている。結果的に、 WIRを利用した追加的な取引の一つひとつが企業業績 の顕著な改善をもたらし、それゆえ参加企業の収益の 増加をもたらしている。そこでの、平均的なWIR通貨の 受容率は40%から50%の間にある。こうした追加 的な取引は、WIR通貨と、また同時に本位通貨の二本 建てで行われている。

 WIR通貨が本位通貨と同じ様な仕方では利用できない ことから、参加者はWIR通貨の可能性について十分に知っ ていなければならないことになる。WIR資産は情報を探さ ざるをえない通貨として定義されうる。協同組合は参加 者にそうした意識をもってもらうために、各種の、参加 者が参照しうる情報サービスを導入している。

-参加者への各種ガイドの配布(支店や地方ごとに分類された、ガイドブックなど) -WIRの各種定期市、見本市の組織化 -月刊誌、WIRインフォーメーションの配布。それには広告のスペースなどもある。 -対外サービスの導入。

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6. 信頼が通用する。

 各種の通貨システムと同様に、経済リングが 機能するには貨幣への信頼が前提されている。 こうした要請はWIRシステムでは特別な意味をも つことになる。なぜなら信頼の喪失には、貨幣の 利用に結びついた利点の喪失が含まれないからで ある。したがって経済リングの管理はさまざまな 方法でWIR通貨への信頼を強化することが必要とな る。 -参加者は入会のときかなりの調査を受ける。相殺 システムの信用を落とすような疑いのある事業者が 入り込むのを避けるためである。また、どのような 粗悪品の提供もできない。 -理事会はWIR資金振替の指図書への裏書きはどの ような場合でも口座への融資で保証する義務を負う。 さらに融資の支払い期限がきた場合には債務者に振 り向けるか、(必要な場合には法的にも)債権をカ バーすることで債務者を支える。 -WIRの清算システムの魅力が増し続けていくように、 計画的に参加者の数を増やす試みが行われている。そ してこの努力は弱い部分に集中される。 -長い間、WIR通貨自体の取引が存在した。つまり、WIR 資産を本位通貨と割り引いて(値引き、損失覚悟の交換) 交換することである。この取引は経済リングの信用を失 墜させた。本部は、こうした取引の大部分を防止するこ とができた。WIR資産の名目価値にも不信の目が向けられ ることはなくなった。 -WIR理事会は、清算取引をコントロールしたり、価格に占 めるWIR通貨の割合を正確に保証したりすることに務めてい る。

(この項、終わり、次回は「経済システム全体のなかの 経済リング」です)

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7. 経済システム全体のなかの経済リング

1983年に、430百万フランの取引額がWIR通貨で 実現された、平均的なWIR通貨の受容率が40%から50 %であることを考慮すると、経済リングは一般経済の観点 でみて、相当大きな重要性をもっている。つまり総取引額 は860百万から1070百万フランを達成したというこ とだ。

 WIRシステムが実現した取引額は一方で、外部との競争を 通してのものである。すなわち、

 WIR参加者の需要は、WIRシステムの中で入手しうる商品の 場合、外部の競合する入札者から経済の輪に参加する者に移 ってしまうのである。他方で、WIR通貨の受容は収入状況の改 善ももたらす。これはWIRによって補完的な需要が生まれると いうことだ。需要の変動にしたがい、参加者はどのような種 類の商品が需要されているか、これを普及させる活動がある ことで、収入の増加を分かち合うこととなる。本位貨幣のシ ステムのなかでも等しく利益をあげながら、企業はWIR通貨の 創造が可能とする需要にも出会うことになるのだ。

 WIR資産は補完通貨で表現されるものだが、この通貨は現物 取引の商品を購入するさいに本位通貨の代わりに使用しうるも のである。WIR通貨の創造は一般経済のシステムにおけるイン フレの影響を当初は受けることになるが、経済リングは一般 経済全体のなかで、相対的に小さいので、インフレの影響は たいしたものではない。このことはWIRシステムの拡大に伴い 変わっていく可能性はある。

(この項終わり、次回は「WIRシステムの諸限界」)

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8. WIRシステムの諸限界

近年、WIRシステムの新たな成長が観察される。 -WIR清算システムの質が改善された。 -経済リングの組織が持続的に改善された(情報 提供や出版物の刊行による対外サービスの開始、 WIRシステムの計画的な拡大策によってその清算 システムがいっそう魅力的となった、など)。 -WIR理事会が決定した通貨量の増加。 -多様な貸付形態や支払い期日を延長する新たな融 資政策。 -本位通貨のシステムでは利子率が上昇している のに経済リングでは利子が低下しているので、WIR の融資はいっそう魅力的になっている。

 かなりな成長率が達成されたので、成長が無限 でありうるのかどうか検討しなければならないと いう問題がでてきた。基本的には、なによりもWIR 通貨量の増加がある。

 一定の限界が銀行法によって規定されている。 同法の自己資本に関連する規制はこの協同組合の 資産と自己資本との一定の割合の達成を要求して いる。したがって経済リングによる貨幣創造はそ の自己資本額によって制限される可能性があるが、 この規制は事実上は重大な障害とはならないだろ う。協同組合は持続的な自己資本の増加を可能と する高い収益率の水準を維持しているからだ。そ の上、WIR理事会は相当額の貨幣創造をする場合も、 必要とされる自己資本(準備預金や協同組合資本 の増額)に振り向けうる十分な手段を有している。  WIR通貨量の緩和は別の決定要素に基づくほかな い。WIR理事会は参加者に資金振替の可能性を与え うる金融政策をとる必要があるわけだ。この場合、 インフレの高進がWIRシステムに現れるようになる か、あるいは資金振替で口座所有者が売りさばけ ない以上のWIR通貨が流通するようになろう。この ことはWIR通貨での販売への信頼を落とすであろう し、経済リングの基本条件を危険にさらすことに なるかもしれない。

 経済リングでの資金振替の可能性を広げること、 従ってWIR通貨量を増加させうる余力は参加者の数に かかっている。こうしたWIR通貨の限界に関わる問題 に対する回答はなによりも参加者数が随意に増加し うるかどうか次第なのである。

 経済リングへの参加は主に追加的な取引量が手に 入るかどうかに依存している。経済リングに参加者 がある度に、資金振替の可能性が増加するばかりで なく、競争も激しくなる。供給が増えればいまある 需要を満たすことができるが、いくつかの産業部門 の参加者数はすでに非常に高い伸びを示して、望ま れる取引量を実現しえないほどである。口座の保有 者増は各産業部門からなっていなければ意味がない。 このことはWIR理事会が述べる政策にも一致するもの である。

 したがってWIRシステムは大きな制約のなかでしか 考えることができない構造を表現しているが、同時 に、こうしたあり方でのみ、経済リングは参加者に 経済上の利点を提供し、中規模企業の前進に実質的 な寄与をしているのである。

以上で「WIR経済リングの経済分析」、1984 年、バーゼル、のマイヤーホッファーの論文を要約 した文章は終わり。次回からはWIR経済リング副総裁 カール・ボイムガルトナーの「現在の、また将来の 挑戦に直面する経済リング」です。

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「現在の、また将来の挑戦に直面する経済リング」

カール・ボイムガルトナー、WIR経済リング副総裁

現在の市場の状況は強力な自由化によって特徴づけ られます。各種の関税障壁の漸次的撤廃、EUやA.E. L.E.のような自由な巨大市場の創造、通信手段の高 度化、こうしたことがきわめて重大な意味をもつ国 際化に貢献しているのです。この進化は25年とい う非常に短期日のうちに実現されてきましたし、い くつかの企業や産業部門に重大な問題を引き起こし てきもしました。また先進国におきましては、人々 を煽動するかのように誇張された弱者の増加や原材 料の欠乏が明白となりました。そしてまた、マイク ロプロセッサやロボットの活用による合理化がこの 進化に貢献していますし、経済の領域でのそれへの 劇的な適用プロセスにも貢献しています。

 こうした進化が製造現場に達するのを想像するの は容易であります。サービス部門や小売り商業、家 内工業はこうした進化を避けることはもはやできま せん。こうしたプロセスの結果のひとつとして、よ り大規模な集中化がありますし、それは結果的に、 国際的次元での強大な企業連合を出現させ、内国的 にも信じがたい規模の力をもつ大規模小売業を出現 させています。

 スイス企業は今日、限界のある条件に置かれよう としています。市場の新たな欲求に適応するために 中小企業には多大の努力が要求されています。必要 とされる変化に対応することには多くの困難が伴う ものです。大企業と違って、小企業は事業内容を多 様化する余地がないからです。大企業の一部門なら 収益ゼロであることも可能ですし、損失は他部門が カバーしてくれます。反対に小企業にとっては、破 滅的な結果となります。近年、多くのスイスの中小 企業は一貫して減少しています。柔軟性があるとか、 きめの細かい顧客サービスの提供のような小企業の 利点が企業家に十分に考慮される必要に迫られてい ます。

(次回は「こうした現代の市場経済においてWIR清算シ ステムはいかにして存立するのか」です

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こうした現代の市場経済においてWIR清算シ ステムはいかにして存立するのか

この問いに答えるためには、なによりもまず WIR経済リングの目的が周知されなければなり ません。それはとにかく中規模企業や家内工 業を支えることにあるのです。それはWIR経済 リングがこうした社会階層の利害を完全に代表 しているからなのです。強力で独立した中産階 級が存在し、われわれの経済社会のなかで存続 することはきわめて重要であります。ただ一つ の巨大な販売者から成り立つ経済は大きなリス クをうちに含むことになります。そのリスクと は供給の広がりの減少であったり、価格の強要 であったり、いろいろあるわけです。個々のイ ニシアティブはわれわれが経済の国家管理化さ れた諸国にみるような状態に至ってしまうこと に抵抗するでしょう。WIR清算システムへ参加 することで小企業には、わずかな費用で追加的な 取引で利益を上げたり、魅力的な融資が受けら れるという利点が提供されるのです。ですから、 巨大な小売業と競争する手段を改善することさ えできるのです。

(次回は、「このシステムはいかにして機能するのか」です。)

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このシステムはいかにして機能 するのか

その基本理念は各中小企業が他の中小企業の ために購買を行い、協同関係にたつ者として 連帯感を実証することにあります。このこと はスイスにとって重要なのです。スイスは2 0万社以上の中小企業から成り立っています し、潜在的な、相当数の支払い能力のある顧 客も存在するのです。実際面でみると、こう した連帯性には別の事情があります。たいし た規模で機能しているわけではありませんが、 実質的な利点がなければ、連帯性の理念は存 在しないも同然だということです。経済リン グWIRが介入するのはまさにこの点です。支払 いを管理する規範が相互的に配慮し合うこと を可能にします。つまり、WIR資産の保有者は 購買を実行することでしか他のWIR参加者、新 らたな参加中小企業を利用できません。こうし た購買先の制限が結果的にそれぞれの中小企業 の取引量を増加させるのです。  なによりもまず、WIRの清算システムは伝統 的な取引、つまり交換取引に思いをいたさせま す。交換の観念は明らかに基礎的です。そして 交換単位以外にはなにも、通常の貨幣による交 換と変わるところはないのです。WIR建てでの支 払いの処理は現代的な計算センターで行われま すし、これは貨幣流通のいらない支払い要求に 対して処理されます

 WIRシステムの特性は中小企業とその下請業者 がこれを利用しうるという事実のなかにあります。 ですからWIR清算システムはそれ固有の制限を負っ てもいます。この制限には重要な意味があります。 スイスにおける中小企業のほぼ10%がWIRの清 算システムから利益を上げているのです。また どのような中小企業でもこれに参加できるように することで、WIR清算システムはその存在根拠を 擁護してきましたし、中小企業の間で購買力を維 持し、そのことで、取引量の増加による投資も維 持されてきたのです。ですから、巨大な小売業や 大商店へもWIRの清算システムを拡大していくこ とはこのシステムにそぐわないのです。

 したがって、WIRの清算システムが現代の市場経 済の要求に対応するかどうかを知るという問題は 中小企業が維持されるに値するかどうかを知る問題 にまで拡大されることになります。

(この項、続く)

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(続き)

 よく知られたスローガン、スモール・イズ・ ビューティフルはいまでも価値あるものです。 だが、実業の世界でもそれは当てはまるもので しょうか。巨大な企業連合がスイスの大都会の 住人と同じくらいの従業員を雇う時代、こうし た問いかけが正当化されています。とはいえ、 大きいことはいいことだ、という考えを遠ざけ る傾向はいまだに存在し続けています。ちょう ど、現代のマイクロ・プロセッサ技術は小さな 企業が優位性をもちうることを示しています。 このことには小企業の別の利点をも付け加える 必要があるでしょう。官僚的組織を欠くゆえの 柔軟性や適応能力、需要を満足させる能力、す ばらしい顧客サービスといったものです。こう した要因が中小企業に将来の最適な機会をもた らすことでしょう。

 中小企業を維持し、前進させる力があるのは ただWIRの清算システムであると考えるのは正確 ではないでしょう。WIRの清算システムは、中小 企業に取引を拡大させ、銀行の3分の1程度の 利率でWIR融資が受けられることで借入コストを 削減できるという補完的な手段としてしか考える ことはできません。多くの場合、追加的な取引高 があるということは事業収支がプラスであるため に決定的です。なぜなら取引高の10ないし20 %は中小企業にとって欠くことのできない重要性 をもっているからです。健全な収益水準が新規投 資を可能とし、新製品を開発し、いっそうの効率 の向上を可能とするのですから。

 WIR清算システムへの参加は企業として一定の柔 軟性を要求されます。そのダイナミズムが注目さ れる小売店がしばしばWIRの参加者であることは 偶然ではないのです。小売店は変化を受け入れず、 確立した形にしがみついていると、まだ用心深さ が残っていますが、競争によって乗り越えられて しまう危険があるでしょう。

(この項、終わり、次回は「いまWIR清算システムはどのような印象を与えているか」です)

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いまWIR清算システムはどのような印象を与え ているか

 50周年記念式典はWIRの清算システムにとって もっとも有利な時期に行われました。景気後退の時 期は、それはいまだ続いていますが、結果的には、 各企業がその取引額の推移にいっそう注目して新た な障害に気づかされるし、そのことでWIRの清算シ ステムによる改善を歓迎する時期でもあるのです。 このことと合わせ、WIRの清算システムに属するこ とで、質的観点からみても数多くの改善がみられる ことも引き合いにださねばなりません。とにかく実 質価格での購買の可能性がたくさんあるわけですが、 まずこれが指摘されるべき第一です。記念祭のこの 年に、取引額が500百万フランを超えたというの は記念すべき出来事です。このことは、わが協同組 合が実りある経済組織の状態ではなかった状況を脱 したことの証明です。組合はバーゼルに本部を置く と同時に、ベルン、ローザンヌ、ルセルヌ、サン・ ガル、チューリッヒの各支部を新規に創設しました。 そうして非常に近代的なプロフィールをもつに至っ ています。新たな「企業イメージ」も重要です。そ れには支払指図書やガイド、WIRインフォメーション の近代化も含まれます。新たな中央計算センターは、 参加者にWIRの清算システムが現代の要請に合致し進 歩を確認しうるものと捉えられうることを保証して います。

(この項、終わり、次回は「WIR清算システムの 将来の見通し」です)

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WIR清算システム、将来の見通し

近年の驚異的な発展がWIRの清算システムの利点が よりよく理解され、活用されていると結論すること を可能にしています。参加者が増えれば増えるほど、 清算の可能性が改善されるわけであります。したが いまして、清算システムの魅力が増し、そのことが また参加者の輪の拡大に貢献いたします。ですから、 WIR清算システムの将来の予測はかなり明るいと考え ないわけにはいきません。しかし、こうした進歩は 不測の事態に左右されるわけではありませんが、強 固な基準に基づき進められるものでなければなりま せん。こうした観点で練り上げられたマーケッティ ングの一つがいまある弱点を除去するために努力を 集中すべきことを示唆しています。

 地方支店の清算の可能性の改善はあまり提起され ませんが、一定の部門の供給者については、優先的 に取り組まれるでしょう。質の面での進歩につきま しては量の面の進展よりも好ましいといえます。  各支部における小売業の獲得につきましては、あ まり提起されていません。そのための、体系的なプ ランが作られたところです。こうした目標のもとで、 スイスはいま抱える弱点を発見するために、38の 地方購買センターに区分されます。われわれが抱え る欠陥は修復されなければなりません。そしてより 魅力的なWIR清算システムの構想が練り上げられます。 これはWIR参加者の協力が達成するものであります。

(この項、続く)

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近年、供給者の数が相当に増加してきた こと、また数々の進歩が実現されてきた ことを申しあげるのも喜ばしいことです。 とりわけ、製造業におきまして、少しず つWIRの清算システムが追加的な取引額 の達成を見始めているように思われます。 小売業や商店街、工業、家内工業は産業 製品を一部WIR建てで購入しうるように なってきました。それはこうした製品が 品揃えのなかに入れられ、顧客に推奨さ れていることからも明らかです。こうし たことから、中小製造業の経営者は二つ の利点をもつことになります。一つは、 WIR取引額のいっそうの増加ですし、もう 一つは販売額の増加です。さらに、WIR参 加者は製造面でも利益をえます。仕入れの 一部をWIRのなかでなしうるからです。

 経済リングの将来の重要な任務の一つに 参加者に対する情報提供の確保があります。 WIRの取引額が追加的なものでしかないと はいえ、企業経営者によって軽視されるも のではありません。取引額を最適なかたち で増加させることや投資の可能性の確保、 収益構造の確立、貸付を受ける有利性の最 大限の活用、こうしたことにはしばしば、 必要な時間や情報が足りないということが 根本にあります。理事会は情報移転の確保 を果たせるように努力しています。最も重 要な手段は対外サービスで、これは成果を みています。製品に関する情報の取得がこ れで可能です。参加者には無償のこうした サービスが近年の参加者の活躍をもたらし ていますし、さらに将来へと向かわせてい くことでしょう。

(この項、続く)

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WIR経済リングは情報誌を発行していますが、 発行部数は27000部です。編集内容は主に WIR清算システムの紹介記事、それに、興味深い 商品に関する一般的視点、また小売商や工業者、 家内工業者の関心からみた検討記事です。ペイ ジの多さに実業人たちは圧倒されていますが、 私たちは「WIRインフォーメーション」をとにか く特別な雑誌として刊行するよう努めています。 一方で、WIR清算システムに関連する情報は新たな 理念の提供源ですし、また取引額増加の機会に もなります。他方で産業界が興味をもつ商品が毎 月要約されて提供されることは、事前の選択が可 能となりますし、時間の節約にもなります。

 取引額の増加と同時に与信額の増加によってもWIR 経済リングが次第により多くの公衆の関心を引くに 至っています。したがって、「PR」活動がこれか ら強化されるでしょう。この活動には、第一に、ま だWIRの清算システムに参加していない中小企業に私 たちの目標を知ってもらうという目的があります。 また私たちの協同組合に参加しえない個人に私たちの 目標とその意味を知らせることもあります。

(この項、続く)

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WIRの4度にわたる博覧会は興味深い発展 をみています。開催ごとにひとで溢れるよ うになりましたし、そこで購買力を使えま すし、出店もできます。このことはこうし た方法で購買するということが次第に認知 され、WIR清算システムのなかでもしっかり した位置を占めるに至っていることを示し ています。

 WIR経済リングは将来に向かった準備がで きています。WIR清算システムは非常に高度 な水準に達し、参加者の数が増加したとはい いましても、質的な基準からみますとまだ改 善が必要です。巧みな管理、現行の資金給付 サービスの改善、場合によっては新たな資金 給付の導入がWIR経済リングの参加者にかなり な利点を提供することを可能にするかもしれ ません。これは競争のなすがままにまかせぬ 将来の取組となるでしょう。市場の将来の大 きな挑戦は経済リングには無関係でしょう。 しかし小売り業や工業の中小企業にはそうで はありません。中小企業の将来の課題にはこ れに先んじる先取の精神で挑戦し、解決する ものでなければなりません。WIR経済リングは 小売業や工業の維持前進に貢献を強めるため に細心の注意をもって市場の進展を見守って います。

(以上でボイムガートナーの文章は終わり。 50年記念誌の訳は少しの間、休止し、これ から、別の情報源から、WIRを含む地域通貨に 関連した情報を紹介することとします。)

WIRBank50Jahre32 (WIRに対する関心が高いですので、50周年 記念誌の紹介を再開しようと思います。 50周年のときの記録ですから数字は1984 年10月時点でのものです。 また、追々、おもに欧州の人間たちのWIRへの言及を 関連情報として紹介していくつもりです。) ......... WIRと銀行家の視点 ゲオルグ・シュネル、スイス銀行協会理事、バーゼル あるひとつの理念、それは嘲られ、ユートピアと決めつ けられましたが、なくてはならぬものと認められ、今日 申し分なく受け入れられるものとなっています。その理 念とはWIR経済の輪であり、WIRの清算システムです。  WIRという協同的な経済社会の輪が生まれて50年と いうもの、この相互扶助組織が、中産階級の商工業の機関 としていくつかの危機を経験しつつも、健全な融資機関と して、また、厳正で輝かしくも発展してきた組織となった ことは知られているところです。互酬的な取引に摩擦なく 融資することで、WIRは3万人の会員の要求に応えてきた のです。  WIR協同組合の成功で彩られた拡大は印象的ですが、それ はこの冊子の別のところで取り上げられています。  こうした成果を達成したことで、その管理や指導、人員 は称賛されるに値します。私どもはWIR協同経済社会の輪 に祝意を申し上げますとともに、将来のご成功を心の底よ りご祈念申し上げます。 WIR--銀行システムと競合する組織か 銀行が提供するサービスのいくつかはWIRシステムによって も提供されます。例えば、融資の領域では、WIR融資のほう がはるかに有利な条件が適用され、資金コストは銀行が要求 する率の3分の1にも達しません。ですから、銀行システム と競合するとはいうわけにもまいりません。こうした有利な 条件はだれにとってもそうであるわけではなく、一定の条件 で連帯関係に入っている参加者に向けられているものです。 彼らは特別な貨幣、計算単位を受け入れるわけで、それは一 国のなかで流通する貨幣と交換できません。ですが、企業が 参加する協同関係に対する企業の資産が問題なわけです。こ の資産は利子をもたらしません。なぜなら好条件な再融資と 取引を刺激することに役立てられるからです。WIRのシステム において資産は価値を保蔵する手段ではなく融資し循環する 手段なわけですから。  銀行はWIRを自分たちの活動を補完するシステムとみなして おります。WIR協同組合とその会員の方々が「WIR環境」のな かでは売り上げを伸ばしても、外部の通常の貨幣システムでの 関係もうち立てなければなりません。銀行はWIR企業とも取引 の関係を確立することが可能なのです。 (この記事、終わり、次回はエドムント・ヴァイス、「消費者 がみた小売業」です。WIRに参加している小売業が消費者から どうみられているかを議論してます)

WIRBank50Jahre33 「消費者がみた小売業」 エドムント・ヴァイス、連邦消費者問題

委員会委員長 日々必要とされる商品を職人たちが作って いた時代から、商業はこの大陸の各地に商 品や原材料を配分する機能をになってきま した。産業的な生産の到来に伴い、商業は さらなる次元を獲得し、匿名市場向けに近 隣や遠隔地で製造されたあらゆるものが小 売業の仲介で消費者にとどけられるように なりました。 30年間で、食料品店の半分以上が・・ 注目すべき構造変化がこの30年の間に小売 業の中で起こりました。連邦消費者問題委 員会の、消費者と小売業を対象とした研究で は、1960年から1975年の間に食料品 店の数が半減したことが示されています。

 商店の消滅に対する不満は一度として聞かれ ることはありませんでした。消費者が郊外の大 規模販売者やデスカウンター、ショッピングセ ンターの独占構造が彼らの欲求をすべてカバー するものではないことを理解するのに長い時間 がかかったのです。そこでなにが消費者の望む ところなのか知るのが問題となります。この点 に関して、あきらかなことは消費者の欲求が一 度に、全部決定されはしないこと、商店の構造 とまったく同じように、さまざまな要因に影響 され、変化していくものであるということです。 (続く)

WIRBank50Jahre34 消費者習慣のさまざまな変化

目に見える変化は第二大戦後の国民総生産の 一貫した増加です。これが始まったころ、家計 収入のほぼ三分の一が食費に充てられていまし た。現在それは収入の12%です。節約された 資金は別の消費財や自由な時間や教育、静養な どのために支出されることになります。

 同じ時期、人口中に占める労働可能人口数の 増加がありました。同時に家族規模の縮小と家 族数の増加が同時に発生しました。こうしたこ とを背景に、消費が強力に促進されるとともに 消費習慣の変化が顕著なものとなりました。 大規模店に有利なように事情が変化した 消費の増加でどの小売業も利益を上げることがで きたわけではありません。ときが経つほどに中小 規模の商店は姿を消していきました。総購買量が 常に増加していったのにです。大規模な小売業だ けが購買量の増加から利益をえたのです。とりわけ食品小売り業はこの変化のなかで印象的です。

1960年に、独立自営の食品小売業は総売上額 の5割を占めていましたが、現在13%にすぎません。87%は大規模小売業やディスカウンター、 チェーンストアなどの売り上げです。  商店や小売業の消滅と大規模小売業の伸張の原 因をみるのは簡単です。なぜなら商業は自ら自身 で状況を変えましたし、また、外的要因によって 商業が変わりもしたからです。外的変化の特徴は 人々の移動が激しくなったところにあります。自 家所有の自動車が増加しました。自動車を使うこ とで大量の買い物や自分で家まで運べないような 重いものまで購入できるようになりました。さら に行動半径が広がりましたし、いつでも、離れた 商店にまでいくことができるようになりました。 30年前は商店に冷蔵庫があるのはまれでしたが、 いまでは冷凍したまま販売することができます。 またこれ以外のどのような状況が消費者の消費習慣を変えることになったか考えてみる必要があり ます。

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