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どこに真の経済力が存在するのか

::貨幣改革に向けた事例
ビル・クラーク
Source: Prosperity, July 2001

グローバル市場の発展、とりわけ自由貿 易地域における、資本や通貨取引のすば やい動きは非常に大きな範囲で国民国家 がその経済をコントロールする力を喪失し てきたことを意味している。そうなったのは ほとんどの政府が経済を運営するのに干 渉すべきではなく、実業家や金融業者に任 せるべきであるという理論を受け入れてき たからである。中央銀行に金利の管理を任 せることは政治家が経済領域を金融業者に 引き渡したということを確認させるものだ。さ らにこのことを確認させるのは大がかりな金 融市場の規制緩和である。政府はグローバ ル・マーケットにも同様の姿勢をとっている。 グローバルな通貨市場では一日におよそ2 兆ドルが、純粋に利益をあげるための投機 的な理由で、正当な貿易取引に融資される のではなく、取引されており、政府はこのこと が国民通貨の価値や経済にダメージを与え ているにもかかわらず、なにもしていないの だ。金融業者が運転席に座っていることのさ らなる証明は彼らが企業の大多数の株式を 購入することで利益をあげうるということであ る。それで、借り入れた資金を使って、資産を 引き剥がす、つまり数千人の従業員を解雇し、 株主や資金提供者に報酬をもたらすために 産業を破壊するのだ。株式と支払われる配 当の市場価値が彼らにとって大事なことの すべてである。銀行やその他金融機関の中軸 的な役割は貨幣と利益の追求が経済活動を 決定する要因であることを確認させる。金融業 者と多国籍企業が権力をもっているのであり、 政治家がもっているわけではない。われわれは なにがなされるべきであり、なされるべきではな いかを決定している不当な利益をあげる者たち のなすがままであって、政府は傍観して、人々の 仕事や幸せを守るためになにもしていない。実際、 政府は金融業者と大御所たちの、たかのしれた おなさけにすがって人々の利害や幸福を放棄して きたのである。このことは人々に奉仕すべき政治 家の職務怠慢とみなされるべきだ。

貨幣について学ぶ こうした金融が支配する経済の本質は貨幣が作り出 される仕方にある。われわれの生活のあらゆる面に おいて貨幣が中心的な役割を演じているにもかかわ らず、貨幣については驚くべき無知が存在する。この 無知は、貨幣の問題があまりに難しくふつうの人間に は理解するのが難しいとする銀行家や金融業者が作 り上げてきた神秘性が原因である。彼らはこうした観 念を広めてきたし、経済学者がこれを手助けしてきた。 貨幣を理解しコントロールするのは専門家に任される べきだというわけだ。真実は貨幣についての本質的な 事項はシンプルだということである。このことが公衆に よって知られるとき、人々は問題を感じ始め、銀行家に 許されている不正行為を改革するために政府はなにか すべきであると要求し始めるだろう。政府は銀行家によ る貨幣の管理が引き起こす誤りを正すよう要求される のだ。

街頭の男が騙される5つの方法

1 彼は貨幣が造幣局や中央銀行を通して、政府によっ て創造されていると思っている。そして貨幣は紙券とコイ ンからなっていると思っている。

事実:貨幣のわずか数%だけが政府が作った紙券とコイ ンである。

2彼は銀行が貨幣を貸すとき、借り入れた貨幣はその他 の銀行に顧客が預け入れた貨幣だと信じている。

事実:銀行から借りる貨幣は断じて預金者の貨幣ではない。 それは借り手の口座の債務欄に単に記入するプロセスを とおして作り出された新規の貨幣である。流通している貨幣 の97%がこうした方法で生まれている。もし実際に銀行が 預金者の貨幣を貸し出すなら銀行は望むときにそれを利用 できなかろう。もし誰かが貨幣を引き出したいと思い、こう言 われたとしよう。「すみません、その貨幣は私どもがジョイ・ ブロー氏にお貸ししました。」彼は怒るであろう。当然のこと だ。別なふうにいえば、貨幣の97%が「本当の」貨幣ではな く、信用だということだ。まったく銀行の元帳やコンピュータに ある数字だというわけだ。貨幣は無から創造されているんだ。 でも、それは使われているし、ほんとうの貨幣として受け入れ られている。どの点からみてもそれはお金なんだ。借り手はそ れを使って家屋を購入するし、賃金を支払ったり原料を購入し たり、いろんな使い方をするんだ。それでもそれはある口座か ら別の口座に移転される数字にすぎない。それはいろんな呼 び方をされている、クレジットとか銀行貨幣とか、数字のお金、 チェックマネー、債務貨幣、電子マネーとかね。なんと呼ばれよ うが、人々が望むときに紙券やコインのようなほんとうの貨幣を 手に入れることができるので使われているし、信頼されている。

3彼は銀行や住宅金融組合には厳格な統制と 管理がなされていると信じている。

事実:銀行や住宅金融組合ができること、でき ないことに関する厳格な管理が存在するという 信念も間違っている。かつて銀行が中央銀行 に預金すべきとされた法定の預金は存在しな い。銀行が貸し付けの保証とするいかなる部分 準備も存在しない。規制緩和によって登場したこ とはなんであれ金融業者に歓迎されているし、 いまとなっては政治家も歓迎している。現在ある 唯一の規定は銀行が中央銀行に彼らの資産の ほんのわずかを預金しなければならないという ことだが、その資産といっても主に銀行が作り 出した融資からなっているのだ。このわずかの名 ばかりの金額が示しているのは、借り手にはな んの安全でもないし、彼らを守る適切な規制もな いということである。しかし銀行のほうは抵当とし て差し出された借り手の不動産をもっているのだ。

4 彼は融資にともない支払う利子が合法的な料 金であると信じている。彼が融資を受けているの が別の人間の貨幣であると信じているから。

事実:利子は貸し手が自分の貨幣の使用を断念す ることに対する償いであるとみなされている。貸し 手が直接的な欲求や楽しみのために支出しないこと でなされた犠牲の代わりというわけだ。これは預金者 にとってはそうであるかもしれないが、融資を行うとき に貨幣を作り出す銀行のためのものではない。銀行 は融資が存在する前は存在しなかった貨幣の利子を 貢ぎ物として請求してくるのだ。それで、銀行は利子の かたちで貨幣を手に入れている。

5 彼は自分の債務を返済しえないとき、 銀行が自分が差し入れた抵当を取り上げる のは正しいと信じ込まされている。

事実:借り手は通常の割賦返済で返済しなければ ならない債務を負っており、加えて利子も支払わ なければならない。さもなければ法律上の罰則が 課される。もし借り手が債務不履行で返済ができ ない場合、彼が融資の担保に差し入れた不動産は 合法的に没収され、銀行への返済に使われる。家 屋を失ったり事業上の損失を受けるような苦難や 困難が借り手の身に降りかかるかはどうでもよい ことである。理由がなんであれ、負債は期限通り に返済されなければならない。だがしかし、この 貨幣が無から作り出されたものだということは覚 えておけよ。

ほとんどすべての貨幣は債務から始まること を忘れるな

しかしながらほとんどの人々が借金をしている。 負債の総額は総貨幣供給より大きい。債務の6 0%に抵当が入っている。事業上の債務はグロー バルマーケットが引き起こす競争の激化のなかで 事業を維持しなければならないために増え続けて いる。現金は慢性的に不足している。これは提供 されるあらゆる財やサービスを購入するために十 分な購買力が存在しないことを意味している。こ うした支出する貨幣の不足はほとんどの人が負っ ている債務の重荷のために引き起こされている。 もし彼らが自分の家屋や事業を維持し続けたいと 望むのであれば債務に対する返済をし続けていか なければならない。これが政府が直接税を引き上 げることが嫌われる基本的な理由である。それは 人々の支出しうる貨幣や財やサービスに対する総 需要を削減するからだ。結果として必要不可欠な サービス提供に見合う租税収入が政府にはない。

国債

課税不足は赤字財政と呼ばれ民間部門、主に 銀行からの政府借り入れによって埋め合わせ られる。この債務の総計が国家債務である。 それは納税者によって、結局は返済されなけ ればならない。実際は、政府が貨幣を私的部 門から借り入れる手段として販売される財務 省長期債券が使われる。政府は新規の債券を 発行し、以前の債券に利息をつけて返済する。 ここで政府が長期債を購入する銀行から得た 貨幣を考えてみよう。それはどこからやって きたのだろう。君は推測できるね。それは君が 抵当付きで借り入れたお金と同じように、無か ら作り出されたものだ。それは本当のお金じゃ ないだろう。信用、債務マネーなのだ。年金基 金とか保険会社のような金融企業が財務省証券 を購入するが、それは優良国債などと呼ばれる わけだが、それに使われる貨幣は顧客の貯蓄で あり、だから、それはすでに存在し、循環し、 再び使われるお金だ。銀行が優良国債を購入 するのに使う貨幣はそうではない。それはス ポットで無から作りだされたものなのだ。そ うして政府は借り入れが発生するまでは存在 しなかった貨幣のために銀行に借金をしてい るというわけだ。そこで、君は、多くの人が 問いかけるのと同じ質問をしそうだ。もし銀 行が政府に納税者の負担になる債務を負わせ る貸し付けをするために無から貨幣を創造で きるのならば、なにゆえ政府は自分自身で貨幣 を作りださないのか、と。少なくとも公共事業 や借り入れた貨幣の重荷を取り除くために、なに ゆえ自分自身で貨幣を創造しないのか?と。

国家紙幣

もし国家が赤字財政に資金供給するために (銀行が納税者に重い負担を負わせて国家 に資金提供していた代わりに)貨幣を創造 するのであれば、それは債務マネーではな いし、いかなる利子を支払わなくてもよい わけだ。この貨幣は必要不可欠な公共事業 に支出されるであろう。返済が必要な貨幣 ではなかろう。今日、われわれが、政府や エコノミスト、銀行家、その他の「専門家」 から聞く叫びはこうだ。「十分な資金がな い。公共サービスはカットされねばならな い」と。そうして看護婦は解雇され、老人 ホームは閉鎖され、教師の仕事は過重とな り、輸送システムは荒れるにまかせられ、 云々ということになる。こうしたすべては 上に述べた理由から税収が十分に得られ ないがゆえであり、政府が国家債務を増 やすことに気が進まないからである。現実 に削減が進められている。それで公共事業 のためには慢性的な資金不足が存在する。 必要な貨幣を政府が創造するのであれば、 こうした問題は消失する。 なにゆえ、そうしないのか?

弁解、弁解、弁解

再び「専門家」が呼ばれる。 こうした人々は銀行家や金融業者や、エコノミスト であり、彼らがいまいる金融の状態に既得権をもっ ている人たちだということを忘れないでほしい。 彼らはこう主張する。「政府は必要とする貨幣を印刷 することはできない。それは流通貨幣量を増やし、物 価を高騰させ、貨幣価値を下落させるであろう。言い 換えれば、インフレを引き起こすであろうし、われわ れはそれがもたらす困難をなくそうと絶望的に努力す ることになろう。中央銀行はインフレをくい止めるため に金利を規制している。われわれは貨幣を創造する政 府をもちえないのだ。」 こうした「専門家たち」は正しいのか。

インフレを防止する方法

彼らは物語の半分を話しているだけである。 貨幣が専門家の掌中になければならないとし て貨幣を巡って作り出されてきた神秘をわれ われは指摘したが、それを思い出してほしい。 こうした神秘性の一部は貨幣に関する事実、 誰が真にそれをコントロールし、誰が現状から もっぱら利益を得ているかという事実を明らか にしないことに基づいている。彼らが若干の説 明を求められるときはお茶を濁し物語りのほん の一部を語る。彼らは政府が創造した貨幣はイ ンフレ的であるというが、銀行が作り出した貨 幣についてはそうはいわない。彼らは政府が望 む場合に政府は彼らが普段している銀行貸し付け の額を規制しうるとは語らない。「専門家」はこ うした事項については沈黙を守っている。なぜな らこのことについて公に議論が起こることを望ま ないからだ。彼らは、万人が利益をうる債務から 自由な貨幣をわれわれがもちうるという理念を普 通の人たちが聞くことを望んでいない。この理念 は人々をして政府に債務から自由な貨幣を要求させ ることになるし、銀行には規制を求めることにな るからだ。銀行家と彼らが投資しているメディアがこう した議論を望まないにしても、驚くことはない。 彼らにとっては語られなければ語られないほどよ いことなのだ。貨幣改革家は豆をちらかし、猫を 袋から出して、本当の事実が明らかにされること を望んでいる。銀行貸付は厳しい方法でコントロー ルできるし、法定の準備金が再導入され、そのこ とによって、銀行資産の実効的な割合が中銀によっ て課されなければならない。部分準備が再検討さ れ銀行は彼らが行う貸付の一部を現金で持たねば ならなくなる。銀行が創造した信用も条件や期間 の規制によって削減しうる。

(続く)

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